青色の眼をした双子   作:Belenus

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小説擬きのお人形遊びで良ければどうぞ


嘲笑う声

 見慣れた屋敷、見慣れた廊下。俺が産まれてくるまで衰退の一途を辿っていたくせに無駄にでかい母屋。まるで毛を逆立たせ自分を大きく見せようとする小動物みたいだ。

 

「さっさと潰れちまえよ」

 

 日に照らされて温かい縁側に寝そべりながら憂鬱な気分になる。どいつもこいつも次期当主としての自覚だのなんだの煩わしい事この上ない。

 

「つーか、なんで俺より弱い雑魚に説教されないといけないわけ?」

 

 雑魚は雑魚で黙ってればいいのに。挙句の果てに修行をつけるとかほざいてんの。この俺に。まあ、速攻でボコボコにしてやったけど。なんで俺に勝てないって分からないんだ?

 

「もしかして、そんなことも分からなかったからここまで衰退してたのでは?」

 

 やっぱり俺って天才だわ。

 そんなことを考えていると、廊下をとてとてと歩いてこちらに向かってくる影が見える。

 

「おにいちゃん、みつけた」

 

 日に照らされて見えたそこには、信じたくなかったが弟が立っていた。自分とは対象的な真っ黒な髪、俺に似て整った顔そしていつものように目を覆う瞼。憂鬱な気持ちの原因その2だ。

 

「はあ〜〜〜」

「おにいちゃん?」

 

 思わずため息が出る。なんで今日はこんなに不運が重なるんだ?せっかくこいつが来ないようなところを選んだのに。

 

「お兄ちゃんって呼ぶな。どっか行けよ」

「ごめんなさい」

 

 睨みつけてやると、きゅっと自分の服を握って俯く。いつもそうだ、何言っても俺のそばを離れようとしない。どんなに突き放しても置いてけぼりにしても、いつの間にか俺のそばによってきて『お兄ちゃん』と声をかけるのだ。出来損ないのくせに。

 

「お前さぁ、なんで俺につきまとうわけ?お前に対して何かしたつもりないんだけど」

「それは·····」

 

 それっきり黙ってしまい沈黙が流れる。質問に答えようとして考えてるのは分かるが遅い。この間がまた俺をイライラさせる。

 

「理由もなく俺につきまとってんの?なら迷惑だからやめてくんね」

「ごめんなさい」

「さっきから謝ってばかりで動かないじゃん」

「ごめんなさい」

 

 カチンときた。

 

「馬鹿にしてんの?」

「ち、ちが」

「馬鹿にしてんだろ」

 

 否定しようとする言葉を途中で遮り一歩一歩、近づく。距離を縮める度に肩を震わせ、閉じた瞼の端に小さな涙を溜めていく。瞼を開いていれば目にいっぱいの涙が浮かべていたことだろう。

 

「お前もあいつらみたいに俺が無下限呪術を持ってるのが気に食わないんだろ。だからいつも俺の周りをうろちょろして煽ってるんだ。だって神々の眼を持ってても術式すら持たない雑魚のお前にできるのはそんくらいだもんな〜」

 

 怒りのあまりどんどん饒舌になっていく。神々の眼。数千年に1度しか持ったものが生まれてこない、呪力が詳細に見えるだけの六眼よりも貴重な眼。

 眼球の王であり、眼に関することはなんでも出来たという文献が残っている。よりにもよって目の前の出来損ないが、数千年ぶりに産まれた眼の保持者なのだから笑えない。

 

「自分の眼が俺より優れてるからって調子に乗ってんなよ。俺がいつまでも黙っているとでも思ってんのか?やろうと思えば今ここでお前を殺してやったっていいんだぞ」

 

 ふと、こいつとこんなに話をするのは初めてかもしれないと思った。いつもなら一言二言、文句を言ってあいつを置き去りにしている頃だ。なのに今日は怒りが止まらない。

 

「目障りなんだよ。お前もお前のその眼も。なんでろくに術式も持たない、呪力操作も出来ない修行の度に怒られてるお前がその眼を持ってるんだよ。どこをとってもお前より俺の方が上のはずだ」

 

 至近距離まで近づいて胸ぐらを掴む。イライラする。ビクビク怯えて、怖がってるくせに俺の周りから消えないこいつが腹立たしい。他の奴らみたいに俺に怯えて隠れればいいのに。どんなに邪険に扱っても笑顔でお兄ちゃんと呼ぶこいつを見てると胸が疼く。

 

「どうして消えない。どうして笑っている。どうして避けない。どうして、どうして、どうして!俺に何を望んでるんだよ」

「なかよくなりたいの」

「なんだよそれ。俺に期待すんな!」

 

 胸ぐらを掴んでいた手を離し突き飛ばす。後ろに倒れてこちらを見上げる『(けい)』を見下ろすのは想像していたより気分が悪かった。もっと怯える様を見れば楽しくなると思ったのに。

 

「くそが!」

 

 悪態をつきながらカスの横を通り過ぎる。らしくない。最強であるはずの俺が、あいつ程度に心を揺さぶられて乱れるなんて。本当にらしくない。

 

「はあ〜〜〜」

 

 なんで俺はここまであいつを嫌いに()()()んだろう。

 

 

 

 

 

 『あの口喧嘩をした(一方的に)日から1年がたっていた。俺達は5歳になり、あの事があってからお互いの接点は無くなった。俺は晴れてこの家で1人になる·····そうなるはずだったのに。

 

「はあ〜〜〜」

 

 後ろからとてとてと、ついてくる音がする。本人は隠れているつもりなのか、時々後ろを振り向くとサッと隠れる。あんなにきつく当たったのに、未だに俺の周りをうろちょろして何がしたいんだ?

 

「あれで分からないと思ってるのかよ」

 

 何があいつをそこまで駆り立てるのだろうか。相手をしてくれるやつならこの無駄にでかい屋敷を探せば5万といるだろに。態々、俺を追い回す理由がわからない。

 

「まあ、最近は面白いからいいんだけどね」

 

 そう呟いて、あいつが俺の独り言に疑問符を浮かべた瞬間に駆け出す。あいつは体を呪力で強化することも出来ないためどんどんと距離が離れていく。

 

「取り敢えず距離は稼げたな」

 

 あれから俺は考えた、らしいくない行動をとったのは何故か。それはイライラしたからだ。なら楽しめばいい。あいつがどこまで俺に追いつけるのか。

 

「出来損ないが俺に追いつくなんて夢のまた夢だけどな」

 

 この追いかけっこをするようになってから、俺があいつに対してイライラする事は減った。何より『お兄ちゃん、どこ?』と小さな体で探し回る姿を見ていると笑える。

 この間、転んで泣きそうになっていた時は笑いをこらえるのに必死だった。最強の俺が出来損ないと遊んでやっているのだ感謝して欲しい。

 

「さて、今日はどこにしようかな〜♪」

 

 最近では五条家だけにとどまらず、外も活用しているのだが。この1年であいつも慣れてきているため、油断出来なくなっているのが現状だ。

 

「まっ、それでも負けるつもりはないけどね」

 

 だが、あいつにはチート武器がある。あの眼を使えば俺の位置の捕捉はたいして難しい事じゃないため、この鬼ごっこはあいつに分がある。そのハンデのおかげで、ちょうどいい難易度になっているから実に楽しい。

 

「それにしても、この足じゃ広く使うにも限界があるな。瞬間移動でも出来れば楽なんだけど」

 

 まだ5歳であるため、歩ける範囲に限界がある。たとえ呪力で強化していても。この遊びもそろそろ飽きてくる頃合だ、次を考えなくちゃな。

 

「あいつの眼って、対象を一人に絞って自動追跡とかできるのか?」

 

 それが出来る場合、今みたいに人混みに紛れていても見つかる可能性が高い。ただ、いつものように走り回って振り切るのは面白くない。今回は逃げ回るのでは無く隠れてやり過ごしてみるか。

 

「丁度いいハンデだ」

 

 思わず口角が上がる。あのクソチートの眼からこの条件で逃げ切るのはまず無理だ。だが、この条件で逃げ切ってこそ『最強の俺』だ。

 

「無下限呪術を張って捕まえられないようにするのありか?」

 

 この案は却下だな。

 流石に大人気なさすぎる。

 

「追いつけない距離の場所に隠れる」

 

 この案も却下だ。

 振り切っているのと変わらない。

 

「通常は入れないところに隠れるのは?」

 

 これに決まりだな。

 

「場所についてはここでいいか」

 

 考え事をしている中で無意識にたどり着いていた場所を眺める。目の前に広がるのは、もう既に廃校になっている荒れた校舎である。

 

「相変わらず汚ねー」

 

 以前、力試しのつもりで入り特級呪霊を祓った場所だ。

 廊下には砕けたガラスが散らばり、所々にナイフやらバットが落ちていた。大方、ここをたまり場所にしていた不良のものだろう。

 

「ここなら入って来れない」

 

 たどり着いた屋上はバラバラに崩れており、3階に時折通る雑魚呪霊がよく見える。ろくに呪力で身体強化も出来ないあいつではたどり着くことは不可能だろう。

 かろうじて残っている四方と切り離された床に座り柵に身を預ける。曇り空でなければいい眺めが見れただろうな〜と考えながら目を閉じていると次第に眠気に襲われる。

 

「久々によく眠れそうだ」

 

 

 

 

 

「見つけた!」

 

 耳元でその声が聞こえた時にはもう既に遅く、がばっと俺に抱きついてくる弟がそばにいた。寝起きで上手く回らない頭を無理やり働かせ状況を理解する。

 

「まけ·····たのか」

 

 どうやって?ここにたどり着けるはずが·····ないのに。

 

「すごいでしょ!初めて捕まえた〜」

 

 ここぞとばかりに、俺の服に顔を埋め楽しそうにはしゃぐ姿を見ていると段々と冷静になってくる。負けたのはショックだが、今はそれよりも何故負けたのかだ。

 

「どうやってここに来た」

「えっとね、これ!」

 

 指を差した先にはボロボロになり所々、歯抜けになっている梯子があった。梯子の長さが足りなかったのか、位置を調節するために割れたコンクリートが重なっている。

 

「あのコンクリートどうやって動かしたんだ?」

「これ!」

 

 そう言って見せてきた腕には呪力がこもっていた。

 

「お前、呪力操作できないんじゃなかったの!?」

「えっと、それは·····ごめんなさい」

 

 確かにあの眼を持っているのに、呪力操作が出来ないのはおかしいと思っていた。だが、これほどの呪力操作ができるなら毎回修行のとき怒られていたのはなんだったのか。

 

「なんで、今まで使わなかったんだ」

「上手く出来たら、またお兄ちゃんが悪口言われるから」

 

 つまりこいつは俺の為にやらなかったってことか?ふつふつと心の底から怒りが湧いてくる音がする。

 

「離れろよ」

「っ·····ごめんなさい」

 

 名残惜しそうに離れるこいつを突き飛ばさなかったのは奇跡だ。胸ぐらを掴んでやろうと立ち上がると「あっ」と声が上がる。

 

「なんだよ」

「ふ、服に血が」

「は?」

 

 言われたままに服をよく見てみると胸元に血がついている。体には異常がないのに、どういうことだ?

 

「ごめんなさい」

 

 謝っている相手をよく見てみると、体の色んな場所に怪我をしている。ガラスで切ったであろう足には血を滲ませ、手にいくつも切り傷や擦り傷があった。何よりも、額から顎にかけて血が流れた跡が出来ている。

 

「なにがあった」

「なんのこと?」

 

 自分の状況を理解していないのだろうか。普通の子供だったら泣き喚いているはずなのに、ケロッとしている姿を見ていると無性に腹が立ってくる。

 

「その頭の傷だよ。それになんで靴すら履いてないんだ」

「玄関から出ると止められるから履けなかった。頭の傷は呪霊から逃げてる時に転んじゃて」

「走ったのか。あの廊下を裸足で」

「うん」

 

 幸い傷はどれも深くなく既に血も止まっているが、痛いことには変わりないだろう。

 

「なんでこんなこと考えてんだ?これじゃまるで心配してるみたいな·····」

 

 そんなことは有り得ない、なにかの勘違いだ。こいつがどうなろう俺には関係ない、そう思い込み気持ちを切り替える。

 

「チッ、こんなあっさりと負けるとか。ないわ〜」

 

 慢心があったとはいえあまりにも幕引きが呆気なさすぎる。しかも人生初の負けがこいつかよ。

 

「あ、あの、お兄ちゃん。捕まえたらなんでもお願い聞いてくれるって」

「お兄ちゃんって呼ぶな」

「ごめんなさい」

 

 このまま約束を反故にしてもいいが、それは俺のプライドが許さないし、何よりこいつに対して借りを作るのも嫌だ。どうせこいつの事だから変な願い事はしてこないだろ。

 

「で?」

「え?」

「願い事ってなんだよ」

「聞いてくれるの!?」

 

 この約束をした時は、聞く気なんてなかったがこういう反応をされるとムカつく。

 

「で?」

「えっと、あのね。おんぶして欲しい」

「は?本気で言ってんの?」

「ごめんなさい」

 

 俺の反応をどうとらえたのかまた謝りだした。

 変な願い事はしないと思っていたが、ここまで楽な願いとは思わなかったため少々面を食らう。なんでおんぶなのか、足の傷を見ないようにしながら目の前に屈む。

 

「早く乗れ」

「うん!」

 

 嬉しそうに抱きつく姿は痛みなんて感じてないように見える。痛くないのか?と声をかけそうになるのを既で止めた。こいつの怪我を見てから、俺の中の芯が揺らいでいるのを感じる。ぶれちゃダメだ。

 

「俺は最強だ」

 

 言い聞かせるように小さく呟いた声は、震えていた。

 

「お兄ちゃん、今の僕達って仲良しに見えるのかな」

 

 確かに傍から見たら仲良しな兄弟に見えるのだろう。最近はこの遊びのおかげで、こいつが居るも悪くないと思わなくもない。だが、未だに俺はこいつの事が嫌いだ。こいつを見ていると昔を思い出す。

 

『六眼じゃない方に術式があればよかったのに』

『神々の眼と抱き合わせならどんなに良かったか』

『六眼持ちが腹の中で死んでいれば』

『六眼持ちが生まれて来なければ』

 

 今更だ。

 散々言われてきた。

 だから証明してきた『俺が最強』なのだと。

 文句を言うやつは全員ボコボコにしてきた。

 もう誰も『最強の俺』を疑うやつはいない。

 だから大丈夫だ。

 

「お兄ちゃん、大丈夫?」

 

 なのに、こいつだけは『最強の俺』を見ていない。

 

「なんでお前は俺につきまとうんだ」

 

 以前は言わせなかった答えがひどく気になった。

 

「なんで俺なんだ」

 

 家の中で優しくしてくれるやつは山程いたはずだ。

 

「なんで」

 

 段々と小さくなる声は聞こえているだろうか。

 数十分にも感じる沈黙はいつ終わるのだろうか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「だって僕の『お兄ちゃん』で『五条悟(ごじょうさとる)』だから」

 

 久しぶりに名前を呼ばれた気がした。

 「六眼持ち」「次期当主」「最強」

 そう呼ばれ自分もそう望んだはずだった。

 

『あなたは今日から五条悟よ』

 

 ひどく懐かしいお母さんの姿が重なった。

 そうか·····俺は

 

「五条悟でいいんだ」

 

 自分の居場所を作るために『最強』になり周りは捨てたはずだった。勝手に作った円の中で他人を寄せ付けないように、毛を逆立てて自分を大きく見せていた。そんな中こいつだけは、自分が傷つくのもお構い無しに輪の中に入りずっと呼び続けてくれた『お兄ちゃん』と。

 

「泣いてるの?大丈夫?」

「泣いてねぇし。だって俺は『(けい)』の『お兄ちゃん』で『五条悟』だからな」

 

 ひどく驚いた様子の『弟』を余所に涙を拭う。

 ここが廃校で良かった。まだ『弟』の前以外では『最強』を手放せそうにないから。

 

 

 

 

 

 

「お兄ちゃん」

「なんだよ」

「もう一回、呼んで」

「慧」

 

 満面の笑みを浮かべる弟を前に、何回目だよと内心うんざりしていた。今までした仕打ちに罪悪感を感じるし、罪は償っていかなくちゃいけないと思う。が、それにしても30回以上は名前を呼んでいる。

 

「そんなに名前を呼ばれたことが嬉しかったのか?」

「うん!一生、呼ばれないと思ってたから」

「うっ·····」

 

 確かに、あの状態の俺だったら一生、呼んでやらなかっただろう。周りからの評価を気にして、何にもしてない慧をやっかんでいた。今考えてみると八つ当たりにも程があるな。

 

「慧」

「ん?」

「その、あのだな」

「なに?」

「だからあれだよ、その」

 

 上手く言葉が出ない。たった3文字なのに、言葉が浮かんでは消えパクパクと口が開閉を繰り返す。

 

「·····ごめん

「ん?」

「ごめん!」

 

 突然、大きな声を出したせいで慧がビクリと震える。何やってんだと自分が嫌になる。らしくない。本当にらしくない。

 

「ごめん」

「いいよ」

「そんな簡単に?」

「うん!」

 

 あれだけ色々な事をして、恨まれても仕方がない様な人間なのに。満面の笑みを浮かべている慧を見ると、その言葉が嘘ではないことが嫌でも分かる。

 

「なんで」

「だって、お兄ちゃん大好きだもん!」

「·····そうか」

 

 街中で大声を出したせいで周りの視線が集まるが、そんなことが気にならないほど嬉しかった。と、同時にどんな事があっても慧だけは幸せにすると決めた。

 

「初めて見た!」

「なにが?」

「お兄ちゃんの笑ってる横顔!でもおぶさってるからよく見えない」

 

 しょんぼりしている慧の顔を見ると、愛おしさが込み上げてくる。たった数時間の事なのによく変わるもんだ。家の連中が見たら頭でもおかしくなったと思われるに違いない。

 そういえばここら辺に薬局があったはずだ。包帯と消毒液さえあれば傷は深くないし大丈夫だろう。

 

「痛くないか?」

「痛くないよ」

「本当か?」

「·····痛い」

 

 やっぱり。だいぶ我慢しているのだろう。

 早いところ治療してやりたいのだがなかなか薬局が見つからない。家に帰った方が早いか?と思い始めたあたりでようやく薬局にたどり着いた。幸いな事に近くに公園があったためベンチに慧を降ろす。

 

「どうしたの?」

「向こうの薬局で色々買ってくるからここで待ってろ」

「分かった。行ってらっしゃい」

「ああ」

 

 頭を撫でてやると嬉しそうに目を細めて笑っている。

 

「何かあったら大きな声を出せ。助けに行く」

「うん!」

 

 慧に見送られながら薬局へ向かった。

 

 

 これが、最大のミスだ。

 

 

 薬局を出て公園に向かった時にはもう遅かった。

 

「··········」ぐちゃぐちゃ

 

 頭の半分が無くなった慧がこちらを見ていた。普段は閉じていて滅多に見ることのない、俺とは違う青色の眼が闇夜の中光っていた。ぐちゃぐちゃ

 

「即死だったんだな。だから、大きな声もあげられなくて·····」ぐちゃぐちゃ

 

 静かな夜の公園に腸をかき混ぜる音が木霊する。

 弱い呪霊だった。俺なら片手で祓えるような。

 慧の上に跨り楽しそうに腸を弄ってる。

 口に手足を生やしたような化け物がニタニタと。

 

「楽しいか?」

 

 今、自分がどんな感情で動いているのか分からない。憎しみ、恨み、辛み、悲しみ、どれでもあってどれでもない。ただ今確実なのは、冷静に心の底から目の前の化け物(弟の仇)を殺したいと言う気持ちだけだ。

 

 血の海に映る俺は嗤っていた。』




果たして誰を嗤っていたのか







文章中に不自然にある『』は伏線なのでミスでは無いです。
後、この世界では神々の義眼ではなく眼が正式名称になっています。
ちなみに、呪霊はいつもの慧くんなら祓えました。
お兄ちゃんが心を開いてくれたのが相当嬉しかったのでしょう。
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