父に送っていたバレンタインチョコだが、トレセン学園では父にチョコレートは送れない。マスターに送ることを考えるが、父と似たようなものでいいのか迷走。果たしてブルボンはマスターにバレンタインチョコを送ることができるのか、またどのようにチョコレートは決めるのか。
迷えるロボ(仮)のバレンタイン



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MihonoBourbon in Valentine

 2月14日、バレンタインデーが近づいてきました。トレセン学園に来る前は母と一緒に父にチョコレートなどをプレゼントしていました。ですがトレセン学園に父はいないため渡せません。マスターに渡せばいいのですが、マスターに渡すものが思いつきません。

 

 ミホノブルボンです。去年は無敗で皐月とダービーを制しましたが、菊花ではライスシャワーに負けたあと怪我をし、ジャパンカップと有馬記念を見送りましたが、ついこの間また走れるようになったウマ娘です。

 

 また走れるようになったのはマスターのお陰、温泉での回復や毎日のマッサージ、セグウェイの購入など色々してくれました。ですから私はマスターに感謝を伝えたいと思います。

 

 

 ほかの方々はどのようなものを贈るのでしょうか。情報収集が必要だと判断します。ここは教室なので色々な情報を集められるはずです。

 

 ライス……ライスに聞いてみます。具体的にどのようなものを贈るのかは聞いていません。個人的にも少し気になります。

 

「ライス、少し聞きたいことが」

「ブルボンさん……? どうしたの……?」

 ライスが不思議そうな顔で見てきます。

「マスターに贈り物をしたいのですが、ライスは何を贈るのですか?」

「え、えぇと……ライスが参考になるかはわからないけど……いい……かな?」

「ええ、構いません」

「ライスはね、チョコレートをあげるよ。沢山チョコレートを作るの。お兄様も嫌いな味食べたくないと思うし。だからたくさんの中から選んでもらったらいいかなって、えへへ…」

「なるほど、わかりました。確かに好きでないものを渡してしまうと相手が困惑するかもしれません。」

「あ……でもね、ライスのはちょっとむずかしいかも。ごめんね、ブルボンさん。」

「いえ、参考になりました。ありがとう、ライス。ですが少し質問があるのですが」

「…?」

「そのお兄様はチョコレートが好きなのですか?」

 

 困りました、ライスが顔を青くしてしまいました…

 

 …それはともかくとして、ライスはチョコレートを贈るみたいです。他にも情報収集は必要かもしれません。……タンホイザさんに聞いてみましょう。中等部の方に行かないといけませんが、行きがけに情報をキャッチできるかもしれません。

 

 

 結局情報は得られませんでした。仕方のないことです。運が絡みますから。

 それはそうと偶然本人から来てくれましたね。なるほど、運はここで使ったのですね。

 

「タンホイザさん。今大丈夫ですか?」

「ブルボンさんからなんて、珍しいねぇ。どうしたの?」

「実は……」

 

「なるほど、つまりトレーナーさんにあげる物で悩んでいる……と」

「そうなります。どうすればいいかと、助言が欲しいと思いまして」

「うーん……。言ったら終わりだけど……気持ちがこもってるだけで十分だと思うよ。相手が喜ぶものって考えないで、自分が貰って嬉しいものって考えてみるのもありかも!」

「わかりました、参考にします。ありがとうございました」

「頑張ってね! ……私もトレーナーさんにあげたほうがいいかなぁ……。あんなこと言ったけど、やっぱり相手が喜ぶものあげたいよねぇ…」

 

 

 問題が発生しました。あと10分で練習時間になります。ですが私はまだ制服、ロッカー室への移動時間はおよそ2分、着替えて練習場に行くまで9分。走れば間に合うと予想します……。

 

 急いでロッカー室へ行き、ジャージに着替えます。そのまま駆け足で練習場に向かうと、携帯電話を耳に当てているマスターを見つけました。誰かと話しているのかもしれません。少し様子を見てみることにしましょう。携帯電話は壊してしまうためロッカー室に置いてきました。

 

 おおよそ2分程でしょうか、マスターはそのまま携帯電話を耳に当てていました。…今話が終わったのでしょうか、携帯電話が耳から離れました。急いで向かいます。

 

「マスター、遅れてしまい申し訳ございません」

「ブルボン、遅かったじゃないか。いつもはこんなことないが、何かあったのか?」

 

 マスターに贈るものを考えてましたなどとは言いにくいため、心苦しいですが嘘をつきます。申し訳ございません。

 

「……ゴキブリがロッカー室に出没し、その対処に追われてました」

「……そうか。じゃあ今日もトレーニングを始める。先ずはアップを兼ねて軽く1000メートルから走っていこう。無理はしないように。再発したら困るからね」

「わかりました。では行ってきます」

 

 マスターは優しいです。私の我儘にどこまでも付き合ってくれます。日本ダービーを見たときの高揚感を忘れられなく、短距離に絞りきれなかった私をクラシックへの舞台へ導いてくれたのは、間違いなくマスターの存在があったからこそ。バレンタインというイベントで、マスターに感謝の気持ちを伝えたいです。ですがやはり何を送るべきかが決まらないことには進展はありません。じっくり、そして素早く決めなくては。

 

「お疲れさまブルボン。フォームが段々安定してきたと思う。次に時間をかけてもいいから5000メートルを走ってみよう。なるべく息を乱さないようにフォームを意識してこのコースを2.5周。それから休憩時間、大体20分くらい。マッサージとアイシングをして、それから筋トレに行こう」

「わかりました」

「今日は上半身を中心に。いつものスクワットから体幹、懸垂、ベンチプレスの4つ。スクワットはいつもより少なめに、先週より走っているからね。その代わり他は回数を増やしていこう」

「マスター、今日のスクワットとベンチプレスの重りは」

「スクワットは前回と同じ50キロ。ベンチプレスは引き続き100キロで行こう。回数はいつもどおりで。明日は筋トレの後にプール練習かな。水中歩行から始めて、そのあとクロール。食べすぎなんてことははないとは思うけど、暫く脂肪燃焼メニューにしようと思う。バレンタインが近いからチョコを食べる機会が多くなりそうだしね」

 

 

 

 筋トレが終わり、ロッカー室に戻ると携帯電話に通知が来ていました。マスターからでした。

 あのとき誰かと電話をしていたと思っていましたが、私のことを呼び出そうとしていたのですね。迷惑をかけてしまっていました。

 

 突然ロッカー室のドアが開きました。

 

「ちょわ! ブルボンさん! 貴女もトレーニング終わりですか?」

「はい、丁度終わったところです。バクシンオーさんもトレーニングが終わったところでしょうか」

「ええ! 学級委員長ですから! トレーニングはバクシンで終わらせてきました!」

 

 学級委員長とトレーニングの早さは関係がないと思われます。ですがバクシンオーさんらしいとも言えるかもしれません。

 着換えをしながらバレンタインについて話を振ってみます。

 

「実は少し……相談したいことがあります」

「何でしょう、学級委員長の私に答えられないものなんてありません! ささ、何でも質問しちゃってください!」

「わかりました……」

 

 

 頷きながら聞いてくれたため、話しやすかったです。ニシノフラワーさんとの円滑なコミュニケーションを取るためにこの聞きかたをマスターしたいと思います。

 

「なるほど、そういう事でしたか」

「はい。良かったら助言をと」

「ご安心ください! このサクラバクシンオー! 閃きました!」

「……!」

「トレーナーさんは何をもらっても嬉しいはずです! 自分に心残りがないようなプレゼントにしたらどうでしょう!」

 ステータス「びっくり」を確認。心残りがないプレゼント。

 

 寮に戻るとそのまま部屋に向かいます。ベッドに寝転がりながらマスターへ贈るプレゼントについて考えてみます。

 

 手作りチョコ、自分が貰って嬉しいもの、心残りがないようなプレゼント……

 

 

 次の日、私は図書室へと足を運びました。精密機械は私との相性がとても悪いため使わないようにします。そのためインターネットは使わないようにしています。『素早い情報はインターネット、正確な情報は紙』とよく言われています。

 

「なるほど、手作りチョコは幸福感が得られやすい。『お家で出来るカカオから作るチョコレート』焙煎したあとにコンチングで72時間砕き続ける……砂糖を入れてテンパリング、流し込んで冷やし固め装飾を施す……」

 探し求めていたものかもしれません。手作りのチョコで自分が貰って嬉しく、心残りがないプレゼント。すべてに該当します。

 

 2月11日、AM4時。カカオ豆を炒る。

 その後コンチングに移し、72時間のかき混ぜ。

 2月14日、AM5時。ココアバターとグラニュー糖を混ぜ込む。今回はビターチョコにします。その後テンパリングします。

 AM7時、型に流し込み、冷蔵庫で固める。

 PM1時、マスターに渡す。

 

 これで行きましょう。

 

 材料を買ってきましょう。カカオ豆とグラニュー糖とココアバター、コンチングにハートの型、絞り袋に装飾のための箱とリボン、敷き詰める糸状の紙、その紙の上に乗せるプラスチックトレイ、装飾用のチョコペンやカラースプレーなども買います。フライパンとスパチュラと温度計は寮の備え付けのものを使いましょう。

 

 

 

 2/11AM4時。予定の時間になりました。早速作っていきましょう。シャワーを浴び、清潔な服とエプロンを身につけ、三角巾を頭に巻きます。前髪が出ないように気をつけます。髪の毛の混入は必ず避けなければなりません。

 キッチンへ向かい、カカオ豆を炒ります。換気扇に手を伸ばしかけましたか、壊してしまう可能性があるため、窓を開けました。

 

 十分炒ったらコンチングでかき混ぜます。かき混ぜてるとチョコが溶けたような見た目になりますが、ここでやめては駄目だそうです。つぶつぶが残っているため舌触りが悪くなります。それをできるだけなくすため72時間砕き続けます。この工程が一番つらいらしいです。

 

 この工程は自室でやっているのですが、ニシノフラワーさんに許可は貰いました。この3日間はチョコレートの香りが漂うなかで生活しないといけないので申し訳ない気持ちでいっぱいです。窓は開けています。

 

 コンチングを回すこの3日間は何も口に出来ませんが、回し始める前に2リットルの水を準備したので、ちびちび飲みながら作業に移ろうと思います。ストローも用意しました。トイレにも行けないので、飲み過ぎは禁物です。水を飲んでいる場合、およそ3週間は生命活動の維持が可能です。ちなみに何も口にしなかった場合生きられる期間は3日です。

 

 2日目のお昼過ぎくらいでしょうか。ニシノフラワーさんが回すのを代わると言ってくれました。ですがこれは私のやるべきこと。そのためお断りさせていただきました。チョコレートの香りの中で生活して頂いてるため、これ以上の迷惑はかけられません。少し寂しそうな顔をしていましたが、なにか悪いことをしてしまったのかもしれません。後ほど謝っておきます。

 

 

 

 72時間の回す作業が終わり、今は2/14AM5時です。少し疲れましたが、いいものが作れるのではないかと思うと楽しみです。途中オグリさんが255回程来ましたが、その都度タマモさんが連れ帰ってました。

 

 

 場所を自室からキッチンに移します。そしてボウルにカカオを移し、ココアバターとグラニュー糖を混ぜます。グラニュー糖とカカオの比率は1:1です。その後質量を量ります。その1/10の質量のココアバターを混ぜます。このとき湯煎しながら行っているため火傷に注意しながら行います。

 

 次の工程はテンパリングです。日本語にすると温度調整という意味を持ちます。このテンパリングをすることで、チョコレートが艷やかになり、美味しいチョコレートになります。

 ボウルの中身を調理台に流し、スパチュラを使って四角く伸ばしていきます。その後その伸ばしたチョコレートを一箇所に戻す、これの繰り返しです。

 チョコレートの温度が56℃なので26℃温度を下げ、30℃にします。

 終わったらボウルに戻し、絞り袋に入れます。絞り袋の先を塞ぐのを忘れないように気をつけましょう。

 

 ハートの型を準備し、絞り袋の中のチョコレートを流し込んでいきます。どのチョコレートも同じ大きさになるよう慎重に行います。

 

 少し多かったので予備の型に入れます。ハート型のアルミホイルです。これはマスターではなくニシノフラワーさんとライスさん、バクシンオーさんとタンホイザさんにあげようと思います。ラッピングの袋もあります。この人数にこの量なら、3つずつでぴったりです。私が食べられないのは残念ですが、マスターへ贈るために作っているもの。私の分はないと判断します。

 

 

 箱の装飾をします。茶色の箱の蓋に、黄色の星の装飾を施していきます。大小様々な大きさの星をまんべんなく散らします。赤いリボンには黄色の線が入っているので自分で装飾はせず、このまま使います。

 

 

 時刻はAM7時を回ったところです。日も昇り、電気をつける必要がないほどに外は明るいです。普段よりも少し暖かい気がします。お散歩日和、とでも言うのでしょうか。ですが寒いです。散歩はもう少し暖かくなってからと判断。

 

 部屋に戻るとニシノフラワーさんは寝ていました。普段は起きているのですが少し珍しいです。チョコレートの香りはまだ漂っています。

 ベッドに座ると急に眠気がやってきました。あまり考えてませんでしたが、72+α時間はずっと作業をしていたのを思い出しました。ここから更に6時間ほど起き続けるのは困難と判断、仮眠を取ります。アラームをセット、ではおやすみなさい。

 

 

 

 

 

 おはようございます。ただいまAM11時30分です。チョコレートが固まったと思うので、型から外し、デコレーションしていきます。

 

 トレイにチョコレートを乗せ、チョコペンでハートを描き、装飾用のハートチョコをデコレーションします。他にもカラースプレーなどでもしていきます。

 あれこれ装飾していると1時間半はすぐに過ぎてしまいました。蓋の裏に「Happy Valentine!」と書き完成です。

 

 早速マスターに渡しに行きましょう。恐らくトレーナー室にいると予想します。

 

 

 

 

 マスターに喜んでいただけて何よりでした。私もマスターのチョコを頂いてしまいましたが、美味しくできていたため安心しました。

 あとはライスや他の方に渡しに行きましょう。装飾などは終わっているので探して渡すだけです。ライスは美浦寮にいるはずです。

 

 

「失礼します。ライスさんはいますか?」

 ここにいないとしたら学園でしょうか。学園は広いので探すのが困難かもしれません。その場合休み明けに渡しましょう。

「あれ? ブルボンさん、どうしたの?」

「ライス、いたのですね。これを渡しに来ました」

 昼に準備したチョコレートを渡します。

「え? ライスがもらっていいの? マスターさんは?」

「安心してください。マスターには渡しました。ライスの感想を聞きたいので食べてくれませんか?」

 少し強引かもしれません。

「えへへ、ありがとうブルボンさん! じゃあライス、今食べるね」

 自分が作ったものを人が食べる瞬間は緊張します。

「ブルボンさん!」

「はい、何でしょう」

「すっごく美味しいよ! ありがとう!」

 満面の笑みで言ってくれたので緊張も解けました。貴女にはいつでも笑顔でいてほしい。どうかこれからも私のヒーローでいてください。それとライス、溶けたチョコが口についていますよ。

 

 

 それからバクシンオーさんやタンホイザさん、ニシノフラワーさんにもチョコレートをあげていたら、夜になってしまいました。夕食とお風呂などを済ませたら早めに就寝しようと思います。5時間ほどの仮眠では足りなかったようです。

 

 ベッドに横になり寝息をたて始めるまで、マスターと一緒に食べたチョコレートの味が残っている気がしました。

 




ミホノブルボンの育成シナリオのバレンタインイベントでこんなかんじに悩んで作られたのかなーという想像を文字に書き起こしました。イベントで語られていることと自分の想像を上手いこと噛み合わせるのが楽しかったので、また小説を書けたらと思います。
最後になりましたが、読了頂きありがとうございました。

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