桜吹雪
雪と月明かりの下、私──いや、
辺りに充満する血の匂いに、あまり動かない
死体が一つ、袈裟斬りの傷跡を負って倒れている。
耳にずっと聞こえていたはずの
「……
『ああそうだ。安心しろよ。テメェが
嫌な匂いだと、ふと思った。
幾度となく嗅いだ匂い、だが今宵の匂いほど嫌なものはないだろう。
人を殺め、人を喰らい、遂には狂い果てた男。
殺しても、誰も文句は言わないだろう。
殺して……殺した……私、いや、俺が。
殺した? 本当に、殺したのか。
『……殺したんだ。お前が』
耳に聞こえた声に、心臓の鼓動が早まって行く。
頭の中に複数の感情が満ちて行く。
恐怖、歓喜、焦燥、興奮。
一体自分が何を考えて、どうしてこんなことになったのか。
わからないからこその感情だ。
私はただ、耳に聞こえる声に従っただけなのに。
『本当にそうか?』
「……だ、だって。私、は」
『そうだ、よくわかるぜ。
「ち、違う。
『何が』
「全部……私じゃ、ない」
片手に持っていた刀を、赤く染まった雪の中に落とし蹲る。
なんで、どうして、一体、こうなった。
わからない、わかるはずがない。
わかりたくもないのに。
『お客人だ。相手してやんな』
「……客」
そう言われて全ての思考を捨て、ポロポロと落ちる涙とともに訪れた男を見る。
名のある剣術使い、幾度となく殺してきた人たちと同じような人。
私は近くに落ちていた刀を拾い、指の欠けた足で立ち上がるとフラフラと真っ向から向く。
「……誰、ですか……?」
「……貴様に殺された男だ。我が兄を、貴様に殺された」
「あなたの、顔……その、
「音……? 俺のことがわかるならばなんでもいい。何故、何故、兄を殺したッ!!」
今の私にはイマイチ、何故起こっているのかわからなかった。
私は悪いことをしたのだろうか。
してない、していないはずだ。
だって、あの人は悪い人なのだから。
『倫理観に欠けた良い子ちゃん、人殺しは悪いことだよなぁ?』
「……だって、だって。殺したじゃないですか……! 人を、殺しを良しとして!
『サイコーに狂ってるよ、お前は。自分のことを棚に上げて、それで殺し悪いことだと語る、その口』
わかってる、私はおかしい。
遠の昔に、剣を極めた先に、そこに転がる男より先に狂ってしまった。
だって怖かった、自分の存在意義を問い詰めるのが。
だって見たくなかった、知っている先のことなんて。
だってわかってた、これが
「恨むなんて、御門違いです」
わかってる、私が一番おかしいんだって。
「
愛刀の雪削ぎを片手に、私は凍える道を走り出した。
男の構える刀が一定の道筋を沿うように振られて行く。
実にわかりやすく、一直線の太刀筋。
わかりやすく、容易い。
「……何故」
男は酷く困惑して、手に持った刀で私の腹を貫いていた。
近くに見える、
そりゃそうだろう、私だってなんでこんな行動を取ったか理解できないでいる。
だってそれは
「……殺す気は、なかったんですね」
「何故、自ら死を選んだ」
「……さぁ。もう、嫌だったんでしょうね」
「自分の意思、だろう」
「…………もう、わかんなくなっちゃいました」
今の言葉だって、今まで行ってきたことだって。
もはや自分の意思でやったことなのかどうか、わからなくなっていた。
自ら刀を抜いて倒れ行く私を、男はただ困惑した様子で抱きかかえる。
温もりか、これが人の温もり。
『ああ。随分と久しいものだな』
「……もう、思い出せませんから、ね」
「……寝るな。このようなところで寝てしまっては、死んでしまうぞ」
「それでいいんです……ああ……見えない。私は一体、どこを目指していたのでしょうか」
意識は消え行く、これが死ぬと言うことかと。
二度目の死を持ってようやく理解した。
前世なんてもなければ、こんな道に進んでいなかったのだろうか。
たくさんの人を殺した、意味もわからないまま次々と殺めた。
刀を振るい、それが正しいと信じ、なにもかも理解不能になるまで殺した。
だから私は、許されてはならない。
許されてはいけない。
どうか、次があるのならば、私に償いを。
ってなわけで、それが俺の死の直前の物語だ。
正しくは
転生して18年目、人を殺め過ぎた少女は自ら死を選んだわけだった。
まぁ、悪いのは本来の自分である俺なんだが。
ただ、いくつもの逸話を残し謎の死を遂げた少女は、英霊として昇華された。
歴史に名を残し、数々の偉業とともに後世の剣士たちならば絶対に知っているような、そんな英霊に。
その名を──
「……召喚に応じ参上しました……あ、あの。私、セイバーの雪桜と、申します」
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海賊時代のライダー
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平行世界のバーサーカー
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平行世界のアサシン
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アメリカのアーチャー