雪月の桜   作:御魚天国

4 / 9
超槍無双のランサー
浅葱色の槍無双


 金属音が庭に響く。

 俺の振るった槍が刀を弾いた音だ。

 目の前の少女は弾かれるたびに焦りを表情(かお)に出し、走ってくる。

 だがどれだけ走っていても、実にわかりやすい。

 

「沖田ちゃーん。単調な攻撃続きかい?」

「そんなわけ……ないですよっ!」

 

 不意打ちとも取れる下方からの攻撃を、槍で軽く弾いて間合いを取る。

 だがすぐさま隙をつくような連続攻撃を仕掛けてきた。

 俺は余裕をもって、槍で軽く捌くと逆手に持って突き飛ばす。

 腹に一撃、ちょっと加減が出来ていなかったようでうずくまってしまった。

 

「うわっ! だ、大丈夫か?」

「……ええ、まぁ。負けてしまいましたけど」

「俺に勝とうなんて、数百年早いってことだな」

 

 俺が手を差し出すと、うずくまる少女こと、沖田総司は俺の手を握って立ち上がる。

 あの沖田総司である、歴史としては男として明記されている、新撰組の一番隊隊長。

 それが彼女だ。

 今の俺にとっては、後輩と言ったところか。

 

「飯でも食いに行くか?」

「……いいですね。食べに行きましょう」

 

 俺はいわゆる転生者だ。

 前世は普通の日本人で、21世紀に生きる普通の男。

 だが一体何がどうしてどうなってか、気づけばこの世界に転生していた。

 そんでまぁ、生きること大体三十年ちょっと。

 気づけば何故か新撰組に入って、沖田ちゃんに稽古をつけているおっさんになっていた。

 

 あの沖田ちゃんである。

 本来の歴史の沖田総司ではなく、型月世界の少女の方の。

 

「やはり阿良神(あらがみ)さんに勝つのは難しいですね……隙がなさすぎます」

「剣先を見て行動に出るからなぁ、俺の場合」

 

 先程の稽古に関して話し合いながら、俺たちは蕎麦屋に向かっていた。

 昼は当然、俺の奢りである。

 

「私、強い剣士になりたいんです」

「剣士って言うと……前々から言ってた、雪桜って言う人みたいな?」

「はい! 歴史に名を残した女流剣士、なんかかっこよくないですか!?」

 

 雪桜、俺の全く知らない歴史の人物。

 この世界が型月世界なのは間違いないのだろうが、どうにも聞いたことのない人がいるのだ。

 多分本来の歴史とはかなり違うのだろう。

 だってこうして、新撰組そのものにかなり影響を与えてしまっているのだから。

 特に沖田ちゃんとか顕著だと思う。

 

「そんなに強いの? その……」

「雪桜さんです。そりゃもう、強いなんてもんじゃないらしいですよ。たった一人で(いくさ)を止めただとか、切った相手は数千人にも及ぶだとか。色々残ってるんですよ」

「つってもなぁ。江戸時代初期の人物だしなぁ……多少話が付け加えられてるんじゃないのかぁ?」

「……まぁ、その可能性はあるかもしれませんケド」

 

 そう言って文句有り気に少し早歩きになる。

 俺もその後を歩きながら追って行った──

 

 

 

「すいませーん! お蕎麦お代わりで!」

「……よく食うなぁ、沖田ちゃん」

「ええ、体が弱い分、こうしてたくさん食べて体力をつけないといけないので!」

 

 やっぱかなり違う気がする。

 英霊になる前の沖田ちゃんってもう少し暗いイメージがあった。

 だが目の前で蕎麦とおにぎりを頬張る少女を見ていると、どうにも違う気がしてしまう。

 まるでどこぞの青い王様だ。

 

「俺の奢りだって知ってるよね?」

「はい、知ってますよ」

「……適度ってもん考えようよ」

「十一番隊隊長さんの奢りですから」

 

 十一番隊、本来十番隊までしかない新撰組に、特別に作られた隊。

 それが十一番隊、俺の率いている隊だ。

 この辺とかも歴史に影響を与えている可能性は大いにあるだろう。

 歴史の教科書に載ってしまうんだろうなぁ、名前だけ。

 

「阿良神さん、次の任務……かなりキツイって聞いてます。少数襲撃、なんですよね」

「まぁな……つっても、沖田ちゃんも次の任務参加だろ?」

「そりゃまぁ、そうですけど」

「銃とか気をつけろよ? 最近は海の向こうから色んな武器が入ってきてるからな」

「銃ですか。確か火薬を使った飛び道具だとか……阿良神さんも気をつけてくださいよ!」

 

 


 

 

 あれから数週間後、任務の日。

 いや、今はもう任務の最中だ。

 建物の中、火の手が上がり、恐怖と困惑と怒りが入り混じったような叫び声が、あっちこっちから響いている。

 そんな中で俺は、俺は今、死にかけていた。

 

「……あー、クソ。二度目じゃねぇか、死ぬの……」

 

 槍を杖代わりになんとか立っているが、腹を数発貫かれたんじゃ死ぬのも時間の問題だろう。

 壁の向こうから、音もなく不意打ちってのは流石に捌き辛い。

 しかもそれが超近距離で、数十人と来たら尚更だ。

 速攻首落としてやったが、それでも、かなり危ない。

 

「阿良神さんッ!!」

 

 後ろから聞こえた声を聞いて、俺は思わず座り込む。

 後を任せられる人が来たことに、安心してしまったからだろうか。

 

「よぉ、沖田ちゃん……」

「ち、血が! 大丈夫なんですか!?」

「ははっ……流石に、辛いわ」

 

 深刻なダメージ、と言ったところか。

 今の技術で助かる見込みは、かなり少ないほうかと思われる。

 と言うわけで、俺に残された選択肢は死を待つのみらしい。

 

「……あー、クソ……死ぬのは、やだなぁ……」

「な、何バカなこと言ってるんですか! 帰りますよ! ほら、ちゃんと立ってください!」

 

 沖田ちゃんは俺の手を自身の肩に乗せ、支えにしてから立ち上がろうとする。

 だが思った以上に俺が重いのだろう、上手く動かせないでいた。

 そんな沖田ちゃんを、俺は突き飛ばす。

 

「な、何するんですか」

「任務だろ。行けよ」

「で、でも。阿良神さんは……!」

「沖田ちゃん。人は死ぬものさ、いつか絶対にな。いくら最強と呼ばれていても、死ぬときは死ぬもんだ」

 

 槍一本で数々の武勇を立ててきたが、終わりだと考えるとなんか悲しくなってくる。

 だがここで終わらすわけにはいかない。

 せめて、一つでもなんかやって死ななくちゃな。

 

「──ふぅ。よーしっ!」

 

 痛む体を無理やり叩き起こし、槍を片手に立ち上がる。

 動くたびに激痛が走るが、沖田ちゃんの驚いた顔を見ると、面白くて大して気にもならなかった。

 

「なに、してるんですか」

「ほら、行くぞ。この阿良神、十兵衛(じゅうべえ)が……任務までの道、開いてやるって言ってんだ、立て……」

「阿良神さん……?」

「それと、だな……副長や、(はじめ)ちゃんに、よろしく伝えといてくれよな」

「まっ──」

 

 俺は燃え盛る建物の中を走り出す。

 前に見えるのは道を塞ぐ大量の敵陣。

 この狭い建物の中によく入ったとは思うが、まぁ要は気合なんだろう。

 なら俺も、気合で何とかしてやるさ。

 

「全員、その首落としてやらああああああああッ!!!!」

 

 自身を奮い立たせる叫び声をあげ、俺は敵陣のど真ん中に突っ込んでいった。

 

 

 

 後の死因は結局のところ不明。

 なんせ死体が見つかっていないのだから特定のしようがない。

 まぁ斬り殺されたか、燃え死んだかのどっちなのは確実である。

 

 そんで俺、結局のところ新撰組の一員として歴史に名を残すこととなった。

 しかも何故か、一時間とって習うような超歴史的人物に。

 沖田総司に並んで、よく題材にされるような人物にだ。

 

 そんな人物が型月世界で、ただ歴史に名を残すだけで終わるわけがない。

 まぁ、ご察しの通り。

 

「よぉ! クラスランサー、阿良神 十兵衛。召喚に応じ参上したぜ。見てくれはただのおっさんだが……まぁ、それなりに期待しててくれよ」




おっさんの姿は無精髭に長い髪を後ろに束ねた感じの人。
結構つおい。

キャスターの次

  • ????のアルターエゴ
  • 海賊時代のライダー
  • 平行世界のバーサーカー
  • 平行世界のアサシン
  • アメリカのアーチャー
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。