雪月の桜   作:御魚天国

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ランサー

 空に浮かぶ三つの月、あまりにも奇怪で少し面白い。

 屋根の上に登って見える街の景色も、型月世界だとあり得てしまうんじゃないかと思ってしまう。

 ここが何か、言われずともわかる。

 俺は特異点に召喚されたのだと。

 特異点で行われている、()()()()に。

 

「……嬢ちゃん。セイバーが召喚された」

「ええ。これで七騎中四騎が揃ったことになる……でも、セイバーと戦っているのは誰かしら」

 

 この世界が例え特異点だとしても、今は知らぬ存ぜぬを通そうと思う。

 なんせ俺を召喚したマスターは、汎人類史を救うマスターではなく、ただ一人の、願いを求めて戦う少女(マスター)なのだから。

 

「セイバー、キャスター、バーサーカー。そして(ランサー)か」

「そうね。それよりも、あのセイバーと戦っているのは……」

 

 にしてもだ。

 俺は一応前世でFateやFGOをプレイ済み。

 だと言うのに下の裏路地に見える剣士(セイバー)の顔を見たことがない。

 そしてその剣士(セイバー)と戦っているのは、なんとこれが、沖田ちゃんである。

 生前の知り合い、と言うか訓練相手の。

 

「……聞いてる?」

「聞いてるよ。セイバーと戦っているのは、もう一人のセイバーだな」

「そう……え!? セイバー二人いるの!?」

 

 隣に立つ少女、否マスターは少し間を置いて、驚いた顔でこっちを見る。

 そんな顔で見られても、とは思う。

 今はちょっと、答え難いし。

 

「な、なんで!? 聞いてないわ、そんなこと! ランサー!」

「わかってる。ちょっと担ぐぞ」

「担ぐって、へ──?」

 

 俺はマスターを肩に担ぐと、屋根を踏み込んで飛び上がる。

 

「ちょぉっ──!?」

 

 マスターは変な声を出した気がするが、聞いてなかったことにしておく。

 その上で、何か言っているようだが、風の音で何一つ聞こえない。

 かと思ったら何やら魔術を使って、風の中で音を聞こえるようにした。

 

「ちょっと! 何してんのよ!」

「そりゃお前さん……向こう向かってんだろ」

「だからなんでよ! 早すぎでしょ!」

「いいんだよ。片方は真名がわかってるからな」

 

 もう片方は全く知らんけど。

 刀を持った銀髪和風剣士、聞いたことすらない。

 あんな人が実在していたするならば、例え実装されていなくても聞いたことぐらいはあるはずなのに。

 そこはオタクの(さが)と言うべきか。

 

 もしかして沖田ちゃんの言ってた雪桜、ってやつだったりしてな。

 容姿についての情報が何もないから何とも言えないが。

 

「それに気になることもあるしな」

「っ──! わかったわよ! 勝てるならなんでもいいわ!」

「了解さん!」

 

 飛び跳ねてあっちこっちへと、そして二人の戦闘をちょうど見下ろせる屋根に止まる。

 多分既に気づかれているのだろうが、それを込みで二人は戦闘を続けていた。

 恐ろしく速い剣術の撃ち合い。

 どうやら俺が生きていた頃よりも後の沖田ちゃんらしい、かなり剣筋が変化している。

 

 だがもっと恐ろしいのは銀髪の剣士の方だ。

 異様、とも言えるような柔らかな太刀筋。

 まるで川の流れのようで、それでいながら木を切るような力強さ。

 しかもだ、一寸違わぬ正確さ。

 一体どうすればあんな太刀筋が生まれるのか、とても恐ろしい。

 

「……なによ、あれ。アレが、英霊同士の戦いだって言うの……?」

 

 初めて見る英霊の衝突に俺のマスターは少しばかり後退りしていた。

 流石に近すぎたか、気圧されているようだ。

 まぁ、まだ16歳らしいからな、うちのマスターは。

 いくら魔術師と言えど、そうなるわな。

 

「しっかしまぁ……ちょっとワクワクしてきたな」

「なにによ……」

「あんな奴らと戦えることにだよ」

「……逸話通りね。阿良神 十兵衛」

「期待通りか?」

「戦いを見てから答えてあげるわ。私も二人セイバーがいることが気になってきたし、割り込んでしまいなさい!」

「おう!」

 

 マスターも俺との受け答えで本調子を取り戻したようで、真っ直ぐに指示を出す。

 初々しい指示だが、まぁ何も言えないよりは遥かにマシと言ったところである。

 兎にも角にも、俺は命令を聞く。

 なんせ武力に関しては一応信頼されているようだから。

 

「沖田ああああああああッ!!!!」

 

 早速真名バラして行くスタイルに、二人は顔を上げる。

 気づいていたのは気配だけのようで、見上げた沖田ちゃんは驚きすぎてすごい顔をしていた。

 もう一人もまあまあ驚いている感じてはあったが、感情表現がイマイチ乏しくわかりにくい。

 どっちかと言うとオロオロしてる。

 

「死に晒せえええッ!!」

 

 二人の合間に割って入って槍を振り下ろす。

 と、同時に振り回して二人から飛んできた斬撃を受け止める。

 これまた二人とも結構重いが、今の俺にとってはそうキツイものではない。

 軽く弾くと、二度三度沖田ちゃんの刀を弾いて、懐をガラ空きにすると蹴りを入れる。

 

 その直後、後ろから銀髪ちゃんが壁を蹴って、上からこちらに飛んできた。

 振り下ろした刀を軽く槍で受け止めて、そのまま流れるように受け流すと、槍の刃が付いていない方で叩きつける。

 が、逆手に持った鞘で簡単に受け止められた。

 

 そこで俺は一旦距離を取って離れる。

 しかしそこを狙ったかのように、沖田ちゃんが飛んできた。

 

「待って、沖田さん!」

 

 俺の槍が入る直前、そして沖田ちゃんの刀が俺の顔面に入る直前。

 そして背後から振り下ろされた刀を俺が受け止めたところで、俺を含めた三人は止まった。

 

「……沖田ちゃん、久しぶりだなぁ」

「お久しぶりです。阿良神さん」

 

 そんな挨拶を交わした直後、沖田の後ろから一人の少年が現れる。

 しかしそれは少年と言うにはあまりにも、歪過ぎた。

 何度も見てきた顔だが、こうはっきりと、目の前で見てみるとわかるものだ。

 いくつもの修羅場を潜り抜けている、その顔、藤丸 立香である。

 

「お、沖田さん。急に飛び出すから何事かと……!」

「人斬りがいたんで、それを止めようかと思いまして」

 

 そう言って沖田ちゃんは銀髪ちゃんを指差す。

 既に特異点のことは知っていたが、もうレイシフトしているとは。

 解決するまでそう時間はかからなそうだ。

 

「ひぇっ……あ、あの、わ、私、襲われそうにな、なって。そ、そそ、それで、仕方なくっ……」

 

 銀髪ちゃんは戦闘中の雰囲気とは打って変わって、オドオドした様子になった。

 今にも泣きそうで、うずくまりそうになっている。

 大丈夫だろうか。

 

「おいおい沖田ちゃん、確認も取らずに飛び出すのはよくないよなぁ?」

「阿良神さんは黙っててください!」

「阿良神……? もしかして、阿良神って、あの阿良神 十兵衛?」

「おう。あの阿良神だ」

 

 どうやらこの藤丸は、俺の生きていた世界線の藤丸らしい。

 つまりあの後の時代で、人理焼却は行われちゃったと。

 少しばかり考えていると、上から喚き声が聞こえた。

 と思えば、俺のマスターが魔術を使って降りてくる。

 

「ちょ、ちょっとランサー。なにしてるのよ」

「なにって、休戦だが」

「なんでよ」

「さあ」

 

 なんでって言われても答え難い、流れで休戦になったのだから。

 そんな適当な返事をしてしまったせいか、俺のマスターは怒って小言を言いだす。

 だがそんな中で、真名を知らないセイバーが手をすっと上げる。

 

「あ、あの。は、はな、したい……こ、ことがぁ……」

 

 周囲の雰囲気に気圧されているのか、それとも俺のマスターの怒っている姿に怯えているのか。

 さっきよりも少し小さめに見えた少女が何か言おうとする。

 だがそんな時、後ろから一人の男が姿を現した。

 妙に色素が薄い男だった。

 

『おい、も少しちゃんとしろよなぁ。雪桜』

「ご、ごめんなさい……幽霊さん……」

「……雪桜?」

 

 沖田ちゃんが反応示す。

 当たり前だ、と言うかもしかして、俺の予想通りなのだろうか。

 彼女の、真名は──

 

『取り敢えずだ、藤丸。テメェは俺たちのマスターだ。そして俺たちはセイバー、真名を雪桜、って言うんだ。よろしくな』

キャスターの次

  • ????のアルターエゴ
  • 海賊時代のライダー
  • 平行世界のバーサーカー
  • 平行世界のアサシン
  • アメリカのアーチャー
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