魔術師の弟子
私は魔術師、ただの魔術師。
花を咲かせるのが得意なただの魔術師である。
転生したのだから、もっとこう、チートみたいなのあるかな、と思ってたけど何もなかった。
いや、チートとは言い辛いが、願望は叶っている。
型月世界に行く、と言う願望は。
「うぇ〜……なんでここ、こんなに広いのぉ……」
ただまぁ、アーサー王伝説真っ只中のブリテンなのは予想外だけど。
しかも
気づけば弟子になってるし。
まぁ、魔術を教えてもらって使うことは楽しいから別にいいけどさ。
と、そんなことより現状だ。
今はキャメロットの中で絶賛迷子中である。
あっちこっち行ってるのだが、どこ行っても同じところにたどり着く。
半泣きになって彷徨うこと数時間。
未だ出口の『で』の『゛』すら見えない。
「マーリンせんせー、どこですかぁっー……!」
そう遠くへ声を上げるが、虚しくただ反響して消えて行く。
当然、反応が返ってくるわけもなく。
魔術でも使えればすぐ出れるのだろう。
だが私は本当にただ、花を咲かせるのが得意なだけの魔術師なのだ。
見習い以下の私が索敵などできるはずがない。
「付いて来なきゃよかった……」
そんなこと呟いてベランダに出る。
興味本位でマーリンに付いて行くんじゃなかったなぁ。
と言うか、こんなに広いんだったら言っといて欲しかった。
「帰りたーい!」
私は両手を振り上げそう叫んだ後、はぁ、とため息をついて項垂れる。
どうやって帰ろうか、模索しようとしたときのことだった。
突然後ろから声をかけられ背筋がピーンッと伸びる。
硬直したまま顔を見ることができず、背を向けたまま会話が進行して行く。
「そこの貴方」
「は、はい! なんでしょうか!」
「……見たことのない姿ですね。名前を告げなさい」
「ま、マリアス、と申します!」
「マリアス……? もしかして貴方、マーリンの……」
「え?」
そう言われたことで漸く緊張が解け、私は後ろを向いた。
そこにいたのは見たことのある──と言うか、型月に手を出したことがなくとも、みんな知っているであろうFateの顔と言える存在。
アルトリア・ペンドラゴン、又の名をアーサー、あのアーサー王が立っていた。
この世界では確か男装していて王様をやっているはず。
モルガンにふた◯りにされたり、聖剣からビーム出したり色々忙しい人でもある。
「王様!? ど、どうしてこのようなところに……」
「少し休憩です。そう言う貴方こそ、何故ここに?」
「えーっと……まぁ、その。お恥ずかしい話なんですが、迷いまして」
「……なるほど、そうでしたか。キャメロットは少しばかり広いので、確かに迷いやすいかもしれませんね」
少しばかり、ではないだろう。
明らかにめちゃくちゃ広い。
逆になんで迷わないんだろ、とは思う。
まぁ長いこといたら慣れるもんなのだろうか。
「隣、いいですか?」
「はい!」
王様は歩きながら私の隣に立って、ベランダから国を見下ろす。
何処か達観した様子のその目には同じ女性でありながら見惚れてしまう。
美しくも何処か悲しげで、苦しげで。
きっと私程度じゃ側にいてあげられることすらできないのだろうと、直感で悟ってしまった。
「……あ、あの」
「なんでしょうか?」
声に出してみたものの、言いたい言葉が見つからない。
何度も見てきた人、と言うかキャラのはずなのに。
こうして実際の人間として出会うと、言葉が喉に詰まって出なくなる。
「マーリン先生。見ませんでしたか?」
何で私、王様にマーリンの居場所聞いてるんだろう。
かなり失礼な気がするが、口から出てしまった言葉はもう引っ込めない。
どうしようと悩んでいたところ、王様は答えてくれる。
「先程の会議に参加していましたから……今頃街中で遊んでいるんじゃないでしょうか」
「……うぅ、やっぱりですか」
「……私からも、一つよろしいでしょうか?」
「え、あ、はい。大丈夫です!」
「マーリンのことを、尊敬していますか?」
そう言って私の目を見る。
何故そんなことを聞くのか、って疑問で頭がいっぱいになるが、少し考えてみた。
尊敬、尊敬か。
転生前はろくでなし、ってイメージくらいしかなかった。
転生後もそれはあまり変わらないけど──
「それなりに、尊敬はしてます。私の先生として、育ての親として。あの人が私のことを拾ってくれなければ、今の私はここにはいませんから」
「……そう、ですか」
そう言って俯き気味に少し悲しそうな顔をする。
どうしてそんな顔をしているのか、気になってしまうが言葉が出ない。
なんて答えようか迷っている間に先に、王様が口を開いた。
「もし。もし貴方の親を、私が知っていると言ったら、どうしますか?」
「──え?」
「…………もし、仮に、知っているするならば、聞きたいですか?」
何故、一体、どう言う──こと。
何を言っているのか今、一瞬全く理解ができなかった。
今は王様は、私の親のことを知っていると言った。
それは聞き間違えではない。
じゃあどうして知っているのか、と言う疑問になる。
アーサー王伝説って色々ややこしいから、マーリンの弟子である時点でそこに与することになる。
つまり私は、アーサー王の知っている範囲での、誰かの娘。
そして彼女の周囲の人間と言えば円卓の騎士、もしくは何処かの魔女さんになる。
「……何故、知っているのですか?」
「聞いてしまったから、ですね」
「…………私は、親のことを知ろうとは思いません。知る必要もありません。今の私にとっての親は、マーリン先生ですから」
多分、これが正解のはず。
今の私にとって重要なのは『生きていること』であ『親を知ること』ではないからだ。
私の答えに、王様は国を真っ直ぐ見て頷く。
「そうですか。ならばその答えは私の口からは言いません。いつか、貴方の声で、貴方の手で、知ってください」
そう言うと歩いて何処かに去って行ってしまった。
執務の方に戻ったのだろうか。
私もいつかマーリンに変わって、あの人の隣に立てるようになるのだろうか。
今はわからないけど、いつかなれるといいな。
こんな結果、知らなかった。
知りたくなかった。
マーリンがアヴァロンに幽閉されてから、カムランの戦いが始まる。
いや、もう既に戦いは起きて、そして
「なんで、なんで──私、王様を、生かしてっ……!」
歴史が捻じ曲がる瞬間、ってのはなんとも混乱するものだなと。
訳の分からなくなった頭の中で思い浮かべる。
カムランの戦い、それはキャメロットの終焉。
アーサー王伝説の最期の戦い。
アーサー王は円卓の騎士であり
どちらかと言うと相討ちになるのだが、私は、その結果を、変えてしまった。
本来相討ちになるはずの戦いを止めてしまい、二人を魔術で捕縛した上で転移で引き離してしまう。
先を知っていたから、未来を知っているからこそ、多分やってしまった。
まぁ、多分、その代償なんだろう。
「……痛いなぁ」
腹に刺さった剣を抜く力すらないまま、私は死体で溢れた道を行く。
杖をついてなんとかギリギリ立ち続ける。
治癒系の魔術とか使えればいいんだろうけど、残念ながら私はできない。
まぁできたところで、致命傷の傷はどう頑張っても治せはしない。
「……お家に、帰らなきゃ」
時間だ。
いつもの、時間だ。
ああ、いや、でも。
そうだ、練習の時間だけど、帰っても、あの人はいない。
「……マーリン、せんせい」
目の前が霞み始める。
周囲から聞こえるのは泣き叫ぶ声や、怒りに絶叫、さまざまな声が重なっていた。
このまま、ああ、私は、死ぬんだな。
そう考えた時、一輪の花びらが私の前に落ちる。
いや、それだけではない、私を包むように花が咲き誇る。
「……なんだ、そこに、いるんですね」
あの人の、お得意の魔術だ。
温かいわけでも、思いを感じるわけでもないけど。
それでも、私の最も好きな魔術だ。
眠るように瞼が落ちる。
意識も深く、どんどん下へと落ちて行く。
それが私の、死んだ時のお話だ。
後の世にアーサー王伝説の一幕として伝えられる、マリアスと呼ばれた少女のお話。
これ意外にも色々やっているのだが、それはまた別の機会に。
この後、アーサー王とモードレッドは別の場所でもう一度衝突。
だが実際の最期とは違い、和解をしてお互い死んでいったとの話。
それが真実がどうかは分からないが、もし仮に、本当の話ならば私の死は意味あるものだったのだろう。
私、マリアスは伝説の一幕に名を残した。
マーリンに次ぐ魔術師として。
そうなれば当然、型月世界にいる以上こんなことか起きてしまう。
「はい! クラスキャスター。真名をマリアスと申します! マーリン先生から習った魔術で精一杯頑張ります!」
キャスターの次
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????のアルターエゴ
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海賊時代のライダー
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平行世界のバーサーカー
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平行世界のアサシン
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アメリカのアーチャー