ある一人の話に一つ足し   作:ネコ削ぎ

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何を書いているんだろうか。そう思いながら書いていますが、とりあえず自分だけでも納得しようかなと思うことにします。
よろしければどうぞ。




 放課後、織斑一夏は赤色少女の指導を受けるべく、アリーナの一つでISを展開していた。隣には同じくISを展開したセシリアと箒がいた。

 二人とも一夏の指導をしている手前、赤色少女の指導がどのようなものかが気になるらしい。

 赤色少女はIS学園指定のジャージ姿で立っていた。

 ケンゴウ・アカガネーナ。

 織斑千冬を超える強者というが、一夏の目の前にいるのはIS学園内では他の外国人生徒の一人にしか見えない。強いと思わせるような独特な感覚はなかった。

 それは箒も思っているのか、あからさまに胡散臭そうなものを見る目をしている。逆にセシリアは目を輝かせている。というか、さきほどサインをもらっていた。曰く、強い女性を象徴する存在だからだそうだ。

「さて、織斑一夏少年くん。まずは君のことをラストサムライと呼ぶが構いませんよね」

 初手から何を言うかと身構えていた一夏の気を削ぐ一撃。肩の力が抜けそうになったが、ちょっとした挨拶なんだろうと受け流す。

「おう任せる」

 とにかく話を進めたかった。隣の箒から不機嫌な気配を感じてしまったのだ。

「ラストサムライ。君は太刀筋の違和感を解消したい」

「ああ、どうしてもしっくり来ないんだ。セシリアと戦った時には感じなかったんだけど」

「練習していくうちに変な感じに思ったわけだね」

「そんな感じかな。まだISに慣れていないだけって二人は言うんだけど、剣を振るうだけならISの慣れは関係ないと思うんだ」

 ためしに雪片弐型を振るってみる。風切り音が耳に入り込んでくる中で感じる違和感も健在。

「ふむふむ。確かに太刀筋に歪さがある」

 やはり分かる人には分かるのかと一夏は希望を見出す。さすが千冬姉だ頼りになるぜ。そして彼は隣の幼馴染に目を向けないようにした。

「一夏。キサマ何かよからぬことを考えなかったか?」

「いや、別に」

 箒がブレードを構えた気が一夏は気のせいと思うことにした。

 ケンゴウは不穏なやり取りが気にならないのか一夏を凝視したまま竹刀を構えだす。まずは剣の振り方を見せて何かを掴ませようというのか。

「ラストサムライ。この振りを見せようか」

 そういうとケンゴウは竹刀を両手でしっかりと構えた。彼のみならず両隣にいた二人も空気が変わるのを感じ取った。

 ここまで変わるのかと一夏は生唾を飲み込み、その一挙一動を見逃すまいと目を見開く。それは箒も同じだ。姉である千冬や、父である篠ノ之柳韻。彼らにとっては目指す場所。その場所よりも上に立っている少女の剣が気にならないわけがない。

「スッとして」

 と同時に別の意味で気になる言葉が耳を擽る。彼女の構える竹刀が天高く持ち上げられた。

「ドン」

 一歩踏み込んで振り下ろされる竹刀。不思議と風切り音しか聞こえてこなかった。

 ゆっくりと構えを解いたケンゴウはドヤ顔を見せる。

「これぞ剣の神髄なり」

 誰も何も言えなかった。

「さて、今のを冗談として」

 空気が悪い意味で変わったことに気づいていないのかケンゴウは改めて、何度か竹刀を振るう。さきほどの振り方と違って不格好な振り方になっていた。型と呼べもしない綺麗さの欠片もない振り方だった。腕力だけで無理矢理振るっているだけだ。

 暫く剣を振るっていなかったブランクのある一夏であっても悪い振り方だ。

「そしてこれは悪い振り方です」

「ああ、まさしく素人のそれだな」

 箒が当たり前だなと言う。

「あまり剣道は分かりませんが、確かに先ほどの振り方に比べて綺麗ではありませんわ」

 セシリアが頬に手を当てて考える。どこかで見たような振り方だった。それもさっき見たような振り方だ。

 何度も何度も同じ機械のように同じ振り方をするケンゴウ。ブレることもなく行われる素振りはいつまでも続く。いつまでもいつまでもいつまでも。

 いつまでもケンゴウは続ける。

 それを黙って見る一夏。

 いつまで続くのかと一夏が思った時、ケンゴウと視線が重なった。

「気が付かないのかなぁ、ラストサムライ」

 素振りが続く。まったく動作に変化しない。

「鏡を見ないんですか」

 変わらなかった素振りが変わる。

「箒の動き方か」

 一夏がここ最近何度も見ている振り方だ。

「他人のは分かるよ。人のは全体として見れますからね」

 また変わる。

「今度は千冬姉のじゃないか」

 昔よく見た姿だ。一夏がいつまでも憧れる振り方だ。

「そこまで分かれば、これもわかるんじゃあないですかね」

 また腕だけの振り方に変わる。腕だけの振り方だった。

「これが君の振り方だよ」

 振り終えたケンゴウが一夏に竹刀を手渡してきた。

 

 

 

 

 ケンゴウの指導が始まり、まず一夏に求められたのは竹刀を振るうことだった。

 ISは一旦解除して生身の状態になって竹刀を振るう。いつも通りに振るってほしいと言われたので、その通りに振るってみると特に違和感を感じることもなかった。箒との訓練でも変わらずにやってきた一連の動作はISを纏っている時に比べてよく馴染んでいた。

 だからこそ一夏は疑問に思っている。どうしてISだと違って感じるのか。竹刀とIS専用ブレードでは形も重さも違うには違うが、同じ剣であることには変わりないというのに。

「ふふん。私が鍛えたのだぞ。まだまだ精進は必要だが基本はできている。そう、私との訓練の成果だ」

 箒が胸を張るが、確かに彼からしてみれば錆びついてしまった腕をここまで研磨してくれたのは彼女だから素直に感謝できる。これがあったからセシリア戦であそこまで動けたようなものだ。

「十分です。十分に振るうことができてますね。しっかりとした踏み込みによる体重移動。やはり武器は重心の移動が大事なんですよ。身体全体を意識したムーブがです」

 そして次にISを展開して同じように竹刀を振るうように指示を受けた。

「うーん。何か違うんだよな」

 やはり違和感がある、と一夏は首を傾げる。さきほどまであったかっちりとはまった充実感がないのだ。

「分かりましたわ」

「ああ私にも分かるぞ」

 セシリアと箒が原因を突き止めたのか揃って声をあげる。

「本当か?」

「簡単な話だ。ISを展開していることが原因だ」

「箒さん。全然答えになっていませんわ」

「さすがに分からないぞ」

「うるさい。なんでこんな簡単なことが分からないのだ」

「はぁ。一夏さん、ISを展開するとパワーアシストによって普通なら持てないような大きさの武器を軽々持てるようになりますし、簡単に振り回すことができますよね」

「重さはほとんど感じないな」

「そしてISでの戦闘は大体の場合で空中戦になりますわ。地上で足を着いたまま戦うことの方が珍しいくらいに」

「……そういえば浮きっぱなしだな。歩くも走るもない。剣を振るう時に踏ん張るとか気にしてなかった」

 地に足をつけて、先ほどと同じように踏み込みながら竹刀を振るう。装甲に覆われた足を動かして何度も何度も。とにかく納得できるまで振るう。

「段々とよくなってますよ。そのまま極みの世界まで突き進んで武士道の全てを会得するのです。そう死ぬことと見つけて死ぬしかないじゃない」

「一夏ぁ!! 極めるんじゃない! そっちの世界を進むんじゃない!」

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