ショウちゃん闇堕ちルート   作:aruseus

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追放

 

 

 

 

「コトブキムラからお前を追放する」

 

 ギンガ団団長デンボクのその一言で、私は即座に退団させられた。シマボシに連れられて門へ向かう途中、村人たちから投げかけられた視線は冷たかった。

 

 セキとカイはデンボクをなだめようとしていたから、コンゴウ団かシンジュ団は私を受け入れてくれるかと思っていたがそれも拒否された。黒曜の原野で生活の当てはなく、このまま野垂れ死にを待つほかない。

 

(命を張って調査した結果が、これですか)

 

 ギンガ団のために調査を進め、ヒスイの人々のためにキングたちを鎮め、村人の頼みも聞いた。時空の裂け目から落ちてきた私が怪しいというのは分かるが、こんな仕打ちがあるだろうか。

 

 冷たい木枯らしが私の頬をかすめ、野の向こうへと通り過ぎていったそのとき、ぷつりと私の中で何かが切れた。

 

「もういっそ皆死んじゃえばいいのに」

 

「えっ、今なんて言いました? ショウさん」

 

 振り返ると、そこにいたのはウォロだった。イチョウ商会のメンバーで、私が行く先々で出会っては何かしらモノを恵んでくれるいい人である。私が驚いていると、ウォロは少し悲しげな顔をして口を開いた。

 

「聞きましたよ。コトブキムラから追放されたと。デンボク団長も人を見る目がない。ジブンならあなたみたいな面白い人は絶対に手放さないのですが」

 

「そうですか。では私をイチョウ商会で雇ってくれますか? どうせ無理だって言うんですよね」

 

 私がそう言うと、なぜかウォロは眼を光らせた。

 

「はい。イチョウ商会はギンガ団といざこざを起こしたくないでしょうし。……ですが、ジブンが個人的に取引をするのはいいと思いませんか?」

 

「取引?」

 

「……実はジブン、アルセウスというポケモンに会ってみたいのです」

 

「アルセウス?」

 

「知りませんか? 宇宙の始まり、無の中にいた最初のポケモン―神のような存在です。実はジブン、それなりにアルセウスの存在を裏付ける証拠をもっておりまして……アルセウスに会い、あわよくば従えてみたい!」

 

「従えるとどうなるんですか?」

 

「わかりませんが、おそらく新しい世界が作れるかもしれません。ただ、それをやると今の世界は消えてなくなっちゃうと思いますが……面白そうじゃないですか?」

 

 それを聞いて、私の心に光が差した。初めて向かったポケモン調査の時と似た感覚。ぞわぞわとするような好奇心、そしてこの最悪な世界を一気に消せるかもしれない、という黒い期待があふれる。

 

「神に会う……面白そうですね。本当にそんなことできるんですか?」

 

 ウォロは少し面食らったようだったが、やがてその顔に喜色を浮かべた。

 

「わかってくれますか! ええ、できるはずです。そのための用意もある……協力してくれるんですか?」

 

「はい。飢え死にさせないなら何でも。あなたの目的に邪魔な人がいたら消してあげますよ。特にコトブキムラの人たちは」

 

 私がそう答えると、ウォロはうっすらと微笑を浮かべた。

 

「なるほど、そういうことですか。ジブンはあなたが協力してくれれば、他に何をやっていても何も言いませんが……とにかく、ジブンの知識とショウさんの才能があれば必ずや神―アルセウスの元にたどり着けます!」

 

 ウォロはそう言うと、右手を差し出した。

 

「わかりました、ウォロさん。私は手段を択ばず、あなたがアルセウスに会う手助けをする。あなたは私の生活を保証する。それでいいですか」

 

「はい。契約成立ですね」

 

 私とウォロは固い握手をかわした。

 

 

 

 

 

 

「とりあえずベースキャンプを作っておきました。食料や生活に必要なものはここに送っておきます」

 

 ウォロが私を連れてきたのは群青の海岸、戻りの洞窟だった。以前ここに来たときは調査に来なかったところである。ウォロのポケットマネーから出たにしてはギンガ団のものと遜色なく、イチョウ商会のお金を横領しているのではないかと思った。

 

「ありがとうございます。……でも、私が留守にする間は誰がここを守るんですか?」

 

「ここはポケモンがいないから大丈夫なのです。たまに一匹だけいますが、味方ですよ」

 

「そうですか。で、そろそろ何をすればいいか教えてくれますか?」

 

「まあそう焦らないで。いくつかお話しさせてください」

 

 そこから語られた事件の真相は、驚くべきものだった。彼はアルセウスと会うため、ギラティナという伝説のポケモンと協力関係にあること。アルセウスを引きずり出すために時空の裂け目を作った張本人であること。私を支援していたのはアルセウスと関係のあるプレートを回収させるためであるということ。

 

「もっとも、時空の裂け目からあなたが落ちてきたこと自体は想定外でしたがね」

 

「……ひょっとして私がヒスイに来ることになった理由って、あなたのせいなんですか?」

 

「いや、それは違うと思います。巻き込まれたというのならショウさんやノボリさんだけでなくもっと多くの人間が来たはず。ジブンは、アルセウスが何か意味をもってここに連れてきたのだと思っていましたが。何か覚えていませんか?」

 

「いえ……本当に何も」

 

 覚えていない。それに、危ない目に遭っても、追放されてもアルセウスというポケモンは姿を見せることすらしなかった。私がここに来る意味というのはあるのだろうか?

 

「……そうですか。しかし、私はむしろこう思うのです。こうしてギラティナ、ジブン、ショウさんが集まったのは偶然ではないと。アルセウスは自らを求める者を、自らに挑戦する者を導いてやろうとしているのではないかと」

 

「つまり、私たちがこうしているのもアルセウスの意志だと?」

 

「少なくともジブンはそう考えています」

 

 やや飛躍した話、彼の願望のように聞こえたが、本当にアルセウスが神と呼べるような力をもつのなら、ありえる話かもしれない―そう思っていると、ウォロは自分の鞄を漁って地図を取り出した。

 

「さて、本題に戻りましょうか。ジブンは、ショウさんにプレートを集めてほしいんです」

 

「プレート……まあ、時空の裂け目が開いてる今は他にやることもないですしね」

 

「そうです。ショウさんの持っているプレートは、ふしぎ、たまむし、だいち、みどり、しずく、ひのたま、もうどく、いかづち、あおぞら、つららの10枚。ジブンがもののけの1枚を所有していて、残りのプレートは7枚となる」

 

「……なるほど、確かに私が回収した方がよさそうですね」

 

 ウォロはなぜか不満げな顔をしたが、そのまま続ける。

 

「それで、調査によってプレートの一枚は『迎月の戦場』にいるクレセリアが持っていることが分かったんですが……どうもジブンの手持ちは相性が悪いらしくて……そこでショウさんにクレセリアを任せたいのです」

 

「わかりました。戦ってみて判明した、そのポケモンの情報をください」

 

 ウォロはうなずくと、まず自分の手持ちを明かした。ミカルゲ、ウインディ、ロズレイド、トゲキッス、ルカリオ、ガブリアス。さすがにヒスイのあちこちを巡っているだけあって私の知らないポケモンも含まれていた。

 

 彼の戦いから得られた情報から推測するに、クレセリアのタイプはエスパー、攻撃タイプはエスパー、フェアリーである。奇妙な舞で自らを癒しつつこちらを幻惑してくるという不安要素はあるが、何とかならないわけではない。

 

「たぶん大丈夫です。ではさっそく、プレートを回収しに行ってきます」

 

「頼もしい。じゃ、ジブンは情報収集のため、いったんイチョウ商会の方に行ってきますのでよろしくお願いしますよ」

 

 そう言うとウォロは荷物を持って立ち上がり、コトブキムラの方へ歩いていった。私は笛を吹いてウォーグルがやって来るまで、手持ちの2つのモンスターボールを軽く撫でた。

 

(キュウコン、レントラー、今日はあなたたちに活躍してもらいますよ)

 

 

 

 

 

 

 どうやら、俺がこの村にとって歓迎されない存在らしいということは、村に入ったときにすぐに分かった。まあ、皆が着物を着ているところにTシャツに短パンで歩いていけば当然のことだろう。

 

 俺は時空の裂け目というところから落ち砂浜に倒れていたが、ラベン博士に助けられた。彼は親切な男だったが、なぜか顔を真っ青にしてボールをポケモンに投げさせたり、名前以外の全ての記憶を失っていることを確認してきた。

 

 それが済むと俺をこのコトブキムラに連れてきた。俺は人が住んでいる場所があるということに安堵したが、ただならぬ雰囲気がこの村には漂っていた。ひょっとすると空の色が異様な色に染まっているせいでそう感じるのかもしれないが。

 

 煉瓦造りの立派な建物―これがギンガ団本部らしい―に入ると、その団長であるというデンボクという人物に会うことになった。彼はラベンと俺を見るや、目を見開いた。

 

「ラベン博士。その子は誰かね?」

 

「テル君です。さきほど研究していたヒノアラシたちに逃げられて、それを追いかけていったら、時空の裂け目から落ちてきた彼が倒れていたのです」

 

「……まるでショウと同じ、ということか」

 

「そうです。しかも彼女が追放された途端に、です。彼らは何か意味をもって遣わされているとしか思えません。彼を追放するのはまずいのではないでしょうか」

 

 ラベン博士たちの話を聞いていると、どうやら俺がやって来る前に、同じような境遇の女の子がやってきたらしい。彼女はヒスイ各地で荒ぶるポケモンたちを鎮めたり調査に貢献したりしたが、空に異変が起きてからその原因だと考えられ、村の外に追放されたのだという。

 

 あんまりな話もあったものだ、と思ったが、よく考えると俺は同じ目にあうかどうかの瀬戸際にいるのである。ここに来て生活の目途もたたないまますぐ追放されるのはどう考えても死んでしまうし、最悪処刑されてしまうかもしれない。

 

 ラベン博士がデンボク団長を説得できるよう祈っていると、見知らぬ二人の人物が部屋に入ってきた。大柄でゆったりとした着物を身に着けた優男と、不思議な衣装を身にまとった小動物のような女の子である。

 

「デンボクの旦那……こいつはまさか」

 

「テルという名らしい。時空の裂け目から落ちてきて、記憶喪失だ」

 

 そう言うと、女の子は悲しそうな顔をした。

 

「……やっぱり、彼はショウの『代わり』なんじゃないですか? 実は、私とセキは彼女を探そうとしていたのですが、行方不明で」

 

「俺もカイと同意見だ。死んで「代わり」が来たってんなら納得できる。……やっぱりこの異変を解決するにはショウやテルみたいなやつの力がいるんじゃないか?」

 

 セキとカイの言葉を聞いて、デンボク団長は沈黙した。そしてしぶしぶといった口調でこう切り出した。

 

「……コンゴウ団とシンジュ団にテルを預ける。5日以内にこの異変を解決する糸口を掴めなかったら、知らせを待たず我々はテンガン山へ向かうことにする」

 

「5日……それだけありゃコンゴウ団の力でなんとかできるぜ」

 

 セキはそう言うと、俺の背中をドンと叩いた。

 

「ま、お前はヒスイのこと何も知らないだろうが、俺に任せろ」

 

「……あんた、頼もしいな」

 

「だろ?」

 

「シ、シンジュ団も協力するわ。……あなたを2人目のショウには……したくないからね」

 

 カイはどこか憂いを帯びた声でそうつぶやいた。彼女とショウは仲が良かったのだろうか。そう思ったとき、階下から誰かが駆け込んでくる音がした。

 

「大変です! マルマインのキャプテン、ツバキ様が襲われました」

 

「なに?」

 

 どうやらコンゴウ団のメンバーらしい。全速力で走ってきたのか、肩で息をしている。

 

「アイツは腐ってもキャプテン。ちょっとやそっとの相手じゃやられないはずだ。相手は誰だ?」

 

「それが……私は遠目に見ただけなのですが、ギンガ団の服を着た少女です」

 

「出したポケモンは分かるか?」

 

「キュウコンだけでした。ツバキ様を倒してからは迎月の戦場へ向かったようです」

 

 それを聞いたセキの眉が、ぴくりと動いた。カイは信じられないというように目をつぶり、口を押えた。次に聞こえてきたセキの声は、さきほどとは違って、妙にしゃがれて聞こえた。

 

「キュウコンか……」

 

「キュウコンだと何かまずいのか?」

 

 俺が聞くと、何か考え始めたセキに代わって、カイが青ざめた顔でうなずいた。

 

「キュウコンは火吹き島で捕まった、ショウのポケモンなの」

 

 

 

 

 

 




テルの立ち位置がちょっと変わってます。あと敬語キャラ闇落ちはもっと増えてほしい(小声)
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