ショウちゃん闇堕ちルート 作:aruseus
ショウの放ったレントラーは、俺たちが火吹き島から脱出するとそれ以上は追ってこなかった。とはいえ、このまま群青の海岸にとどまっていれば彼女とまた遭遇する可能性は十分にあるため、俺たちは紅蓮の湿地にあるギンガ団の荒れ地ベースまで移動し、そこで休憩をとることにした。
俺がかがり火の傍に座って水を飲んでいると、ガラナがやって来た。
「ありがとうございます、テル様。あなたがいなければ、あそこで皆殺しにされていたかもしれない」
「いや、俺もウインディが来なかったらやられてたよ」
最初から勝つ自信がなかったと言えば噓になる。だが、彼女とそのポケモンたちの強さは異様だった。手持ちを同時に出されていれば時間稼ぎもできなかっただろう。
「ウインディ……無事でしょうか」
ガラナはそう言って目を伏せた。彼女の話すところによると、あのウインディの親もキングであり、彼女が世話をしているときに死んでしまったのだという。その子もガラナの手にあるときに死んだとなれば、彼女が責任を感じるのも当然だろう。
「……わからないな」
しかしショウの実力を見ている以上、気休めの言葉はかけられなかった。ウインディがクレセリアを倒すところはあまりイメージできない。うまく逃げ延びているのを祈るばかりである。
「しかし、皆はなぜショウを放ってるんだ? 犯罪者を捕まえる組織がヒスイにはないのか?」
「……そういうのは普通、各団の長が指揮します。しかしこの広大なヒスイでは全ての領域を掌握することは不可能ですし、皆生活するのに手一杯で野盗や危険人物がいても捜索などできません。ショウの場合は、彼女に対抗しうる人間がほぼいないというのもありますが」
「ほぼ、ということは一応心当たりはあるんだ」
「勝てるかどうかは別として、まともに立ち会えるのはデンボク団長とノボリ様くらいでしょう。デンボク団長は最新技術をもつギンガ団の長ですし、ノボリ様は裂け目から落ちてきた特別な人間。戦闘のセンスは抜群です」
「……ん? そのノボリって人、時空の裂け目から来たって言った?」
「はい。テル様と同じです。シンジュ団でキャプテンをやっていますが、今はコトブキムラでポケモン勝負というものを広めようと頑張っているそうです。あたくしやカイはあまりポケモン勝負に詳しくはないので、もしそういった悩みがあれば彼に相談するといいかと」
「そうだな、コトブキムラに戻ったら会ってみるよ」
もしかすると、ノボリならこの不思議な状況について何か知っているかもしれない。俺は淡い期待を抱いてそう答えた。するとそのとき、闇の中から松明を持ったセキが姿を現した。傍にはイチョウ商会の服に身を包んだ背の高い男がいる。
「お、いたいた。うちの団員がここにいるのを見たっていうから半信半疑だったんだが……なんで群青の海岸から戻って来たんだ?」
「火吹き島でショウに襲われたんだ。それで逃げてきた」
「そうか。やっぱりアイツはそうなっちまったか。……ま、当然と言えば当然か」
セキは、はあとため息をついた。カイと違って動揺した様子を見せないあたり、どこかで割り切っているのだろう。
「いずれショウも何とかしてやらないといけないが、とりあえず今は裂け目の話だ」
セキがそう言うと、隣にいた背の高い男がにこやかに話しかけてきた。
「どうも、セキさんから話は聞いてますよ、テルさん。ジブンはイチョウ商会のウォロ。あの空を元に戻すためにジブンの知識を借りたいそうですね?」
「ああ。あんた、シンオウの遺跡巡りをしててそういうことには詳しいんだろ? 何かないか?」
「はい、と言いたいところですが……あいにく、ジブンは異変を
次の日、俺とセキ、カイはウォロとともにベースキャンプを出発した。ガラナとススキはもう少し休んでから再び群青の海岸へ向かうらしく、そこで別れることになった。
歩きながら、セキはぽつりと言った。
「でも、たった二人で行って大丈夫なのかね。またあいつに会ったらひとたまりもないぜ」
「ウインディのことが心配なんだと思う。俺が止めても一緒に戦おうとしてたし。まあ、ショウももう火吹き島にはいないだろうし大丈夫かなって」
「なんでそう思うんだ?」
「ショウは、プレートっていうやつを集めてるらしいんだ。俺はプレートが何かってことは知らないけど、たぶん火吹き島に来た理由っていうのはそれを手に入れるためで、それさえ済めば他の所へ行くんじゃないかって」
もしシンジュ団のメンバーを殺しに来たのであれば、追撃をレントラーに任せるのではなく、自ら追って来たはずである。それに、復讐だけを目的としているならコトブキムラやコンゴウ、シンジュ団の集落を真っ先に襲わない理由がわからない。
「じゃあ、そうだったとしてなぜショウはプレートを集めてるんだ?」
「……この世界をめちゃくちゃにしてやりたいって。その願いを叶えるためにやってるらしい」
「悪党を通り越してなんかこう……ヤバいな、そりゃ。しかもショウが言ってるってことは、それなりに裏付けがあるってことだろ」
そのとき、ウォロが口をはさんできた。
「ジブン、それは知っていますよ。以前、遺跡でプレートが神に近づくカギとなるという碑文を見つけたことがあります。ショウさんはそれをやろうとしているのでしょう」
「マジか。神ってのはつまり……シンオウ様だろ? もしショウが揃えちまったら、今度は空の色が変わるなんて程度じゃすまないな」
「そうですね……しかしプレートはおそらく、すべて集めなければ意味がない」
「つまり?」
「我々が、先に一枚でもプレートを押さえてしまえば彼女は何もできないということです。セキさんとカイさんはプレートのありかを知っていますか?」
カイは黙って首を振った。彼女は昨日のことがよほど堪えたのか、あまり口を利かなくなっていた。ウォロがセキの方に目を向けると、セキは、ああ、と何かを思い出したように声をもらした。
「そういや、この前デンボクの旦那が言ってたな。ギンガ団がここにやって来たとき、始まりの浜に一枚、奇妙な板が落ちてたって。今はギンガ団が保管してるらしいけど」
「それですよ! それ!」
なぜかウォロは眼を輝かせていた。セキが怪訝そうな目を向けると、ウォロはコホンと咳ばらいをして、声のトーンを戻す。
「とにかく、デンボクさんが持ってるなら安心でしょう。彼女がどうやってプレートの場所を知ったのかはわからないが、まさか自分のいたギンガ団が保持してるなんて思いもしないはずです」
確かに、すでに人の手で拾われているなら探しようがないだろう。……この会話をショウに聞かれでもしないかぎり。
「それなら、俺たちは時空の裂け目をどうにかすることに集中すればいいってことだな」
セキがそう言うと、ウォロはうなずいた。
「その通り。……そして見えてきましたよ。古の隠れ里が」
ウォロが指で示したその先には、古びた庵が建っていた。庭には瀟洒なテーブルと椅子が置いてあり、こんな森の中には似つかわしくないように思えた。
俺たちが庭に入ったちょうどそのとき、庵の中から姿を現した気だるげな雰囲気の女性と鉢合わせた。
「ウォロ、またお主か」
「どうも、コギトさん。ついこの前来たばかりですが、知りたいことがありまして」
「なんとなく何を聞きたいかはわかる。そこにいるのは、コンゴウ団とシンジュ団の長、そして、ええと……」
「時の人、テル君です。あの空を何とかする方法、知っていますか?」
するとコギトは首肯し、俺の方を見た。
「世界をつなぐ伝承を伝えるのが役目じゃからな。そう、そなたが来るのを待っていた、時空の迷い人、テル」
私は火吹き島でヒードランとの戦いを制してこうてつプレートを入手すると、再びベースキャンプに戻った。途中、ヒードランを捕獲しようかと思ったが、いたずらに手持ちの被害を広げる可能性が高いので諦めた。
(今日はキッサキ神殿にも行きたいですしね)
カイたちを取り逃がしたせいでこれまで積極的に動いていなかったシンジュ団も私と敵対するはず。これから動きづらくなるかもしれない以上、プレートはできるだけ早く集めたほうがいい。
私は、火吹き島での戦いで傷ついたキュウコン、ダイケンキ、クレセリアの入ったボールをテントの中に置いて休ませることにした。手持ちの残りとともに純白の凍土に向かう間、この3体を回復させておくわけである。
「休んでる間一緒にいられないのはごめんなさい。でも、私にはやらなきゃいけないことがありますから」
そう声をかけ、私はそっと3体をテントに置いた。
純白の凍土に行くため、本当はキュウコンを連れていきたかった。しかしテルに倒されてしまうという計算ミスが起きたため、断念せざるを得なかったのである。元気のかたまりなどがあればと思ったが、あいにく持ち合わせがない。
私は、テルとの対決にもやっとしたものを感じていた。というのも彼のもつポケモンは総じてそれほど強くはなかったし、普通なら複数の相手でも問題がなかったのにも関わらず、キュウコンを倒されてしまったからである。
彼のバトルのセンスは、わずかに私を上回っているように思えた。ポケモンの資質を見通し、実力の100%を引き出す能力。知識を積み重ね、理詰めで戦う私ではあと一歩届かないところにある、勝負の勘。それが彼にはあるのではないか。
(……この感覚、どこかで)
彼との戦いを思い返したとき、突然、奇妙な映像がフラッシュバックした。
大きなバトルステージで乱舞するスポットライト。観客席は人で埋め尽くされ、歓声や応援の声が聞こえてくる。ステージの向こう側にはテルがいた。いくつか言葉を交わすと、ポケモンを出してバトルを始める―
ごく一瞬の出来事ではあったが、そのイメージはきらめくような懐かしさと言いようのない郷愁を私の心に呼び込んできた。これは私がヒスイにやって来る前の記憶なのだろうか。おぼろげに、家族がいたことも思い出した。顔はよく思い出せないが、いたという確信が残っている。私には帰るべき場所があったのだ。
「わかった。きっとこの世界さえ壊してしまえば、私は帰れるんだ。あの温かい場所に」
それに気づき、私はヒスイへ来て初めて安堵したような気がした。キングやクイーンを命がけで鎮めたりしなくとも、人助けをしなくとも、この世界さえなくなれば安心できる場所に戻れるのだ。
(そうと分かったら、さっそく行動しましょう)
私が指笛を吹くと、留守番をさせていたミミロップがやって来た。
「さあ、あなたも行きますよ、ミミロップ。次はキッサキ神殿です」
キッサキ神殿の入り口を守っていたシンジュ団員は、私の姿を遠目に見ただけで逃げ出した。どうやら私が危険人物と化したことは、すでにヒスイにいるほとんどの人間の知るところとなったらしい。
ウォーグルから降り、夜空を背景にそびえたつキッサキ神殿を眺める。以前ここへ来たとき、どうしても開かなかった扉があった。おそらくウォロの言っていた扉はアレだろう。
神殿の内部に侵入し、私は開かずの間の前に立った。しかし扉はうんともすんとも言わない。少し調べてみたが、開け方が分からなかったため私はミミロップを繰り出した。
「扉にインファイト!」
ミミロップの連撃が扉に叩き込まれ、最後の一撃を加えた瞬間、扉が崩落した。ウォロが見ていたらおそろしい剣幕で怒るだろうが、私にとっては大した問題ではない。
階段を降りていくと、その最深部には大きな広間があった。そして、中央には巨大なポケモンがたたずんでいた。おそらく、南の大地を引っ張った伝説をもつレジギガスというポケモンだろう。
レジギガスは私を見つけると、のそりと動き出した。
「行ってくださいレントラー! でんじはです!」
レントラーは吠えるとレジギガスに電磁波を浴びせる。こういった強力なポケモンを倒すときは、麻痺状態にさせるのが定跡だ。動きが鈍くなればこちらのポケモンがダメージを受けなくて済むからである。
レジギガスの動きがますます鈍重になったのを確認すると、私はレントラーをボールに戻しミミロップへチェンジする。
「インファイト!」
ミミロップは軽やかにジャンプしてレジギガスの懐に飛び込むと、痛打を何度も放つ。しかしレジギガスの膝をつかせるには威力が足りなかったらしく、「アイアンヘッド」による反撃が飛んできた。
「回避してインファイト!」
インファイト直後で打たれ弱くなっているミミロップが攻撃を受ければ一撃で倒れていたかもしれないが、幸いレジギガスの動きは遅く、十分にかわす余裕はあった。
ミミロップはバックステップで攻撃を避け、再びレジギガスに必殺の連撃を浴びせる。すると伝説の巨人、レジギガスはあっけなく倒れた。
「さて、プレートはどこでしょうか」
あたりを探していると、レジギガスの肩に何かが突っ込まれているのに気がついた。間違いない。プレートだ。
私がそのプレートを回収して帰ろうとしたそのとき、いくつかの人影が階段のそばにたたずんでいた。
「……これはこれは。キッサキ神殿に何かお宝があるかもと思って忍び込んだら、先客がいたようだね」
「ああ、野盗の皆さんですか」
声を聞いて思い出した。それぞれ団から抜けて盗人家業に身をやつしているオマツ、オウメ、オタケの3人組だ。それが何の用なのか。
野盗の一人、オタケがくつくつと笑いながら言った。
「聞いたよ。あんた、ギンガ団を追い出されたんだって?」
「だから何です?」
「勘が鈍いね。あたしらと組まないかってことだよ。今までのことは水に流して、同じ境遇同士仲良く仲良くしようって話だ」
オマツはそう言うと、私に手を差しのべた。
ショウ手持ち
ミミロップ Lv71 インファイト じゃれつく でんこうせっか ドレインパンチ
ギラティナ戦のアレンジが好きすぎて、あれをどうにかしてピアノで弾けないかと頑張ってたら投稿遅れちゃいました……次はもう少し早めに投稿したいなあ。