走れるだけでよかったのに   作:〆切の逃亡者

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第6話 新目標

時は流れ、新年。

初勝利を飾り、木崎さんの本音も聞けてスッキリとした心持ちで新年を迎えた。

———はずだった。

 

「あけましておめでとう、ゴールデンレイシオ」

 

「……あけましておめでとうございます」

 

「あら?どうしたのそんなふくれっ面して?」

 

不思議そうに首を傾げながらそう言うミーティアさん。

どうしたのって、それは———

 

 

「また走れてないからですよ!」

 

 

そう、僕はまた走ることを禁じられていた。

 

クリスマスの翌日、僕はG1勝利という新目標を掲げ、トレーニングをしようとした。

G1、URA最高峰のレース。出場するだけでも困難な道だ。なら、今の僕には休む余地は無い。トレーニングを積んで積んで積んで………

 

そんな風にやる気をみなぎらせていると、ミーティアさんがやって来て「トレーニング禁止、休みなさい」と言った。

曰く、「半年で8戦なんて正気じゃないローテで走って疲労がない訳ないじゃない」という至極真っ当な言い分の元、走ることを完全に禁止されてしまった。

 

僕の地道な交渉の余地なく、日常生活の小走りすらも禁じられてしまった。

 

「もう1週間経ちますよ。ランニングぐらいいいじゃないですか……」

 

「蓄積した疲労が簡単に抜ける訳ないでしょ。トレーニング再開予定は今月中旬よ」

 

「んぬぅ……」

 

「年頃の乙女がそんな顔しないの」

 

今回の禁止はストレスが溜まる。前世では『走れなかった』から半分諦めがついていたけど、今回は『走らない』ため走るだけならいつでもできる分我慢が必要だ。

 

この我慢があと2週間か……新年早々憂鬱だなぁ……

 

「それよりも、ゴールデンレイシオ。貴方、目標は決めてるの?」

 

僕のほっぺをこねくり回しながら、ミーティアさんはそう聞いてきた。

 

「目標、ですか?」

 

「ええ。これからどう言った方針でローテーションを組むか考えないといけないし、明確な目標立てが必要だわ」

 

目標……目標……

 

「……ええと、G1勝利を目指してます?」

 

「G1と言っても色々あるでしょ?皐月賞とか有馬記念とか」

 

「1番早いG1……フェブラリーステークスでいいんじゃないですか?」

 

「……そのレースは出れないし、そもそも貴方はダートを走ったことないでしょう?」

 

「……そういえば、そうですね。気にしたこと無かったです」

 

そう言ってミーティアさんは少し呆れたようにため息を吐いた。

僕からしてみれば、ダートも芝もコンクリートもそんなに変わらないんだけどなぁ……走れればどこでもいい、というのもあるけど。

 

「適正ぐらい気にしなさい……まあ、今までの戦績から見るに貴方の適性は芝の中距離よ」

 

「なら」

 

「だけど、G1レースは特別なレース。誰もがそこに夢を見て、目指しているのよ」

 

ミーティアさんは、僕の発言を遮って言葉を続ける。

 

「どのレースに出たいとか、誰と走りたいとか、こういうウマ娘になりたいとか……そういうことをもう少しじっくり考えてから結果を聞かせて頂戴」

 

その真剣な表情に、僕は首を縦に振ることしかできなかった。

 

 

 

■■■

 

 

 

「そう言われてもなぁ……」

 

思わず弱音のような言葉がこぼれる。

 

正直に言って、特に出たいレースは無い。これに尽きてしまう。

確かに、出るからには勝ちたいし、勝つための努力もする。

それでも、ミーティアさんが言うような明確な目標は無い。強いて言うならば長い距離がいいかな?距離が長ければ走れる時間も長いし。

 

「負けたぁぁぁぁぁ!!!大逃げ無理だったぁぁぁぁぁ!!!次はテイオーに勝つぞぉぉぉお!!!」

 

「……元気だなぁ」

 

学園にある木のウロに叫ぶ青髪ツインテールの小さなウマ娘が視界に入る。

どうやら、『テイオー』というウマ娘に負けたらしい。

僕も、負けの悔しさはいやと言うほど味わった。勝てないことの申し訳なさ、不甲斐なさが胸を締め付ける。

できれば次も、勝ちたいなぁ……

 

そんなことを考えていると、急に音が聞こえなくなった。

驚いて振り返ると、そこには僕の耳を塞いで何か言っている芦毛のウマ娘がいた。

 

「だーれだっつってんだろーがオイ!!」

 

耳から手を退かすと、大きな声が耳をつんざく。

新年から相変わらずだなあ、この人は……

 

「……あけましておめでとうございます、ゴールドシップさん」

 

このウマ娘はゴールドシップさん。

名前を省略すると僕もゴルシになるから、という割と訳の分からない理由で良くしてもらっている。

偶に練習にも付き合ってくれるけど、ミーティアさんのトレーニング以上に訳がわからない。トントン相撲って結局なんのトレーニングだったんだろう……

 

「おうあけおめ!またはハッピーニューイヤー。ってことで鯛だぜ!」

 

「うわぁ、立派な鯛ですね」

 

「太平洋一本釣り選手権で得た初物の鯛だ。太平洋の初物は大体ゴルシちゃんが支配した!!」

 

カパ、と開けられた巨大なクーラーボックスの中には、様々な魚介類がギッシリと詰まっていた。

 

……ゴールドシップさんを年末に見かけなかった理由がわかった気がする。

 

「んで、鳩が節分に乱入してポーみてーな顔してどうしたよ?」

 

そう言い、ゴールドシップさんは僕の隣に座る。

何も言わず、僕の方へ視線を向けず、ただただ座る。

 

「……実は、目標が決まらなくて」

 

僕もゴールドシップさんを見ずに、そう呟く。

 

「僕は出たいレースも、一緒に走りたい人も、憧れのウマ娘も居ません。なので、ちょっと決めかねてまして……」

 

トレーナーさんに言われてから考えた。

僕には目標はない。

G1レースなら、どのレースでもいい。

 

思い入れのあるレースもない、特別なライバルもいない、背中を追う誰かも居ない。

僕はただ、走りたいだけ。

どこまで行っても、どこへ行ってもそれだけだ。

 

「んじゃ、他のやつに聞いてみっか」

 

「えっ」

 

「うぉーい、ダブルジェット〜」

 

唐突に僕の手を取り立ち上がるゴールドシップさん。

急すぎる行動に目を白黒させていると、ゴールドシップさんは腕を振り誰かを呼ぶ。

 

「ツインターボ!!ってゴルシじゃん!オホーツク海?から帰ってきたの?」

 

すると、先程木のウロに叫んでいた青髪のウマ娘が駆け寄ってきた。

 

「いんや、インド洋行ってた。ほれ、お土産」

 

「わー、お魚だ!ネイチャに何か作ってもらお!」

 

「キンメは煮付けがいいぞ……って待て待て。代わりといっちゃなんだが、コイツが聞きたいことがあるってさ」

 

「んんー?だれ???」

 

小首を可愛らしく傾げ、僕を見るツインターボさん。

僕はといえば、ゴールドシップさんに連れてこられてから頭が真っ白で、急に話を振られたことにより混乱の極みに達していた。

 

「えっと、その、初めまして。ゴールデンレイシオです」

 

「ターボはターボっていうんだ!ゴールデンレイシオ……おお、ゴルシといっしょなんだな!ゴルシの妹?」

 

「妹だったのかオメー!」

 

「えっと、えっと……!」

 

急展開に次ぐ急展開に僕の脳は白旗を上げている。

こういう時、こういう時はどうすれば……!

 

「違うっぽいな!ええと、それでターボに聞きたいことって?」

 

そんな事を考えてると、ツインターボさんはバッサリと話を切った。

……少し混乱してたけど、ようやく落ち着いてきた。

 

「その…レースの目標が決まらなくて……」

 

「もくひょー?そんなの簡単じゃん!勝ちたいウマ娘に勝つ!うおおお!!次こそテイオーに勝つんだぁぁぁあああ!!」

 

だあぁぁ…ぁぁぁ……

と走り去っていったツインターボさんの声がこだまする。

なんというか、何事も全力!みたいな人だったなあ。

 

でも、勝ちたいウマ娘に勝つ、か……ツインターボさんとは違い、僕にはそんなウマ娘は居ない。

何回も負けたけど、そんなウマ娘はできなかった。

 

「あーあ、行っちまいやがった……んで、目標決まったか?」

 

「ええと、まだ……」

 

「んじゃ次だな」

 

 

 

■■■

 

 

 

「次はここだ!!」

 

そう言い、連れてこられたのは先ほどから徒歩30秒の場所だった。

布で覆われた簡易的な建物で、看板らしき板には『占いの館』と書かれていた。

 

「ここは……」

 

「邪魔するぜー」

 

なんとも異彩を放つ建物の中に、堂々と入っていくゴールドシップさん。

その後をついて行くと、真っ暗な中で水晶玉を見つめているウマ娘がいた。

 

「ふふふ……占いの館へようこそ……ってゴールドシップさんじゃありませんか。今日はどうかしましたか?失せ物探しですか?それとも新年一発目の大占いですか?」

 

いかにも、と言ったような雰囲気を崩し、どこか怪しいセールスマンのような快活とした口調でゴールドシップさんに話しかけていた。

 

「いんや、コイツが話あるって」

 

「おや、あなたは……」

 

「ええと、初めまして。ゴールデンレイシオです」

 

「これはこれは初めまして!マチカネフクキタルです!!それで、お話とは?恋愛占いですか?」

 

「ち、違います!」

 

最近多いんですよねー、と言うマチカネフクキタルさんに思わず大きな声が出てしまう。

なんというか、前世から今まで縁もゆかりもないワードに過剰に反応してしまった。

それより、恋愛占いが最近多いって何でだろう?ここはトレセン学園、女子校だ。恋愛沙汰になるような異性なんて居ないと思うけど……?

 

「むむっ、外れてしまいましたか……じゃあ正月らしく運勢でも占いますか?今ならシラオキ様のパワーもマシマシですよ!たぶん!!」

 

マチカネフクキタルさんはそう言うと、どこからともなくたくさんの占い道具を机に並べる。

……僕が自ら来たわけではないけど、こう嬉々として占いの準備をするマチカネフクキタルさんに少しの罪悪感が湧いてしまう。

 

「えっと、ごめんなさい。占いじゃなくて少しお話がしたくて……」

 

「お話ですか?」

 

「実は、レースの目標が決まらなくて……トレーナーさんには具体的な目標が必要と言われたんですが……」

 

「それは大変ですね!でも私も別に特にこれといった目標はありませんでしたからねぇ〜。走るレースはおみくじで決めてましたし」

 

「えぇ……」

 

何ともないように言っているけど、とんでもないことをしている。

目標が無い僕でさえ、その選択はできそうに無い。たしかに、どんなレースでもいいけどそれは流石に……その、怒られそうというか……

 

「まあ、それで良かったんです。私はどんな運命でも立ち向かうだけですから!それにファンの想いと、私の想い。そこに幸運パワーが集まれば無敵です!」

 

「へぇー、お前も考えてんだな」

 

「ゴールドシップさんに言われるとは……っ!」 

 

ファンの想い、自分の想い……それは考えたことがなかった。

誰かの勝ってほしいという想いと、自分の勝ちたいという想い。マチカネフクキタルさんは、それがレースの活力に繋がっているんだろう。

レースの目標という意味では参考にできそうにないけど、レースの心構えとしては見習いたいな。

……まあ、僕にファンなんていないだろうけど。

 

「んで、目標決まったか?」

 

「それよりも私の水晶玉返してください〜!謝りますから〜!」

 

気づくと、ゴールドシップさんがマチカネフクキタルさんの水晶玉を叩きつけようと小競り合いをしていた。

なんとか水晶玉を返してもらったマチカネフクキタルさんは、涙を浮かべながら大事そうに水晶玉を抱えていた。

僕が考え込んでいる間に一体何が……

 

「ええと、まだですね」

 

「じゃあ次だな」

 

「他の方へ聞きに行くのですか?ならば私が占ってあげましょう!まあ正月ですからおみくじ占いでいいですよね!」

 

そう言うと、どこからともなくおみくじを出すマチカネフクキタルさん。

まあ、占いの館で占いをせずに帰るのも悪いし……

 

「ええと、なになに……『待ち人、食欲と共にキタル』……つまり、食堂に向かうと吉と出ました!」

 

 

 

■■■

 

 

 

食堂は新年ということもあり人が少ない。

それでも、比較的人が少ないだけで十分騒がしいといえる賑やかな雰囲気がある。

 

「待ち人って一体誰なんでしょうね……ってあれ?ゴールドシップさん?」

 

隣を見ると、居たはずのゴールドシップさんが忽然と姿を消していた。

 

「マックちゃーん!」

 

どこに行ったのか…と周囲を見渡していると、一際大きな声が聞こえてきた。

声の方を向くと、ゴールドシップさんが芦毛のウマ娘のお腹を揉みしだいていた。

……何をしてるんだろう、あの人は。

 

「きゃあっ!ってゴールドシップさん!?あなた、新年は南極で明かすとか言ってませんでしたか!?」

 

「うるせえ!またパクパクモグモグ食いやがって!このたるんだ腹はなんだ、鏡もちか!?」

 

「うぐっ……で、ですがこのおしるこに罪はありませんわ!」

 

「この贅肉が罪だっつってんだよ!おら痩せろ!」

 

「ゴールドシップさん、ちょ、やめ、お腹を揉むのはやめなさい!」

 

「全く、今度から青色に染めたメニューに変更してやる」

 

「そのテロ行為はメジロ家にかけて食い止めますわ」

 

「メジロ家にかけて痩せろよマックちゃん」

 

芦毛のウマ娘のお腹をペシペシと叩きながら楽しげに会話をするゴールドシップさん。

ぎゃあぎゃあと言い争い、周囲から視線を集めている。

本当に何をしてるんだろう……

 

「ん?おーい!こっちだぜー!」

 

ゴールドシップさんは僕を見つけると、手を振って呼んできた。

視線が痛い……でも逃げるのも不自然だし、逃げたところでどうせ捕まるだろうし……

 

しぶしぶゴールドシップさんの方に行くと、逃げられないようにするためかガッチリと肩を組んできた。

 

「あら、そちらの方は?」

 

「ゴルシちゃんだぞ。ちなみにこっちはマックちゃんだ」

 

「は、はあ……」

 

「メジロマックイーンですわ、気軽にマックイーンとお呼びくださいね。あとそれはあなたの名前ですわよね?こちらの方の名前は?」

 

「ゴルシちゃん3号」

 

頭を抱えてため息を吐く芦毛のウマ娘ことマックイーンさん。

なんというか、そこはかとない苦労人感が滲み出ている……話が平行線になりそうだし、僕からも自己紹介はしておこう。

 

「ええと、ゴールデンレイシオです」

 

「……あなた、ゴールドシチーさんの他にもちょっかいをかけたのですか!いえ、ゴールドシチーさんにもダメですが……新入生に無闇に絡むのはやめなさいとあれだけいったでしょう!!」

 

「えー、でもゴルシちゃんは嫌じゃないよなー?」

 

「え?あ、はい」

 

今にも掴みかからんとばかりにゴールドシップさんを叱り飛ばすマックイーンさんだけど、当のゴールドシップさんは全く堪えた様子がない。

すると、マックちゃんさんは天を仰ぎ深呼吸をすると、おもむろにゴールドシップさんを僕から退かし、僕の肩に優しく両手を置いた。

 

「無理矢理言わされてませんか?何かあったらわたくしに言ってください、ゴールドシップさんの処理は慣れてますので」

 

「は、はい……」

 

あ、圧がすごい……

 

「そんでマックちゃんよー、実はちっと話があって来たんだわ」

 

「私にですか?」

 

「こっちのゴルシちゃんがレースの目標見つかんなくて悩んでんだってよ」

 

「は、はい。トレーナーさんには具体的な目標を見つけた方がいいと言われて……」

 

「なるほど、それで私に話しかけて来たのですね」

 

「仕方ないですわね〜」とどこか嬉しげに、あからさまに耳をピコピコと動かしながらも胸を張るマックイーンさん。

……ああ、マックイーンさんの態度に既視感を覚えると思ったらあれだ、孫に厳しくしたいけど頼られるとついつい甘やかしてしまうお爺ちゃんに似てるんだ。

前世で入院中に何度も看護師さんに怒られてるお爺さんがいっぱいいたからよく覚えている。

 

「いんや?待ち人が食欲に塗れたやつで、この食堂で1番食欲に塗れてたのがマックちゃんだっただけだぜ」

 

「もっと他にいるでしょう!?ほら、そこのオグリキャップさんとか!」

 

「あれはノーカンだろ」

 

マックちゃんさんが指を刺す方向を見ると、文字通り山のように積まれたご飯とお皿の前に陣取るオグリキャップさんがいた。

毎回見るたびに思うけど、物理法則ってこの世界どうなってるんだろう……質量保存の法則は違うのは確かなんだろうなあ……

 

そんな事を考えていると、マックちゃんさんが咳払いをし、真面目な顔をして僕の方に向き直る。

 

「それで、レースの目標ですか。私はメジロ家として、天皇賞の盾を持ち帰ることが目標ですわね」

 

「メジロ家……」

 

「ええ。私のおばあ様とおじい様にとって思い入れのあるレース。ステイヤーとして才能を評価されている私がなんとしてでも勝ちたいと思っていましたわ。メジロ家に生まれ、メジロ家の方々に支えられたウマ娘として」

 

そう言い、クスリと微笑むマックイーンさん。

……正直、すごいと思う。そんな感想しか出ないほど、僕はマックイーンさんに慄いていた。

名家として生まれ、英才教育を施され、レースで活躍することを望まれる。そんな重すぎる期待を背負い、レースをする。並みの精神力では真似できないことだろうと思う。

 

「メジロ讃歌を校歌にするのが目標なんじゃねーの?」

 

「ち が い ま す ! !」

 

 

 

■■■

 

 

 

食堂を後にして、屋上から夕暮れのコースを眺めていた。

和気藹々とした声が屋上までかすかに聴こえてくる。そんなわずかな声に耳を傾けながらもボーッとしていると、マックイーンさんから逃げ出せたのか、ゴールドシップさんが缶コーヒーを持って後ろに立っていた。

 

「んで、目標見つかったか?」

 

「……すみません」

 

「なんで謝ってんだよー、そこは『ありがとにゃん♡』だろー?」

 

「あ、ありがと、にゃん……?」

 

「何言ってんだオメー変わってんな」

 

ゴールドシップさんはいい人なんだけど、やっぱりよく分からないや……

今までいろんな人に話を聞いたけど、レースの参考になっても僕の目標の参考にはならなさそうなものが多かった。他の人の話を聞いても、結局僕は「すごいな」という、どこか他人事のような感想しか出なかった。

 

「そういえば、ゴールドシップさんの目標ってどう決めたんですか?」

 

何気なく、そういえば聞いてなかったと思い聞いてみる。

 

「んー……そういや決めてなかったな」

 

「え!?」

 

「皐月賞は4月の仇だったし、菊花賞はノリだったしなー」

 

……なんというか、目標を決めてないことも驚きだけど、レースを選んだ理由もすごいなぁ。

 

「目標なんてモン無くても走れンだよ!その足は何のためについてんだ、マグロを見習えマグロを!!」

 

けど、僕はゴールドシップさんの言葉が1番心にストンと落ちた気がした。

 

「ま、走ってりゃその内目標なんて勝手に生えてくるだろ。ゴルシちゃんも生えてきたし」

 

「……そうですかね」

 

「おう、たぶんな」

 

僕に夢は無い。

僕に願いはない。

でも、それは僕が走らない理由にはならない。

 

僕には足がある。

どこまでも、どこへでも運んでくれる足がある。理由付けなんて、それで十分だろう。

 

 

 

■■■

 

 

 

後日、トレーナー室。

正月特有の緩みは抜け、トレセン学園にもいつもの日常が取り戻されつつある。

 

「それで、目標は決まったかしら?天皇賞?それとも日本ダービー?」

 

ミーティアさんはいつものように微笑みながらそう聞いてくる。

何気なしに、まるで世間話の延長線上のように。

 

 

「それが———全く決まってません」

 

 

僕は満面の笑みを浮かべて、そう言い切った。

 

「特に出たいレースはありません。特に一緒に走りたいウマ娘は居ません。特になりたいウマ娘像はありません」

 

ゴールドシップさんに連れられ、改めて思った。

僕は走りたいだけだ。

走れるだけでいい。今は、それだけで満ちている。

 

「だから、それは走りながら見つけようと思います」

 

目的地の無い旅をしてはいけない、なんてルールは無い。

でもいつか、歩いてるうちに目的地が出来てくるだろう。

それでいいと僕は思う。理由なんて、そんなものでいいと。

 

「……そう。なら、ちょうどいいレースがあるわ」

 

どこか困ったように、仕方なさげに笑うミーティアさん。なにやら机の下から紙を取り出すと、それをホワイトボードに貼り付けた。

 

「皐月賞……クラシックレースの最初の冠。走りながら考えるなら、このくらい難しくてちょうどいいわよ」




今回のォ!言い訳ェ!!
まず前回投稿日から訳3日で第6話は完成しました。イェイ!
じゃが投稿日に思ったんじゃ……あれ?なんか違くね?と……
改善に次ぐ改善の結果、訳3週間もかかってしまったのじゃ……

だからワシは悪くないヨ!(天下無双)

あ、そういや地味に原作キャラ出たぜ!初出!初日の出!ハッピーニューイヤァァァ!!!
次回第7話!書けてないけど楽しみに待ってろよな!!
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