千堂家での死闘を終えて、二日後。呪術高専の一室にて、七海は五条と対面していた。
知っていることを全て話した七海は、五条の判断を待った。
どのような決断がくだされるのか。判決を待つ被告人のような気分であった。
「七海はどう思う?」
「え?」
「雨野 伊月、いや、千堂 慎は危険人物と成りえるか否か」
「成りえません」
七海は断言した。彼と過ごした数か月。その積み重ねから出た答えであった。
ふふっ、と五条が笑った。
「じゃあ、高専での監視は必要なしってことで。父親の元で暮らしてもらおうよ」
「いいのですか?」
「七海が太鼓判押すんだから大丈夫でしょう。それに、子供には子供らしく生きる権利ってあると思うんだよねぇ」
「五条さん……。ありがとうございます」
深々と頭を下げた七海が顔を上げると、五条が真剣な表情を浮かべていた。
「お別れの挨拶はちゃんとした方がいいよ」
「そうですね。きちんと話をします」
「その方が良いよ。んじゃ、僕は仕事があるから。また何かあったら、よろしくねぇ、七海」
五条は席を立つと手を振りながら去っていった。
その背中に、もう一度頭を下げ、心の中でお礼を言った。
◇
七海が家に帰ると、リビングに千堂と慎がいた。
「七海さん、お邪魔しています」
「おかえりなさい、七海さん」
二人に出迎えられた七海が言葉を返す。
「ただいま帰りました。千堂さん、少し伊月君……いえ、慎君と二人でお話させていただけないでしょうか?」
そういうと察したのか、千堂は頷くと、部屋を後にして行った。
家に二人だけになった。七海は今までの光景が終わりを告げようとしていることに、感慨深く思ってしまった。
別れの言葉を告げよう。この数か月間の思いを込めて。
「慎君、私は君と暮らすことができて幸せでした。掛け替えのない思い出をいただきました。本当にありがとうございました」
七海が言い終わると、慎が瞳に涙をためて震える口を開いた。
「七海さん、僕も……僕も幸せでした。生きていて幸せだって思えました。ありがとうございました」
「良かったです。君は人を幸せにできる男の子です。だから、今度はお父さんを幸せにしてあげてください」
「はい。幸せにしてみせます。あと、僕も七海さんのように、人を助けられる強さを持ちます! お母さんとお姉ちゃんの願いを無駄にしません」
「ええ。君が大人になるのを楽しみにしてますよ。本当にありがとう」
七海はそっと慎を抱き寄せた。温もりを通じて、互いの思いを交わした二人は笑顔を見せた。
「また、会いましょう」
「はい。絶対に会いましょうね」
◇
千堂と慎を乗せた車を見送った七海は、部屋へと戻る。
いくつもの思い出が詰まった部屋を眺め、思い出に浸る。
眼がしらに熱いものを感じた七海は、眼鏡を外して、それを拭った。
そのとき、スマートフォンの着信音が鳴った。
ディスプレイには五条の名前が表示されている。
今度はどんな話が舞い込んでくるのやら。軽く息を吐いて、電話を取った。
「はい、七海です」
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