呪術師 七海建人の怪奇録   作:アラタナナナシ

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最終話

 千堂家での死闘を終えて、二日後。呪術高専の一室にて、七海は五条と対面していた。

 

 知っていることを全て話した七海は、五条の判断を待った。

 どのような決断がくだされるのか。判決を待つ被告人のような気分であった。

 

「七海はどう思う?」

 

「え?」

 

「雨野 伊月、いや、千堂 慎は危険人物と成りえるか否か」

 

「成りえません」

 

 七海は断言した。彼と過ごした数か月。その積み重ねから出た答えであった。

 ふふっ、と五条が笑った。

 

「じゃあ、高専での監視は必要なしってことで。父親の元で暮らしてもらおうよ」

 

「いいのですか?」

 

「七海が太鼓判押すんだから大丈夫でしょう。それに、子供には子供らしく生きる権利ってあると思うんだよねぇ」

 

「五条さん……。ありがとうございます」

 

 深々と頭を下げた七海が顔を上げると、五条が真剣な表情を浮かべていた。

 

「お別れの挨拶はちゃんとした方がいいよ」

 

「そうですね。きちんと話をします」

 

「その方が良いよ。んじゃ、僕は仕事があるから。また何かあったら、よろしくねぇ、七海」

 

 五条は席を立つと手を振りながら去っていった。

 その背中に、もう一度頭を下げ、心の中でお礼を言った。

 

 

 七海が家に帰ると、リビングに千堂と慎がいた。

 

「七海さん、お邪魔しています」

 

「おかえりなさい、七海さん」

 

 二人に出迎えられた七海が言葉を返す。

 

「ただいま帰りました。千堂さん、少し伊月君……いえ、慎君と二人でお話させていただけないでしょうか?」

 

 そういうと察したのか、千堂は頷くと、部屋を後にして行った。

 家に二人だけになった。七海は今までの光景が終わりを告げようとしていることに、感慨深く思ってしまった。

 別れの言葉を告げよう。この数か月間の思いを込めて。

 

「慎君、私は君と暮らすことができて幸せでした。掛け替えのない思い出をいただきました。本当にありがとうございました」

 

 七海が言い終わると、慎が瞳に涙をためて震える口を開いた。

 

「七海さん、僕も……僕も幸せでした。生きていて幸せだって思えました。ありがとうございました」

 

「良かったです。君は人を幸せにできる男の子です。だから、今度はお父さんを幸せにしてあげてください」

 

「はい。幸せにしてみせます。あと、僕も七海さんのように、人を助けられる強さを持ちます! お母さんとお姉ちゃんの願いを無駄にしません」

 

「ええ。君が大人になるのを楽しみにしてますよ。本当にありがとう」

 

 七海はそっと慎を抱き寄せた。温もりを通じて、互いの思いを交わした二人は笑顔を見せた。

 

「また、会いましょう」

 

「はい。絶対に会いましょうね」

 

 

 千堂と慎を乗せた車を見送った七海は、部屋へと戻る。

 

 いくつもの思い出が詰まった部屋を眺め、思い出に浸る。

 眼がしらに熱いものを感じた七海は、眼鏡を外して、それを拭った。

 そのとき、スマートフォンの着信音が鳴った。

 

 ディスプレイには五条の名前が表示されている。

 今度はどんな話が舞い込んでくるのやら。軽く息を吐いて、電話を取った。

 

「はい、七海です」

 




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