呪術師 七海建人の怪奇録   作:アラタナナナシ

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ブラブラさん②

 家に帰った七海は、伊地知が警察から集めた情報を一つずつ注意深く確認していた。

 

 被害者達はいずれも自殺するような理由が見つかっていない。

 いじめ、家庭の問題、経済状況、恋愛のいざこざ等、様々な聞き取りをしているが、自殺に繋がるようなものはない。

 我々がそう思わないだけで、本人にとっては大きな悩みのものもあるかもしれないが、自殺の方法が共通していることがおかしい。

 

 自殺をする前にロープを切断し、新たにロープをくくりなおして自殺する。

 それに何の意味があるのか。警察とは違う視点で聞き取り調査をしなければならないだろう。

 七海がそう考えていると、玄関のドアの鍵が開く音が聞こえた。

 

 部屋のドアから顔を覗かせると、玄関に立つ伊月が見えた。

 

「ただいま。七海さん、帰っていたんですね」

 

「おかえりなさい。仕事を早めに切り上げましてね。夕飯は何かリクエストはありますか?」

 

「なんでも大丈夫です。七海さんの料理はどれも美味しいです」

 

「そうですか。分かりました」

 

 そういうと伊月は自室へと入った。

 頭を切り替えよう、そう考えて、夕飯の準備のために冷蔵庫のドアを開いた。

 

 

 千葉県某所。自殺した少女が通っていた中学校に七海と伊地知は来ていた。

 

 自殺した少女に関してのアンケートを見せてもらうためだ。

 生徒達が自殺した少女に対して、いじめなどがなかったかの聞き取りを学校が行っていた。

 校長室に通された七海と伊地知は、アンケート一枚一枚に目を通す。誰も少女についていじめが行われていたと書いてはいない。

 

 自殺の理由になるよういざこざや、悩み事を抱えてもいなかったようで、警察の報告書と一致している。

 何か見落としがないだろうか。念入りに読んでいくが、これと言った収穫はなかった。

 次に七海たちが依頼したのは、少女と仲が良かった者達に対する聞き取りであった。

 

 四人グループで仲が良かったとのことで、三人の女の子を一人ずつ呼び出して、当時の状況を語らせることにした。

 一人、二人と話を聞くが、これも警察の報告書にあった内容と変わらなかった。

 三人目の女の子も警察に話した内容と変わらず、いつもと変りなかったと話をしたが、一瞬考え込むようなそぶりを見せた。

 

「何か気になることでも?」

 

 七海の問いかけに少女は、口ごもった。

 

「どんな話でも構いません。聞かせてはいただけないでしょうか?」

 

「あの子、好きな人がいたんです。でも、告白する勇気がないって言ってて……。好きな人が自分のことをどう思っているのか知りたいって」

 

「なるほど。それで? 彼女は何かしたのでしょうか?」

 

「えっと、ブラブラ……さん、だったかな。に聞いてみるって」

 

「ブラブラさん?」

 

 少女の言葉に七海は思い当たる節がなく、伊地知を見るが、伊地知も同様のようで、小首を傾げていた。

 

「ブラブラさんとは?」

 

「都市伝説らしいんですけど、詳しくは。あの子、占いとか好きだったし、そういう奴だと思います」

 

「都市伝説……」

 

 七海は呟くと、メモ帳に『ブラブラさん』と書いた。

 

 

 聞き取りを終えた七海は気になるワードであった『ブラブラさん』について、スマートフォンで検索を掛けた。

 

 画面をスクロールすると、都市伝説のページにヒットした。選択して内容を読み始めると、七海の顔色が変わった。

 

「伊地知君、これを」

 

 伊地知にスマートフォンを見せる。そこには、ブラブラさんについての詳細が書かれていた。

 

 ブラブラさんは、知りたい質問に答えてくれる幽霊。

 ブラブラさんを呼び出すためには、人の目につかない場所で首つりの準備をし、首をくくるロープに背を向けた状態で『ブラブラさん、教えてください』と呼ぶことで呼び出せる。

 ブラブラさんはロープに首をくくった状態で現れるため、すぐにロープを切らなければならない。間に合わないと、ブラブラさんは消えてしまい、二度と呼び出せなくなる。

 

 ブラブラさんは助けてくれた人の質問に一つだけ答えてくれる。ただし、それ以上聞いてはならない。ブラブラさんが怒ってしまう。

 ブラブラさんを怒らせてはならない。ブラブラさんを怒らせると……。

 

 顔を上げた伊地知が目を大きくして言う。

 

「七海さん、これって?」

 

「どうやら、当たりのようですね。これは呪霊の。仮想怨霊の仕業です」

 

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