逆行したら天才イケメン騎士様がロリ巨乳美少女騎士様になってた   作:ちぇんそー娘

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三章です。






3章 黄金世代
17.星翳る


 

 

 

 

 

「うーん、ヴィータくんは魔力量は多くは無いので実物質に干渉して攻撃力を上げる付与や強化は相性いいですからねぇ。はい、投擲はいいと思いますよぉ」

「ほらな、な? 言ったやろ〜? マグノ先生からのお墨付きや!」

「じゃあやっぱそっち方面も取り入れてくか……マグノ先生、お願いできます?」

「え、俺やなくて? 俺得意言うたやん」

 

 グイッと顔を近づけてくるリエンを引き離しつつ、俺は先生に相談を続ける。

 

 先日、ちょっと色々あってエアが最初に相手した……なんだっけな。ファル……なんとかと言う奴に試合を申し込まれて受けた。

 結果はもちろん勝ったに決まってる。相手はこの学校でも平均的な相手だった。平均で本来の1体操作するのも十分高等技術のゴーレムを10体同時操作とかしてきたのでこの学校のアベレージは本当におかしいと思うが、さすがにアーリスやリィビアの後に相手したこともあってちょっと余裕に感じた。

 

 いや……そりゃぁこの学校で1番を狙うなんて、平均的な相手には圧勝出来るくらいじゃないといけないとはわかってるけど、あの鮮やかな勝利は褒めてもらってもいいと思うのに。

 

 

『はぁ〜? 私と引き分けた相手があんな凡なる凡人に負けたら私も恥だしそれで喜ばれるのも恥なんだけど? やめてくれる?』

 

 

 わざわざそれだけ言ってリィビアは帰ってくし。

 

 

『ジョイくんって些細な事で笑顔になれて、そういうところ素敵だよね。……え、なんで泣いてるの!? 褒めたよね私!?』

 

 

 アーリスはシンプルに刺さること言ってきて泣かされそうになるし。

 

 

『…………フッ』

 

 

 師匠は鼻で笑ってくるし。

 褒めてくれたのはリエンくらいだけどコイツの口から出る言葉は9割でまかせなのでカウントしないとして、幾らなんでもあんまりだ。

 

「それにしても……。この前のイミテシオくんとの戦いは見事でしたね。彼の『十使(メンブルム)』によるゴーレムの猛攻をギリギリまで引き付けて、油断した彼に剣をぶん投げて一撃! もしも防がれてたら、という点もありますが……間違いなくこの勝利はヴィータくんの努力の賜物です!」

 

 暖けぇ……。

 これが褒めて伸ばす教師、国内最高の教育機関の教師かぁ。何処かの鼻で笑ってきた教師に爪の垢を煎じて飲ませてやりたい。

 

「なので今更私が教えられることもないと思いますが……長距離攻撃は私の専門ですからね! 一緒に色々考えていきましょう!」

 

 えいえいおー、と我が事のようにキャピキャピしてる可愛らしい先生。こういう癒しこそ今の俺の生活に足りてないものだと思うんだよね。

 

 ……でも、こう見えてマグノ先生はめちゃくちゃ強いんだよな。

 そもそもこの学校の教師をやってる人は、普段リィビアに婚期で弄られて泣いてるラクシャ先生も含めて、一線級の戦力だ。多分、ラクシャ先生が本気で得意な状況に引き込んで倒す気で戦えば、リィビアも負ける可能性があるくらいだ。

 

 何度か実践授業もあったが、出来るなら今回は誰とも正面切って戦いたくない。

 

「せっかく頑張ってこの学び舎に来てくれましたからね。リエンくんも投擲は得意分野ですし、お友達同士でも協力して色々試しましょう」

「ありがとうございますマグノ先生。あと、俺とリエンは友達じゃないんで」

「え……でもヴィータくん彼以外の男の子と喋ってるところ見たことないですよ?」

「俺くらいになるとですね。やっぱ、相手がビビって近づかないんですよ」

「先生は心配なんですよ。『獣みたいな女侍らせてるやたら目つきの悪いやつ』とか『強者のみを追い求める狂戦士』、『アルム先生の彼氏』とか噂が流れてて……みんな距離を取ってるので」

「なんて?」

 

 全部根も葉もない噂だし最後のヤツ流したの誰だおい。

 まず俺は女を侍らせてない。最近アーリスは対エアに備えて忙しくしてるし、リィビアはたまに会うとめちゃくちゃ罵倒してくるだけだし、エアは侍らせてるというか向こうから絡んでくるし、師匠は師匠だし。

 ついでに実は俺はまだ自分から望んで模擬戦組んでないんだよ。アーリスは向こうからだし、リィビアは……戦いたいというかこうするのがいいってだけだし、ついこの間のイミテシオくんとの戦いも向こうから挑まれて受けただけだ。

 

 そして俺は師匠の彼氏では無い。

 師匠とは……そういう関係じゃないんだよ。うん。

 

 なんで俺はこんなに変な噂に悩まされなきゃならないんだ。一体前世で何かしたのかというレベルだよ。実際の俺の前世は何もなしえてないのに。

 

「という訳で教員のみんな心配してるので、友達で困ることがあったら言ってくださいね? 私、こう見えて既婚者だし友達も多いので!」

「先生、そのくらいにしておいてあげてください。こう見えて、ジョイは意外とメンタル弱いんです」

「……泣いてないが?」

 

 これは心の代謝。傷ついたハートが剥がした表皮みたいなものだから。頬を伝う液体は別に涙とかではない。断じてない。

 

「今度の1年()()()()は集団戦になると思いますから……。騎士になったあとも、連携は大事ですよ? 学生のうちから交友は広げておかないと、大人になったら急に社交性ができるなんてことはありませんからね」

「……ん、今なんて?」

「大人になったら急になんでも出来るとはならないという……」

「その前!」

「ラクシャ先生が最近もう女の子でもいいかなって……」

「どこまで戻ってるんです?」

 

 これ以上ラクシャ先生を虐めないであげて欲しいのだが、それよりもまず気になる単語が出てきてしまっていた。

 

 合同授業? 

 それ自体はあるのは知っている。前世で毎回それが憂鬱だったので覚えているけれど、こんな時期にあったか? 

 

 

「今期の生徒はみんな精鋭揃いってので、アルム先生が考案して学園長もそれを承認したんですよ! いやー、確かに私の担任のクラスでも有望な子がいますからね。連携はできるだけ早く身につけた方がいいですからね」

 

 あの大人達!!! 

 ほんと、なんなんですかあの大人達! 何も間違ったことはしてないけど、なんでこうも俺が嫌がる方向に!? 

 

「というか聞いてないんですけど!? え、何時ですか!?」

「……? 来週にはありますけど、既に告知は……あ、多分ジョイくんがリィビアさんとの試合の後の休んでる期間ですね……。おかしいなぁ、ジョイくんには伝えておくってアルム先生が言ってたはずなのに」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「師匠! いやクソアマァァァァァ!!! さすがに今回のは出るところに出てもらうぞ! せめてちゃんと教師しろ!」

 

 俺は激怒した。

 必ずかの、邪智暴虐の教師をクビにしてやらねばと決意した。

 

「伝えたよ? 君が寝てる時に」

「それは伝えてないって言うんですよ!」

「だって……言わなければそういう反応してくれるから。ゴメンね。悪いとは思ってるけど、欲望には勝てなかった」

 

 本当に申し訳なさそうにしてるけれど、理由が最低すぎるんだよ。魔女相手に耐えたアーリスの精神力を見習って欲しい。どうしてこう、この人は自分の欲望を優先してしまうのか。

 

「まぁ始まる前に知れたんだから良いとしておこうよ。私に怒るより、考えた方がいいんじゃない色々?」

「もっと早く言ってくれれば助かったんですけどねぇ!?」

「……仕返し。『黒耀(バロール)』使ったじゃん」

 

 師匠は唇を尖らせてぷいってそっぽ向いてしまうが、それを言われると俺も弱い。今色々と考えているとは言え、アレを使ってしまったのは確かに痛手だ。

 この前戦ったファルなんとかくんも、明らかに俺に『黒耀(バロール)』がある前提の動き、近づけさせずにひたすら消耗させる戦いをしてきた。

 言い方はアレだが、彼があんまり強くなかったからどうにかなったものの、もっと強い相手には厳しいだろう。

 

「なら、こういうことは今度から事前に言ってください。せっかく用意してた新技を不本意な形でお披露目することになってたかもしれないじゃないですか」

「ふーん、私以外とー? 新技を? ふーん、そっかふーん?」

 

 めんどくせぇなこの人。この前のことは10割俺が悪いけど、それにしたって、こう、めんどくさい。

 

「もっと私を頼っていいんだぞ? 他の生徒にも『私はジョイだけの師匠だから治療以外で教えるのは彼だけだ』ってちゃんと宣言してる私の一途さに対してなんだい君の尻軽さ! この前はアーリスにエアとコソ練、リィビアと会う度にイチャコラ、さっきだってマグノ先生に教えを乞うなんて……」

「おい、ちょっと待て」

 

 この人本当に『私はジョイだけの師匠だから治療以外で教えるのは彼だけだ』とか言いふらしてんのかな? 

 外面は良く、腕も良く、何も知らなければミステリアスな長身美女である師匠が、そんなことを言えばどうなるだろうか。

 

 もしも俺が一生徒だったら、出来てんだろなあの二人ってなるよね。少なくとも俺はなる。

 

「アンタ本当にさァァァァァァァ!!! 社会性ゔー!!!」

「ひぇ!? い、いつにも増して血気迫る! さすがに私もびっくり、あ、待って白衣にコーヒーかけようとしないできゃぁぁぁぁ!!!」

 

 この人は長い間山に籠ってたからなのか社会性が欠如している。自分が周りからどう見られてるかとか、行動がどういう風に見られるかという客観的な視点が欠如しているのだ。

 

「え、私何かいけない事言ってる? そんなに?」

「ありますよ。師匠は美人なんですから、発言一つ一つ、深読みするやつも沢山います」

「はぇ?」

 

 リエンから聞いたが、師匠は『男子学生が思う美人な教師ランキング』でトップらしいちなみに俺はこの集計からハブられてる。特別扱いってことだな。泣いてないぞ? 

 実際顔は美形だし、意外にも治療に関しては巫山戯たりすることもないから、怪我した生徒とかは救いの女神にも見えてしまうのもあるだろう。俺も始めは御伽噺のお姫様みたいな雰囲気の人だと思ってたし。実際は御伽噺の魔女とかそっち系の人だけど。

 

 

「俺以外とは気軽に話さないでください。普段の師匠は、俺にだけ見せてくださいよ」

「うぉぉぉい!? そんな口説き文句どこで覚えてきたんだか!? 誰に似たんだまったく!」

 

 口説き文句なわけがあるか。俺に触れ合う調子で他の生徒に手を出されたら俺はこの学校に居られなくなる。

 10年も師匠と一緒にいる俺だからこそ流せてるけど、この人は根本的に色々とズレてるし。

 

 それに、確かに師匠が俺以外の師匠になってしまうのは俺も少し嫌なところがある。我ながら、他人のことを言えない独占欲だが。

 

「とりあえずわかったよ。これからは、教師として発言に気をつけるさすがにクビにされてはたまったものではない」

「そうしてください。俺も師匠を告発したくないんで」

「お詫びも込めて、どうせ今日詳細公開だし、許可は得てるから今回の合同授業の詳細」

 

 そう言って師匠は俺に数枚の紙を手渡してくる。この人、はじめからこうして俺に伝えるつもりだったんだろうな。なんと言っていいやら。

 

 

「君はもうわかってると思うが、これからの世代は『魔女』との戦いを前提に動いてもらうことになる。アイツは面倒な結界があってタイマンに持ち込んでくるから、1vs1の基本はもちろん、眷属も相当作ってるはずだ」

「それを見越した訓練、ってことですか?」

「そうだね。長期戦を見越したものになる。……悔しいけどギガト、アイツ色々考えてるなぁ」

「そりゃ師匠よりは考えてるでしょうよ。学園長ですよ?」

 

 軽く読んだあたり、3チームに別れたチーム戦といった様子。制限時間内で戦って生き残る、シンプルな形だが、各チームに『トップ』となる生徒が1人いてその生徒が倒されるとアウト。

 

「エア・グラシアスとリィビア・ビリブロード。あれなんだい? おかしいよ。とにかく、あの二人は魔女の結界を破れる可能性がある」

「だからできるだけ多くの生徒が彼女達と連携できたりするようにしたい、と?」

「そういうことなんじゃないかな?」

「とりあえず今はエアと同じチームになれることを祈っておきましょう。アイツと戦うのは、ここではない」

「へーい、ビビってんのかー?」

「ビビってませんが? 今の俺は手札の欠けた状態。アイツを倒すならば俺もパーフェクトコンディションでなければ失礼でしょう」

 

 ふと、時計を見てみるとそろそろ良い時間だ。師匠との戯れもこの程度にしておこう。今日はいかなければならない場所がある。

 

「じゃあ私も行こうかな」

「あれ、師匠も来るんですか?」

「エア・グラシアスの試合は念の為できるだけ私も控えてるよ。ミスって対戦相手の首とか飛ばされたらさすがにその場にいないと間に合わないし」

 

 これから第4闘技場で行われる模擬戦。

 対戦内容はエア・グラシアス対アーリス・イグニアニマ。アーリスは事前に勝つつもりで戦うと言っていた。どんな結末になろうと、この試合を見ないという選択肢は俺にはない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 闘技場は静まりかえっていた。

 

 誰もが開いた口が塞がらない、といった様子だった。

 いつも薄めなリエンすらも大きく目を見開いて呆然としていたし、俺すらも目の前の光景が信じられなかった。

 

 

 炎を纏い、『猛炎(フレア)』は使えない様子ではあったものの剣を構え無傷のアーリスもまた、声を失い固まっていた。

 

 

 

 

 

 無敵の星。

 エア・グラシアスはアーリスの前で血を吐いて倒れ伏していた。

 

 

 

 

 




・アルム・コルニクス
保健室の主。7割くらいの生徒はジョイと付き合ってると思ってるし、残りの生徒はジョイが弱みを握られてると思ってる。

・マグノ・キティ
ジョイのクラスの魔術基礎担当の教師。ギガト以上エア以下の低身長でちびっこ教師として有名だが、ラクシャと同期で『疫竜戦線』では最後に竜にトドメをさした英雄。現在は前線を退いて教職に専念。バツイチ。

・ラクシャ・ジノアビス
リィビアの遠縁の先生。強く凛々しいその振る舞いに一周まわって男が寄ってこないのが悩み。『疫竜戦線』ではマグノと共に前線で戦い、現在は一線を退いている。


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