逆行したら天才イケメン騎士様がロリ巨乳美少女騎士様になってた   作:ちぇんそー娘

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エルデンリングに囚われてました。







19.魔女の足音

 

 

 

 

 

 

 結局、エアは絶対安静とのことでそのまま暫く目を覚まさず。

 俺達は俺達でやることがある為に普段通り学生生活に勤しんでいた。

 

「リエン、お前何組になった?」

「ジョイと同じ組やで」

「俺お前に何組か教えてないよな?」

「個人配布以外にも誰が何処に分けられたかは張り出されとるよ?」

 

 間近に迫った学年合同練習。

 今回の内容はチーム戦。生徒を3グループに分け、それぞれにリーダーを据えてそのリーダーが倒されないように、かつ時間内で可能な限り多く他のグループの生徒を倒す。

 

 ちなみに俺は赤組。リエンとアーリスも赤組らしい。

 

「というか戦闘時間長いな。これ俺厳しいかもしれない」

「私は意外と長時間戦闘は得意だけど……ジョイくんも得意なんじゃないの?」

「体力には自信はあるが……長時間戦闘や連続戦闘になると、『黒耀(バロール)』が使えねぇ」

「あ、そっか……」

 

 実際この学年でも体力というか、無茶な暗示の使い方をしてるおかげで体がぶっ壊れていても、悪環境でも自分の力を引き出すということにはそこそこ得意な意識はあるが、かと言ってそれがなんだってくらいに厳しいものだ。

 

 更には心配しなきゃらならないことは他にもある。

 まず、他のグループのトップとなる相手。俺の性質上勝ちに行くにはコイツらを倒せばいいんだが……。

 

「リィビア・ビリブロード、アウル・ノムト。他のグループのリーダーもエグいなぁ」

「やっぱ他のグループの子達もリーダーを倒すよりは他狙いのタイムアップで残り人数勝ち狙いに来るかなぁ? さすがに、この2人を倒すのもあんまり現実的じゃない、よね?」

 

 青組のリーダーはご存知リィビア。

 そして緑組は……アウル・ノムト。コイツもやばい。エア、リィビアに並ぶ時点でやばいし、何よりこいつの事は()()()()()()()()()()

 この世代でもトップクラスの化物。エアやリィビアが突然変異の怪物なら純粋培養の血統からして特別な完璧超人。戦いたくねぇ〜。

 

「かと言って……うちのリーダーは長期戦不利やもんなぁ」

「グラシアスさん、病気らしいもんね。一応参加予定ではあるらしいけど、他の組はみんなそこを狙ってくるだろうし」

 

 エア・グラシアスの先天性の疾患。

 デウスにはなかった明らかな異常。これについて色々と考えなければならない。なんだかんだ、俺は魔女について最終的にアイツが、エアが倒してしまうからと安心しきっていた部分がある。

 だが、魔女は数の力も凄まじい敵だ。眷属の数で人類という巨大な組織相手に個人で戦う厄災。もしも、もしもエアがその途中で動けなくなったら? 

 

 

「ジョイくん……? おーい、聞いてる?」

「ん、あぁ……悪い。ちょっと考え込んでた」

「考え込むのもわかるくらい厳しいもんなぁ。いっその事、俺ら全員でエアをサポートして、他のグループのリーダーぶっ倒して貰うとか?」

「リィビアもアウルも広範囲攻撃持ちだ。下手にエアを補佐しようとしても邪魔になる。それに、幾らエアでもあの2人相手は瞬殺は無理だろうし、何より相手もまともに戦わないだろ」

「それもそやな。まー考えても埒が明かん。話し合いの日程は設けられてるんやから、そん時までに考えとくしかないな」

 

 

 学生生活のこと、魔女のこと。色々と思考が行ったり来たりしているが、いまいち纏まらない。

 自分で思うよりも俺は動揺してるかもしれない。俺にとって、エア・グラシアスは完全に女になったデウス・グラディウスだった。だからこそ、彼女に弱いところがあるなんて考えたこともなかった。

 

 だって、デウスは一度も負けなかった。

 実際、アーリスとの勝負は無効試合になった為戦績としてはエアにも敗北はない。けれど、デウスならあんなところで倒れたりもしなかったはずだ。なのに、なんで。

 

 

 モヤモヤとした熱を持った頭では、何を考えても結局最後は何も分からない、という結論になってしまった。

 

 

「グラシアスさんのこと、考えてるんでしょ」

「……そんなに顔に出てるか?」

「さすがに俺でもわかるわ。お前さん、ベタ惚れやもんね」

「お前次そういうニュアンスの発言したら殴るからな? アイツは、そういうのじゃねぇんだよホント」

 

 エアのことは確かに見た目は好きなタイプではあるが、それ以上に女子として生まれたデウスって言う部分が大きすぎる。アイツが女だったらこんな感じなんだろうなぁ、と思わせられる部分が沢山あって、アイツと変わらない部分があって。

 

 それでいて、アイツと決定的に違う部分がある。名前をつけることが出来ない難しい感情がずっと渦巻いてしまってアイツとの会話はいまいち思考が纏まらなくなる。

 

「2人はこの学校で初めて会ったんだよね? ずっと思ってたんだけど、その割には距離が近いというか……なんか特別な秘密とか、あったりするの?」

「……ないんだよな。うん、ないはず」

 

 アーリスのその言葉を聞いてそう言えば、と思い出した。

 確かにデウスは距離感が近い男ではあったが、幾らなんでも異性にまで踏み込むような男ではなかった。その点で言うとエアは少々、俺との最初の距離感から何処かおかしかった気がする。

 

 異常に馴れ馴れしい。

 まるで昔からの知り合いに会うかのような気軽さと、本の中でしか知らない英雄に会うかのようなたどたどしさ。相反する2つの反応が1つに合ったような不思議な反応だった。

 

「さすがに、もうエアは起きてるよな」

「え、まぁ。起きてるんじゃないかな」

「ちょっと会いに行ってくるわ」

「え、今? 急だね……あ、ホントに行くの?」

 

 居ても立ってもいられない。アイツのことで1度気になると自分を抑えられない。

 とにかく何か、エア・グラシアスという女をデウスとして見られるような何かを求めて、俺は自分の意思では無いかのように勝手に足を動かしていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……ずるいよね、グラシアスさん」

「なにが?」

 

 心の中で呟いたはずの言葉が声に出てたと気がついたのは、リエンくんが間の抜けた声で返答してきた時にようやくだった。

 すぐに言い訳をしようと思ったけれど、彼ならばまぁいいかという気持ち半分、残り半分はこのまま抱えていたらいつか刺々しい感情になってしまうのではと。

 

 忍び寄る魔女の足音が怖くて、言葉にしていた。

 

「だって、今だってただ寝てるだけなのにあんなに思って貰えて、羨ましいと思うのはおかしいかな?」

「心配されるのは病人の特権や。そして、病人ってのは得てして誰かにそういう気持ちをさせるのを申し訳なく感じてごめんって謝る。本人は悪くないし誰も悪くないから救われない。羨ましがるものやないやろ」

「リエンくん、捻くれてない正論吐けるんだね」

「そう言うイグニアニマのお嬢様は、案外口悪いよなぁ」

 

 口が悪いと、そういう自覚はなかったが多分それは私が性格が捻くれているからなのだろう。表面的に捻くれてるように見せようとしてる彼と、内面的に捻くれてしまってる私は、変なところで話が合う。だからこうしてなんだかんだで友人のような間柄になってしまってるのかもしれない。

 

「私、ジョイくんのこと好きなんだよね」

「知っとるわ」

「………………みゅぇ!?」

 

 クラスの他のみんなに聞こえないように。そっと呟いた言葉への反応が予想外過ぎて思わず変な声が飛び出してしまった。

 

「アレで隠せてるつもりな方がおかしいやろ。時々ジョイを見る目怖くて夜中に思い出してトイレ行けなくなってたわ」

 

 確かに隠しているつもりは無いが、そんな大っぴらに好きですとアピール出来るほどの肝の太さも私は持ち合わせていない。むしろ、それくらいになれたらと思わなくもないが、さすがにそれは卑し過ぎる。

 

 まず私は死罪保留人。

 その罪を濯ぐことが出来なければそういう気持ちを伝えるのは相手にとっても迷惑な事だ。

 

「妬ましいって、時々思っちゃうの。それは悪いことなのかな?」

「アーリスは16なんか? そんなもん、普通の人間はもっと小さい頃に気がつくもんやで」

「それ、馬鹿にしてる?」

「褒めてるんよ。子供の純粋さを忘れないまま大人になれたんやなって」

「馬鹿にしてるよね?」

 

 でも、子供のままというのは言い得て妙だと思った。

 私が魔女と契約した、髪の色が変わってすぐのあの日。あの幼い日の思い出から、私はまだ1歩くらいしか進めていない。

 

 

 指先で弄んだ髪の毛は、相変わらず瑠璃の色。

 

 

「それでも、やっぱりズルいよ。勝ち逃げは」

「逃げるのはあかんよな。でも、追い詰める努力もせずに逃げられたと口にするのは待ちぼうけの愚者やで?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 頭を冷やすがてら、俺はとりあえず保健室に向けて歩いていたがなんということでしょう。学校内で軽く迷子になってしまっていた。

 前世で通っていたとはいえ学校の内部構造まで完璧に覚えてないし、それに加えてこの学校は広すぎるんだよ。保健室も何個あってエアがいたのは何処だったか。

 

 そもそもすぐ前に一度訪れたことのある場所なのに忘れてたあたり完全に気が動転している。冷静じゃないのが自分でもわかる。

 

 

「エア・グラシアスのいる保健室なら進む方向と反対だよ」

 

 

 廊下を歩いていると、誰かにそんな声をかけられてしまう。

 顔に出ていたのか、それとも師匠の類のバケモノ特有の読心術なのか。今は微妙に判断がつかないがとりあえず声に感謝しつつ踵を返して来た道を戻ろうと、体を動かした。そのつもりだった。

 

 

 あれ、と声を出そうとしたがそもそもそれが音にすらならない。

 

 

 俺の意思に反して体は視線を動かすことすら許されず、細胞一つ一つを丁寧に鎖で縛られたかのように動かなくなっている。力が入らないが崩れ落ちることも無く、ただその場に停止している。

 

「さて、と。さすがに私でも世界を止めるのはあんまり長くは厳しいからね。早めに話を済ませてしまおう」

 

 すれ違った声が無音の世界でカツカツと、時計の音のように規則的にハイヒールの音を立てながら近づいてくる。真綿のように、麻縄のように、断頭台のように。近づく度に強く強く首を絞めてくるかのようなその声。

 

 知っている。

 知らないはずがない。

 忘れられるはずがない。

 

 その声は死だ。

 ジョイ・ヴィータという人間にとって、それは間違いなく死であった。本来なら経験するはずのない、1度目の死という概念。それを俺に与えた最強最悪の存在。

 

 

「喋っていいよ。()()()()()()。ジョイ・ヴィータ」

「魔女……ッ!」

 

 

 無機物めいた笑みを浮かべる灰色の髪の女。

 彫刻のように美しい其の名は『魔女』。

 

 魔術世界における、机上の空論たる破壊の権化。

 神話の世界のような力を振るうことを許された『魔王現象』と呼ばれる厄災の一つ。

 

 

 そして、前世で俺を殺した張本人。

 

 

「可愛い女性に話しかけられたんだ。もう少し、嬉しそうにしてもいいんじゃないかな? それとも、やっぱり腹に風穴を開けた相手は怖いかな?」

 

 知るはずの無い言葉をペラペラと、当然のことのように魔女は語る。

 それはジョイ・ヴィータという男の最期の話であり、この世界で俺以外誰も知る由のない未来の話。

 

「忘れるわけないじゃない。貴方は、私の死の原因の一つだった男なんだから」

 

 こちらの考えを先読みしてくる、俺の周りの人間がよくやってくるその行為も、いつもの相手ならば訝しみながらも流せるが魔女が相手となると思考が白になりかける。

 どこまで読まれている、なんのために読んでいる、そもそもなぜ、なぜ、何故。

 

「なんで知ってんだよ、俺の事を」

「今日はお話に来たんだ。私の駒の一つ、アーリス・イグニアニマをよくも壊してくれたねって」

 

 話を聞く気がないのか、聞こえていないのか。

 笑顔から表情を少しも揺らがせないまま魔女は勝手に話を続けていく。

 

「アレの呪いはそれなりに強めに設定してたのに、どうやって破ったのかな? あのクソ野郎は使い物にならないように丁寧に潰したし、クソアマ共はまだ対策を整えてないはずなのに」

「お話に来たなら、俺の話も聞けよ。これじゃあ壁に喋ってるのと何も変わらねぇだろ」

「ふぅん……。あの男の後ろでビクビク震えていただけの雑魚が、随分と言うようになったね」

 

 そうして魔女が一歩、俺との距離を詰めるだけで正直胃の中身を全て絞り出されるかのような気持ち悪さが全身を駆け抜ける。

 目の前にいる相手は間違いなく俺を殺した相手だ。平静を装ってるだけで、内心はもう涙流して命乞いしてしまいたくなっている。でも、そうしていないだけきっと俺は成長しているのだろう。

 

 それに、だ。

 その情けない内心を見透かされている気がしない時点で魔女の底というものが見える。

 

「あ、ちなみに今の私は分体みたいなもので。本体と比べたらあらゆる出力が低いから絶望していいよ」

「どいつもこいつも……俺の心の中を読みやがってホントなんなんだよ……」

 

 喋る以外のことに体はピクリとも動かない。

 意識してみるが『黒耀(バロール)』の起動もままならない。勝負を挑めば勝率はゼロ、だろう。俺の命は魔女の掌の上。殺す気になればいつでも殺せる。逆にそれをやらないということは、それなりの理由があるはずだ。

 

「言っただろう。今日は貴方とお話に来たの。……まず、()()()は誰にも言わない方がいい。何が起きるか、私ですら分からないから。もう一つ。この世界では、私を倒せるのはもう貴方だけだ。貴方が頑張るしかない。全ての命運は貴方に託されている。世界は、貴方が救うしかないんだよ」

 

 魔女は英雄になれ、と。

 宣告でも通達でも告知する様子でも無く。お前には無理だと、絶望を叩きつけるように俺にそう囁いた。

 

 それは明確な嘲笑だった。

 俺を弱者として見ているからこそ、そんな言葉が言えるのだと、貼り付けられた笑顔を見ればすぐに分かる。

 

 

 それはムカつく。楽しくない。

 俺をバカにされるのはいい。実際俺は自分が才能がないことはよく理解しているし、俺一人では英雄になんてなれないとわかっている。

 

 ……でも、俺は出逢いと機会に恵まれた。

 俺が英雄になれないとしたら、それは俺の過失だ。最初から決めつけるのは、この学園にいる、俺の周りにある全ての出逢いへの侮辱に他ならない。

 だから言ってやらなければならない。巫山戯るな、馬鹿にするなと声を出してやらなければならない。

 

 

 なのに、声は形にすらなってくれない。

 目の前の女が恐ろしくて、震える声帯は明確な死をイメージして、音を作り出そうともしない。

 

 

「その様子じゃ、心配は要らなさそうだけど忠告ね。──────私の邪魔をしようだなんて、考えない方がいいよ。雑魚。次があったら、前よりも残酷に殺すから」

「おい、何俺の生徒に粉かけてんだ灰被り」

 

 

 魔女が声のした方向に振り返るよりも速く、その頭部に拳が叩き込まれて水風船が割れるような音ともに魔女の首から上が消し飛んだ。

 

「おいおいおい、時間停めたんだよ? どうやってここまで走ってきたんだよちびっ子学園長」

「答えはてめぇが今言っただろ。全部ぶっ壊して、走ってきた」

「……脳筋が」

 

 口もないのに、それだけ吐き捨てて魔女の体はボロボロと灰のように崩れ始める。

 同時に魔女の力が解けたのか俺の体は動くようになる。動かした視線の先では、この学校の長である少女、ギガト・レムノが風に流されていく魔女の体の破片をいつまでも目で追い続けていた。

 

「……無事か、ジョイ・ヴィータ」

「は、はい。助かりました、学園長」

「いや、悪かった。本来ならここに魔女に侵入されている時点で俺の負けだ。……少し調査が必要だ。お前は、今は寮に戻っていろ。あそこは学園で一番安全な場所だ。送っていく」

 

 断ろうと思ったけれど、魔女のことを思い出すとそれすら出来ずに俺は学園長に着いてきて貰いながら寮へと戻ることにした。

 

 途中の道では、恐らく学園長が俺の元に駆けつけるためにぶち壊したであろう壁の修繕やら、魔女の痕跡を探るために先生達が忙しなく駆け回っていたりと、まるで戦場のように空気がピリついていた。

 

 途中で遠くに先生に混じって何かの解析を行っているリィビアや、俺と目が合ったのに先を急ぐ様子で早足でどこかに去っていってしまう師匠やらが目に入った。

 

 彼女達は、何か出来る側の人間なのだろう。

 魔女程の敵が出てきても、対処をするために戦う側の人間。

 

 

 

 俺は結局、デウスの後ろで震えていただけのあの頃から何も変われてはいなかった。

 

 

 

 

 

 

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