逆行したら天才イケメン騎士様がロリ巨乳美少女騎士様になってた   作:ちぇんそー娘

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21.負けたくない

 

 

 

「粗茶です」

「どうも」

「粗茶です、ってそれ断言するもんじゃないやろ。断言するなら出すのは失礼ちゃうん?」

 

 仕方ないだろ。女の子を部屋に招き入れてお茶をご馳走するなんて初めてなんだよ。今まで師匠くらいにしか茶なんていれた事ないし。

 いつの間にか生えてたリエンを無視しつつ、とりあえず出した茶をフーフーしながら飲もうとしてるクラキアに視線を移す。

 記憶の中にあるクラキアという人間と瓜二つ、まぁ本人なのだから当然だろう。あいも変わらず感情の読めない鉄面皮でずっと息をふきかけてお茶を冷ます。自分用に淹れたのを口に含むが、うん、そこまで熱くないよな? 

 

「ふー、ふー……うん。まだやめておきましょう。まず、突然の来訪を失礼しますね。もう合同訓練まで時間がないので」

「どうせ暇してたから俺はいいけど、許可とかよく降りたな」

「安心してください。何か間違いが起きたら窓の外からマグノ先生の狙撃で私も君もリエンくんも首から上が吹き飛ぶので」

「え、俺もなん?」

 

 窓の外を見てみるが、マグノ先生の姿は見えない。冗談、と思いたいがあの人が本気で隠密したらそう簡単には見つけられない。そう考えると自然と姿勢が良くなってしまう。

 

「それで、本日のご要件は……?」

「なんで急に敬語なんですか? 肩の力を抜いてください。話なんて合同訓練のことに決まってるんですから」

「すいませんほんと、女の子と話すの慣れてないんで……あと、マグノ先生云々はホント?」

「警備はしてますが変なことしたり魔女がゴキブリみてぇに汚く湧いてこねぇと何もしませんよ多分。……うん。まだ熱い。それに、君はいつも女の子侍らせてるって噂を聞いてますが」

 

 また流れてるのかよその類の噂。そろそろ俺は風評被害で訴えたら勝てると思うんだよね。

 

「具体的にどんな感じの噂が?」

「アーリスさんが君を見る目がいつも獲物を見つけた狼の目になってたり、リィビアさんが登校した時ずっと君かエアさんの話しかしてなかったり、エアさんはなんかずっと君とベタベタしてるらしいし、アルム先生と人目をはばかって密会してるとか……」

「全部事実やん」

「ゔー! 最後! せめて最後くらい否定させろ!」

「最後以外は認めるんですね。モテモテですね。女誑し」

 

 最後以外は俺も身に覚えがあるので否定はできない。最後のは……最近なんか俺と師匠のことで明らかにやばい感じの噂があったから、そう言うのに気を付けてただけなのに。もう俺と師匠は喋らなくても倦怠期とかの噂が流されるんじゃないのか? 噂の流れ方の治安が最高峰の教育機関のそれじゃねぇぞ。

 田舎のおばちゃん達の井戸端会議の方がまだお上品な噂の流れ方してたぞ。

 

「……まぁ、そんなわけで君は実は結構うちの学年では有名人なんですよ? そりゃ、あのリィビア・ビリブロードと相打ちな訳ですし」

「やっぱそれだよな……でも今やったら100%負けるから期待しないでくれよ」

「期待してませんよ? だって君、今やったらリィビアさんに多分一撃で負けるじゃないですか」

「あ、ジョイが泡吹いて倒れた」

 

 事実は時としてどんな言葉より残酷に人の心を抉るからね。

 謙遜はしてるけど、リィビアとの相打ちはめちゃくちゃ頑張ったと思ってるし、話題に出されるとちょっと嬉しい部分があったりする。

 実際もう一度やったら同じ結果にはならないだろうけど、もっと言い方あるだろ泣いちゃうぞ。

 

「あ、ごめんなさい。君を悪く言ったんじゃなくて、事実として……」

「ダイジョウブ。キニシテナイヨ……」

「かなりダメージくらっとるやん」

 

 悪気はないと思いたいが、クラキアはあまりに表情が変わらないのでいまいち感情が読めない。

 けど、実際もう一度リィビアとやれば俺は確実に負けるだろう。

 アイツは正真正銘の天才で、正真正銘の努力家だ。一度したミスを繰り返すような女じゃない。

 

「メンバーも見ましたけど、私達の組は火力や防御面で特筆した子は私くらいで他の子はオールラウンダーや、君やリエンくんみたいな特筆した何かを持ってる子が多いからね。戦法としては持久戦の方が向いてるんだけど」

「……やっぱエアのことは噂になってるよなぁ」

「そうですね。エア・グラシアスが長期戦に向かない、と言うのは知れ渡ってますよ。皆そこを突いてくるでしょうし、私達の組はそこをどうにかしなければならない」

 

 他ともかく、リィビアやアウルと言った敵の大将戦力を落とすにはエアが必要不可欠だ。そしてそれを止めるのもエアが必要不可欠。どんな戦いになるにしろ、彼女が長期的に戦う必要性は大きくなる。

 

「一瞬で終わらせる、ってのは……」

「本人に話は通せてませんが、その対策を相手もしてくるだろうし幾らエアさんでも無茶でしょう。そこで、お話に来ました」

 

 クラキアは冷まし続けていた茶を一口含もうとして、熱そうだと思ったのかそれを止めてから口を開いた。

 

「エアさんが一瞬だけ戦えればそれでいい。そんな作戦を考えてきました」

「……そんな都合の良いモノあるのか?」

「ご安心を。私の計算が正しければ、2%の確率で成功します」

「そうか……いや、待て。今なんて?」

「……だいたい1×2%の確率で成功します」

 

 濁したけどそれ何も変わってないよな? 掛け算で盛ろうとしたけど全く意味がないよな? 

 

「2%って、それ無理だろ」

「なんですか。2%じゃ無理だって言うんですか。むしろ2%も可能性を開いた私に感謝してもいいと思いますが」

 

 無表情のまま開き直ってるクラキア。コイツ無表情で機械的な冷徹な女かと思ってたけど違うな。割とリィビアとかそっち系の面白女だぞコレ。

 

「まぁ、他の作戦やと1%もないんやから2倍は偉大なんやない?」

「そうだそうだ。リエンさんの言う通りです。ちなみに他のチームメイト全員には『無謀』って言われました」

「ダメじゃん」

 

 なんか頭痛くなってきたな。

 どうしてこう、俺の周りの天才は色々と話してみるとアクが強い奴が多いんだろう。手元にあった茶はすっかり温くなっていたが、その温さがピリピリと痛む頭には心地良かった。

 

「ちなみに、参考程度に聞くけど内容は?」

「この紙に纏めておきましたので、軽く目を通してください。数分もあればわかるように分かりやすくしておきました」

 

 本当に薄い数枚の紙にまとめられたその作戦とやらに目を通す。

 なるほど。確かにこれは全員に言うだけ言って、俺に相談すれば実行は出来なくないな。

 

 完遂が不可能という点に目を瞑れば。

 

「いやこれ無理だろ……。特に俺とかクラキアの負担がデカすぎる。そりゃあエアをカバーしなきゃならねぇのはあるけど、アイツをカバーしようだなんてそんな……」

「…………」

 

 さすがにそれは理解しているのか、クラキアは表情を変えないままゆっくりと目を逸らして、椅子から立ち上がり、床に寝転んだ。何故? 

 

「あの、クラキアさん……?」

「やると言ってくれるまでここから退きません」

「はい?」

「やると言ってくれるまで、ここから、退きません」

 

 これは、もしかして。

 駄々を捏ねているのか……? 

 一応16歳であろう女の子が、初対面の男の前で。

 

「再考を申請します。もう一度、どうかもう一度」

「リエン、この子ってお前みたいな扱いしていいタイプ?」

「ダメに決まっとるやろ。俺みたいな扱いをしていいのは俺みたいなクズだけや」

「お前自覚してるなら直せよな。うーん、どうしよう」

 

 断固、という感じで固まってしまったクラキアを2人で囲んでぐるぐるし始める。これじゃあ何かの儀式みたいだなとどこか他人事のように思いながら、改めてクラキアの作戦というものに目を向ける。

 彼女の面子の為作戦と言ったが、これはお世辞にも作戦とは呼べない。希望的観測と、死ぬ気の努力と、幸運が積み重なって奇跡的に実現する現実感のない夢のような何か。

 

 それが出来れば苦労しない、と言いたくなるような代物だ。

 

「……あんまこういうこと言わん方がええんやけど、クラキアはな。ここまでチームメイト全員に丁寧に頭下げて回っとるねん。自分の作戦に付き合ってくれって」

「全員に?」

「そんで全員に断られとる」

「全員に!?」

「全員にやね。ジョイの言う通り無茶な作戦やからね。こんなんやるなら、各々で頑張って見た方がまだ希望がありそうやし、もしもジョイとか俺とかクラキアが一つでもミスったり、相手に気が付かれれば修正なんで全く効かない。作戦とも言えないお粗末なモノや」

「リエン、お前やめろ。正論で叩くな」

 

 クラキアが表情一つ変えないまま瞳を潤ませて震え始めてしまっている。これ以上正論で叩けば多分ガチで泣き始めるだろう。

 

「いえ、知ってます。私は別に自分が優れてる人間だとは思っていませんし、作戦が作戦とも呼べないのもわかっています」

「……なんでこの流れでジョイが苦しそうな顔しとるん?」

 

 いやだって、だってよ? 

 

「クラキア、お前普通に優れた人間だろ」

「……」

 

 彼女には生まれつき特殊な体質がある。それを活かす為の努力だってある。

 扱いが難しく、継承しているだけで取説もないような固有魔術『土葬(クラッシュ)』を扱う冷酷無比な粉砕騎士。

 

 ……そんなイメージとは少しだけ違うが、それでもクラキアは優れた人間だ。コイツが優れた側の人間じゃないとしたら俺が普通に辛い。何も無ければこのまま俺たちの世代で7番目になるような存在だぞ? 

 

「まぁ、そうですね。きっと私は人並み以上に優れてるのでしょう。今君と勝負すれば多分勝ちます」

「言わなくていいだろそういうこと」

「事実ですもん。それとも、私に勝てる秘策とかあります?」

「無い。お前には俺は勝てないよ」

「君に勝っても嬉しくありません」

「一言多いんだよ。友達いないだろお前」

「……2人います」

「はい俺は4人いるから俺の勝ちな」

 

 アーリスにエアにリィビアにリエン。俺には信じられる友人が4人もいるからな。このコミュニケーション能力を表情筋と共に失ってる鉄面皮ナチュラル毒舌女よりずっとマシだ。

 

「普段は友達カウントしてくれへんのにこういう時だけとかなんや? 俺達みんな都合の良い女なんか?」

「こういう使い方くらいさせて貰えないと普段迷惑ばっか被ってる俺が不憫だろ」

「……でも私の方が強いですよ」

 

 何でコイツはここまでしてマウント取ろうとしてくるんだろう。

 段々と、俺の中でのクラキアの評価がアーリス(マトモ)寄りからリィビア(ヤバい)寄りになりつつあるが、距離感を測りつつ会話を進めていく。

 

「いやほら、負けるのって悔しいじゃないですか。私嫌いなんですよ、負けるの。勝って気持ちよくなりたい。負けて悔しい思いとか、したくないです」

「リエン、コイツ帰らせろ」

「了解。ほな帰ろうな〜」

「断固拒否します。ボイコットです」

 

 ついに本性を見せたな。俺の周りにまともな女が現れるわけがなかったんだちくしょう。

 

「いーやーでーす。負けたくないんです。私はぶっちゃけ、勝って気持ちよくなるためだけにこの学校に来てるんですから。あと私以外の人が勝ってるの見るとなんとなく、イラッと」

「カスだ! カスがここにいるぞ! 騎士の誉れに謝れ!」

「うーん……なぜだかわからんけどジョイと気が合いそうに感じたんけどなぁ」

 

 なんて失礼な。

 俺は自分が1位になって気持ちよくなって楽しい思いをしたいだけだからな。こんな敗北アレルギーの性根がねじ曲がった無表情と一緒にして欲しくない。ここまでのセリフを全て表情一つ変えないで吐ける様な女がマトモなはずがない。

 何とかクラキアを部屋から引きずり出そうと、リエンと一緒にこの女の手足を掴んで先程から動かそうとしているがピクリとも動きやしない。

 

「無駄ですよ。『土葬(クラッシュ)』は土属性の最高位魔術の一つ。私を動かすことは大地を動かすこと。それに今動いたら負けな気がして来ました」

「もう負けでいいから! 帰れ! 俺の負け!」

「そういうの……逆に負けた気分になって嫌ですね」

「うわぁー! めんどくせぇ〜!」

 

 でも、ちょっと分からなくもないのが複雑な気分になるところ。

 確かに譲られて勝つのって負けるよりもなんか嫌だもんな。よく師匠がめんどくさくなると『じゃあジョイの勝ちでいいよおめでとうよかったね〜』とか言ってきて死ぬほど腹立ったのをよく覚えている。

 

 もう諦めてこのまま飽きるまで待っていようかと、放って置こうとしたところでほんの少しだけ、抑揚のないクラキアの声が一段暗さを纏って口に出された気がした。

 

 

「君は、負けるのが嫌いじゃないんですか?」

「……嫌いだよ。楽しくないことは、嫌いだ」

「私も嫌いです。敗北は何も得られない。何かを失い、暗い影を心に落とし込む」

「それは極論なんやない? 負けない方がそりゃあ精神的にええけど、負けることで得られるものも確かにあるやろ」

 

 リエンの言う通り、俺だって敗北から学んだことは幾つもある。

 むしろ、前世での数多の敗北がようやく今世での1勝1分に繋がってると考えれば俺ほど敗北のありがたみを知ってる人間は多くはないだろう。

 

「敗北から学べることは確かにあれど、それは敗北から学べることではありません。──────後悔も準備不足も実力不足も、結局は言い訳に過ぎない。敗北で得たと感じているものは、勝利する為に足りなかったモノを補っているに過ぎない。敗北すれば失うだけです」

「それは……」

 

 違う、とは言いきれなかった。

 敗北すれば失うだけ。反省も後悔も、敗北する前に強くなっていればしなくていいもの。その通りであるけれど、それを認めてしまうのは人間の生き方に反しているような気がしてしまう。

 

 でも確かに失ってしまうのだ。

 脳裏に浮かぶのは、クラキア・ソナタの最期。内臓を空にされ、腹の中に蟲を詰められ死した後でも飼籠として全身を犯され続け晒されていたあの死体を思い出す。

 

 

「期待も、未来も、大切なものも。勝てなければ失う。そうやって負けることを恐れることは、臆病と言うんでしょうか?」

 

 

 彼女の言葉は正論ではなく、彼女の中での自論である。

 その前提の上で、そりゃあそうだと俺は納得していた。

 

 戦う前から負けるかもしれないと考えて戦って、それで得た偶然の勝利なんて、いつ崩れるかも分からない砂上の楼閣。

 負けるかもしれないと考えて戦って、当然負けて得られるのは負けた事実だけ。勝とうとしなければそこに反省は伴わない。

 そして負ければ何かを失う。自尊心や成績ならまだいい。けれどそれはいつか未来や命、命より大切なものに置き換わっていく。

 

 

 魔女と戦うというのは、そういうことだ。

 ビビって震えていてもこの先あの女との戦いは避けられない。

 

 やるべき事は考えることではない。

 まずは情けなく震えずに済むだけの強さと自信。それが無ければ話にすらならないのだから、今はとにかく強くなるしかない。

 

 

「……はぁ、お前の作戦さ。俺が死ぬ気で頑張れば成功率上がるんだよな?」

「良かった。君と私は、似たもの同士みたいですからね」

 

 

 表情は何も変わっていないのに、クラキアは確かにニヤリと笑った。そんな気がした。

 どうしてこう、俺の協力者というものは弄れた性格をしているのか。それでも一つ言えるのは、多分クラキアと共に挑む合同訓練は、中々に楽しいものになる。そんな予感がしてつられて俺も口角を吊り上げていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ただいまー」

「ここ俺の部屋です」

「知ってる。寝る場所無くなっちゃったからここに避難してきた」

 

 俺の返答なんて聞かず、師匠は床に倒れ込んで器用にもそのまま服を何枚か脱ぎ捨てて肌着だけになっていた。

 

「こんな時間まで勉強かい? 偉いねぇ学生は」

「合同訓練が近いので情報は出来るだけ詰めておこうと。師匠こそ、遅くまでご苦労様です」

「うんー。さすがに魔女のこととなると他人事じゃないからね。それに、私がちゃんと解析結果出さないと、合同訓練中止になっちゃうかもだから」

「中止、なるんですか?」

「まさか。君達の青春を、あのおじゃま虫には食わせはしないさ」

 

 たはは、と力なく笑う師匠にはいつものキレがない。

 相当疲れているのか、それとも何か他に理由があるのか。俺には判断がつかないが、とにかく今は目の下のクマが酷いので1秒でも長く寝た方がいいだろう。

 

「ジョイ、コーヒー」

「いつものやつもう淹れてあります」

「うむ。苦しゅうない」

 

 何故か俺の部屋には師匠が来た時のためにコーヒーが常備されている。なんだかんだ、今世では親よりも長く付き合ってる人だ。もう俺にとって師匠のためのコーヒーを用意しておくことは日常の1つであり、用意しておかないと不機嫌になるので必需品でもある。

 

「……ごめんねぇ。魔女のことで、心配かけたよね」

 

 コーヒーを一口含んで、師匠は弱々しくそんな言葉を呟いた。あぁこれ、相当疲れているな。少なくとも数日は寝てない感じの疲れ方だ。

 

「魔女のことは師匠は関係ないでしょう。むしろ、師匠が解析とか頑張ってくれてるからみんな安心できてるんですよ」

「ううん。ダメだよ私。もっと、ジョイを安心させてあげられるような、かっこいい師匠になりたいのになぁ……ダメだダメ。うー……」

 

 カフェインを摂っていると言うのに、師匠はそのままモゴモゴと言葉にならない声をしばらく出した後に、力尽きてか寝息を立て始めてしまった。

 おかしなことに、俺は床で寝てしまった女性の介抱の仕方を完全に理解している。いつも通りに師匠を起こさないように持ち上げて、俺のベッドに寝かしてから俺も寝るためにソファに寝転んだ。

 

「なんだかんだ、期待してもらってるんだよな」

 

 師匠との関係は一言で言い表せるものでは無いが、少なくともこの人は俺に期待をしてくれている。

 だからこそ、こんなに頑張ってくれてるし、『黒耀(バロール)』を俺に預けてくれた。

 

 負けるということは、この人の期待を裏切るということでもある。

 それは全く楽しくない。アルム・コルニクスからの期待を裏切ることだけは、絶対にしてはいけない。

 

 だからそろそろ期待に答えなくちゃいけない。

 俺が、ちゃんと戦えるところを見せる。そうして少しでもこの人を安心させられれば、それは師匠孝行になるだろう。

 

 

 

 

 

 

 





・『顎獣アトラスの巫女』
巫女とは、神獣に仕える家系に極たまに生まれる生まれつきの特殊体質持ちのことである。現在正式に継承を行なっている家系は2つで、現代で確認されている巫女は3人。ソナタ家は正式に継承を行なっている家系ではなく、先祖が巫女の血族であるためクラキアに隔世で素質が顕在した。
顎獣は巨大な顎と百足を持つ獣。降り星すらその顎で砕いたとされるこの獣の巫女に与えられる加護は『剛力』。通常の人間とは比べ物にならない筋力、骨密度を得る。

ついでに体重が増える。


・師匠の秘密
お菓子の最後の1つをジョイとジャンケンで取り合って負けると大抵めちゃくちゃ嫌味言ってくる。

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