逆行したら天才イケメン騎士様がロリ巨乳美少女騎士様になってた   作:ちぇんそー娘

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22.黄金世代 1

 

 

 

 

 

「いえーい! 何とか間に合ったよみんな! 僕がきたからにはもう安心だ。赤組に勝利を約束……する、から。もうちょっと明るい感じで……ね?」

 

 赤組の控え室は控えめに言って地獄だった。

 別にそれまでは今日は頑張ろうなーくらいの雰囲気だったのだが、開始ギリギリになって現れたエアの顔色が死んでるんじゃないかってくらい生命の色が失われている色だったのだから、誰だってそうなるだろう。

 別に俺は心配なんてしてないけどな。エアに心配なんて必要なわけが無い。なので決して顔色とかの心配はしていない。

 

「グラシアスさん……その、大丈夫なの?」

「大丈夫だよ。学園長も『無理しないって約束できるなら参加してもいい』って言ってくれたもん」

 

 顔を顰めて舌打ちしながら言っている学園長の姿がありありと想像できる。

 あの人は何より学生の自由を潰すことは嫌いだが、学生に無理させることも嫌いそうだし、苦渋の決断をさせられたのだろう。それなのに本人はこの有様である。それとも我慢できずブチ切れて説教したがエアが聞いてないだけか。

 

「エアさん、一応元気になったようで何よりです」

「ありがとう……えっと、クラキアちゃん、だったかな?」

「む、名前を教えた覚えはありませんが……私が有名人だということにしておきましょう」

 

 誰もが話しかけづらい雰囲気になっていた中で、先陣を切ってエアに話しかけたのはこの空気の中でも無表情を貫いていたクラキアだった。

 

「君は普通に上手く逃げ回ってさえいてくれれば、私達が華麗に赤組を勝利へと導いてみせるさ。だから安心して逃げてくれたまえ」

「でも僕強いから、僕が頑張った方が勝率高いと思うよ」

「……………………うん」

「諦めんなよ」

 

 思わず声が出てしまった。

 なるほど、クラキアはマウント取れない相手とだと全く自分の意見を出すことも出来ないのか。相手見てマウント取りに行くの普通に最悪じゃねぇか。知りたくない性悪さばっかり知る羽目になる。

 

「大丈夫だって。自分で言うのもなんだけど、あれだけ入学式で大きな口を叩いたんだ。大言壮語にはしないさ。実際、僕は強いからね」

 

 そうやって力強く笑うエアを見ると、何故だか大丈夫なんじゃないかっていう根拠の無い自身が湧いてきてしまう。

 だって、その笑った顔はあまりにデウスにそっくりで。アイツならこんな状況いつも通りサラッと解決してしまうと本気で心の底から思えてしまう。

 

 デウスという男を知らない他の奴らですら、その根拠の無い説得力に呑まれているのに、デウスを知る俺が信じてしまうというのは当然の話だろう。

 

「よーし、じゃあみんなで頑張ろー!」

 

 

 

 そんなわけでとりあえず、みたいな雰囲気のまま最後の作戦会議の時間も終わってしまった。

 もうあとは始まるだけなのだが、やっぱり不安なのかクラキアは遠目から見てもソワソワとしている。

 

「……ジョイくんってソナタさんと知り合いなの?」

「うおっ、何だアーリス急に」

「いや、なんか、ジョイくんさっきからずっと目で追ってるなーって」

「許してやってくれやアーリス。ジョイはな、ああいうちっこい女が好みなんや」

「俺の好みは包容力があってそこに幼さと愛らしさを感じられる、できるだけ俺を褒めてくれる女だが?」

「おっと、最後の条件でジョイの周りには一生現れなさそうになったな」

 

 なんでそんな悲しいこと言うんだよ。俺だって薄々勘づき始めてるから口にしないようにしてたのに。

 そしてそもそもクラキアを目で追ってたのはそういう訳じゃない。あんな性格が終わってる女はこちらからノーセンキューだ。

 

 単純に、今回の訓練はアイツはどう動くんだろうなという心配だ。

 

「別にエアが動き回ったら出来なくなる作戦でもないんや。ジョイはあの子の言う通りにしとけばええんちゃう?」

「そうだなぁ……。アーリスはどうするんだ?」

「私は、結構広範囲攻撃が主体だから、出来るだけ味方のみんなには私を見つけても近づかないでって言ってあるよ。……じゃ、また後でね」

 

 それだけ言うとアーリスはそそくさとその場から離れて行ってしまった。なんだか少しいつもと様子が違うような気がする。眉間にシワがよってたし、割と目が怖いのはいつもかもしれないが何度が怖かった。

 

「向こうから話しかけておいて、なんか釈然としないな」

「そろそろジョイはアーリスの気持ちを汲み取った方がええで」

「いや……勘違いとかだと怖いじゃん。自意識過剰みたいで気持ち悪いし」

「自意識過剰の化身みたいなもんのくせに変なところでチキンやな」

「うるせぇ。女の子と喋ったことあんまねぇんだよ」

「よくそんなポンポン景気よく情けない発言出せるな?」

 

 なにか言い返してやろうと思ったけど、特に思いつかなかったので黙り込んでしまった。しかしこれは認めたくない。情けないのはわかってるけど、それはそれとして自分の非は認めたくない。

 

 

『はーい、待機中の学生のみなさーん。これより訓練を開始しまーす』

 

 

 ようやく何か言い返そうと紡いだ言葉は、気の抜ける甲高いマグノ先生の声でかき消されてしまった。

 

『各自、事前に渡したバッチはつけてますね? それは戦闘続行不可能になった時、またはそうなったとこっちで判断した時に転移が働くようにするための機材なので外さないでくださいね〜。あと、第三大規模闘技場の外に出ても働かなくなるのでご注意を。まぁ闘技場の外に出たら失格なのでそんな事しないと思いますが』

 

 改めて思うのは、学校の授業の為にとはいえそんなポンポン転移を出来るようにしてあるの凄いな。

 転移は場所等の条件がかなり揃ってようやく使える高等術式なのに、それを大規模かつ精密に行うためのシステムが組まれてしまっている。開発者はもちろん学園長だ。

 

『それじゃあ転移が始まるので、皆さん頑張ってくださいね〜。初期配置はランダムになりますので、何が起きても恨みっこなしですよ』

 

 拡声器越しの声が途切れると、ゆっくりと待機室に魔力の流れが集まっていくのが感じられる。あと数十秒でいよいよ合同訓練は始まってしまうだろう。

 

 

「始まる前に、ジョイ。アーリスの様子がおかしいって話やったけど、それはちゃうで」

「え、何それ今しなきゃいけないやつか? 緊張してきたから瞑想とかしたいんだけど」

「うーん、肝心なところでかっこ悪いやつやな。まぁ言っとくで。()()()()()()()()。俺も含め、ここにいる黄金はみな本気。それだけやで」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 一瞬視界が光に呑まれて、次に目を開けると見渡す限り岩、岩、岩、な岩山って感じの地形に俺は立っていた。そして遠くには周囲を取り囲む城壁のような壁。ちょっとした町くらいの広さを誇る大規模闘技場のどこかであることは一目瞭然だ。

 

 とりあえず周囲に誰かがいる気配はない。それに安心して大きく息を吐きつつ、とりあえずどう動くかを考える。

 まずは敵の大将の居場所の確認だ。派手に動いてくれるはずだから、これはきっとそんなに手間取らないだろう。

 

 

 なんて、俺の甘っちょろい考えを吹き飛ばすかのように、空に月が輝いた。

 

 

「……リィビアだな。何するつもりだ」

 

 

 七色の光を纏ったその飛翔物は間違いなくリィビアだ。一応青組のリーダーであるのだから、アイツが落とされたら青組は負けになるはずなのに随分と強気だ。

 まぁ、アイツが他人に落とされることを考えて行動するやつじゃないというのはわかる。じゃあアイツは何をやってるんだろうと考えて、背骨を氷柱に置き換えられたみたいな寒気が体を貫いた。

 

「やば、おいおいおい、嘘だろアイツ!?」

 

 嫌な予感が現実になっていくように、魔力の収束が肉眼でも確認できて、リィビアお得意の七属性飽和による空間飽和の黒色の魔力球が現れる。俺はと言うと、もうなりふり構って居られずにとにかく壁になりそうな場所を見つけ、その裏に隠れてから地面を切り裂いて穴を掘る。

 

 

『こんにちは凡人諸君! これは私の挨拶代わりの一撃だ! 受け取りたまえ!』

 

 

 心底楽しそうな叫びの後、沼に鉄球が落ちるみたいな重い水音が大地に響く。そして一拍遅れて、叩きつけられた魔力が爆発を引き起こして黒色の極光で全てを覆い尽くした。

 

 

 

 

 

「……はは、ははは。ははははは!」

 

 爆発からしばらく。

 ゆっくりと瓦礫を退けて地面から顔を出して。その光景を見てもう何が何だかで笑うしかなかった。

 

 先程までの岩山の光景が、そこにはない。

 せいぜいが瓦礫の山で視界は砂塵を除けば随分とスッキリしてしまった。

 

 改めてリィビアという女の格の違いを見せつけられる。もしかしなくても、この一撃で敵味方問わず吹っ飛ばされたやつはいるだろうし、何よりアイツがなんでこんなことをしたのか一瞬で理解出来てしまった。

 

 

 この攻撃は地形破壊が目的だ。

 障害物を除き、身を隠す場所を可能な限り消し、見通しを良くして、逃げが通じないようにしている。

 

 そして、リィビアがそんな対策をするような相手なんて一人しかいない。そう思っているとまた遠くで黒色の爆発と、それを切り裂く閃光が視界に入る。

 

 やっぱりだ。

 アイツ、エアを倒すつもりでいやがる! 

 真正面から、正々堂々、削り倒してやるつもりなんだ。そして俺が思いつくようなことはリィビアは当然二手三手先まで読んでいるに決まっている。すぐにリエンかクラキアと合流する必要があると駆け出そうとした時、俺のすぐ近くで青色の煙が立ち上った。

 それが何か、なんて考える必要も無い。知らない煙が立ち上るなら、この戦場ではもう理由は一つ。

 

 

「こんにちは。ジョイ・ヴィータくん、ですよね? はじめまして」

 

 

 煙の向こうから現れたのは、少し褐色めな肌の色をした薄い青色の髪の少女だった。

 

「なんだよ、俺有名人か?」

「そりゃそっすよ。うちら青組からすれば、大将のリィビアと相打ちした危険因子、ですからね」

「アンタほどのやつにそう思われるんなら、光栄なのかもしれないがマジで過大評価だからやめて欲しいんだよな」

「謙遜しないで欲しい、ですねぇ。アタシじゃリィビアと相打ちなんて出来ない、ですよ」

 

 剣を構える俺に対して、目の前の少女は軽くジャンプを二回してから拳を構える。

 騎士の戦い方は基本的には魔術と剣術を合わせた中距離戦。その中でも近距離特化の俺のようなやつは少々少なく、目の前にいるような拳で戦う相手は尚更少ない。

 

 そして、少ないからこそ知っている。

 少ないからではなく、強いからこそ彼女は有名である。

 

 

「『滴穿(セイレーン)』、カウム・グッタカヴト」

「ありゃ、アタシも意外と有名人、ですかね? じゃあ知らない仲でもないようっすし肩の力を抜かせてもらうっす」

 

 

 騎士学校で拳で戦い、しっかりと結果を出してしまうバケモノだ。覚えてない方がおかしいと言うもの。

 

「リィビアがうっさいんすよね。ジョイ・ヴィータは邪魔だから抑えとけって。でもあの子、頭だけは確かなんでね。それに、改めて見るとアンタってなんか急に飛び出てきて何もかもめちゃくちゃにしそうな雰囲気あるっすから」

「俺にそんな大層な力あるわけねぇだろ。マジでやめてくれよ」

「アタシの勘はよく外れるっすけど。リィビアは頭がいいんでとりあえず殴るっすね」

 

 貴族教育の敗北みたいなことを口走り拳を構えるカウム。一応グッタカヴト家も貴族のはずなのに彼女からはそういうオーラは一切感じない。それどころか、()()()()()()()()()()()()()()()。目で見えているから存在が確認できる。

 ふわふわと、掴みどころがなく、湖に浮かぶ羽根みたいな女だなという印象。

 

 周囲でも戦闘が始まったのか、徐々に爆発音やら剣戟の音が耳に届く。いやこれ剣戟か? 隕石衝突みたいな音も混じってるんだけど。爆発音もエグいし、耳が痛いし常に振動で大地が揺れている。

 

「それにしてもすげぇっすよね。同級生みんなバケモノばかりで、これが都会の学校かぁと驚いたっすもん」

「都会で済ますな。普通にこの学校が、その中でも今年がおかしいんだよ」

「そうなんすか? ま、そこはいいんすよ。大事なのは、ここにいるヤツらはみんな一人一人この大地を揺らせるくらい強いんすよ。リィビアが言ってたっす」

 

 豪脚動地。

 踏み込んだその衝撃で瓦礫が跳ねる。

 

 

「星は一つじゃない、ってね」

 

 

 逃亡は、無理だろう。瞬間的な速さは向こうが上回っているし、機動力という点で『滴穿(セイレーン)』に勝てる術者はそうそう居ない。

 腹を決めるしかない。何はともあれ、カウムを倒さない限りは何も始まりはしない。

 

「行くっすよジョイくん! 対戦よろしくお願いします!」

「よろしく頼むぜ、カウ──────」

 

 距離を詰めるために足を一歩踏み出した時、足の裏に違和感が走った。

 明らかに何かおかしい魔力の流れ。反射的に、俺の体は前に跳ぶのではなく後ろに跳んだ。

 それは目の前にいたカウムも同じだったようで、彼女も俺から距離をとるように後に跳ぶ。

 

 

 そしてそれとほぼ同時に。

 

 地面を突き破るようにして地下から()()が姿を現した。

 

 

「は、はぁ!?」

「ちょっとぉ!? 他のみんな何してるんすか! 私がジョイ・ヴィータ止めるから他はどうにかしろって言ったのに!」

 

 巨人、どう見ても巨人だ。

 人型も保っているがそれは人と言うには大きすぎる。こんな巨大な土人形、ゴーレムを操るやつは赤組に覚えはないし、カウムの反応から青組でもない。

 

 ……考えられる限りの最悪ではないが、最悪から3番目くらいの状況だ。

 いきなり三つ巴。しかも青組の作戦だろうか、周囲に他に人が居ない。敵を2人確実に自分の手で倒さなければ、逃げ出すことすらあまりに危険な『場に縛られる』状態。

 

「コラー! タイマンの邪魔とはいい度胸っすね!」

「今回のルールでタイマンなんてしてる方が悪いだろ!」

 

 カウムの怒声に対して、ゴーレムの主であろう男はその肩の上から見下ろしながら答える。俺はその声に聞き覚えが……あるような、気がしなくもない。

 別に俺だって学年全員覚えてるわけじゃないからね。普通に目立って強い奴以外は忘れてる。

 

「それに、だ。ふん……僕の目的は君じゃない。そっちの男、ジョイ・ヴィータだ」

「どいつもこいつもなんで俺なんだよ!」

「イグニアニマを倒してビリブロードと相討ちしてるんだぞ! もっと自分が有名な自覚を持て!」

 

 なんともまともな正論が飛び出してきてちょっと安心しつつ、太陽の逆光でよく見えないゴーレムの主の顔を目を凝らして確認する。

 

 

「覚悟しろよジョイ・ヴィータ。イミテシオ家次男、ファルセルダ・イミテシオ! 君にリベンジを申し込む」

「えっ、誰?」

 

 

 素で声が出た。

 マジで特に記憶がない。なんかくすんだ茶髪とか、顔立ちとか、よく居そうな感じで印象が薄いし、誰だっけな……。

 

「いや、この前戦ったじゃん。僕負けたけどさ、それなりに頑張ったよね?」

「あ、あ〜!」

 

 そうだ、この前戦った相手か。そして思い出した。コイツアレか。

 

 

「エアに入学早々ボコボコにされたやつね」

「うぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!! 人の逆鱗をよくもぉぉぉぉぉぉぉぉ!!! 潰れろ!」

 

 

 怒りのままにゴーレムが地面に拳を叩きつけ、それが巨大な三つ巴の戦いの、小さな三つ巴の開戦の狼煙となった。

 

 

 

 

 

 







・カウム・グッタカヴト
名前だけは出てる。リィビアの友達。

・ファルセルダ・イミテシオ
名前だけは何回か出てる。


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