逆行したら天才イケメン騎士様がロリ巨乳美少女騎士様になってた   作:ちぇんそー娘

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28.昨日を砕いて

 

 

 

 

「いやー、今年の1年生は凄いですね。最後のソナタさんの『土葬(クラッシュ)』とか」

「凄いのは間違いねぇけど、凄いですませていいのかよマグノ先生よ……こりゃ異次元だぜ」

「そうですか? みんな可愛い生徒ですよ。それに、これくらいできなきゃ騎士としてやっていけませんからね。意外と厳しいんですよ?」

 

 元々研究職であるオベリは、実際に以前は騎士をやっていたマグノがそう言うならば騎士学校ではこれが普通なのか、とも思ったがその隣にいる同じく元騎士であるラクシャがドン引きしていたのでマグノの感覚がおかしいだけであると察した。

 

「ん、しかし結果は意外なものだな。私としては、もっと別の結果になると思っていた」

「やっぱりアウルくんは優秀ですね。さすがは団長の息子さんです」

「まぁリーダーとして誰が一番優秀だったか、ってのを見返したら当然だがアイツだな」

「他2人がリーダーとしては……ってのも少しありますけれどね」

 

 全て自分がやる、を地で行ってしまうようなエアやリィビアと違い、アウルはチームメイトの能力を把握し、指揮も行っていた。当たり前のことではあるが、相対評価が高くなる。

 

「んー、でもリィビアの方はちゃんと考えてるんじゃねぇか? 考えた上で、自分が一番優秀だから、自分がエアを倒せばいいって答えを出してる。事前にその旨自体は全員に伝えて、行動も一貫してた」

「ん。多少グラシアスに執着している節こそあれど、あの子は単純な頭の出来ならば筆記試験の結果の通り」

「確かに、そういう見方もありますね。ではグラシアスさんは」

「あれはダメだ。自分がなんでも出来るって思ってるけどリィビアとは逆。明確なビジョンがねぇ」

「自分が何でもすればいい、って思っている。何をすればいい、が頭になかったから、他の組の作戦に後手に後手に回される結果になった」

「それでもなんやかんやで凌ぎ切るんですから、さすがとしか言いようがないんでしょうけどね……」

 

 訓練が終わり、残っていた生徒が全員転送されてきたのか。遠くから治療担当のアルムの悲鳴が聞こえてくるのを他所に3人の教師は分析を続けていた。

 

「2人はリーダー除いて優秀だなって思った生徒はいますか?」

「ん……。テンプリァス」

「あ、そんなヤツいたか?」

「リエン・テンプリァス。……オベリ先生も教師なら生徒の名前はしっかり覚えて」

「リエンくんの家名テンプリァスだったんですね……」

「…………んんっ、とにかく接敵が少ない。動きを見ればわかるけれど、自分が不利だと思ったり混戦になるような場所を避けて動いている。探知能力と俯瞰的な視点に優れているんだと思う」

「オレのイチオシはアイツだな。なんだっけ、マグノんとこの弟子のアイツ」

「ロジェーナちゃんの事ですかね?」

「アイツ、グラシアス以外の誰にも最終的に位置補足されてないだろ。シンプルに隠密が上手いし、自分の役割に徹している」

「えへへ、ですよねですよね! まぁあの絶好の機会でグラシアスさんを落とせないのは減点ですけどね」

 

 マグノの顔からスっと笑顔が消え、少々厳しい顔でロジェーナがエアを狙撃したシーンの映像を見直していた。

 

「ここ、頭は相手も意識する場所だし、高速軌道が得意な相手には狙うのではなく射撃を置くイメージで撃てって言ったのに、狙ってますよ」

「でもまだ1年だろ? 技術的な話はこれからにして今回は立ち回りが上手かったって褒めてやった方がいいんじゃねぇの?」

「私、自分で言うのもなんですが甘いので。ちゃんとダメだったところも覚えておかないと褒め殺しちゃうと思うんで今のうちに探しておこうと思いまして」

「……ん、グラシアスで思い出した。あの時のやつ」

 

 ラクシャが端末を弄り、表示したシーンはエアとアーリスが2人で何かを話しているシーン。そして、そこから少しだけ巻き戻す。

 

「ここ、グラシアスは完全に動きが止まってる。ここから防ぐのは無理」

「でも実際は……間にイグニアニマさんが割り込んで、防いでるんですよね」

「アイツは優秀っちゃ優秀だけど、幾らなんでもこれはなぁ。なーんかおかしいよな」

 

 エアにはその場にいる全員、更にはリィビアとアウルの2人が常に攻撃の機会を狙って全力を叩きつける準備をしていた。そうして放たれた攻撃は、単身で防げる生徒なんていないだろう。

 

「なのに、状況的にはこれどう考えてもイグニアニマさんが1人で防いでるんですよ」

「ん……、各自の攻撃が着弾の瞬間に打ち消しあって、威力が下がったとか?」

「こんだけの人数と属性の術式がそんな都合よく打ち消し合うかよ。第一、そんな都合良いことが起きても1人はリィビアだぜ? アイツならそんなことになりそうなら見てから自分の術式弄れるだろ」

「それもそうですね。うーん……確かに言い方が少し酷いですけれどこれはイグニアニマさんが防げる攻撃では無いですね。着弾の瞬間は煙で良く見えませんし、各自提出のレポートを見て、本人から話も聞いてみましょう」

「だな。さーて、これから面倒な評点の時間だ。ダリィぜまったく」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「それで、最後の最後に女の子に守ってもらいながらも味方の攻撃に巻き込まれて衝撃で意識失って脱落。うん……いや、うん」

「何か言いたいことがあるなら言ってくださいよ」

「いや、ダサいなって」

「あ、ごめんなさい。もっとオブラートをください」

「情けない」

 

 容赦のない師匠からの口撃を喰らいその場で悶えることしか出来なかったのが、さらにダサさを極めているような気さえしてしまう。

 最後の最後、まさか飛んできた瓦礫に頭をぶつけて失神してしまうとは。アーリスは普通に対処していて、目の前で俺がそんな初歩的なミスで失神する直前に信じられないものを見る顔をしていたのを思い出してさらにダメージが深くなる。

 

「でもいいじゃないか。試合結果は緑組と赤組の残り生徒数同数でそこ2つの引き分けだ」

「だからこそですよ! 俺が気絶してなきゃ勝ちってことじゃないですか!」

「それはそうだね。やーい戦犯」

「言い返せす余地がなかったり、ブーメランになってない言葉は俺達の口喧嘩では禁止ですよね?」

 

 でも、本当に、本当にやってしまった。クラキアの『土葬(クラッシュ)』を侮っていた訳では無いが、それにしたってあそこまでの破壊力があるだなんて思っていなかった。最後の最後、集中力が切れたほんの一瞬で対処を怠って巻き込まれてしまった。

 

 そのせいで勝てなかったことも悔しいが、もう1つはクラキアに申し訳が立たない。

 アイツ、俺を間違って攻撃したことをめちゃくちゃ気にしてたのに。ちゃんと凌いでやらなければ、またどこかで、俺のせいでアイツの手が震えてしまうかもしれないのに。

 

「それはそうと、ジョイってばあのチビちゃんと何話してたの?」

「どっちのチビちゃんです?」

「新しく引っかけたチビちゃん」

「その言い方やめてくれません? ……別に、チームメイトとして最低限の会話ですよ」

「ほんとぉ〜?」

 

 蛇みたいに長いからだをくねくねとさせながら師匠は真っ黒な瞳で俺を見つめてくる。文字通り、蛇に睨まれたカエルみたいに動けない。

 コイツ、束縛の魔術使ってきてやがる……! なんて大人気ない。

 

 しかし、まぁ。

 師匠に隠すようなことでもないかもしれない。言いたくないのは、単純に気恥しいからだ。

 

「はぁ、じゃあ言いますよ。クラキアが可愛かったので、惚れて力になってあげたいと思いました」

「え」

「と、そんな冗談は置いておいて……師匠?」

 

 話を続けようと思ったら、何故か師匠が時が止まってしまったみたいに動かなくなっている。

 

「あの、師匠……え、これ時間が止まったとか、魔女がでてきたとかじゃ、ない、よな……?」

 

 話しかけてみるけれど、師匠はピクリとも動かない。それどころか周囲からも音が消えて、まるで俺だけが別の世界に来てしまったかのような、心地よくない静寂が場を支配している。

 次第に冷や汗が滲み出てきて、心臓の音がバクンバクンと耳を裂く程に大きく聞こえてくる。

 

 

 

 

 

 

「魔女だよー」

「ウォォォォォォォォ!?」

 

 

 

 

 突然耳元で誰かの声がして、反射的にベッドから転がり落ちるように距離を取る。

 急いで顔を上げると、そこには少し目を細めて俺を睨みつけている師匠の顔があった。

 

「あの魔女(ビビり)がそうぽんぽん出てくるわけあるか。これに懲りたら大人を揶揄うのはやめろ」

 

 師匠が指を鳴らすと、周囲の雑音も元に戻ってくる。どうやら師匠がいつの間にか周囲の音を遮断していたらしい。本当にいつしたんだこの人。

 

「いや、マジでもうやめてくださいねこういうの。俺ほんと、魔女のこと、苦手なんで……」

「自業自得だろ。今後私を出し抜こうとしたら魔女の声真似とかするからな? 夜にトイレとかにいる時に送り付けるからな?」

「やり方が陰湿〜」

「いいから話せ。話さないと今からずっと魔女の声真似で話しかけるぞ」

「話すって言ってますからやめてくださいそれ。まぁ、クラキアは1人だったんですよ。俺にとっての師匠がいない。だから、そういう奴になってやれれば少しは楽になるって、楽しくなるって思った。それだけです」

「そりゃあなんとも、偉そうな話だ」

「実際、師匠みたいに上手くいきませんでしたよ」

 

 それでも、あのクラキアの最後の一撃に巻き込まれた身としては、だ。

 きっとそれなりのことが出来たはずだ。意味があったはずだと思える。あの迷いのない槌の一振を見れば、それだけで俺も嬉しくなれた。

 

「どうですかね。師匠みたく、強くなれましたかね?」

「50点かな。100点満点中」

 

 俺結構いい感じのこと言ったと思った確信あったのに半分かよ。

 

「……採点のやり直しを要求します」

「最後気絶してなきゃ赤組の単独勝ちだったのに気を抜いて瓦礫直撃して落ちた。マイナス50点」

「ふん……言い訳の余地がないのはやめてくださいと言っているでしょう」

 

 完全に師匠はしばらくこのネタで弄ってくるだろう。そんな風に楽しそうにニマニマと俺の顔を眺めて口角を歪めている。

 顔を見れば何を考えているか大体わかる程に長い付き合いだ。この予想が外れることは多分ないだろう。明日からしばらく師匠と長話しないようにしよう。

 

「まぁでも? 『黒耀(バロール)』を使わずに戦い抜いたのは褒めてあげるよ。切り札は『持ってる』って思わせるだけでも切り札になるんだ。上手く使えよ」

 

 

 

 最後にほんの少しだけ褒めて、師匠は忙しいからとパタパタと小走りでどこかへと去ってしまった。

 今回は『黒耀(バロール)』も使ってないし、怪我の治癒は済んでいるから普通に出歩ける。思えば俺、毎回気絶してボロボロになって運び込まれてるな。よし、次は気絶しないで師匠に結果を報告できるように努力しよう。

 

 そう思いながら外に出るための扉を開けると、廊下に出てすぐ横に人影がいることに気がついた。

 

「あっ、クラキア」

「あっ、て顔じゃないですよそれ。げっ、て顔してますよ」

 

 そんな顔をしたつもりは無いのだが、顔を合わせたいか合わせたくないかで言うと今は後者に入る。正直、あれだけのこと言っておいて俺が原因で勝てなかったとなると、恥ずかしいし。

 

「気にしないでください。私の一撃が少々君では耐えきれないくらいに凄まじかっただけなので。仕方ないですね、普通なら耐えきれませんよあんな一撃。ええ。私は強いですからね」

 

 ああ、ダメだ。

 これはしばらくクラキアにも出来るだけ会わないようにしないとひたすらマウントを取られる。小さな身体をできるだけ大きく見せるように胸を張って背伸びをしているクラキアは、明らかに俺を弄ることを目的として今喋ってる。

 

「とまぁ、マウント取って気持ちよくなるのはこれくらいにして」

「それを口に出せる前向きさ見習いたいよホント」

「どうぞ見習ってください。見下ろしてあげるので」

 

 マウントにより無敵状態になっているクラキアには何を言っても通じ無さそうだ。

 ……でも、この様子ならあんまり俺を巻き込んでしまったことは気にして無さそうだ。それはそれで俺がちょっと傷つくけれど、クラキアが傷ついてないならそれで良いだろう。

 

「まず、お礼を言いに来ました。ありがとうございました。私は、君のおかげで今回誰にも負けなかった」

「おう。……いや、ほんとごめんな最後。いやほんとごめんなさい! 申し訳なさが勝ってきた! 正直、このまま恩人ってことで押し切れるかなとか考えてました!」

「大丈夫ですよ。君が情けないところもあることは何となくわかってますから。むしろ情けない方が私が安心できるのでそういう所はもっと見せて私を安心させてください」

 

 お互いに発言のカス度があまりに高い気がするがそれは気にしないでおこう。

 

「君のおかげで、私は今日誰にも負けずに済みました。しかもずっと勝てなかった相手に、勝つことが出来ましたから」

 

 

 だから、と。

 クラキアは指でVサインを作り、それを口元に押し当てる。無理やり押し上げられた口角は上がり、表情のない彼女の顔に、歪で無理やりな感情が見えてくる。

 

 

「なんだよ、それ」

「私は今とても嬉しいんです。それを君に知って欲しいんです」

 

 

 クラキア・ソナタの渾身の笑顔を見て、俺もつられて笑ってしまった。

 それだけで、この笑顔が世界で1番強い笑顔だという事を認めざるを得ないだろう。

 

「本当に凄いやつだよ、お前」

「当たり前です。私は強いですからね。だから、もしも次君が困っていたら助けてあげます。そして次に私が困っていたら助けてください。そうやって、末永くよろしくお願いします」

「こちらこそ、これからもずっとよろしくな。クラキア」

「ッ! ……はい。ずっと、ですからね? ずっとずーっと、助け合っていきましょう」

 

 差し出された手を握り返し、たくさんの感情を込めた握手を交わす。相変わらずクラキアの顔に表情は無く、今も何を考えているのかイマイチ読み取ることは出来ない。

 

 

 ただ、握った手が焼けた鉄みたいに熱を持っていた。それが何を意味するかは、俺には分からなかったけれど。

 

 

 

 

 

 






多分3章終わりです。




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