逆行したら天才イケメン騎士様がロリ巨乳美少女騎士様になってた 作:ちぇんそー娘
ガンダムSEEDと00がとても面白かったです。シュタインズ・ゲートも面白かったです。
昨日はそりゃあ疲れてた。長旅の果てに実家に帰ってきたら知ってるやつが3人居るのに知らない妹が生えてたのだからもう疲れてそのまま泥のように眠った。
そのおかげか知らないが、久しぶりに昼前まで惰眠を貪ることが出来た。
さすがにやばいと思わなくもなかったけれど、やはり実家のベッドというのは安心感が違う。心做しか肩もいつもより軽い。
「おはよう、いやもうこんにちはの時間ね。よく眠れたかしら?」
リビングに行くと、母さんは机に座り眼鏡をかけて何やら本を読んでいた。
申し訳ないけれど、少し幼くてぽやぽやした顔立ちをしている母さんには全くメガネが似合わない。これならまだ、いつも通り農具を小枝みたいに振り回してる方がなんだか様になる。
そもそも、読書とか柄じゃないだろう。猪を殴り殺してる方がだいぶ似合ってるぞ。
「今、親に対して失礼なこと考えてるわね?」
「滅相もありません母上。これでも騎士の卵、両親への敬意を忘れたことなんて一度もありませんよ」
「顔に出てるわよ。そういうところ、本当にあの人にそっくりなんだから。……確かに、私は読書嫌いだけどこれは副業よ。古文書の解読」
「え、読めるの?」
「まぁ……読めるわよ」
ちょっと目を通してみたが、俺では理解できない言語が並んでいるのに母さんは何故かその内容を別紙にいくつかの解釈を交えて纏めている。どうやらなにかの部族の民話のようだ。
「アルムさんが手伝ってくれたら報酬は弾むから、っていって紹介してくれてね。かなり沢山貰えるのよ〜」
「待って、なんで母さんこれが読めるの? ねぇ?」
「それは母さんの過去に関わるからトップシークレットよ」
ヘラヘラ笑って誤魔化しているけれど、母さんの過去に関しては息子である俺も全く知らないくらいに本当に謎なのだ。前世でも結局最後まで教えてくれなかったし、こんなよく分からない言語が読めるなんてのも驚きだけど、本人が言う気がないなら別にわざわざ知るようなことでもない。
どんな過去があろうと、この人が俺の良き母である事実は変わらない。
あぁ……平和だな。
別に騎士学校での日々が辛いとかそんなことは決してない。強くなることは俺が望んだ事だし、でもそれはそれとしてこういう呑気に過ごせる時間が恋しいという思いはある。俺は楽しく過ごすのに必要だから努力するだけで、本質的には怠惰な人間なのだ。
「そういえば、昨日貴方が寝た後貴方の同級生を名乗る人が押しかけてきたわよ」
だから頼むからもう少し平和に浸らせろ。
俺、この村をなにかの集合場所にしたか? ってレベルだぞ。
「……えーっと、誰だ?」
「そう言えば名前を聞いてなかったわね。ハピが拾ってきて、『ししょー』って呼んでたから私達もししょーさんって」
「名前が分からない人家にあげたの!? 正気!?」
「でも……クラキアちゃんにアーリスちゃん、あとリエンくんにエアちゃんも知り合いだって保障してくれたから」
確かにあのメンツが保証するならたとえ悪人でも下手なことは出来ないだろうしいいけど、それはそれとして俺精神安定に良くない。
「どんなやつだよ。知り合いなら、特徴言ってくれれば分かる」
「変な子だったわねぇ。変だけど、実力は折り紙付きってみんなが言ってたわ」
うーん、それじゃ特定無理だなぁ。思い当たる知り合い、変だけど強いやつしかいない。
「多分、アーリスちゃんと仲悪いのかしら? 嫌そうな顔してたわよ」
ダメだ結構いる。というかアイツ意外と他者に厳しいところあるから結構思い当たる奴がいる。もっと本人を特定できる要素が欲しい。
「あと何故か室内でもサングラスをかけていて、背が高くて派手な服装をしたかわいい女の子だったわよ」
「なんだリィビアか。驚かせやがって」
とりあえずその奇天烈さはリィビアで間違いないだろう。なんでアイツが俺の村に来てるのかは知らないけれど。なんで実家に帰ってきたはずなのに学校にいるのと変わらないメンバーが集結してるんだよ。
「ジョイ、なんだか疲れた顔してるわね」
「なんで母さんは楽しそうなんだよ……」
「息子が家にお友達を連れてきたのよ? 悪い人じゃないなら、それを喜ばない親なんていないわ」
リィビアとリエンは良い人ではないからじゃあ悲しんで欲しいな。
「というか……ハピが拾ってきたって。あの変人を? アイツ、見た目だけなら絶対不審者だろ。村の用心棒名乗るならあんなの家に連れ込まないで欲しいな」
「そうよねぇ。あの子、村の外の人にはすごく敵意を剥き出しにするから、私達もハピの成長だって浮かれちゃってよく考えてなかったわねぇ」
…………これはあくまで推測だ。
俺とハピに血の繋がりは無い。しかし同じような環境で、同じ両親に育てられた人間だ。人格形成において、似た所が出る可能性はある。
もしもその推測が当たってたとしたら、正直あんまり嬉しくないんだよなぁ。
「ま、子供が外の世界に興味を持つことはいいことなんじゃないの? いつまでもこの狭い村で世界が完結してるってのも、寂しいしさ」
「……ジョイ、どう? ハピと仲良く出来そう?」
「なんとも言えん。ファーストコンタクトが最悪だったし、母さんと父さんのおかげで相手からの印象も最悪だよ。綺麗な姉さんだと思ってたらこんな目の死んだ情けない男が出てきたんだぞ? ショックだろ?」
「それは……うん、ごめんね。その時その時は最善を選んでたつもりだけど」
父さんも母さんも特別頭が良いわけでも、悪い訳でもない。普通の人間だ。普通の人間は常に最善手を選べるものでは無い。常に、良き結果になるように祈りながら最善と思える選択をする。
「ハピだって、母さん達が悪いやつじゃないって知ってるだろうし、問題は無いよ。俺も仲良くなるよう頑張るからそんな落ち込まないでくれ」
「うー……ごめんねジョイ。ダメなお母さんで。ハピ、かなり拗ねちゃってるから気をつけてね? 骨とか折られないように」
「言っただろ? これでも騎士の卵、妹に負ける程やわな鍛え方はしてないよ。……骨とか折りに来るの?」
「関節技、教えてないのに得意よ」
それはちょっと怖いが、しかし兄妹仲良くというのが両親の願いだ。
前世では、親孝行することは叶わなかった。
俺が騎士として認められる頃には、この村は焼け野原になって俺は天涯孤独になっていたのだ。
どんな些細なことでも、この優しい両親が喜んでくれるなら難題であろうと頑張ってみるとしよう。そうでなければ、楽しい帰省になりはしないだろうし。
「おらー! ジョイに勝ちたくないのかー!? あのネズミみたいにチョロチョロする口の悪いネズミの内臓を引きずり出したくないのかー?」
「ちょ、ま、待って待って待ってししょー!? 死んじゃう! 一旦これ止めてー!」
早速修行と言って、師匠は私を村の外れに連れてきたと思ったらいきなり魔術をぶっぱなしてずっと狙い続けるから避け続けろ、なんてことを言い出した。
「私は、今ぶっぱなされてる魔術について、知りたいんですー!」
「じゃあ見て覚えてろ。まずは基礎的な身体強化からだ。身体をひとつの回路と認識して全身に組まなく循環させろ。魔術の基本は『始まり』と『経過』と『終わり』だ」
リィビア師匠が空に手を翳すと、そこに魔術陣が浮かび上がる。その内側から魔力が漏れだして、氷の矢が幾つも形成された。器用にも刃は潰れているけれど、まともに当たったら打撲で済めば運が良い程度には威力がある。
「魔術というものは『流転』が基本だ。永続させようとしたり、状態変化や魔力流動の少ない魔術は効果が落ちる。循環の理をまずは全身強化で叩き込め」
「だからって……」
これは、いくらなんでもあんまりだ。
魔術ってもっと勉強して、なんだかすごい難しいことをして、学ぶものじゃないんだろうか?
確かに私は……
「だって君、座学嫌いだろう?」
「え……なんで知って」
「私は天才だから。それに君は天才側の人間だ。私のような感覚派の人間が教えるよりも今は感覚で理解して、それから基礎を固めた方が手っ取り早い」
なんだかよく分からない。リィビア・ビリブロードという人はまるで何もかも見通してるようで、すごく不思議な人だ。
そしてきっと、すごくすごい人だ。なんだかすごい気がする。この人が師匠なら、きっと私はすごく強くなれる。
「ほら、進歩しなきゃ当てるぜ? きっとこれは君の兄さんなら簡単に避けるだろうねぇ」
「ッ!」
その言葉を聞いて、一瞬思考が紅に染まる。
あの灰色の髪の男。兄を名乗る、知らない男。私の世界に現れた異物。
「あんな人、兄じゃありません!」
怒りに任せて魔力を体に流す。
今まで腕や足に鎧のように纏わせていた魔力が、体を内側から補い、血管の内で全身を駆け巡る感覚。怒りというポンプが、その感覚を加速させる。
世界の動きが遅くなり、自分の動きが速くなる全能感に近いその感覚。
先程放たれた5本の氷の矢の動きがわかる。4本は今の速度で駆け抜けていれば追尾速度的に振り切れる。けど、1本は特別だ。撃ち落とさなければ、避けるのは厳しいだろう。
体の内側に魔力を流す感覚を理解したらすぐに世界は開けた。血液のように流れる魔力を、頭の中で1つの『門』に通すように。そうすることで、魔力という不確かなものに『色』を付ける。私の中にある門は6つ。その内の、赤色の門に向けて魔力を流し込む。
「火は、こうですね」
バチリ、と世界を書き換えるかのような音が響いた。
体から漏れだした魔力が、色と指向性を持って形を変える。炎を形作り、標的を決めて、放つ。その工程を1つの式として頭の中で理解してしまえばあとは簡単だ。
放たれた火は氷の矢とぶつかって、お互いを相殺して弾けるようにして消えてしまった。
「ヒュウ、予想以上だ。まさか感覚だけで初歩的とは言え戦闘用に式を短縮した魔術を使うとは」
「当たり前です! 私は……最強の用心棒なんですよ。舐めないでください」
「ああ、それくらい胸を張っていた方がいい。君の才覚は普通の凡人とは比べ物にならないさ」
褒めてもらうこと、肯定されている実感が魔力強化に成功して覚醒している脳に染み込んでイケナイ何かを生成している。すごく、嬉しくて思わず頬がにやけてしまうのを抑え込むので精一杯だ。
「過信は良くないが相応の実力には自信を持て。自己分析は魔術の基本だ」
「じゃ、じゃあ私、ジョイ・ヴィータより凄いですか」
「すごいに決まってんだろ。何? 君あの才能も大してない男と自分を較べていたのかい? 比べ物にならないくらい君の方が優れてるに決まってるだろ」
少し否定されるかもという恐怖がありながらも、どうしても知っておきたかった比較対象について聞いてみたら、リィビア師匠は想像の斜め上の早口でジョイ・ヴィータをめちゃくちゃに貶めてきた。
「し、ししょーとあの男って知り合いじゃないんですか?」
「知り合いだから仲良しこよし、贔屓目で評価した方がいいのかい? 違うだろ? アイツ馬鹿だし、物覚え良くないし、まぁ凡人の平均値は超えてるけど、かなり優れた凡人の中でも選りすぐりの凡人の君と比べたらもう悲しいくらい才能ないよ。まず魔力量からして、まだまだ成長の余地のある今の君が100だとしたら、あの男は……」
「10、くらいですか?」
「0.1」
希望的観測を込めた意見を出したら、師匠は想像を超えてあの男を下げ散らかしてきた。もしかして、師匠もあの男が嫌いなのだろうか。
あまり良くないことだと思いつつも、そうだったら嬉しいなと何となく思ってしまう。
「ししょー、あの……ししょーは私の事、好きですか?」
「え、何急に? 別にどうとも思ってないよ。ビジネスライクな関係だよ」
真顔で答えられて、ちょっぴり傷ついた。
もしかしたらこの人は、あの男に冷たいんじゃなくて全人類に冷たい人なのかもしれない。昨晩も誰に対しても態度を変えてなかった……いや、あの金髪の女に対してだけは目を合わせようともしなかった。
「逆に言えば、贔屓無しの意見を言ってくれてるんですよね?」
「当たり前だ。贔屓という言葉は私は嫌いだ」
「じゃあ私は、あの男に勝てると思いますか?」
「無理だよ」
ここまで、少しだけ期待を積み上げていた。この人は自分を認めてくれていて自分は普通の人よりすごい人間で、だから目をつけて貰えて、機会を与えて貰えたのだと。
そんな淡い期待は即答で叩き潰されてしまった。
「でも、あの人すごくないんでしょう? 私、勝てないんですか?」
「アイツは無才だし、馬鹿だよ。でも弱くはない。一体どこでそんな経験をしたんだか知らないが、アイツの戦闘経験は常人ができるようなものじゃない。まるで
リィビア師匠があの男について語る口ぶりは。
ムカつくやつ、イラつくやつ、腹立つやつ。そんな負の感情があるのに。どこにも、彼への嫌悪が感じられなかった。むしろ、信頼や信用と言った、聞いてるいるこちらの胸が安らぐようなどこか心地よくて柔らかな感情が混じっている。
「……ずるい」
ジョイ・ヴィータなんて人は知らない。私の人生に、今までそんな人はいなかった。
『さっきはごめんねハピちゃん。ジョイくんも、エアも悪気があったわけじゃないんだ……いや、あっちの金髪のお姉さんは多分悪気あったから後で顔に落書きとかしていいよ』
『聞こえてるから! 聞こえてるからねアーリス!』
とっても綺麗で優しそうな2人は、あの男の学校での友人らしい。
『ジョイ・ヴィータ……ジョイくんですか。とてもいい人ですよ。えぇ、いい人なんです。私の好きな人ですから』
少し前から村に来ていて、無表情で怖いし何故か農具の扱いでやたらマウントを取ってくるけれど頼りになって優しいクラキアさんも、あの男について語る時は楽しそうだった。
あとなんか、怪しい男もいた。あいつはちゃんと同性の友達もいるらしい。私には、そんなものいないのに。
『ごめんなハピ、今までずっと騙してて……。実は、お前にいるのはお姉さんじゃなくてお兄さんなんだ』
『でも大丈夫よ。貴方のお兄ちゃんはすごく優しいから、心配する必要は無いわ』
わかってる。
あの男が自分の義兄で、お父さんとお母さんの本当の息子で、沢山の人に好かれて、私には無いものを沢山持ってる人間だってことくらい、目を背けてるだけでわかっていた。
でも、じゃあ認めろって言うのか?
そんな私に無いもの、私がそれだけあればいいと思っていた家族と言う居場所すら。
奪ってしまうほど魅力的な。
あんなにキラキラと輝いたやつがいることを。
そんなに持ってるなら、もういいじゃん。私には、お父さんとお母さんしかいないのに。どうして私の前に現れてしまったんだろう。
「……どうしたハピ?」
「ししょー。私、負けたくない。勝って、私の価値を示さなきゃ、そうしなきゃ……」
「しなかったら、どうなるんだい?」
肌が思い出したのは刺し貫くような冷たい風の感触。あんなものもう味わいたくない。1人になるのは、孤独になるのは、捨てられるのは嫌だ。
私は誰かに愛されていたい。
「私は、捨てられちゃう。アイツより自分の価値を示さなくちゃいけないの」
「じゃあやってみる?」
「え?」
リィビア師匠はまるで玩具を見つけたみたいに、夜闇のようなサングラスの向こう側で瞳を輝かせていた。
・リィビア・ビリブロード
この前の合同訓練で実質自分がリーダーを務めた青組だけ負けたことをかなり気にしている。この村には武者修行の途中で訪れた。