逆行したら天才イケメン騎士様がロリ巨乳美少女騎士様になってた   作:ちぇんそー娘

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39.原理解放

 

 

 

 

 

 師匠から授かった『黒耀(バロール)』は魔力の流れを正確に読み取る。それは相手の動きをほんの少しだけ先回りできるし、自分の動きを精密に出来るし魔術の効果を引き上げ、精密になった肉体操作はかつての俺では出来なかった動きを可能にしている。

 

「なんだ、急に動きが変わりやがった……?」

 

 弾き、捌き、避けられていた攻撃が途端に避けきれずにダグザの薄皮を裂く。コイツの強さは豊富な戦闘経験に裏付けられたもの。俺を超える手札を持つ相手に奇襲奇策はまず通用しないし、正攻法は見抜かれる。なら、初見の攻撃と基礎の力のゴリ押し。コレしか勝つ手段はない! 

 

「ハハッ、なんだその剣術! 視点が違うな。まるで、()()()()()()()()()()()()

 

 キッショイなコイツ! 

 勘が良すぎる、マジで一体どれだけの数の人間と殺しあってくればこんなに勘が鋭くなるんだ? 考案者であるデウスの本質を掠めてきやがった。

 

「さて、そっちも出し惜しみはやめたようだし俺もやめるとするかな!」

 

 そう叫ぶと同時に、どこかでバシュンとクロスボウが放たれた音がした。何処で、何処から。そんなことを考える。たとえそれが見当違いの壁に突き刺さっていたとしても()()()を考えさせられた瞬間、俺の行動と思考は狭められる。

 

 生まれた僅かな思考の隙。絶好のチャンスとばかりにのらりくらりと間合いを躱していたダグザが一気に距離を詰めてくる。

 

「さっきまでのお前の師匠は堅実だったが、今の剣術を教えたやつは少し常識外れでヤケなところがあるな。防戦になった瞬間に粘りつくような感覚が取れてきたぜ」

 

 短剣に触れないように注意を払いながら、攻撃を躱していく。間合いを詰められては剣を振ることが出来ない。かと言って、狭い屋内である以上俺の剣が有利な間合いは取りづらい。

 リィビア達をコイツから離すために屋外に出た時に、そのまま待つべきだったか? いや、もしも屋外で戦闘となればコイツは俺よりもまずハピかリィビアを狙う。屋内で戦闘を強制させるのは間違ってない、でもキツイもんはキツイ。

 

「あぁ、クソ、しょうがねぇ!」

 

 あれやこれやと悩んでも、解決の糸口は見えてこない。結局のところ、俺が格上に勝つのに必要なのは『賭け』だ。そもそもこの勝負は常に賭けばかり。

 

 床を掠めるような下段からの振り上げを躱され、空いた胴体に向けてダグザが踏み込んでくる。ここだ、この瞬間だ。

 

「剣から、手を離すか」

 

 驚き、ではなくダグザの顔に浮かんでるのは喜び。

 何をどうするか楽しみで仕方ない。離しただけなら何も問題ないと、腹立つくらいにコイツは落ち着いてる。とにかく焦らない。

 

「『黒耀軌跡(バロールエンチャント)小牙(デブリ)』!」

 

 デウス・グラディウスという男は剣に優れていた。しかし剣()()に優れた男ではなかった。だからアイツはよく戦闘中に剣から手を離していた。アイツにとって剣とは、絶対に必要な命を預けるべきものでは無い。戦闘の道具だ、もっと頭を柔らかくしろ。

 

 剣の中に無理やり電気の魔力を流し込んで、内側で弾けさせる。制御は万全。『黒耀(バロール)』を起動した今なら魔力制御は針の穴だって通せる。

 

「風穴開けやァ!」

「お前に先に開けてやるよ!」

 

 ダグザの短刀が俺の腹に突き刺さるまであとほんの少し。

 一手の差、一分の隙、一瞬の静寂。

 

 

 

 

 

 

「「俺の勝ちだ」」

 

 

 

 

 

 電気を纏いながら、俺の剣が弾け破片が榴弾砲のようにダグザの体を抉ったのと、ダグザの短刀が俺の腹に突き刺さったのはほぼ同時だった。

 

「ぐ──────」

 

 腹に激しい痛みが走り、同時に全身を駆け巡るかのような不快感と硬直。指先どころから魔力の流れすら完全に止められている。

 呼吸、心音も止まってるのかそれとも聴覚が停止しているのか。何も聞くことも出来ず視界の光景も体が硬直した瞬間からまるで写真で切りとったみたいに動かない。

 

 これほどの奇怪な現象、まず間違いなく固有魔術だ。

 やはり短刀で相手を傷つけることが発動条件だった。だが、相手もこちらの攻撃をまともに受けたはずだ。剣を内側から爆ぜさせ、破片を榴弾のように指向性を持って放つ一発限りの大技。至近距離で受ければ一撃で死んだ可能性もある。

 

 お互い手傷は負った。だから、もう祈るしかない。

 相手が致命傷を負って動けなくなっていることを祈りながら、硬直が解けるのを時間感覚すら狂った停止した世界の中で待ち続ける。

 俺としては今の一撃で再起不能になってくれてれば最高なのだが……。

 

 

「──────いってぇな! 穴まみれになっちまっただろうがァ!」

「穴開けてやるって言っただろ、聞こえてねぇなら耳の穴も増やしてやろうかァ!?」

 

 

 再び体が動くようになると同時に視界には体に穴がいくつも空き、左腕がちぎれかけながらも元気にこちらへと飛び込んでくるダグザ・フォールの姿が目に入った。

 この野郎、マジでなんで死んでねぇんだよ。普通なら致命傷になる攻撃を寸前に見切ってダメージを最小限に抑えている。

 

 生存能力が桁違いだ。伊達に長生きはしていないらしい。でもコイツだって限界のはずなんだ。榴弾じみた攻撃を受けて確実にコイツの持つ豊富な選択肢は削り取られ、動きに多彩さが失われた。

 だから、ここからはコイツの経験を俺の経験で上回れるかの勝負になる。

 

 恐らくコイツの固有魔術の発動条件は『短剣程度』の刃で相手を斬ることにより発動する。

 仲間の気配もなしに矢が飛んできてるのは、クロスボウを予め発射する直前に斬りつけたりして動きを止めて遠隔解除でもしてるんだろうか。なら、物質に対してはある程度融通が効くが生き物に対しては長時間効かないのだろう。

 

 そして斬り付けられた対象は魔力単位で体が完全停止する。近接戦闘においては無類の強さがあるが、この固有魔術を持ちながら仕込み針や間合いの長い武器を使わないあたり『短剣程度』という縛りが厳しいのだろう。最小は分からないが、最大でも今奴が持っている刃、それが最大有効射程だ。

 

 

「さぁ、男と男の殴り合いだ。最後まで楽しくやろうぜ」

 

 

 こっちの武器が先程破壊されたのをわかった上で、そんなことを言ってきやがる。コイツ性格悪いな。

 まぁそれは分かっている。コイツがクズでカスでどうしようもないことはわかっている。だからと言って必要以上に怒るな。冷静に、冷静に対処しろ。

 

「──────教えてくれ『鍍金(アルデバラン)』。俺は、どうすればコイツに負けないで済む」

 

 どうすればみんなを守れるか。

 ただそれだけを考えて脳を、黒耀(バロール)を酷使する。無数の敗北、無数の選択、その中でもう答えは決まっていた。情けないことに、俺にあるのは一か八かの大勝負だけ。停止したかのような体感速度の中で泥中でもがくかのように体を動かす。

 

「俺の方が──────」

 

 隠し持っていた、リエンから預かったナイフ。背中に隠していたそれに手をかけて。

 

 

「お前の方が、遅せぇよ」

 

 

 バシュン、とクロスボウが放たれる音がした。

 それは設置トラップ。狙いを常に変えられるわけでもなく、威力も大したことの無い牽制。

 

 けれど、俺は1つの答えにたどり着いてしまっていた。

 コイツの固有魔術が『斬りつけたモノを止める』ことなら。

 

 ……この矢に当たっても、その効果が発動するのでは? 

 

 

「考えたな、一手遅れた」

 

 

 あぁ、ダグザ・フォールの言う通りだ。

 考えた、考えさせられた。結論は『発動しない』。俺もそれに思い至って、左腕に刺さる矢を無視したが僅かであるが思考が止まった。

 

 だから間に合わない。ダグザの短刀が俺の腹に突き刺さる。ナイフを抜くよりもどうにかしてその手を止めることに集中したが、俺の渾身の抵抗は奴の腕を引っ掻く程度で終わってしまう。

 すぐに固有魔術の効果である停止が訪れ、その停止が終わるよりも先に俺の命は刈り取られる。その結果に俺はもう抵抗出来ない。

 

 

 

 

黒耀軌跡(バロールエンチャント)集牙(シュート)

「ッ、あ?」

 

 

 

 

 そう思って油断したであろうダグザの腹を、腕ごと鉄片が貫いてぐちゃぐちゃになった腕が俺の腹に突き刺した短刀ごと、地面に落ちる。もう両手ともひしゃげたこいつには短刀を握ることは出来ない。

 

「なんで、てめ、刺したはずだ。俺の『縛鎖(フォーリント)』は、お前の動きを、魔術を止めたはずだ」

「悪いな。俺は一か八か、勝ったのが俺だったんだよ。まぁ日頃の行いってやつだ。恨むなら自分の行いを恨むんだな、クズ」

 

 

 これで本当に発動するかは賭けだった。身体強化の魔術を解くだけで固有魔術の発動を阻害できる可能性は低かったし、短刀で斬った時に発動するならその発動タイミングは一瞬だ。合わせられるかも分からなかった。

 

 俺の『黒耀(バロール)』は魔術に干渉し、その術式を乱すことで発動を阻害する。

 ダグザの固有魔術が発動し俺の肉体を止めるまでの僅かなラグ。その間にダグザの腕を、魔力を引っ掻き術式を停止させる。

 

 そしてまんまと俺を止めたと油断したダグザに対して最後のダメ押し。

 

「あー、クッソ。わかってても自分で腹に穴を開けるのはキツいわ」

 

 リエンから預かっていたナイフ。

 その刀身は完膚なきまでに破壊されておりなぜそうなったかと聞かれたら使い捨ての弾丸にさせてもらったからだ。

 背中側に隠していたこのナイフを、俺の体を盾にするようにして弾けさせて弾道をダグザにギリギリまで見せなかった。上手く制御して重要な臓器は避けたけれど、それでも腹に穴を開けたのだから出血と痛みがやばい。

 

「さて、ダグザ・フォール。もう両腕は飯も食えねぇくらいぐちゃぐちゃで腹にも穴ぼこ。失血死寸前。降伏するなら今のうちだ」

「……へっ、お優しいね。騎士の卵は」

「仕方ねぇだろ。守るもんがこっちには死ぬほどあるんだよ」

「そうかい。なら良かった。()()()()()

 

 

 ギリギリまだ発動できていた『黒耀(バロール)』が魔力の流れを捉えた。

 何かが起こると身構えて、すぐにもう行動が遅すぎたことを察知した。

 

「モノならよ、魔力を流し続ければ止められる。万が一に備えてこの家の基盤ぶち壊しまくっててよかったぜ」

「テメェ──────」

 

 それとほぼ同時に、『黒耀(バロール)』の限界稼働時間となり体が動かなくなる。

 俺の声が届くより早く、俺とダグザは家の崩壊に巻き込まれた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「クソ……あのやろ……」

 

 瓦礫の中からモゾモゾと、芋虫のように這い出でる。人の家を勝手にぶち壊しやがって、マジでもうぶっ殺していいだろうか? 

 

 魔力は……まだほんの少し残ってる。体の方は『黒耀(バロール)』の後遺症でもうほとんど動かないが、一発だけ使ってあの野郎をとっ捕まえるには十分だろう。

 

 いや、そもそも俺よりアイツの方が重傷だったし案外崩落に巻き込まれて死んでいないだろうか。

 

 

 そんな甘い考えを引き裂くように、瓦礫の中から男が立ち上がる。

 

「……ダグザ・フォール」

「お互い、悪運が強いようだな」

 

 目が合い、言葉を一言交わす。

 同時にダグザが走り出した。負傷具合から考えられないくらい機敏な動き。逃げるつもりかと考えて、走り出した方向を見て呼吸が止まった。

 

 

 

「ハピ! 逃げろ! 狙いはお前だ!」

 

 

 

 まだハピ達が逃げられずに家の外にいた。俺かハピ、どちらかを刺し違えてでも殺すつもりらしい。そうはさせるかと、最後の魔力を振り絞って跳ぶ。技術もへったくれも無いただのタックル。でも、アイツだって死にかけなんだから俺に突っ込まれたらもう立ち上がれないはず。

 

 

「守るもんが多いってのは、本当に動きが読みやすいなぁ!」

 

 

 ダグザの野郎が振り返って、手をこちらに向ける。

 その掌には短刀が突き刺されて固定されている。

 

 

「あ」

 

 

 やばい、これ死んだ。

 勢いだけでもう身を捻る体力も軌道変更する魔力もない。まっすぐ顔面から、俺は短刀に向かって突っ込む。自分の力で、自分の速度で、俺は自ら死に向かって突っ込むことになる。

 

 まずい、どうする、どうするどうするどうする!? 

 考えても思考がスローになるだけで体はもう射出されている。今更戻ることなんてできない。せめて腕を前に出してどうにか刃が頭に刺さることだけを避けたいが、もう腕すらろくに動かない。

 

 

「俺の勝ちだ。俺の勝ちだ! 捨てられなかったお前らに、捨てた俺が負けるわけねぇだろ。こっちは身軽なんだよ!」

「身軽ってことはさ、吹けば飛ぶ程度の重さでしかないんだよ。そんな信念、価値はない」

「……テメェ、なんで立っ」

 

 

 ダグザの足を、光の筋が撃ち抜いた。

 立っていられなくなり、体勢が崩れたダグザの横を俺の体がすり抜けて受け身も取れずに地面にたたきつけられ転がっていく。

 その勢い求められなかった俺の体を、誰かが受止めた。

 

 

「……ハピ、お前、動けるなら逃げろって言ったろ」

「ご、ごめんなさい……。でもししょーもお母さん達も安静にしといた方がいいって、ししょーが……置いてくなんてできないし」

「そういうことだ。だいたい、もしもハピが、逃げてたらワンチャン死んでたぞ、ジョイ」

 

 その横には顔を真っ青にして支えられながらではあったが立ち上がり、魔術を放ち俺を助けてくれた、リィビアの姿があった。

 

「リィビア、お前毒は」

「ハピだよ。この子が治療してくれた。まぁ、大雑把で無理やりだったからワンチャン死んでたし症状を抑えるくらいしかできないが、一発簡単な魔術を打つくらいなら、ね」

「……そうか。……そうか、よかったぁ」

 

 気を抜いて意識を持ってかれそうになるが、ギリギリのところで踏みとどまる。

 ダグザの方はその場から動こうとするが足をやられて立ち上がることも出来ないと言った様子。そして、村の周囲に現れた魔獣だが一向にこちらに来る様子はない。エア、クラキア、アーリスが止めてるのだから当然だろう。あいつらの防衛線突破するとか、数の力だけではまず無理だ。

 

「ありがとう、ハピもリィビアも、お前たちが居なきゃ俺は死んでた」

「……私も死んでいた。緊急事態だから協力するのは当然のことだろ」

「そ、それよりもう大丈夫なんだよね!? 助けを呼びに行った方が……」

 

 ハピの言葉と共に、空を覆っていた結界が消えているのを肉眼で確認できた。やはり、ダグザが結界の起点だったらしい。

 

「あぁ、そうだな。でも俺たち重傷で動けないし、ハピ1人で俺達運ぶのは無理だしどうするか?」

「業腹だが、助けを待つ他、ない……それと疲れた、苦しいし、寝る……」

 

 寝る、と言うよりは気絶する感じでリィビアはその場に寝転んだ。呼吸は安定しているし本当にハピが毒を解毒してくれたのだろう。

 

「……頑張ったな、ハピ」

「私は……でも……」

「失敗したことはどうでもいいんだよ。頑張ったんなら胸を張っとけ。みんな生きてる」

「……うん、ありがと。……兄さん」

 

 

 さてこれにて一件落着。俺もそろそろきついから悪いけれど、意識を手放させてもらおう。そう思って、目を閉じる。

 

 

 

 

 

 

 

「おつかれ、ジョイ・ヴィータくん。それはそれとして……寝たら死ぬぞ、なんてね♡」

「…………………………は?」

 

 

 

 目を開ける。誰かが俺を見下ろしている。

 ハピは、信じられないものを見るような目で震え、乱れた呼吸を繰り返しながらその場にへたりこんでしまってる。元々動かなかった俺の体も、呼吸すら忘れてその存在を凝視する。

 

 

 

「そんな熱烈な目で見られちゃ照れちゃうな。……師匠があんなんだからか、レディヘの態度がなっていないんじゃないかい?」

「魔女、てめぇ!」

 

 

 

 災厄の現況、そして間違いなくダグザ・フォールの依頼主。

 魔王現象、魔女は楽しそうに俺達を見下ろしていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……大方片付きましたね。まぁ6割エアさん、3割私、残りが私とエアさんの余波ですかね」

「はぁ……私の、はぁ……活躍は!?」

「端数?」

「そうだけど! 事実だけど! 言い方!」

 

 疲労困憊で地面に倒れ込むアーリスを見て、クラキアも槌を消滅させた。

 魔女の結界は消滅し、魔獣もあらかた殲滅した。結界が消えたということはジョイくん達がやったのだ、と彼の活躍を喜びながら、また無茶をしたのだろうとクラキアは少し不安になった。

 

「とりあえず、エアさんと合流しましょう。立てますかアーリスさん。……アーリスさん」

「どうしたのクラキ……あれ、なにこれ」

 

 アーリスはいつの間にか自分の手が赤く染まっていることに気がついた。無我夢中で剣を振るって皮が剥けていた、という訳ではない。

 ボタボタと、鼻と口から血が垂れている。それに気がついた瞬間、アーリスの腕の血管から裂けるように血が漏れだした。

 

「ッ、アーリス!?」

 

 駆け出そうとしたクラキアだったが、彼女の元に辿り着く前に転んでしまう。立ち上がろうとするが上手く足に力が入らない。

 何が起きたのか、不思議に思いながら足に視線を向けてクラキアら声を失った。

 

 

「なんですか……これ」

 

 

 足の骨が砕けている。見たことも無いような曲がり方をして、両足とも骨が飛び出すような凄惨な骨折をしていた。

 だが、そんなことを気にしている余裕はない。アーリスは全身から血を吹き出している。すぐに対処しなければ出血多量で命が危うい。痛みを堪えながら腕の力だけで這って近づこうとするが、それと共に腕からとんでもない音が鳴り響き、足と同じように折れ曲がる。

 

「づぅ!? なんですか、何が、起きて……」

 

 せめてアーリスだけでも助けなければ。

 両手両足が砕けまともに動けないながらも必死に彼女に近づこうとしたクラキア。

 

 そうしてほんの僅かに身体を捩らせた時、胴体からべギリと、音が響く。

 何かが砕け、ちぎれ、体内で溢れてはいけないものが溢れていく感覚。何が起きたか理解する前に、クラキアの意識は完全に途切れた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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