逆行したら天才イケメン騎士様がロリ巨乳美少女騎士様になってた   作:ちぇんそー娘

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前章まとめ
・憎き天才が好みどストライクのロリ巨乳美少女で、天才同級生が魔女の眷属で、憧れの魔術師が口が悪いけど優しいロリだった事実で感情も内臓もぐちゃぐちゃのジョイくん。







2章 唯一の月
9.次席


 

 

 

 

 

 

 

「ふざけんじゃねぇぞ! 俺はもう疲れた! これ以上歩きたくねぇ! 大体なんだあの雑魚ども! 弱いくせに、なんで助けた俺達に対してあんな態度出来るんだよ!?」

「落ち着きなってギガト。彼らだって私達が嫌いなわけじゃない。ただ、私達を秩序に含めることはリスクが大き過ぎる。賢くて優しい人だからこそ、大勢の人間の為の選択をしたんだよ」

「うるせぇ知るか! 何がルールだ! 俺を守ってくれねぇモノの為に、なんで俺が損しなきゃならねぇんだよ!」

「ギガト……レヴィの言う通りだよ……。私達は、化け物なんだもん。怖がるのは仕方ないよ……」

「聞こえねえんだよアルム! テメェはいつもそうだ! 声は腹から出せ! 何か言いてぇならレヴィのじゃなくて自分の言葉で語れ!」

 

 何処かで見た事ある人達が喧嘩をしていた。

 暴れる真っ白な髪の毛の小さな女の子を、落ち着いた灰色の髪の毛の女の子が窘め、真っ黒な髪の毛の女の子が灰色の子の後ろで白の髪の子に怯えて隠れてしまっている。

 なんとも似てない3人であったが、瞳の色は全員落ちて行ってしまいそうなほど黒く、何となく姉妹のように感じられた。

 

「しっかし、どうしようか。また宿無しの旅だよ。■■■?」

 

 レヴィ、と呼ばれていた灰色の髪の毛の少女が困ったように誰かに語りかける。

 

「俺はともかく、ギガトが不機嫌になるのは困るよなぁ」

「はぁ!? 俺は不機嫌じゃねぇぞ! お前が一緒にいるんだからな、どんなところだってあの暗い部屋よりはずっとマシだ!」

「それ、褒めてるのか? 褒めてるでいいんだよな?」

「褒めるわけねぇだろ調子乗るな!」

 

 ギガトと言う女の子はどうやら少し難しい性格をしていて、素直でないらしい。少し頬を赤らめて笑顔で言うのだからそれは素直でないと言うよりも照れ隠し、と言うべきなのかもしれないが。

 

「アルムは大丈夫か? 疲れたりしてないか?」

「だ、大丈夫です。私も、貴方が助けてくれたあの日から、毎日がずっと楽しいから……」

 

 アルムと言う少女は弱々しく丁寧に、だけど本心からの言葉だからか何処かよく通る声で笑顔でそう語る。

 

「私は言うまでもないよ。さぁ行こう■■■」

「そうだな。……ゴメンな3人とも。もう少し、もう少しだけ俺に付き合ってくれ。全部終わったら、みんなで楽しく暮らそうな」

 

 そうして、また4人は歩き出す。

 誰もいない荒野の風から、身を寄せあって互いを守るように。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…………変な夢見た」

 

 時刻は夜明け前。

 朝練の為にはちょうど良い時間だが、なぜだか調子が出ない。多分今朝見た夢のせいだ。

 内容は全く覚えていないが、なにか大事でとても楽しい気持ちになったあの夢。覚えていないのにずっと見ていたいと思う不思議なもの。

 

 まぁ、忘れてしまうならその程度のことなのだろう。

 雑念を振り払い、俺は朝練の為に自室を後にした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あ、ジョイお兄ちゃん! あのね〜、お姉ちゃんからお手紙もらってきたんだ! はい!」

 

 

 朝、普通に登校してきた俺に対してぶりぶりの幼女演技を見せてくださってるのはこの学園で一番偉くて強い、『巨人(タイタン)』ことギガト・レムノさんだ。

 

「ありがとねうん。お姉ちゃんによろしくねはい。うん……」

「……俺が学園長だってバレると面倒だし、威厳がな? こういうのは結構見た目も重要なんだよ。じゃなきゃこんなダセェ幼女服なんて着てられっか」

 

 小声で非常に不満そうに愚痴を漏らして、ギガトさんは元の偽装幼女笑顔でてとてと足音を鳴らして教室を出ていった。ちなみに彼女は偽幼女なので、本来てとてと音はならないが魔術で誤魔化しているらしい。世界一どうでも良い幼女の足音に関する知識を得てしまい、俺は虚無に至りそうになっていた。

 あのてとてとって音、なんなんだろう。

 

「……何? ジョイ、いつの間にロリコンになったん? また変な噂流れるで? 漏らした上にロリコンは社会性ゴミやろ」

「お前が口に出さなきゃ広まらないからマジで黙ってろリエン」

「安心せぇ。俺は口が堅いお前の親友や」

「おはよう、2人とも。なんの話ししてるの?」

「ジョイがロリコンって話」

「お前を親友だと思える瞬間が一度もないのやめてくれるか?」

「えっと……。ジョイくんは、小さい方が好き?」

「別にぃ? 女性の体に興味とかございませんが?」

 

 脇でめっちゃ楽しそうな笑顔を浮かべてるリエンの足にキックしようとして躱されつつ、アーリスがこうして元気……ちょっとしょんぼりしてるが肉体的に元気に学校に来れてることを改めて実感する。

 

 

 アーリスの一件から2週間。

 俺は案外普通に学園生活を満喫していた。以前はデウスに負けて以降ずっと何かに取り憑かれるようにして生きてきていたが、今回はなんだかんだで余裕が出来たのが大きい。

 

 リエンはクソ野郎だが、なんだかんだコイツは隣に置いておくと面白いし、3週間ですっかり腐れ縁みたいな仲になってしまった。解せぬ。

 アーリスの方は、ギガトさんが無罪放免……というわけにはいかないが、魔女討伐への協力と自分への弟子入りを条件に監視だけで、こうして現在も普通に学校に通っている。最初はすごく不安そうにしていたが、最近は笑顔も増えてきたし良いことだろう。

 それにしても、アーリスのやった事は本当に大罪であるはずなのに、一体ギガトさんはどうやってそれを一時保留とはいえ止めたのだろうか。本当にすごい人だ。

 

 ちなみに2人とも模擬戦は積極的にやっていて、アーリスは『猛炎(フレア)』を完全に使えなくなってしまい苦戦中、リエンはなんか意外と勝ってるらしい。コイツ俺が見に行けないタイミングに試合入れるせいで詳しいことが分からない。

 

 俺はと言うと、アーリスとの戦い以降実はまだ一戦もしてない。あの後師匠が拗ねてしまって、しばらく戦うの禁止と言われてしまった。

 元からアーリスとの戦い以降、イグニアニマに勝った男として少々注目されてきてしまっていたが、皮肉なことにアーリスが苦戦中なこともあってその噂も下火。最近ようやく、特に注目されない一生徒に落ち着いてきた。

 

 

「おはよぉー3人組! 今日も元気かな? 僕は今日は調子がいいよー!」

 

 

 ……落ち着いてきた、と言うのにさぁ! 

 他のクラスのくせに元気よく教室飛び込んできた金髪碧眼。そしてちっこい背丈に採寸し直したのか特注でコルセットが入ってるかのように彼女の豊満な胸元と括れた腰が服の上からでもわかるようになった、凡そまともな教育機関が出したとは思えない体型がよくわかる制服を身に纏った、その女。

 

「やぁ、おはようございますグラシアスさん。ところでもうすぐ始業の時間だから教室に戻った方がいいんじゃないかな?」

 

 隣でリエンが吹き出す音が聞こえた。コイツやっぱ後でシメよ。

 

「なんかジョイくん僕に冷たくない? 命の恩人だぞ〜このこの!」

「なんのことでございましょうか? アーリスさん、心当たりは」

「えぇ!? さ、さぁ……。ごめんなさい、私2人の仲についてはよく知らなくて…………ずるいなぁ、グラシアスさん

 

 口外禁止であるアーリスの一件を余裕で仄めかしてる口の軽すぎる、それに反して胸の重すぎる女ことエア・グラシアス。

 あの一件を通して、俺とコイツは不覚にも今世でも知り合いということになってしまった。そして更に、その過程で元々コイツは田舎の村出身で、両親が亡くなった後になんやかんやで豪商のグラシアス家に養子として引き取られたらしい。

 

 昔の名前は、エア・グラディウス。

 

 なんてこったい、もう逃げ道が無くなった。

 コイツはデウスだ。聞いてもないのに「僕の両親は僕が男だったらデウスって名前にするつもりだったんだって」とこっちをチラチラ見ながら言ってきたので俺は死んだ。

 

「相変わらず元気やなぁエアは。その元気さを万年しかめっ面のジョイくんにも分けてやってや」

「良いでしょう。お代としてリエンくんは今度都合があったら私と模擬戦してね!」

「都合があったらな。それ、はよしないとしかめっ面が治らんくなる」

「俺のしかめっ面の原因1号と2号で楽しそうにするな!」

「私はジョイくんのしかめっ面! 好きだからね!」

「それフォローになってねぇよ……」

「ご、ごめん……。私いつもミスばっかで……」

 

 エアは普通に明るくて元気な陽キャなので、リエンともアーリスともすぐに仲良くなってしまった。特にリエンとは変なところで波長が合うのかこんな風に俺の胃がキリキリするやり取りをしてるし、アーリスとは監視員と監視される側という立場でありながらも女の子同士意外と仲良くしてる。

 

 俺はと言うと、無理に決まってるだろ。

 デウスは俺にとって雲の上の、目障りな憧れだ。認めたくないが俺は間違いなくアイツに憧れていた。そして、魔女の結界と炎の翼を切り裂いたエア・グラシアスの剣を見て。

 

 

 コイツのことが、俺は本当に■■なんだと。

 そんな感情が、とめどなく溢れてきた。

 

 ムカつくけれど、誰かの窮地に駆けつけてまるで下手くそな演劇の終わり方みたいに、全てを切り裂いてご都合主義なハッピーエンドにしてしまう、天の光。

 

 ムカつくほどにかっこよくて、呆れるほどに強くて、吐き気がするほど憧れる。

 

 そんな相手なんだけど……コレが俺好みの美少女なのだから色々と拗れる。ほんと拗れる。

 

「ジョイもいつか僕と戦ってね〜。並んで、追い越して見せてよ〜」

 

 そうして抱きついてくるエア。

 もうなんなんですか乳が、お乳房がお当たりになっていらっしゃいますわよ。全く淑女がはしたないですわね。

 マジで恥の概念どうなってんのお前? 女の子として育ったならその、デウスの時と同じ感じの距離感やめてくれないか? 

 あ、あ、柔らかいですわね。なんというか、師匠にボコボコにされて全身の骨が全部砕けてから再生させられて3日寝ずに走り回らせられた後にベッドに倒れ込んだ時と、全く同じ幸福感ですわ。

 吸い付くようで、それでいて突き放すよう。相反する2つの幸福が俺の背中を人類の原罪から解放して、しかもほんの少し俺の耳に当たる長い金の髪から甘い匂いがァァァァァァァ感情が壊れる! 

 

 

「う、うわぁぁぁ、ぁぁぁぁ……」

「え、ジョイ……? 泣いちゃったぁ……」

「なんで!? ごめんね、そんなに僕に抱きつかれたの嫌だった!?」

抱きついてください(絶対にお前には負けない)!」

 

 

 エアに勝てるのとか、魔女についてどうするかとか。

 それ以前に俺は生きて学園生活を無事に終えられるか分からなくなってきた。もしかしたら先に魂が拒否反応を起こして死ぬことになるかもしれん。

 

 

 

 

「……抱きつくと泣いちゃうんだ。ふふ。可愛いかも?」

 

 

 

 あとなんかアーリスが不穏なことを呟いてる気がした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そんなこんなで放課後。

 リエンとエアは今日も元気に模擬戦やらその準備やら。アーリスは未だ自由行動とはいかず、放課後は学園長に呼び出しをくらってしまっている。本当はこうしてシャバで学園生活出来てるだけでもおかしいのだから、その辺は仕方ないだろう。

 

 というわけで、朝に渡された謎の手紙に記された場所に行くとそこは女子寮だった。

 ふふん、どういう意味だ? 俺に不法侵入して命を失えということか? 自慢じゃないが俺はここの女子寮に侵入したら死ぬ自信がある。なんなら、この女子寮に侵入して生きて帰って来れる男はデウスくらいだったが、今では奴もここに住む側だ。

 お手ごろにアーリスが魔女の眷属になったあの時以上の絶望を味わえるな。

 

「来たな。ジョイ・ヴィータ」

「あれ、ラクシャ先生。こんにちは」

「ん、こんにちは。では案内する」

「いや待ってくださいよ」

 

 ラクシャ先生は主に武術系の総合担任を務める学園きっての武闘派教師。今の俺では近接戦闘では勝ち目がないくらいには強い人なのだが、教師とは思えないくらい説明が足りない人だ。それでいて、別に分かりにくい授業をする人では無いので不思議な人だ。

 

「いや、学園長から困ったことがあったらお前を好きに使って良いと言われた」

「好きに」

「あぁ。どんな雑用であろうと、彼ならばこなしてくれると。ちなみに何かあったらアーリス・イグニアニマの名を出せとも」

 

 あのロリババアー! 

 尊敬してたのに! やっぱ根っこは師匠と同じじゃないか! めちゃくちゃ良い事言ってるいい人だと信じてたのに! 前世では真面目に強くて凄い人だって憧れてたのに! 

 

 クソーッ! 

 やっぱロリなんてクソだ! 俺は大人なお姉さんが好きだー! 

 

「ん、大丈夫かヴィータ。何やら苦しそうだが」

「先生……俺、将来が不安です」

「その目は恋愛関係だな。わかるぞ。私も何度も鏡にお前と同じ目をした自分を見てきた。安心しろ、異性は星の数ほどいる」

「先生……」

「そして星は手が届かないからこそ、手を伸ばしてしまうものだ」

「先生!」

 

 俺はこの人と気が合うかもしれないと思ってしまった。

 ラクシャ先生は異性、俺は天才達。相手は違えど同じ星を目指す者同士。

 

 

 そんな愚かな傷の舐め合いはやめておこう。これお互いが傷付き合うだけだ。トゲトゲドラゴンのジレンマと言うやつだ。

 

 

 

 

 

「生徒が引きこもりに?」

「ん。私の受け持ちクラスの子1人。しかも、その子は私と親戚筋にあたる子なんだ」

 

 やっぱり良い先生なのか、ひきこもりの生徒は心配なのだろう。

 

「親に入れてもらった学校で親に何も言わず不登校はダメだ。せめて理由を聞き出す。しかし私は先生。そこで君がやれ」

 

 腐れ脳筋学園め。

 実力でしか物事を測れないのか? 

 

「何言ってるんだ。そんな物騒なことしてみろ。人が死ぬ」

「じゃあ何をやればいいんですか。とりあえず俺が犯罪者にならない方向でお願いしますよ?」

「大丈夫。君がなるのはせいぜいがモルモットとかその辺り」

 

 猛烈に嫌な予感がしてダッシュで逃げようとしたが、それよりも早くラクシャ先生が俺の関節を完全に固めつつ部屋の扉を開いた。

 

「あの子はちょっと……かなり……まぁまぁ……だいぶ性格に問題があるが。君ならどうにかできると学園長が言っていた。頼むぞ」

「俺は厄介性格請負人じゃねぇ! 職権乱用はやめろ!」

「……私達ではどうにもできないんだ。頼む。と言うか、こうしないと出ないと言うんだ、()()()()の奴!」

「……は!?」

 

 出された名前に驚いて一瞬力が抜け、部屋に押し込まれてしまう。

 部屋に入った瞬間、空間がねじ曲げられているのが肌で感じ取れた。部屋は真昼の砂漠のように明るく、それでいて夜の水底のように冷えている不思議な空間。服を着替えるのもダルいとか言い出した時の師匠の部屋よりも散らかった部屋に倒れ込み、顔を上げようとした時に俺は彼女と目が合った。

 

 

 

「やぁやぁやぁやぁ。はじめまして凡人くん! そしておめでとう! 君はこの天才様の栄えある実験体に選ばれた! まずは投薬? 身体検査? 魔術素養解析? 何がいい? もちろん最後は全てやるが、私は鬼じゃないからねぇ。ハジメテは君に選ばせてあげようじゃないか!」

 

 

 

 まず最初に、その女はデカかった。

 背丈は俺より、師匠より、なんなら、デウスよりもデカい。あらゆるものを見下すかのようなその目付きと非常に相性が良い。それでいて、赤と青のメッシュの入った銀の長髪を伸び放題にし、下にクマのできた琥珀と翡翠のオッドアイ。

 極めつけは女子であるがジェンダーフリーのズボンタイプの制服の上から羽織った金色のローブ。何もかも目に悪い配色をしている派手で狂ったテンションをしているこの女。

 

 この女は騎士学校の生徒でありながら、騎士ではない。

 この女は魔術が大好きで、だが魔導研究の道に進まず何故か騎士学校に来て、ひたすら魔術の研究を続けた異端の騎士。

 

 ほぼ授業に出席せず、ひたすらに自分の道を進み続けて最終成績、第2位。

 デウス・グラディウスとの相性不利さえなければ彼女こそが首席卒業であった、俺の大嫌いな天才の1人。

 

 

「この私、リィビア・ビリブロードの実験体になれたことを末代までの誇りにするといい。実験体(ヴィータ)くん♡」

 

 

 

 卒業と同時に姿を消した伝説の第2席。

 唯一絶対の魔術師、『月虹(メイガス)』の名を冠した最強の異常。

 

 

 ──────名を、リィビア・ビリブロード。

 天上天下、己以外の誰も認めない最悪最強の平等主義者(ロクデナシ)だ。

 

 

 

 

 

 

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