普段何もしてない奴が実は最強ってロマンだよね!(周りは気が気じゃありませんが)   作:イベリ子

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感想、評価、誤字報告ありがとうございます。
予想以上に好評で驚いてますが、正直一発ネタのつもりだったので続き全然考えてませんでした。少しだけ考えてた過去話で許して。


初対面の印象がイメージの8割(1番緊張しちゃうのも初対面なのはご愛嬌)

 

「トール、『終末の蛇』に会いに行ってみないか?」

 

「はぁ?」

 

 調和勢の中で人柱を要求せず、けれど精力的に人なんかのために力を使う変わり者のドラゴンのエルマと出会い────こいつからすれば私も変わり者らしいが────しばらく共に過ごしていた頃、唐突にエルマが切り出した。

 

「何をいきなり言い出したんだ? 自殺なら一人で死んでろよ」

 

 この世界に生きるものなら誰しも一度は眼にしたことがあるだろう存在。『古龍』とか『終末の蛇』とか『蛇王龍』とか呼ばれているそれは、眼を逸したくなる破滅の象徴のくせに巨き過ぎて嫌でも目に入ってきて嫌になる。人間にも神にも喧嘩を売る混沌勢でもアレに手を出そうとする奴はいなかった。

 

「闘いに行くわけじゃないさ。ただ、彼のような存在は、何を考えて生きているのだろうかと思ってな」

 

「考え……なんてあるのか? アレに」

 

「分からん」

 

 幾分低いハァ? が口から漏れた。結局何を考えてるんだ、幻覚作用があるもんでも食べたのか? こいつの食い意地は異常だからな……そんな風に思考を巡らせていると、

 

「でも、彼は世界を滅ぼすし世界の秩序ともなっている。もしかしたら、お前みたいに何かを見定めて動いてるんじゃないかって思ったんだ」

 

 そう続けられて、少し考える。

 ……どうだろう。少なくとも私は今まで、アレをただの世界のシステムのようなものだと思っていた。そこに思考があり、動く時、止まる時に価値観が関係しているのなら。それは、……知りたいかもしれない。私よりも遥かに強大なあの存在が、何を基準に見定めているのか。

 ふぅ、と息をついて、エルマに向き直る。

 

「確かに、私も興味はあるかもしれない。ヤツみたいなものが、何を思い、何を感じて生きているのか」

 

「ふふん、そうだろ? まあ、そもそも知能があるかも私には分からないから、翻訳魔法を使って話しかけてどうにもならなかったらその時はトールの魔法で転移しような」

 

「得意げになるな、ただの行き当りばったりじゃないか」

 

 そうして、また二人で歩き出す。そして、『終末の蛇』についてつらつらと考える。

 深く考えたことが無かった。生きているものとしても、同族として見たことは一度もない。混沌勢の中で価値観がズレているはぐれものの私と、調和勢の中でズレているはぐれもののエルマ。世界の中で、一等ズレているあの蛇は、一体何を考えて生きているのだろうか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 マジ暇。暇暇暇暇~~。でも地脈枯れる気配はまるでなし、移動する日ははるか先。むうんやることないなあ。ああ~~~~~~誰か来ないかなあ~~~~暇暇暇暇ゲームしたいアニメ見たい漫画見たい。(この世界には)ないです。ガッシボカッ!スイーツ(笑)

 

 ……暇。寝よう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 間近に迫る『終末の蛇』。……いや、間近ではないか。まだ1kmは離れているはずだが、既に山のような蛇の顔面が私達を圧倒する。ズズズズ、ズズズズ、と一定間隔で響いてくる低音は、恐らく呼吸音。休眠中、なのだろうか。

 少しずつ近づくと、その分足が竦む。幼少の頃から教えられたおとぎ話の中の存在に、触れようとしているんだ。ちらりとエルマを見ると、ぎゅっと三叉槍を握り込み、額から汗を流しながら進んでいる。同じか、だろうな。

 私とエルマ二人にいつでも転移が出来るように魔法を組む。それを確認したエルマが目の前の『終末の蛇』に翻訳魔法をかけた。……かかっている、弾かれた様子もない。二人で同時にほっと胸をなでおろす。

 ……冷静になると、この接触が失敗して怒らせたら私達終末の引き金を引いたことになるんじゃないか? 頭が回っていなかったがこの状況物凄いリスクなのでは「なあトール」

 

「冷静になってみたんだが、これで『終末の蛇』を怒らせたら私達終末の引き金を引いたことになるんじゃないか?」

 

「今更遅いしお前が言うな! ああくそ、こいつの行き当りばったりに付き合うんじゃなかった……!」

 

 汗を垂らしながらそんなことを言うエルマに大声で返してしまう。すると、

 

「うっ」「っ……!」

 

 地面に伏せられていた頭部の中心。縦長の瞳孔が開いた真っ赤な瞳がこちらを覗いている。

 

 起きた。起こしてしまった。どうする、どうしたら、

 

「お初にお目にかかる『終末の蛇』! 眠りの邪魔をして申し訳ない、私は調和勢のドラゴンエルマ! こちらは私の付き人であるトールだ! どうか慈悲を承りたい!」

 

 私の行動よりも先にそう叫び、深々と頭を下げるエルマ。遅れて私も頭を下げる。……しばらくして、耳鳴りがするような低い声と、翻訳による意志が伝わる。

 

『ギシィ……《おお、おお、ドラゴンか、久しぶりの客人だな。目覚めなら気にするな、余は自らの眠りよりも客人を喜ぶぞ。慈悲とはなんだ?》』

 

 低音とは裏腹に、明るい思念。意志があるのか。それも驚きだが、エルマが使った翻訳魔法をそのまま使っているということは本来はこの蛇の鳴き声のようなものしか使えないのか。魔法が使えず、意志疎通が翻訳を介さないと不可能……おかしなドラゴンだ。

 

「……はい、寛大な対応に感謝致します」

 

 エルマも困惑してるようだが、表面上は取り繕えている。礼儀というものは人の世界に関わっていた時間が長いエルマのほうが上手い。ちらりとこちらに視線を向けられる。分かってる、私が問いかけるほうがいいんだろ? 

 

「はい。私達は……貴方について知りたいのです。貴方が動き、その役割を全うされる時。それを貴方は、どのように見定め、何を考え動くのか。教えていただくことは可能でしょうか」

 

『……ン? 余が動く時……移動する時、か?』

 

 頭上で、首が地面を離れて首をもたげているのが音で分かる。胸のような位置から左右に生えた両腕が地面についた振動が伝わり、身体が身構えようとする。思念にやや戸惑いはみれるが不快感はない、攻撃ではないにしてもこの衝撃は異常だ。

 身体が緊張で強張り、汗が吹き出ながらも頭上の気配を待っていると、しばらくしてまた低い唸り声と共に思念が送られてくる。

 

『余は、何も見定めてなどいない。余が動く時は、この地の地脈が枯れた時であり、それ以外の意味など存在しない。そもそも、余が食すのは地脈という星のエネルギーであり、それを得られなくなった時に移動する。移動する先はまた地脈が収束する地である。それだけだ』

 

『余は余の好きに動いてるに過ぎぬ。そこに大それた意味も無い。……話はそれだけか』

 

「……はい。感謝いたします」

 

 最後に深々と礼をした後、背を向けて歩き出す。すぐに転移をすると不興を買うかもしれないと思った結果だったが、すぐにエルマも隣に並び、『終末の蛇』は無言でこちらを見つめるだけだった。

 

 ……何も見定めないと言った。あのドラゴンの言うことが本当なのであれば、彼は滅ぼそうと思って滅ぼすのではなく、彼の食事のために動いた結果、周囲が破壊されるだけなのだろう。

 混沌勢のように滅ぼすために動くのではなく、自分勝手に動いた結果周囲が滅ぶ。だから自分の行動にたいした意味もないと言う。

 やはり、アレは世界のシステムのようなものなのだろう。無感情な物ではなくとも、その隔絶した存在と自分勝手な行動原理が、アレをシステムのようなものに仕立てている。アレを中心に回るしか無いのだ、この世界は。……その傍若無人が、少し羨ましい。

 

「トール、……どう思った」

 

「何も。まあ、ああいうものがこの世界にあるなら、私達が見定めるための時間は無限には残されていないということなんだろうな」

 

「……そうだな。私が、一つの国にいたとしても。彼が動けばどうしようもない、か」

 

 そのエルマの言葉で、少し考える。もし私が、壊してはいけないものだと、護りたいような存在を見つけて。そこにヤツが動いてきたら。

 

 

(ま、諦めるしか無いな)

 

 

 ヤツはそういうものだから。この世界で生きる以上、私たちはあれが動いたらどうしようもないと思うしかない。

 

 

 少し振り返ると、あの赤い双眸はまだ私たちを睥睨していた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 帰っちゃった。ヤバ、久しぶりの客人なのに自分ばっか話しすぎたかな? でも余について知りたいって言われても余の生活サイクル本当にそれだけなんだもの! なんか凄い哲学的な聞かれ方してたし、多分年上の含蓄ある言葉を期待してたんかなあ?

 いやあ申し訳ないな、ほんとに食っちゃ寝食っちゃ寝たまに運動ってしかやってない龍生なんです。……また来てくれないかな、かわいかったし。あれ、名前なんだっけ寝起きに言われて聞き逃しちゃってたわ。ああ~バッドコミュニケーションすぎる~~初対面やり直したい~~。

 

 

 




主人公は龍体の時は無性です。メイドラゴンやん!ってなったので人型を取る時は世界観に合わせるためにTSしました。
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