普段何もしてない奴が実は最強ってロマンだよね!(周りは気が気じゃありませんが)   作:イベリ子

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 感想、評価、誤字報告ありがとうございます。身に余る評価に恐れ戦くばかりです。
 感想は1つ1つ読ませてもらってます。殴られる主人公可哀想、主人公にボコられる地球可哀想、主人公からのDVに耐え続けた異世界偉いなど色々な感想あってとても面白かったです。なあなあでは終われない規模の主人公ですが、日常コメディ世界線に行き着けるように進んでいきたいと思います。

 そんなに長くは続きませんが、優しい目で読んで頂けると幸いです。



蛇王の怒りは天蓋を衝きて(怒る時には怒ります)

 傷を負ったのは何時ぶりだろうか。

 

 

 いやまあそんな大物ぶらなくてもこの古龍ボデーは意識さえすればばっちりくっきり思い出せる。あれだ、前々回に新たな地脈に向けて移動しようとしたときだった。一応ルーティーン的にあくびだけして、しばらく地脈の方向を探して、見つけたからそっちにぜんしーん、って感じに動こうとしたら超雁字搦めに拘束されてた時。

 王国が神様と人間一緒になって余を止めようとしたらしい。あとでケツァルコアトルに聞いたんだった。……あ、ケツァルコアトルってルコアさんじゃん! えー愛称許してくれて無かったんだちょっとショック。

 あの時は驚いたなあ。地脈見つけて動こうとした瞬間頭の上で爆弾ボーン神鳴ズドーン戦車ゴーン眼にズシャーだもん。頭の角折れたし目ン玉潰れるかと思ったもんな。いやお前片目潰れてたやないかーいってね。治ったんだけども。

 でもあれで色々考えられたから良かったよなあ。人間も神様もドラゴンも、割と脆くて、割と手加減したほうがよくて、割とキレる時がある。余もな。そんでキレた方がいい時もあるってこと。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ぎゅおおおおおおおお、とダラ・アマデュラの咆哮が響く。ファフニールが放った呪詛の波は彼女の胸部に集中していたエネルギーを巻き込んで暴発し、その衝撃は彼女自身にはもちろん空気を伝って、音速の壁を破った音とともに周囲に伝わる。

 

「ちょっとちょっとちょっとファフニール!? 僕の話聞いてたかなあ!?」

 

 彼女が収束していたエネルギーは呪詛によって妨害され霧散していく。ちょっかいのような攻撃に対しても積極的に攻撃してこなかった彼女が突然起こした予備行動に面食らってた僕も悪いけど、こんな形でファフニールが加勢してくるなんて! 

 トール、エルマ、イルルも衝撃波で吹き飛ばされたみたいなので転移の窓を作ってこっちに戻しておく。多分この衝撃波で地球全体で気圧変化くらいは起きるね、何かしらの行動を阻害出来たことは間違いないけど……

 

「うええ、戻してくれてありがとうございますルコアさん……どうなりました? 死にました?」

 

「ぶああー! 生まれてはじめて溺れるかと思ったぞ、海に優しくしろぉ!」

 

「う……ごめんなさい、気絶してた。まだ、頑張れる」

 

「今のファフニールが撃ったのか? あいつ隠れていいとこだけ持っていったな、くそ!」

 

「皆元気そうで何よりなんだけどちょっと楽観していられる時じゃないんだよねえ!」

 

 この世界を守りたいという意志はほとんどないはずだけど、彼女を嫌ってる彼ならどこかで加勢してくれると思ってた。でもこんなにダメージを与えられるなんてなあ、彼ともテレパシーつないでおけばよかった! 

 人間が見るだけで正気をなくしちゃいそうな彼の姿まで含めて認識阻害をかけ直す。ダラ・アマデュラには病も毒も麻痺も効かないから相性最悪なんだけど、唯一ほんの少しだけ効く呪詛を練り上げ圧縮して無理矢理ダメージを通したのは彼の執念かな。

 

「フハハハハハ! 苦しみ抜いて死ね、惨たらしく死ね! お前に与えられた屈辱、俺は一時も忘れたことは無かったぞ!」

 

 あああ我を忘れちゃってる、僕のミスだなあ嫌いなのは知ってたけど有効打を与えられるなんて思ってなかった。もう今時間遡行出来るか試すしか無いな。こんな風にダメージを与えるなんて想定外だったけど少しでもレジストが弱まっていてくれるなら治癒も出来るし……

 

 

 その時、見渡す限りの天が急激に真っ黒な雲に覆われる。

 

「全員僕の傍を離れるな!」

 

 思ったよりダメージを入れたんだねファフニール、あーあ。元の姿に戻って皆を囲うようにとぐろを巻き様子を確認する。まだ空は暗いだけ……ああいや、来るな。

 すぐに大きな雨粒が世界の涙のように降り出し、理不尽への嘆きのように雷鳴が轟く。その雨の勢いに視界が塞がれそうになると……

 

 

 赤い眼が、輝いた。

 

 

 瞬間、彼女の身を覆っていた黒煙が吹き飛ぶ。身じろぎをせずに空間を震わす異常。内部のエネルギーの変化がそのまま外部へと影響を及ぼしている。

 

 今、彼女の翼は開いたのだ。

 

 雨の勢いは増し、視界が塞がれそうになると……

 

「頭上に意識を割いておいて皆。あーもう、胸部の甲殻を破壊しちゃったのか!」

 

 ポゥ、と仄かな灯りが見える。暖かくも畏ろしい、真っ赤な灯り。それは海面、足場としている島の地面で輝いていて……すぐに、ブジュウウウウという異音が聞こえる。その灯りと異音は、ダラ・アマデュラの胸殻が剥がれた胸部から発されていた。灯りに照らされた海面が蒸発し、海上に見えていた島が赤熱しマグマとなって溶けていく。湧き上がる水蒸気は空気中で冷えることも許されず、世界で彼女だけが存在を許されているかのように克明な姿を顕している。

 真っ黒に荒れる空、赫灼に溶ける大地、蒼白く淡く輝く蛇龍の全身。彼女は静かに僕のとぐろの中に居る自分へ攻撃を仕掛けてきたファフニールの方をじっと赤い眼で見つめながら、時折ちろちろと舌を出している。

 

 あー、昔を思い出すなあ。僕はあの時からほとんど大きくなれてないのにキミはどんどん大きくなっていくんだもの、さすが自然の代行者だよね。

 

「な、なんか雰囲気が変わってきてますね……あの胸の部分がダメージを与えた部分ですか? というか何あれ、熱なんて全く感じないのに周囲が溶けてますよ」

 

「というかルコア、お前その姿になって大丈夫なのか!? お前が姿を顕せば『終末の蛇』が本気を出すって言ってたじゃないか!?」

 

「心配ご無用……というより、もうその心配は遅いかなー?」

 

 もうこの空になったってことは、彼女の『古龍』としての動きが始まるってことだ。怒らせなかったら帰ってくれたのかなあ? 結局僕はどうして彼女がこっちの世界に来て、どうしてこっちの世界であの姿に戻ったのかを知らない。彼女と仲良くなってれば教えてくれたのかな。

 

『余はこの世界の余所者の自覚はあるが、お前はそうじゃないだろう?』

 

『余は余が生きるためのことをしてる。生きるため以外のことはするつもりは無いよ、してもつまらんし』

 

『この星の運動の代行者だと思ってもらえれば一番良いのだが。まあもしも余が暴れるとか、やる必要が無い破壊をしていると思ったら来てくれ、ケツァルコアトル。余はお前のことを忘れないし、殺すつもりもないのでな』

 

 あんなこと言ってたくせに別の世界に来て何で暴れそうになってるのさもう。こっちに来るのがキミの生きるために必要なことなのかい? 

 どちらにせよ、友達を殺させるわけにはいかない。この世界で出来た居場所も護るために。身震いする身体を抑えながら、何が起きてもいいように魔術の起動準備を行って、彼女の動きを待つ。

 

 

 …………? 動かない。あれ、というかいつのまにかファフニールじゃなくて僕をじっと見てる。怖い。蒼白い輝きも謎のエネルギーを放出する胸部もそのままで止まってるから非常に不気味。たまに舌をちろちろしたり唸り声をあげてる。僕も大概大きい姿だけど長さはともかく太さが二倍くらいあるからなあ。舌とか時折覗かせる口内に本能的な恐怖を感じる。でっか……。

 

「きゅるるる……」

 

 わあジリジリ顔を寄せてきた、「何をボーッとしている迎撃するぞ!」「キミはまず落ち着きなって!」まだ殺す気まんまんでいるファフニールを転移させた岩で殴る。

 キミの姿で喋られると歯が擦れた気持ち悪い音でるから耳障りなんだよね。……うわあ目線を戻したら彼女は大きな口をちょこっと開けた状態で固まってる。何コレ? 歯磨き? 口の中に何か隠してる? ……あっ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「もしかして翻訳魔法(コレ)?」

 

《ソレだ!!!》

 

 いたたたた、何してくれとんねんワレとキレそうになった時目の前に立ちはだかったのはケツァルコアトル。ルコアさんやね。

 それ見て余もちょっと冷静になった。これ余がこの姿になったのが完全にミステイクだわと。いやまあ人間の姿でぱーんちしてトールを血霞にするのはマズイんだけど、声届いても意思疎通出来ないなら意味ないじゃんとね。

 そしてルコアさんが来てるってことは今の余がかなり危険視されてることの証拠な訳で、そもそもここでそのまま暴れたら日本終わっちゃうなと。

 

 前回襲われてケガした時は余に負い目ゼロだったので全員ぶっ殺したけど、今回はまずこの世界で余が力を使うということがそもそも負い目。余はあちらの世界で地殻変動とか地震とか噴火とか、あとついでに嵐雷隕石そこらへんを引き起こす星のエネルギーである地脈を食してきた。

 余の古龍としての本能はそっくりそのまま、余の世界での役割になる。まあ本来いなくても世界は回るのだが、地脈食べながら寝て、その地から湧く地脈がなくなったら別の地脈に向かって最短で行ってはそこの地脈を食べ尽くし、また気配の元に行っては食べ尽くすというのが古龍の本能。

 起こるはずの天変地異のエネルギー、本来だったら普通にぼごーんと噴火するエネルギーをパクパクしてデカくさせて貰ってるというわけ。勝手な解釈だけど余が動く時の雷雲やら隕石やら抉れる地層とかは、まあそのエネルギー分の天変地異代行ってことになるのかな。古龍は自然の体現者っていう、前世でのモンハン考察とかの通りならって話だけども。

 意識してやってないし、こんな風に自分の役割とかについて客観視してるのも前世の知識ありきだしね。実際現地の人が何思ってるかはまあ襲われた時点でお察し。

 

 まあ結局何が言いたいのかと言うと、あっちの世界で山割ったり川作ったりする分のエネルギーでこっちを耕すのは悪いなあということ。どっちの世界にとってもね。

 なのでボッコボコにするのは控えようと思えたのだけど、しかしこの身体ではまだまだ無差別な臨戦態勢に見える。もっかい人型取ろうとして邪魔されたらぷっつーんしそうだからなんとかジェスチャーで翻訳してー、とルコアさんに頼んでいたというわけ。さっすがルコアさんですわあ。

 

《話せてよかったあ。久しいね、ケツァルコアトル》

 

「ああ、えーと……お久しぶりだね? ……印象変わった?」

 

《ン? ああ、こっちが素だね。折角こっちの世界に来たんだし大物ぶっても仕方ないなあって》

 

 ルコアさんも随分印象が変わってるよなあと思う。『何故お前のような化物がここにいる!』とか言って殴りかかってくるクソデカ蛇を見てルコアさんとは思えんわあ。今は不思議と優しそうな見た目に見える、その眼かっこいいね。

 

「ううん、話せると思ってなかったから困っちゃうな。えーと……怒ってない?」

 

《そうね、余も話したいことは色々あるんだけど、とりあえず》

 

 

 

 

 

《怒ってるよ》

 

 

 

 

 

 

 

 そして、凶星が墜ちてくる。

 

《余もね。まあ非はあるなあと思う。ただそれとは別に、怒らなきゃいけない時ってあると思うんだ》

 

 分厚く宇宙までを覆っていたはずの暗雲を貫き、天上より無数の光が海上を射す。蛇王龍が身体を支えている島を中心に3kmほどの範囲に幾千もの数降りてくるそれは、直径1mほどの大きさを保ったまま垂直に落下する隕石だった。隕石は蛇王龍が持つ謎のエネルギーを目印のように己を蒼白い炎に包みながら、相対するドラゴンを目がけて降ってくる。

 

《余という存在に挑むということ。それが孕む意味を理解させないと、余が古龍である意味がない。ケツァルコアトルに護られているようなお前達が、卑賤で矮小な考えで逆鱗に触れたのが何者であるか》

 

 直撃すれば簡単にドラゴンの命をも奪う凶星は蛇王龍にも降り注ぐ。それを避ける様子もなく受け入れ、破裂し撒き散らされるエネルギーを意に介さず蒼白い身体を更に煌めかせていく。

 

 

《余は寛大だ。世界には抗えぬ者があるということを理解するまで付き合うし、多少手加減はしてやる》

 

 

 

 

 ★緊急クエスト! 

 蛇王の怒りは天蓋を衝きて

 ★メインターゲット

 ダラ・アマデュラの撃退、もしくはタイムアップ

 ★目的地

 名無しの無人島

 ★制限時間

 不明

 

 

 

 

 

 

《マジで久しぶりに痛かったから。世界滅ぼさない程度にぶちのめす》

 

 

 

 

 

 

 

「「「「「ファフニール(さん)謝って!!!」」」」」

 

 

 

 




ちきう「えっ!?ここから入れる保険があるんですか!?」


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