普段何もしてない奴が実は最強ってロマンだよね!(周りは気が気じゃありませんが)   作:イベリ子

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 いつも多大な感想、評価、誤字報告ありがとうございます。感想の評価なんですが、マイナス評価は程々にお願いします。本当にどんな感想でも嬉しいので、こういう感想もあるんだな程度で収めてもらえれば心が穏やかになります。プラス評価はどんどんお願いします。作者も押してます。

 今回誰視点で書くか迷って三人称にチャレンジしたら慣れてなさすぎて読みづらくなってしまっているかもしれません。次からは誰かの視点に戻ると思います。



凶星墜ちて?(地固まるなら苦労しません)

「何故俺が謝らねばならん! 俺の彼奴への恨みはまだ晴れてないぞ!」

 

「あれ見てよくまだその態度貫けますね貴方! 貴方のせいでこの世界に迷惑かかってるんですよ!」

 

《最初に話聞いてくれなかったのトールだけどね? まあ謝ってもボコすけど》

 

 ぎゃいぎゃいと騒ぐドラゴンと口をがぱ、と大きく開けるダラ・アマデュラ。200m以上の大きさがある口一杯には輝く蒼いエネルギーが集まっていて、島を一つ消滅させられるようなエネルギーを話の延長のように軽く構え、そのままノーモーションで放たれる巨大な光弾。

 

「え"、ちょっとデタラメすぎませんか!?何ですかそれ!」

 

「チッ、どいてろ馬鹿が!」

 

 ファフニールがうぞうぞと脚部の触手をざわめかせながら海上を移動し、そして触手の先端と顎部から光弾に向かって呪詛の奔流が溢れ出る。光弾は呪詛を浴びても勢いを止めないままその身を黒く染め上げ、やがて空中で破裂した。

 

「ハッ、意思がないエネルギーの塊など本体のような馬鹿げた耐性がなければ俺の敵では」

「おおいファフニール上だうえうえ!」

 

 爆風が吹き荒れ、真っ黒なエネルギーの残滓が霧散していったとしても安全圏には程遠く。天上から刺す凶星の輝きが数個、まっすぐにファフニールへと落下していく。「ふん! ……うおおおおお!?」

 

 エルマが身体ごと海水を持ち上げ、くねらせた尾と共にファフニールへと迫っていた凶星を遮り防ぐようにぶつけるが、破裂しない凶星はそのままエルマを押し潰そうと落下し続ける。

 

「おいこれエネルギーじゃないのか!? おっっもいんだが……!」

 

「今砕く! 凄いな、本当に星を降らせるのか……! 御伽噺は本当だったんだな!」

 

「イルル、呑気」

 

 赤く筋骨隆々としたドラゴンが目をキラキラさせながら燃え盛るブレスを吐く。アンバランスな光景ではあってもその威力は本物でエルマが操る海水の上の凶星を砕いていく。ダラ・アマデュラ本体から放たれた光弾とは違いその破片はそのまま霧散することなく海上へと落下していく。

 

「ばっちり質量ある隕石がこの数って……! 一つでも町に墜ちたら笑えないことになりますよ、厄介極まりないですね!」

 

「……うーん、そうだねー」

 

 回避に専念しているカンナ、周囲に堕ちる凶星を砕くトール。常に破壊が降り注ぐこの場で、未だ最初の光弾以外のアクションを起こさないダラ・アマデュラと何かを考えるように静観を続けるルコア。

 二匹の巨蛇龍がすっと視線を合わせて数瞬。ルコアが頷き、ダラ・アマデュラが吼えた。

 

「ギィイヤアアアアアアア!!!」

 

「えーと……マズイ! 彼女は凶星が及ぼす範囲を増やそうとしてる! このままだと頭上の飛行機とかに被害が及ぶかもしれない、僕は拡がった凶星の範囲を狭めて人間が巻き込まれないようにしてくるよ!」

 

 咆哮が響いた後、やや間延びした声でそう反応するルコア。去り際に「力じゃ絶対勝てないから! 話してわかってもらうか彼女の気が済むまで耐えて!」と言い残して飛び上がり、未だ分厚く立ち込める暗雲の中へ身を踊らせてその場を去る。後には、燐光を纏い赤い胸部を露出したままの巨龍と、それに相対する小さなドラゴンたちが残る。

 

「ルコア、いなくなっちゃった」

 

《そうだねえ。守ってくれるドラゴンがいなくなっちゃったけど、どうする?》

 

 雲海に突入したことによって生まれた雲の穴もすぐに閉じ、その様子を見てそう言葉を漏らしたカンナへと声をかけるダラ・アマデュラ。口調はからかうような感じだが、その思念には快も不快もなくただ問いかけるようなもの。舌をちろちろと出しながら静かに睥睨する様は、今もなお凶星が降り注いでいることを忘れているよう。不思議とドラゴン達を目がけて凶星が降ることもなく、その周囲だけが外の世界と切り離されているような感覚をドラゴンたちは感じていた。

 静寂を断ち切ったのは、ファフニールのチッッという盛大な舌打ち。人間態のときとは異なり歯をギシギシと擦り合わせるような音を出し、彼はその複眼を蠢かせながらダラ・アマデュラへとその怨念の籠もった赤い眼を向ける。

 

「脅しのつもりか? 言っておくが俺はお前を殺すことを諦めるつもりは毛頭ない。お前こそそのはた迷惑な頭には脳みそが詰まっていないのかお前の光弾は俺が無効化出来る岩を落とすしか能がないローレライのようなものが俺をどうにかできると本気で思って」

「お前本当に馬鹿なのか!? この期に及んで挑発するようなこと言ってどうするって言うんだ!」

 

 ぶつぶつぶつぶつと呪言を止めないファフニールの口に巻き付いて物理的に止めるエルマ。その後ろでは、攻撃の前のダラ・アマデュラの発言にひっかかりがあったのか、

 

「トールさま。だらあまでゅら様が言ってた、話聞いてくれなかったってどういうこと?」

 

「そうだ、あたし達が戻ってきたらあの姿に戻ってたから襲われてるのかと思ったけど……そもそもあの後どうなってこうなってたんだ?」

 

 とトールに問いかけるイルルとカンナ。「人形遊びだと人間が『終末の蛇』を怒らせてたけど、お前なんかしたんじゃないか?」「だらあまでゅら様、待ってくれてる。やさしいかも」とそれぞれの所感を告げられて、

 

「え? いやえーと……アレが念願のこの日が来たとか魔王みたいなことを言っていたのでとりあえずこう」

 

 と、慌てながらシュッシュッと短い爪でシャドーボクシングのようなジェスチャーをしながら話をしているトール。その話をファフニールに巻き付きながら聞いていたエルマも含めて、(あれ?)と思うファフニール以外のドラゴン。

 

 

(せーとーぼーえーだと思ってたけど……)

 

(あたしたちもしかして)

 

(この闘いの引き金、というか終末の引き金)

 

(こっち)が引いてます? 勘違いして? ……あははいやーまっさかー)

 

 

 ファフニールの一撃によって傷を負ったことに激怒していると思っていたドラゴン達。けれど、思い返すとトールが行っていた攻撃に関心を向けず、たまに咆哮を行うだけで反撃をする雰囲気も無かった彼女。

 そこに加勢した自分たちにも尾によって薙ぎ払いを行ったこと以外ほぼ静観していて、この凶星も墜としていなかった。そしてルコアによる翻訳魔法を受けて、話せてよかったと言う彼女。それらを思い出すたび、ドラゴンの姿のままで汗を垂らす。

 

「あ」

 

「なんだ? 何を思い出したんだトール、今私の中に過ぎっている嫌すぎる感覚を消してくれる気づきか!?」

 

「エェ⤴、いやーあーそのー」

 

 そして、トールはついでに思い出す。彼女がほとんど反撃を取らなかった中、唯一行っていた好戦的に見える行動、超膨大なエネルギーの集中。ファフニールの攻撃により中断、霧散させることで事なきを得たアレ。得てしまったアレ。そして自分だけが聞いてた彼女の話。

 

『そうそう、かなり無理をしたんだよ。人型を取るくらいは古龍なら行けるはず!! ってエネルギーを集めまくったら本当になんとかなって余も驚き』

 

「ぶはあ、ハッ挑発でも何でも無いただの事実だ、お前が俺を生かす限り俺はお前を必ず殺」

「おいお前本当に黙ってろ!」

 

 頭を過ぎったことでドバッと滝のような汗を流すトールを尻目に、エルマの口封じを抜け出してファフニールがぎゃいぎゃいと騒いでいる。どうしようかと各々が考えていると、

 

《そうか》

 

 と、フーッという鼻息とともに静かな思念が響く。反骨心全開のファフニールもぴたりと動きを止めるほどに、その思念は身震いするような怖気をまとっていた。ドラゴン達は、漠然と均衡が崩れたような気配を察知し身構える。

 

《じゃあ、教育再開だ》

 

 ドドドド、という異音が響き始める。凶星の落下音以外何も音がなかった場所で鳴るその音に警戒を強めても、見える範囲は大海原だけで異変が起きている箇所はない。けれど音はどんどんと大きくなっていく。

 

「嫌な予感しかしないんですけど、何ですかこの音」

 

「……いや嘘だろなんだこれぇ!? 皆! 下からくるぞ気を付けろぉ!!」

 

 ファフニールを解放したエルマがそう叫びダラ・アマデュラの反対方向へと動き出す。釣られて他のドラゴンも動き出そうとして、

 

 

 山が、海中から飛び出した。

 

 

「え?」

 

 と漏らしたのは誰の声だったか。自分達が寸前まで漂っていた海上の空間は、唐突に水飛沫を上げながら現れた岩盤によって塞がっていた。

 岩盤は海上1500mほどの高さまでぎょんとそびえ立っており、よくよく見るとその先端には二股の槍の切っ先……のようなダラ・アマデュラの尻尾が突き刺さっている。

 

「あいつ……あいつ海底の岩盤を引っ張り上げたぞ!? どんなパワーでも無理だろそんなの!」

 

《パワーだけじゃなくて余の性質もありきだけど、そこ危ないぞ?》

 

 エルマは悲鳴のような叫びを上げ、他のドラゴンが状況についていけずに呆然としていたが、すっと山の先端から尻尾が抜ける。そしてシュルシュルと岩盤で遮られた視界の奥で音が響いた後。今度は山の根本をダルマ落としのようにダラ・アマデュラの尻尾が振り抜かれ、地図に無い山はただの質量兵器となってドラゴンを押しつぶすように倒れ始める。

 ただの板のような岩でなく山裾の厚みは100mを優に超えており、その超質量は己の重さを最大限に活用して位置エネルギーを運動エネルギーに変えて加速していく。

 

「避けるのは無理だ! 吹き飛ばすぞ!」

 

 真っ先にファフニールがそう反応し、向かってくる岩雪崩に向かって呪詛の光線を放つ。当たった部分はすぐに朽ち崩れるが、貫通には程遠い現況を見てチッッと盛大な舌打ちを行う。

 

「あたしも加勢する!」

 

「私も」

 

 イルルはブレスを、カンナは雷撃をそれぞれ放つがその膨大な質量をまるごと崩すのは不可能だとすぐに悟る。ファフニールが「早く一点に集中しろ、全て吹き飛ばすのは無理だ俺達が通り抜けられる穴を作るぞ!」と言葉を続けようとしたとき、

 

 

ゴガン!!  

 

 

 意識を迫りくる岩雪崩に完全に集中して崩すためにどうすべきかを苦慮していたドラゴン達。

 砂山に苦戦する蟻をあざ笑うように、巨岩がそれ以上の質量を持つダラ・アマデュラの突進によって反対方向から粉々にされる。ドラゴンたちはその壊された巨岩が変貌した石礫に身体を蜂の巣のようにされながら、スローモーションのように間延びしていく感覚で向こうから迫りくる深淵を見た。

 

 

 直径200m以上の、大きく大きく開かれた口。自分たち全員をそのまま丸呑みに出来てしまうサイズ。余りにも大きすぎて麻痺していた身体の感覚が正常に戻る。身体の底から、全員が理解した。

 

 

 

 

 食われる────

 

 

 

 

 

「ッッッ転移!!!!」

 

 

 

 

 

 

 その口が閉じられる直前に響いたのは、トールのそんな声だった。

 

 

 

 

 

 

 




 今作では勘違いを解きます。作者も基本勘違いものは解かないほうが好きなんですが、解かないとちきうくん大爆破ENDに行ってしまうので……保険?(異世界ドラゴン駆け込み寺のちきうくんにそんなもの)ないです。



 次話で一旦終わるかも?


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