ACE COMBAT Ex The Connected Skies 作:一 白
情報なし
2026/5/18/13:36
「エルジア空軍第156戦術戦闘航空団『アクィラ』、隊長のルイス・アンドラーデよ。しばらくオーシアに厄介になるわ。同性のよしみって事で、よろしくね。」
「…シラージ空軍第68戦闘飛行隊『ソル』隊長の…ミハイ・ア・シラージだ。ミハイで構わない。」
「私はミハイの全面的なバックアップを担当している、EASAのシュローデルだ。よろしく。」
私たちは到着したエルジア・シラージ両軍の隊長と対面していた。片方は若い金髪の女性、もう片方は威厳のある雰囲気を纏った老年男性と、それを補佐する若い研究員。
「ねね、アビー。ミハイさんかっこよくない?」
「まあ、確かにね。私としてはルイスさんの方が好みだけど。」
「え、アビーってまさか百合?」
「なわけないでしょ。ちゃんと彼氏もいるわよ。」
「「えぇーッ!?」」
「ん?何かあった?」
「いえ、何でもありません。失礼しました。私はサーペント隊隊長のアビゲイル・ミラー、TACネームはコブラ、中尉です。」
「サーペント2、アリシア・テイラー少尉です。TACネームはマンバです。」
「…三番機、ハンナ・ロペス、少尉。ラッセル。」
「四番、シャーロット・ムーア!階級は少尉で、TACネームはスラング!」
「蛇、か…君たちはいい目をしている。いずれは百獣の王すら喰い殺すような、そんな気がするよ。私の勘だがね。」
そう言って、ミハイさんは薄く笑った。
「お褒め戴き光栄です、ミハイさん。」
「なに、老人の戯言だ。気にしないでくれたまえ。」
「さて、じゃああたしは機体の面倒見てくるわ。ちょっとした点検ならあたしでもできるからさ。」
「分かりました。それでは私たちもこれで。失礼します、ミハイさん、ルイスさん。」
同日 22:00
「それでは只今よりサンド島偵察作戦のブリーフィングを開始する。今作戦は以降オペレーション・ウォードッグと呼称する。作戦第一段階は単機による偵察任務だ。これはサーペント1が行う。」
「了解しました。」
副司令が話し始めた暗い部屋の中、スクリーンに地図と光点が映し出される。一つだけ映る味方側の光点には“Serpent1”の文字がついて回る。
「作戦第二段階は二つのプランに分かれる。まずはプランA。これはサンド島が敵の手に落ちていなかった場合だ。偵察機からの連絡が来次第、陸軍部隊と仮司令部要員を乗せた輸送ヘリとリザード隊が離陸。サンド島部隊として駐留する。」
スクリーンの地図にあるダヴェンポート基地から光点がさらに四つ出現。それぞれ“Rezard1”“Rezard2”“Ducktail1”“Ducktail2”と名称が振られている。
「しかしサンド島が敵の手に落ちていた場合、リザード隊とサーペント隊が緊急発進。敵部隊を攻撃、撃滅する。これがプランBだ。」
今度は光点が五つ出現。高速でサンド島に向かった。
「もしプランBになった場合、対地・対空両方に対応する必要がある。特殊兵装は考えて選べ。では解散、諸君らの幸運を祈る。」
副司令お決まりの文言でブリーフィングを締め、部屋が明るくなる。
「眩し…」
私は一瞬目を細め、手をかざす。眩しすぎるのは苦手だし、夜間偵察任務だから暗闇に慣れておかなければならない。
「アビー、偵察任務頑張ってね…?」
「アリスったら、そんな深刻な顔しないの。今生の別れって訳じゃないんだから。」
私の不安を落ち着けるためにも、そして今にも泣きそうな顔をしていたアリシアを元気づけるためにも、強くハグをする。
「…大丈夫。隊長は、強い。」
「一人だからって寂しがって泣かないでよ~?」
「ありがと、ハンナ。シャーリーは私がそんな弱っちい女に見えるの?」
「あはは、嘘ウソ。頑張れ隊長!」
「…なんか今更になって気が重くなってきた…うー…」
キリキリと胃が痛む。どうやら私は思っているほど図太くはなかったらしい。
「何だい何だいしょぼくれて。ほれ、ぎゅーっとしてあげようか?」
「や、いいです…風浴びてきます…」
私は何とかそれだけ言って、ブリーフィングルームを出た。
外のベンチに座って空を見上げる。時折流れ星が夜空を駆け抜け、それを見ていると私の緊張も抜けていく気がした。
「アビゲイルさん。」
「ッ、司令!お疲れ様です!」
「敬礼なんて今はいいわ。…隣、いいかしら?」
「は、はい。どうぞ。」
少しずれて、司令が座れるようにスペースを空けた。
「ありがとう。…アビゲイルさんって、空が好きなの?」
「へ?…まぁ、はい。昔からずっと、暇さえあれば空を見上げてました。」
「そっか…怖くないの?」
「何故です?」
「…あの空の向こうには、今もユリシーズの欠片が飛び回ってる。いつ降って来るかも分からないし、もしかしたら自分の頭の上に降って来るかもしれない。それでも?」
「怖くない、と言えば嘘になりますかね…」
「じゃあ、なんで空を?」
「…会える気がするんです。ユリシーズで死んだ両親に。ふふ、顔も知らないのに変な話ですよね。」
「…そうね。いつか会えるといいわね。」
私が困ったように笑うと、司令は悲しそうに笑った。
「…私もね?ユリシーズで親が死んだの。避難する途中で、家族が乗った車の目の前に小さな隕石の欠片が降ってきて、吹っ飛ばされて…生き残ったのは私と妹だけ。」
「そうだったんですね…妹さんはどちらに?」
「ここの副司令よ。」
「うえぇッ!?そうだったんですか!?」
「ええ。気づかなかったの?」
くすくすと司令が笑う。気づかなかったの、と言われても、あそこまで性格が違う二人が姉妹とは誰も思わないと思う。
「すみません、気づきませんでした…」
「いいのよ、責めてるわけじゃないんだから。…でもそれ以来、私もあの子も空が怖くなっちゃって…その頃はパイロットになりたかったんだけど、今じゃ旅客機にも乗れないの。」
「じゃあ、なんで空の軍人に…?」
「さぁね…なんでかしら。きっと私自身、諦めきれてなかったのね。空が怖いと言いつつも、一度抱いた憧れを捨てられない半端者だもの。」
「そんな…だったら、私が司令の分まで飛んで見せます!」
「ふふ、心強いわね。だったらそのためにも、今日の任務はきっちり成功させないとね?」
「はい、頑張ります!」
もう緊張はほぐれていた。ベンチから立ち上がり、ぱしんと頬を叩いて気合を入れる。
「…よし!」
2026/5/19/00:00
《現時刻より、オペレーション・ウォードッグを開始する。こちらのコールサインはネストだ。サーペント1、速やかに離陸せよ。離陸後は低高度でサンド島基地に接近、偵察行動を行え。》
「了解。離陸後低高度で接近、偵察活動を行う。」
スロットルをゆっくりと動かし、ギアが地面を離れたタイミングでギア格納、方位090に旋回して海に出る。
《よし、それでは無線封止を実施する。しばらくは君一人だが、墜落してくれるなよ?幸運を祈る。》
「へまはしませんよ。ありがとうございます。」
無線を切ると、コックピットが一気に静寂に包まれる。エンジン音が心地いい。
月明かりが海面に反射し、幻想的な光景を作り出している。
「カメラがあればなぁ…」
こんなきれいな光景を見ていると、ついロッカーの中に入れてあるカメラの事を考えてしまう。給料をためて買った高級一眼レフ。あれで世界を記録してみたい、というのが私のささやかな夢だ。
しばらく無心で海上を飛行し、エンジン音の奏でる子守唄を楽しむ。偵察作戦のため、なるべく敵に感知されないようスロットルは35%程度に絞る。気を抜けば眠ってしまいそうだが、そこは軽く歌を口ずさんで居眠りを防止している。
「I wonder what you're doing imagine where you are…♪」
サンド島に近づいた頃に、司令部から通信が入る。
《こちらネスト、レーダーで君がサンド島に近づいたのを確認した。そう、無線封止は終わりだ。基地は確認できるか?》
「こちらサーペント1、サンド島基地を目視で確認。どうやら悪い方の予感が当たったみたいですね。MiG-21、Tu-4、Su-33、うじゃうじゃいます。」
《そうか。爆撃機は何機確認できる?》
「現在確認できるのは8機、格納庫にもまだいるかもしれません。」
《了解した。戦闘機部隊は全機発進!サーペント1を落とさせるな!》
〈敵襲、敵襲!ホットスクランブルを下令しろ!〉
俄かに地上が騒がしくなる。私の侵入が感付かれたらしい。何機かの軽戦闘機が矢継ぎ早に離陸し始める。
「ミグが離陸してきた!クソ、サーペント1エンゲージ!」
《気をつけろ、幸運を祈る!》
スロットルを全開に叩き込んで、全身を締め付けるGで強制的に意識を切り替える。キツいが、意識を戦闘モードにするにはこれが一番手っ取り早い。
〈爆撃機を緊急発進させろ!〉
「しつっこいな…!これでも、喰らえ!」
クルビットで急速反転し、ミサイルを発射。MiG-21bisを続けざまに撃墜する。
「流石に分が悪すぎるって…!もう、早く来てよ!」
スロットル・操縦桿・フットペダルをせわしなく動かし続け、ミサイルや機銃弾の雨から逃げ回る。しかし機体に何発か機銃弾を食らったようで、応答性が怪しくなってきている。
《こちらサーペント2!遅くなってすみません、隊長!》
《リザード1よりサーペント1へ、状況はどうなってる?》
「敵戦がうじゃうじゃ、けど叩かなきゃいけないのは爆撃機です!離陸前に爆撃機を撃破してください!」
《了解!》
《ラジャー!》
ナイスタイミングで仲間が駆けつけてくれた。逃げ回るのは終わり、ここからは───
「───
手当たり次第にミサイルを叩き込む。地上走行中のMiG-21bisをなで斬りにし、すれ違いざまのF-4Eに機銃弾を喰らわせる。
〈まずいぞ、離陸できてない!〉
〈さっさと滑走路の残骸をどけろ!離陸できるものもできないだろうが!〉
〈やっ、やめろ!こっちに来るな、ウワーッ!!〉
《リザード1からネストへ、制空権は確保した。至急ダックテイルを送ってくれ!》
《ネスト了解。直ちにダックテイル隊を発進させる。》
ダックテイルの輸送ヘリが着陸して数十分が立っただろうか。地上からの無線が入る。
《こちらダックテイル。基地の主要機能はこちらの手の中だ。作戦成功だよ。空戦で燃料を消費しただろう、トレーラーは無傷だから給油できるぞ。》
《こちらリザード2、感謝します。着陸しても?》
《ああ、大丈夫だ。誘導はこちらで行う。》
《…だそうだ。サーペント隊、着陸を先に譲るよ。》
《ありがとうございます、姐さん。》
《滑走路の確認OK、着陸してくれ。》
「了解、着陸する。」
僚機三人を先に着陸させて、私は一番最後に降りる。離陸と着陸は訓練で何度も繰り返したからか、緊張していても体が勝手に動いてくれる。
《あと500m、左旋回だ。誘導限界を超えた、目視で着陸を頼む。》
管制の誘導に従って旋回を行い、滑走路に正対する。着陸誘導灯が眩く輝き、私を地上に降ろしてくれる。
滑走路端を超えて、ゆっくりと接地。ブレーキをかけて完全に停止した。
《サーペント1の着陸を確認。さあお前ら、仕事だぞ!》
エプロンに機体を駐め、キャノピーを上げるとタラップが接続された。私と同じか下くらいの女性士官がタラップを駆け上がってくる。ダックテイルに同乗していた仮司令部要員だろうか。
「お疲れ様です、中尉!」
「ありがとうございます。基地の備品に破損などありませんでしかたッ…」
噛んでしまった。久しぶりに激しい機動をしたから、まだ脳が追いついていないのだろうか。
「ふふ、ええ。一部破損したものもありますが、幸運にも替えが効くものでしたから。」
「そうでしたか。では明日から?」
「はい、ここでの勤務になります。」
「そうですか…ユージア連邦の支配地域からは遠いですが、侵攻の手が伸びてこないとも限りません。どうか、くれぐれもお気をつけて。」
私の言葉に一瞬きょとんとした彼女は、にっこりと微笑んで見せた。
-Result-
航空・陸上両部隊の共闘により、サンド島の奪還に成功した。
ユージア連邦の勝手を許してはならない。諸君らの勇戦を期待する。