カイが可愛いすぎたのでオリ主といい感じにさせたい話 作:ゼノアplus+
14話
「大丈夫クシ?」
「あぁ……昨日よりはマシになった……」
自宅の布団でうつ伏せになってべたーっと寝ている俺、そしてその隣で声をかけてくれるのはカイである。うん、ドレディア戦でやった腰が結構きててな。本当に情けねぇ姿晒してる自覚はある。
「グレイシア、もう少し氷を作ってもらえる?」
「フゥ!!」
ユウガオさんにもらった塗り薬を塗り、その上から湿布を貼ってさらに上から氷で冷やしている。ぶっちゃけやりすぎは良くないと思うがカイの献身的な様子を見てつい嬉しく…………健気だなぁ(目逸らし)
「わりい……俺のせいでデンボク殿への相談が後ろにずれちまって……団長補佐としてあるまじき失態……」
「いいの、クシはドレディアを鎮めるのに頑張ってくれたんだから。それに内容的にはクシに頼むのも悪くはないかなって思ってるし」
「俺に……?」
うつ伏せの状態で頭だけをカイに向ける。ああ、今だけは本当にカイがホットパンツを履いていて助かる。スカートとかだったら客観的に見て明らかに変態になるところだった。
「ガラナちゃんのガーディ、覚えてる?」
「そりゃな……忘れることとか出来ねぇだろ」
群青の海岸でキングであるウインディを世話していたキャプテン、ガラナ。以前はカイと長の座を巡って争ったこともあるが今はキャプテンとして落ち着いている……いや、落ち着いてはいないな。
現在、シンジュ団内でガラナさんがキャプテンとしてふさわしくないということがあがっているからだ。理由は単純、現在キングだったウインディの死亡により群青の海岸にはキングが居ないからだ。以前説明したと思うが、アヤシシやバサギリをはじめとする、キャプテンが世話をしているポケモン達はシンオウ様の血を引くと言われる特別なポケモン達だ。実力があるだけ、賢いだけではキングになれない……いわゆる世襲制であり同じくシンオウ様の血を引くポケモンでなければならない。ガラナさんは、先代キングの血を引くガーディを連れているが、諸事情によりキングとして育てられていない。これがガラナさんがキャプテンとしてふさわしくないと言える理由だ。
「今はクシが抑えてくれてるから表立って反対する声が出ないけど、一部の人達がガラナちゃんがキャプテンにふさわしくないってずっと言ってる」
「ほかにふさわしい奴を挙げてこいって突っぱねてるからな。俺の方が、っていう声も地味にあってガラナさんに会うの地味に気まずいしよ」
「あはは……それはまぁ、クシの実力を高く買ってくれてるからじゃない?」
「そうだけどさ」
ポケモンを戦わせる者としては確かに俺やノボリさんが最も優秀だ。しかし、キャプテンとはそういう地位ではないのだ。
「それで、そのガーディがどうしたんだ?」
「鍛えてあげてほしいの。キングとしてふさわしくなるように」
「ッ……おい、それは」
「分かってるよ!!ガラナちゃんが望んでないことも、今のガーディじゃ難しいことも」
そう、キングがいないなら育てれば良い。それが普通であり俺たちがなすべき使命だ。しかし出来ない、他ならぬキャプテンであるガラナさんがガーディをキングにすることを望んでないからである。
キングの子供であるガーディはある時海で溺れてしまいそれを助けた先代キングである父親のウインディが代わりに死んでしまった。それ以来臆病な性格になってしまったことが原因でキングになれなくなっている。
「流石に本人達が望んでないことをやらせるのはなぁ……それに今は荒ぶるキングが居ない海岸よりもクレベースの方が大事だろ?いや、ガーディの事はガラナさんが居るから大丈夫だと思ってるだけだからな?」
「うーん……でも今のところクレベースは何も問題を起こしてないし、ハマ先生が見てくれてるから大丈夫だよ」
「まあなぁ、できるだけ穏便に行きたいしなぁ」
つまり今のところシンジュ団内では問題が起きてないのだ。群青の海岸の北東にある火吹き島という火山で幽霊と怪しい影を見たとかいう噂はあるが噂は噂だ。今更幽霊程度俺のポケモン達で成仏させるか逆に仲良くなるくらいで構わないだろう。
「俺は少なくともやらないからな。今こんなだし、そもそも俺はキングがいない事を不満だとは思っていない。まあ、『依頼』って形なら受けてくれる奴がいるかもしれないけどな」
「ショウさんかー……ポケモンのことなら喜んで引き受けてくれそうだね」
「シンジュ団の内輪揉めを晒すようで恥ずかしい話だがな。どうせ今日依頼が無くなった分紅蓮の湿地でポケモン達を乱獲してるだろうよ」
「あーうん……なんとなく想像出来るなあ」
オヤブンに挑んではポケモン達を鍛え、図鑑に居なければ捕獲……まさか川向こうの試練の中洲までは行ってないよな?え、まって急に不安になってきた。
「じゃあ明日行ってくるねクシ」
「ほんっとにすまん……着いて行きたいのは山々なんだけども……いや、ゾロアークに支えてもらえれば行けるか?」
「ダメに決まってるよ!?もう、早く治してね。クシ居ないとなんかやる気出ないから」
そんなやりとりをしていると、突然グレイシアが外に出て行った。そして少し経つとすぐに家の中に入ってきた。何やら咥えている……イーブイだ。
このイーブイは先日グレイシアがどこからか連れてきた個体で、なぜだか知らないがグレイシアに懐いているのでウチで一緒に住むことになったのだ。この辺りでイーブイが生息するところとか東の方にしかなかった気がするんだが、グレイシアはそこまで行ってきたんだろうか……?
「イーブイこっち来てー」
ちなみにこのイーブイはカイが世話をしているのでカイのいう事は大抵聞く。
つまるところ何が言いたいかっていうとイーブイの中の俺の優先順位は最下位ってことだ。ちょっと悲しい……
「いつも汚れて帰ってくるよね」
「確かに、やんちゃだもんなぁ……」
俺がカイに戦闘の訓練をしていると時々割り込んで2対1の形になる事がある。まあそうなった場合でも容赦なくフルボッコにするんだけど。
「進化させんの?」
「んー……イーブイが進化したかったらかなぁ。何種類あるんだっけ?」
「えーと、ブースター、シャワーズ、サンダース、エーフィ、ブラッキー、リーフィア、グレイシアとニンフィアぐらいは知ってる。もしかしたら他にも進化先があるかもしれないけどこればっかりは俺にはどうしようもねぇな」
「って事はやっぱり?」
「調査隊が調べてくれるんじゃねえの?」
最近はなんとなくギンガ団の調査隊ってありがたいと思うようになってきた。ポケモンを知るという目的なのは分かっていたが、どうにもその理由が怖いから知っておく、のようにしか感じられなかったからな。今の俺たちのように成長を見守るとかそういう家族のような視点じゃない。
「ショウさん達ってすごい事をしてるんだなあ……」
「最近の騒動が収まれば本格的に調査も出来るようになるだろうし、ヒスイに住む人間達とポケモンの共生も進むだろうよ。まあ……このまま停滞を続けるよりかは良いと思うぜ」
あーっ……腰もだいぶ楽になってきた。一旦起きるか……知ってるか?うつ伏せでずっと寝てると背中痛くなるらしい。寝る時は仰向け派だから知らんかったわ。
「え、大丈夫?」
「ああ、割と落ち着いてきた」
「フゥ?」
「グレイシアも迷惑かけたなぁ……って、おっふ」
大丈夫と判断したのかグレイシアがあぐらをかいた俺の上で横になった。うん、冷たい。
「あー!!グレイシアずるい!!」
「お、おい!?」
ぷくーと頬を膨らませたカイがグレイシアと一緒に俺にも抱きついてきた。可愛いというかその前に何やってんですかねえカイさん!?
「倒れないように支えないと」
「だからって……まあいいか……ぐふっ!?」
背中に強い衝撃!!俺への更なる追撃が腰を襲う!!……その犯人はイーブイ、どうやらグレイシアとカイを取られたとでも思ったらしい。今背中は本当にやめてくれ……
「こらイーブイダメでしょ」
「フゥ」
カイとグレイシアの説教により流石に反省した様子のイーブイ……くっ、可愛い。
「あてて……全く……ゾロアーク、少し相手をしてやってくれ」
ボールからゾロアークを出すと、イーブイはおもちゃでも見つけたかのように嬉しそうな表情でゾロアークの毛髪の中に潜り込んでいった。
「イーブイがごめんね。やっぱりクシみたいにポケモンと上手く接するのって難しいや……」
「俺の場合は昔から野生のゾロアークの一族と交流があるからな。まあ顔見知り程度には仲がいいさ」
前にも言ったが俺はゾロア達に囲まれた状態で人に保護されたので、それまで面倒を見てくれていた野生のゾロア達(今は進化しているからゾロアークと言う)との交流が今でもある。そのおかげかカチコールやユキノオーをはじめとする凍土のポケモン達とはそこそこ関わりがあるのだ。関わりと言ってもそこまで好戦的じゃない奴らに限った話だけどな。
まあそういうわけもあり、温厚なポケモン達に限っては俺が矢面に立って人間が住んでるから気を付けてねと言い回っていたりする。そもそも凍土に住む野生ポケモンは昔から世代交代を続けているので分かっている奴らが多いから何も問題はないんだけどな。
「そもそもな、まだ人とポケモンが仲良く暮らす時代じゃないんだよ」
「どういう事?」
「まだ俺たちの世代は下準備の段階だ。俺たちが頑張れば未来の奴らが人とポケモンが仲良く暮らせる……それに今だって別にバチバチにやってるわけじゃないだろ?俺たちはゆっくり進歩を続ければいいのさ」
「…………」
「どうした?」
カイが何やら難しい顔で考え込んでいる。最近自覚してきたんだけど色々可愛い可愛い言いまくってるけどどんな顔してても可愛かったわ。やっぱ最近脳内でも自重が効かないなー
「クシはさ、帰りたくないの?」
「ッ」
「ショウさんはちゃんとヒスイに来る前のことを覚えていて生活があった。クシやノボリさんにだってあったはずだよね」
そりゃ、なぁ……ノボリさんに関しては口振りから結構な地位だった事が窺える。俺はまだクソガキの事だったからそこまでではない。
「無いと言ったら嘘だが……俺としては覚えてもない昔のことよりも思い出が沢山ある今の方が大事だけどな」
「それでも……クシが居る生活が当たり前で、クシの気持ちを考えたことなかったなって思ってね。ずっと独りよがりでクシに頼ってて私、ずるいよね」
ショウが原因だな……俺達と同じような境遇の奴を見て長として考えたんだろう。
「俺だってカイが居る生活が当たり前だ。それ以外考えられんし……」
恥ずい……何故俺も告白まがいのことをしているのだろうか。カイはまだ……
『長として立派にやっているというのに、貴方がそう言うからお互い踏み出せないのではないのかねぇ』
「…………」
なんで今ユウガオさんに言われた事を思い出したんだろうな……いや、分かってるんだ。俺もそろそろ覚悟を決めないといけない。いや覚悟は決まってる。じゃあ何が足りないのだろう?分からない。
「やっぱりクシが帰れる方法を探すべきかな……うん、やっぱりそうだよね。私なんかと一緒に居るよりかは元の居場所で家族と過ごした方がいいに決まってるし……」
「っ!!」
分かった。そっか、そういうことか……カイの言葉で理解ができた。俺に足りなかったもの、というか俺たちに足りなかったものだ。
「俺はもうお前とは家族だと思ってるよ」
「……ぇ?」
「最初はジジババ共に言われて付き人に、次は長になってから同居人に、そして今はもう家族のように思ってきた。カイは?」
「わ、私は……私も、思ってる!!」
瞼に涙を溜め始めて狼狽えているカイに愛しさを感じた。
「口だけじゃ足りない?」
「そんな事はないけど……」
「お前のそんなところも含めて俺は好きだ」
「へ!?ク、クシ!?なんか今日、すごく積極的じゃ……」
「俺はお前と家族になりたい……ダメか?」
言った、言ってしまった。思考がまとまってないのか顔を真っ赤に染めてあたふたしているカイをしっかり見つめる。少し経った後、目から涙がこぼれ始めたカイが俯きながら言った。
「ダメじゃない……私もクシが好き!!ずっと好きだったから!!」
さっきよりも力をこめて感情のままに俺に抱きついてきたカイに、俺は
「お前の居場所が俺の居場所だ……『帰った方がいい』とかもう言わないでくれ。言うんだったら……『帰ってきて』の方がいいな」
「うん……!!もう言わない」
ゾロアークがグレイシアとイーブイを連れて外に出ようとしていた。よく見れば俺の手持ちのボールまでちゃっかり持って出ているあたり、気が効くのかお節介なのか分からん。けどありがとうなゾロアーク。
「嫌だったら殴れよ」
「え、なんのこt…んんっ!?」
初めてのキスは幸せの味がするとかよく分からんけど、とりあえず今が幸せだからいいだろう。くっっっっそ腰いてぇけどな。
〜三人称〜
「長の家から大声上がってたけど大丈夫なのか?」
「クシがちょっかいかけたのよきっと。ってあれ?クシのゾロアークと長のグレイシアじゃない?」
カイとクシの家から出てきたのは彼らポケモン達。ゾロアークだけが微妙な顔をしている。集落の若者達はいつものことだろうと帰ろうとした矢先の出来事だったので足を止めている。
「何かあったの?」
「グゥ……ガル」
「「ん?」」
ゾロアークは困ったように家を見た後、グレイシアを優しく抱きしめた。
「これは?」
「もしかして?」
「ガウ」
「フゥ?……フゥ!!」
ゾロアークに何か言われたグレイシアは前足を器用に使って抱きしめ返している。
「グルゥ」
それが終わるとゾロアークは家を指差した。
「「「「「「お、お……おめでたぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!」」」」」」
その晩、盛大に祝われた2人がいたそうだが、どこからバレたのか分からなかったため顔を赤くしながらひたすら俯いていたそうだ。もちろん手を繋ぎながらの話であった。