神渚 零夜side
さて、今回の情報を整理しよう。
と言うのも、時を巻き戻したら過去が変わっていたりすること、パラレルな要素が希に存在していたからだ。
今回の藤丸立香との関係は幼馴染みらしい。
記憶通り家も隣で小中高も同じ、お互いの家は普通の家で、魔術に炊けてるわけではない。
俺は魔力元からある方だ、恐らくはサーヴァントを三体ぐらいは呼べるくらいあるだろう。
そして今はカルデアに連れていかれる1日前。
まず、下の階へ向かおう。下の階に降りて洗面台で顔を洗い母さんと立香のいるはずの台所へと入る。
「零夜、朝から美少女に起こされるなんて幸せだねあんた。」
そこにはそう言って微笑みながら俺をからかう母さんと、テーブルに付いて朝飯を食べる立香がいた。
「悪いな、立香」
「別に気にしなくても大丈夫だよ、れいちゃんは友達だし幼馴染みだもん、当然だよ!」
「ありがとう」
そう言いながら母さんの作ってくれた朝食を食べる。やはりか、味が感じられない。
『味覚』がないのは母さん達は知らない。繰り返しているのは俺だけが知っている事で、今この場にいる俺は普通の青年であるはずだから。
だから普通に上手いと、一言だけ言っておく。そうすれば、少なくとも味覚があるようには思うであろう。何故な立花が嬉しそうに此方を見ていたが、まぁ気にしなくて良い。
今の俺にとって食事は生きるための作業。
食事が終わり立香は家へ帰っていったのを確認し、俺は即座に部屋にある財布に全財産を詰め込み、服のポケットへと入れて家を出た。
「さて、始めるか。」
頭の中の経験、記憶から自身のとるべき行動を手繰り寄せ道を走り出した。周りから変な目で見られようが関係ない。
まず、行かなければならないのは繁華街の路地裏。記憶通りならば、そこに奴がいるはずだ。
奴は、他の奴らと比べて比較的安価で礼装やアイテムを売ってくれる。
繁華街へとたどり着いた俺は即座に人目につかぬよう、路地裏に入り暗い道をゆっくりと歩き呼吸を整える。
アイツには必ず会わなければならない、そうしなければ救済の一歩目が無くなってしまう。いくら彼らの力があると言っても、命を与えるだなんて不可能に等しい。
少し進むと、黒いボロボロの外套を被った顔が見えぬ男性が立っていた。
「なんだあんた、その年で迷子にでもなったか?ここはあんたのような奴が来るような所じゃねぇ、帰んな。」
そう言いながら俺が表側の人間だと思っている男はそう言って俺に手をヒラヒラと振る。
やっぱり、いた。
これで、あの場所へ向かうまでに必要な事を1つ。運が良ければ二つ達成出来る。
「魔術礼装、防御系統を頼む。」
「へぇ、あんた客か?ずいぶん若いが、よく俺の店を知ってたな」
あれは何度もやり直していた頃、この町で出来ることを探し周り触媒となる物を探し回っていた時、偶然見つけた店。
魔術礼装を売ってもらえる、その上に運が良ければ触媒となる何かを売ってくれる。
男はは地面へと布を敷くと、その上にいくつものアイテムを見せてくる。カードや短剣、銃器や腕輪。様々な物が並ぶ中で、男は顎に手を置いて考え、やがていつもの青い配色の髪留め、ヘアピンの形状をした魔術礼装を指差した。
「こいつなんかどうだ?使い捨てだが、身に付けた者の死を一度だけ肩代わりしてくれるもんだ。」
「それを貰う、いくらだ?」
これがあれば、彼女を救える可能性が上がる。
「20万だ、と言いたい所だか今回は4万でいいぜ。」
「ありがたいが、何故?」
今までの記憶を便りに考えるがこんな事なんて無かった。だが、安く手に入るなら良いか。
「なに、あんたの目を気に入ったんだよ。何がなんでもやり遂げるって言う覚悟の籠った目だ……今回は特別な物が入ってる、見るか?」
こんなの今までの繰り返した時はなかったな。特別な者か……一体何が?
そう言って奴が取り出したのは
頭には甦る記憶、あの日……油断した俺を庇い死んでしまった、消滅してしまった仲間。
彼女がいつも使っていた三種類のナイフの1つ。
これが、今回この男が手に入れた触媒か……。
今まで、沢山の触媒を見てきた。とある国の王が使っていたとされる鎧の欠片、呪いの込められた箱、戦士の使っていたとされる折れた剣の柄、赤い外套。
「とある国から仕入れたもんでな。なんでも骨董屋が高く売り付けられたらしくな、売れなく問題の品だと安くてな。買い取ったんだ……」
そんな、数ある触媒の中で君が選ばれた。
もう一度君に会えると思うと嬉しい反面、あの時の記憶を持っていない君と出会うことが、少し悲しくて、苦しくて、申し訳ない。
もし君が俺を覚えていたら、でもそんな『もし』なんて事が無いことはもう分かっていることだ。
今の俺に出来るのは、彼女のナイフを買い彼女を呼ぶこと。そうしてもう一度、始めること。
「買う、いくらだ?」
「まいどー、一応ナイフ……刃物だから一万な」
俺は財布から一万円札を取り出し渡すと男は、受け取り確認するとナイフを俺の手に渡す。
「じゃな、若いの。」
そう言って男が去っていくのを見送り、渡されたホルスターに入ったナイフを胸の内ポケットへと入れる。
路地裏から外に出て繁華街から近くのスーパーで固形栄養食を残りの金で買える分買ってバックへと入れる。
カルデアでは、俺はこれでしか栄養を取らない。味覚がないから料理を食べる意味がない、ゆえに俺が食べない分は他の職員に回してもらった方がいい。
アイツが召喚されたなら栄養食が好きだと伝えれば料理を食べさせるのを諦めてくれる、はずだ。
そう思いながら近くの人気の無い山へと向かう。そこなら、何度も繰り返した中でも人が来たことがないのは確認済み。
一度バックを下ろし、体に力を入れる。すると体が人間ではない姿へと変化する。それを確認してから人間の姿に戻り、掌に念じれば様々なアイテムが手の中に、腹部に現れる。
よし、力は問題なく使えるし、■■■■レベルは8.0。問題なく二つのドライバーを仕様可能だ。シャドーボクシング、実戦を想像したイメージトレーニングを行う。
脳裏に浮かぶのは戦ってきた数々の英雄達、槍や弓、剣や魔術。それらを想定しひたすらに体を動かす。
それらを行い、家へと帰る。何度か帰りの神社にお参りしたりすることがあったが、縁は生まれたことが無かった。
故になにもせず、家へと向かう。
次の日の朝、朝日が昇り始めた。
買った固形栄養食や着替えをリュックに詰めていく。そして買った礼装を軽くラッピングしリュックに入れる。
こうすれば彼女は受け取ってくれる……はずだ。
今から空港で俺と立香があの場所へと拉致される。ふと、胸ポケットにしまっていたホルスターに入ったナイフを取り出しナイフの柄を掴んでホルスターからナイフを抜く。
すると、黒い刀身が現れ太陽光に白銀の刃が反射して光り輝く。間違いなくこれは、傷付いているが彼女が使っていたもの。
『ずっと…見守ってる、よ……■■■、■■…』
あの日、始めて彼女と戦い俺を庇って倒れた少女。その声は、今も俺の中に残っている。
俺はそのナイフをリュックではなく内の胸ポケットへと入れる。
今度こそ世界を、皆を救ってみせる。
そう誓い、俺はリュックを背負い立香と共にあの場所、カルデアへと向かった。
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