零夜side
ヘリから外を見れば、吹雪いている中に見慣れた建物が見えてくる。
人理継続保障機関カルデア
なんども俺が向かい、守りきれなかった者達がいる場所。爆破されるのは、阻止してはいけない、阻止しようと動いたものなら、すぐに奴に感ずかれる。
幸い、あの礼装はパッと見ただのアクセサリー、奴にはあれが魔術礼装だと気付く事はない。これは何度も繰り返してきたから、間違いない。
問題があるとしたらバレずに所長であるオルガマリー・アニムスフィアと接触しこの礼装を渡し、身に付けて貰うこと。
それが、カルデアの爆破される前に行わなければいけない、オルガマリーを救済する、唯一つの手段。
人だと認証するシステムは、誤魔化せる。
認証システムを抜け、カルデア内へと入る。ここからは、時間との勝負だ。
まずオルガマリー所長の部屋へと向かう。
立香と俺は別のヘリの為、俺の方が僅だが到着が早い。
前と同じだな。
この時間なら奴はまだ別の部屋はずだ、カルデアの地図は何度も歩いていたから覚えている。
所長室の部屋の扉のインターホンを押す、魔術の知らない一般人であると言う事はこの場で伝え、この場所は近くにいた職員に聞いたと伝えれば怪しまれない。
『誰ですか』
「本日よりここへと所属となりましたので、挨拶に参りました。」
『入りなさい』
許可が出たので入室すると白髪でロングヘアーで気の強そうな女性、オルガマリーが腕を組み立っていた。
「ようこそカルデアへ、所長のオルガマリー・アニムスフィアよ」
「初めまして所長、自分は神渚 零夜。献血によりマスター適正が高かったためスカウトされ参りました。」
「神渚 零夜……一般からのスカウトね。もう1人は遅れてるのかしら?まぁ、いいわね。今から人を呼んで貴女の自室へと向かって貰います、その場にて魔術師について及びこの施設の目的についての講義を受けて貰います。異論はありませんね」
そう言って何処かへと通信をするオルガマリー
俺は、黙って頷く。
「はい、所長この度はよろしくお願いいたします。こちらは安物ですがどうぞ」
そう言って例のヘアピンを渡す。彼女はそれをじっと見てから言った。
「何のつもり?」
「これからこの場で働くので、オルガマリー所長へのプレゼントです。本当ならば菓子などが良いのですが、所長の好みが分からなかったのでアクセサリーを選ばせていただきました。」
嘘だ、もし本当にプレゼントとして選ぶなら食べ物を買う。俺は事前に所長が彼女だと知っている、そしてこの後にどうなるかも。だから、こうして礼装を渡す。
「そ、そうですか……」
そう言って彼女はどこか嬉しそうにヘアピンを前髪に着ける。
「どうかしら?」
「お似合いですよ」
「…………無表情のまま言われても嬉しくないわよ」
彼女はいつも変わらない。ひたすら頑張り続け、報われない。
そんなの、きっと間違ってるはずだ。そう思うからこそ、俺はあの礼装を託すのだ。
「すいません」
これで彼女を救う為の準備は完成した。
『所長、マスター候補の案内に参りました』
「ええ、入りなさい」
すると白髪でメガネをかけた少女、マシュ・キリエライトが入ってきた。
「マシュ、彼は一般からマスター適正によりスカウトされたの、ここを案内してあげなさい」
「了解しました所長。初めましてマシュ・キリエライトです。」
「神渚 零夜だ、よろしく頼む」
「神渚さんですね、了解しました。こちらへ」
そう言って所長室を出て、マシュにカルデアを案内して貰う。もう構造は覚えているが、知らない振りをしておけば後から不信に思われなくてすむ。
「大体分かった、感謝する」
「いえ、それでわ」
そう言ってマシュが帰っていく
俺は自室の中へと入り、リュックを下ろし固形栄養食を一箱取り出す。
魔力はサーヴァントを召喚するのに使うので、体力、魔力回復目的でポケットにいれておくと冬木でうまく動ける。
俺は冬木にレイシフトすると、ランダムだが高確率でアルンツベルン城の近くにレイシフトされる。
アルンツベルン城の一室に聖晶石があるはずだ、他の聖晶石があるばしょも覚えてる。レイシフトしてすぐに聖晶石を手に入れつつ、アルンツベルン城に向かう。
そしてサーヴァントを召喚して立香達と合流する。もしバーサーカーと鉢合わせた場合は、倒して行くしかない。
誰かがいっていた『ぶち当たる壁は正面からぶっ飛ばす』と。今の俺なら、出来る筈だ。時計を見ると、最初のレイシフトまであと少しといった頃。
そろそろ立香がカルデアへとついて、床に倒れて眠っている頃だ。でもいまあいつと会うのは駄目だ、奴が立香とコンタクトをとるはずだからな、説明会まで会わない。
説明会が行われると言われ、俺はレイシフトする部屋へと集められていた。あと少しで所長の説明が開始される。
そろそろだろうか?そう思った時、立香は部屋に入ってきた。慌てているのか、彼女は俺に気付かず、隣に並ぶ。
そうして始まったオルガマリー所長の演説の中、立香がウトウトし毎回同じように寝始めた。何度もやり直したが、なんでこいつはこんなうるさい場所で寝られるのだろうか。
そう思いつつこの場から離れるため俺は、手を挙げると所長が気付き此方の方を向く。そして俺の横で眠っている立香を見ると、固まり一度瞼を閉じ、開く。
「すまない、俺の隣の奴が慣れない粒子ダイブでやられてしまってる。懐抱するために彼女をつれて何処か横になれる場所に向かおうと思うのですが」
そう言うと、まず寝てることに口を開けて驚くオルガマリーは、溜め息をつき指示を飛ばす。
「はぁ、分かりました。マシュ、彼に彼女の部屋を教えてきなさい。」
「分かりました、神渚さん先輩を背負って頂けますか?」
頷きマシュと共に立香を背中に載せ、おんぶし部屋を出てアイツの待つ立香の部屋へと向かう。
こんな揺れても起きないのは、何度見てもすごいとしか思えないな。
「すまない」
「いえ、問題ありません」
彼女の部屋の前につき、マシュは先ほどの部屋へと戻っていく。
そして、立花の部屋を開ける。すると中には白衣を着てケーキを食べている男性がいた。
「はーい、入ってまー――ってうえええええええ!? 誰だ君は!? ここは空き部屋だぞ、ボクのサボり場だぞ!? 誰のことわりがあって入ってるんだい!?」
やはり、ロマ二・アーキマンがいた。よし、予定通りだ、いくら巻き戻してもここは変わらない。
「すまない、ここはこいつの部屋だと聞いたのだが間違いか?」
「へ?あぁ最後のマスターだね、ならあってるよ。ボクが勝手に使ってるだけだからね」
そう言って頭をかきながら笑うロマニをよそにベットに立花を寝かせる。
「君達は確か最後に到着した一般からのスカウトされたマスターだよね」
「そうだ」
「そっか、説明とかは?」
「俺は聞いたけど、彼女は恐らく知らないと思う。粒子ダイブにやられていたから、ギリギリに到着したんだろうな。」
「なるほどね、そうだ!自己紹介、ボクはロマニ、ロマニ・アーキマン。これでも医療部門のトップを勤めてるよ、何かあったら相談でも何でも受けるからね」
「俺は神渚 零夜、こいつは藤丸 立香だ。」
「レイヤ君にリツカちゃんだね、わかったよ。良かったら君もどうだい?」
そう言ってケーキを差し出される。ロマニにありがとうと告げケーキを食べていると、立香が目を覚ました。
「う~ん、ここは?」
「起きたか立香」
「れいちゃん?説明会は…………もしかして、寝ちゃってた?」
「あぁ、ぐっすりと」
そう言うと顔が真っ青になりどうしよう、後で謝りに行かないと。そう言う立香にロマニが大丈夫だと笑うロマニ。
大丈夫だと思ったのか、立香も共にケーキを食べながらロマニと三人で談笑していると、突如としてロマ二の端末に連絡が入った。おそらく奴に呼び出されたのだろう。
「それじゃボクは行くね」
そう言ってロマニが腰を上げた、その時だった。建物内に沢山の爆発音が響き渡る。
「ッ!いったい何が起こってるんだ!?」
「爆発音みたいなのしたよ!?」
『緊急事態発生!緊急事態発生!中央発電所、および中央管制室で火災が発生しました。中央区画の隔壁は九十秒後に閉鎖されます。職員は速やかに第2ゲートから退避してください』
「何だって!」
「管制室………マシュが!!」
そう言って立香が管制室へと走り去っていく。
「立香君!クッ……すまないレイヤ君、ボクは発電室へ行く、カルデアの火を消すわけにはいかないんだ!君は避難するんだよ!!」
そう言ってロマニが走っていくのに続き、俺も走り立香や所長のいる部屋へと向かう。中には言った瞬間、管理室の扉がしまってしまう。
そこにはとても悲惨な光景が広がっていた。
炎が燃え、沢山の瓦礫が崩れ落ちている。そして、その中には下半身が瓦礫に挟まって動けないマシュと、そんなマシュの上に落ちた瓦礫をどかそうとする立香がいた。
『観測スタッフに警告、カルデアスの状態に変化が起こりました。シバによる近未来観測データを書き換えます、近未来100年までの地球において、人類の痕跡は発見できません』
放送が流れる中、彼女達の元へと向かうこの場所では所長を発見する事は不可能。
『人類の生存は確認できません、人類の未来は保障できません』
「れいちゃん!手伝って、マシュが!」
「カルデアスが、真っ赤になってしまいました………」
『システムレイシフト最終段階に移行します
座標【西暦2004年1月30日 日本 冬木】
ラプラスによる転移保護成立
特異点への因子追加枠確保
アンサモンプログラムセット
マスターは最終調整に入ってください
………コフィン内マスターのバイタルが基準値に達していません
レイシフト定員に達していません
該当マスターを検索中……発見しました』
『適応番号48【藤丸 立花】、49【神渚 零夜】をマスターとして再設定します』
『アンサモンプログラムスタート、霊子変換を開始します』
回りに光の粒子が浮かび、意識が少しずつ遠退いていく。
「先輩、神渚さん………手を握って貰ってもいいですか」
マシュの問いに、立花はすぐマシュの手を握り俺はそんな二人の手を上から被せるように握る。
「お二人とも……ありがとうございます」
『3』
安堵したようにそう呟き、瞳を閉じるマシュ。
「れいちゃん、私達大丈夫………かな?」
そう心配そうに、俺の方を見つめる立香。マシュの手を握る彼女の手が僅かに震えていた。
『2』
「大丈夫だ。俺が______」
そう告げると、立香は目を見開きその後に安堵した様子で笑う。
『1』
「えへへ、ありがとう」
『全行程完了。ファーストオーダー、実証を開始します』
その瞬間、目の前の光景が段々と暗くなっていき俺は意識を失った。
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