それから、ゼルレウスさんとの特訓が始まった。ゼルレウスさんが言うにはモンスターの鼓動を感じ取り魂の色を見れるようにしたらいいとのことだったけど、イマイチよくわからない。
でも、特訓以外でもゼルレウスさんと一杯色んなことをした。
ゼルレウスさんが仕留めた大きな魚を一緒に食べたり、ドスファンゴに追いかけられたり雷光虫に麻痺させられたり。
あれ?ろくなことないや。
時にとんでもない奴が襲ってきたこともあった。桁並みはずれた水を操るグラビモスのご先祖様と遭遇しちゃったけど、ゼルレウスさんは持ち前の光による攻撃と適応能力で相手を撃退した。
「なんでとどめを刺さないんですか?」
気になって聞いてみた。
「無益な戦いは憎しみしか生まない。僕は勝った。その結果だけあればいい」
ディノバルドさんは荒々しい爆炎って感じだったけど、ゼルレウスさんは高貴で優雅な煌炎って感じだな〜。暖かい炎でこっちの方が好きだな〜。
僕の方はというと、特訓を重ねるごとにゼルレウスさんの言う事がなんとなくわかってきた。泡の感知の応用で相手の情報を目で見ずとも解るようになってきた。確かに、ゼルレウスさんの言ったとおり魂の光が僅かながら感じ取れた。
ちなみに、ゼルレウスさんの魂の色は眩しすぎて見えない。
刻が流れ僕の体はゼルレウスさんと過ごしていたせいか少し大きくなった。いや、大きくなったというより、日々ゼルレウスさんからの苛烈な特訓で筋肉質になっていったからだ。
「君も見違えるように強くなったね。」
ゼルレウスさんに褒められて僕はなんだが照れてしまった。でも・・・・なんでだろう?ゼルレウスに少し寂しそうな色が見えた。
「今日は僕も君と本気で戦う。それが総仕上げだ。もちろん本気で殺しにいく。君も僕のことを殺しにくるんだ。」
いってるいみがわからなかった。嫌だよ・・・ゼルレウスさんを殺すなんて・・出来ないよ。
「さぁいくよ。これが最後の特訓だ。」
そういうとゼルレウスさんの鮮やかな蒼色の体は禍々しい紅色に変わっていく。
身構える僕にゼルレウスさんは紅い光球を放ってきた。
避けられる!そう思ったが光球は放射状に変化して襲ってくる。僕も水属性だが、いなすことができない。なんとか被弾しながらもかわすと、今度はゼルレウスさんの紅く凶悪な翼が振り下ろされた。ギリギリかわせたものの地面はえぐれていた
「どうしたんだい?逃げてるだけでは勝てないよ」
このままでは僕は死ぬ。でも・・今までにない猛々しいゼルレウスさん相手についていくのがやっとだった。何より、色んな事を共にしたゼルレウスを殺すなんて・・僕には・・・
そう思った瞬間ゼルレウスさんの顎の立派な角の一撃をくらってしまった。
僕に暗黒が訪れる。右目を切り裂かれ完全に目が見えなくなってしまいパニックに落ち入りそうな僕に、ゼルレウスさんはいった。
「忘れたのかい?心で感じるんだ。君は探知にたけている
君ならできるはずだ。」
死にたくない・・まだ僕にはまだやり残した事がある。何よりゼルレウスさんの期待に応えたい。
僕の中に溢れ出る力が湧いてくる。これは・・・
「ようやくものにできたみたいだね。視界が閉ざされたことによって君の潜在能力が今開花したんだよ」
体を振るい泡に爆炎を付加することができる。何より、今はゼルレウスさんはもちろんだが、見えていないはずなのに周りの地形が光の筋となって詳細にわかる。
「さあ、いくよ。これが最大の一撃だ」ゼルレウスさんは空高く舞い上がり、紅い光を纏い僕に向かってくる。
絶対に負けない・・・これが僕のゼルレウスさんに対する礼儀だ。
内から溢れ出る力は最高潮に達し、かつての右目からは蒸気が上がり闇夜にゆれる狐火のようになった。
ゼルレウスさんに向かって狐火を宿したブレスを打つ。爆炎を発生させながら、バチバチと電気を発する鋭利な刃物とかしたブレスがゼルレウスさんを貫いた。
あたりに静寂が訪れる。僕はゼルレウスさんにすぐさま駆け寄る。
「あなたが本気できていたら僕はすぐにでも骸になっていたはずです。なのになんで・・」
「君の美しい妖艶の炎に見惚れてしまってしまってね。しかも、最後の一撃にはわずかながら雷の力も宿った。まるで天翔龍のようだったよ。」
ゼルレウスさんの心の色はとても綺麗で今ではハッキリと暖かい光となって見る事ができる。
「君と会った時から僕の心は君に打ち抜かれてしまっていたようだった。君と過ごした時間は僕のモン生のなかで最高の時間だったよ」
胸が熱くなる。このままではゼルレウスさんが・・・
「僕はいいんだ。どのみち寿命がつきかけていたからね。最後に君の手で天寿を全うする事ができる」
「嫌です・・・まだ一緒にいたいです・・・」
絞り出したように出した声は今にも消え入りそうな悲しみをまとっていた。
「そんな顔は君には似合わないよ。君はもっと優雅に振る舞うべきだよ強者としてね。」
ゼルレウスさんはとても、苦しそうだった。
「もう、君のことを坊やとは呼べないね。君は眼を失ったが、天を見渡すようなより広範囲の認識力を得た。今日からこう名乗るといい」
「天眼タマミツネと」
天眼、何故だかわからないけど勇気が湧いてくる。
「ありがとうございます」
感謝を述べるもゼルレウスさんから返答が返ってくることはなかった。
「改めて、ありがとうございました。あなたの光を宿し僕はこの地に平穏を取り戻しに行きます。今までありがとうございました」
自身にやどる狐火でゼルレウスさんを火葬した。このまま亡骸を放置したのではほかのやつらに食い荒らされりしてしまう。そんなのは嫌だ。
しばらくして、火が消えたのちにゼルレウスさんの埋葬を終え僕は踵を返し向かう。
霊峰へと。
「ゼルレウスさんの想い、期待を裏切ったりしない。絶対に平穏を取り戻してみせる。」
そこには、かつてのうなだれるだけの自分はいない。心に強く輝く光をやどし、決意の炎に燃える1人の漢だった。
嵐舞う決戦の地へと天眼は駆け抜けて行く。