我ら思う、故に我らあり 〜Twintail with GHOST CAT~   作:春風駘蕩

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赤と橙の初陣

 あぁ……久々だな、この感覚。

 手足が伸びて、体の大きくなって、毛が頭のだけになって……見た目の全部が大きく変わった私。

 

 ただ耳と尻尾はそのまんまなんだよな、その方が違和感が抑えられていいんだけど。

 

 勝手にかぶさっていたふーどを外して、中に押し込められていた私の耳と髪ーーーおれんじ色にぼんやりと光る、三角形の耳と長くてふさふさなついんてーるを解放する。

 まったく、どういう仕組みになってるんだろうな、これ。

 

「ぬぅ……! これは…あの幼女にも劣らぬ凄まじき属性力(エレメーラ)‼︎ 貴様、いったい何者だ⁉︎」

 

 そーじ?の前に立ちはだかった私に向けて、おおとかげが鋭い目で睨みつけながら問いかけてくる。

 

 …何者、か。何だろね?

 今の私が何なのか、ぶっちゃけ()()()()()3年経った今でも全然わからない。おっちゃんは全然説明してくれないし、使う機会なんて滅多になかったから。

 

 ……だけどこれだけは言える。

 私はご主人様のためなら、この先何度だって命を懸ける。

 どんな危機が目の前にあろうとも、どんな敵が立ちふさがろうとも、どんな運命が待っていようとも、そーじの為に在り、そーじの為に戦い、そーじの為に死ぬ。

 それがあの人に命をもらった私の使命で―――私の唯一つの望みだ。

 

 これが私の初陣だ……なら、カッコよく名乗ってみせよう。

 

「…………私は、亡霊(ゴースト)

 

 私の身体中に走る、人の骨みたいな模様が光る。今の私流の威嚇みたいなものかな?

 

 だけどおおとかげが怯んだ様子はない……あんにゃろう、まだ私のこと舐めてやがるな?

 見た目で判断して甘く見てたら……後悔するぞ。

 

「覚えたぞゴーストとやら……! しかし邪魔立てするというのなら幼子と言えども容赦はせん‼︎ 貴様の属性力、貰い受ける‼︎」

 

 どしん!と、おおとかげが地面が割れるぐらいの勢いで、私の方にに突っ込んでくる。でかい身体と相まって、砲弾が向かってくるような凄まじい圧を放ってくる。

 

 だけど私はそれをひらりと……いや違うな、ゆらりと避ける。

 両足を地面から浮かせて、水中に漂っているみたいに不規則に、おれんじの軌跡を描きながらおおとかげの周りを揺蕩う。

 

「ぬぅああああっ‼︎」

 

 雄々しく吠えながら拳を突き出してくるおおとかげだけど、そんな力任せの攻撃なんて私には通じないよ。

 おおとかげの放つ風圧で勝手に動いているみたいに、私は奴の攻撃を軽々と躱していく。おおとかげも負けじと拳とか手刀とか挙句に尻尾とかを振り回してくるけど……残念、あんたがただ疲れるだけなんだな。

 

「うぬ……⁉︎ ふわふわゆらゆらと妙な動きをしおって! もっと背筋を伸ばしてしゃんとしなさい‼︎」

 

 お母さんみたいなことを言いながら、おおとかげは自分の背中の棘を浮かばせ、私に向けて放ってくる。

 紐がついてて繋がってるあの……あれ、あの……そういう武器みたいなのが、空気ごと私を斬り裂こうと迫ってくる。

 

 だけど……それも当たらない。

 それどころかおおとかげは、一瞬のうちに姿を消した私に目を見開き、明らかに動揺しながら私を探しだす。

 

「消えた⁉︎ どこだ、どこへ……⁉︎」

 

 くすくすくすくすくすくすくすくすくすくす……!

 

 あちこち見渡すおおとかげの滑稽な様に、私は姿を消したまま思わず笑い声をこぼす。

 そっちじゃないよ、でもそっちでもない。仕方がないな……答えを教えてやろう。

 

 おおとかげの背後から、私はぬるりと手を伸ばし、肩に舐めるように触れる。冷たかったかな、奴はぶるっと背筋を震わせた。

 

「ぅ……うおおおおおおおお⁉︎」

「ハァッ‼︎」

 

 悲鳴のような雄叫びをあげて、振り向きざまに刃を振りかぶってくるおおとかげ。

 だけどその時にはすでに、私の渾身の蹴りがおおとかげの腹に突き刺さっていた。

 

「ぐぬぅぅ…! くっ……この力、侮れん!」

「す……すげぇ」

 

 ずざざざっ、と地面を滑って、私の蹴りの威力を殺すおおとかげ。

 でも思ってた以上に強烈に食らったみたいで、止まると同時にその場に膝をついた。やーい、どんなもんだ幼女好きの変態怪人めー。

 

 おおとかげを蹴り飛ばした私を、そーじ?が呆然とした目で見つめてくる。どことなく、尊敬というか感動というか、なんかこそばゆくなる感じの眼差しに感じる。

 

 やめてよ、褒められてもなのも出ないよ?

 別に催促するわけじゃないけど、そんなに感激したんなら、今夜そーじの膝の上でなでなでしてくれると嬉しいかな? そしたらまたこういうの見せてあげてもいいよ?

 

 ……あれ、でもなんか、若干疑いの目で見られてる気がする。なんで?

 

「トゥ、トゥアール……あいつはいったい誰だ⁉︎ 味方なのか⁉︎」

『…すみません、総二様。あのような技術を私は知りません。一見しただけでは解析できない高度な技術が使われているようです』

 

 耳のあたりについてるらしい通信機で、あのおっぱいと連絡とってるみたいだな。聞きたいことがあるなら私に直接聞いてくれればいいのに……あ、怪しんでるから無理か。

 

『そもそも私は、あんな中途半端に歳を取るような設計などしません‼︎ スク水っぽいのはまだいいとしても、あんなにデカくなっては気軽に抱っこもできないじゃないですか‼︎』

『そんなに抱っこしたけりゃ私がやってあげるわよ…‼︎』

『さばおりゃああああああああああああ⁉︎』

 

 ……なんか通信の向こうでおっぱいがまた変なこと言って、あいかにぼこぼこにされてる音が聞こえる。

 

 待って、待ってあいか。

 人間の背骨ってそんなえぐい音立てるまでやっちゃっていいの? 私もついびくってなるような音だよ? 大丈夫? そのおっぱい死なない?

 

 まぁいいか。あいつそう簡単に死ななそうだし、ほっとけばまた復活するか。

 とにかく私は、目の前にいるこいつを全力でぶっ飛ばさなきゃならない……んだけども。

 

 ……こっちの背中は押しといてやるか。世話の焼けるご主人だよ、まったく。

 

「…………さて、所で君はいつまでそうやっているつもりなのかな?」

「え……?」

 

 私が語りかけると、そーじはぽかーんと呆けた顔で私を見つめてくる。

 

 その顔に現れているのは……怯え。

 無理もないか。あんなぶっ飛んだ変態に迫られて平気でいられる奴はまずいない……その辺はまじで同情する。

 普通、あんなんに関わる前に逃げるからね。誰でもそうするからね。

 

 でもね、そーじ。最初に道を選んだのはあんただよ。

 ツインテールを奪われた女の子達を見て、助けたいって、これ以上奪わせたくないって心を燃やして、戦いを挑んだのはあんただよ。

 それを曲げてしまうの? 私が誇らしく思ったあんたは、抱いた気持ちをを自分で穢してしまうの?

 

 私が大好きな英雄(ひーろー)は、ここで立ち止まってしまうの?

 

「君はもう、戦いを諦めてしまったの? あの子達の心の輝きを取り戻すことを諦めるの? ……君の想いは、その程度のものだったの?」

「お、オレは……」

「別にこれ以上戦わなくてもいいよ。()()全部守るから……敵が恐ろしいんなら、そのままそこでへたり込んでてもいい」

 

 あんまりきついことは言いたくないけど、ここは心を鬼にしなくちゃならない。

 私だってね、あんな変態集団相手にすらしたくないんだよ。できることならあんたと一緒に逃げて、あんたの腕の中に包まれて甘えて、知らない振りでもしていたいよ。

 

 でも……それじゃあんたがずっと後悔し続けることになる。

 そして何より……そんなあんたなんて、私は見たくない。

 

「違うというのなら、今すぐに立ち上がって。立って、私と一緒に戦って…………君のツインテールへの想いは本物なんだって、あいつらに教えてやって」

「……オレは」

『そうよ、総二‼︎』

 

 まだ迷っているように見えるそーじ。

 そこに、そーじの通信機からあいかの声が聞こえてくる。ありゃ、私の言葉聞こえちゃってたのか。

 

『あんたさっきあんだけカッコつけておいて、今さら怖気付いたわけ⁉︎ 人の胸倉つかんでおいて情けないったらないわよ⁉︎』

『愛香さん……私の肋骨はすでに許容値を超え……折れっ……‼︎』

『愛香…」

 

 あいか、掴めるおっぱいないじゃん……でもこれ言ったら私への殺意が高まるから言わんとく。あのおっぱいとおんなじ目に遭いたくないし。

 

 お、そーじが顔を上げてきた。

 見えたご主人様の顔は……きりっと引き締められて、目はさっきと打って変わって力強う光を放っている。

 ……あいかの激励で、やっとこさ発破かけられたみたいだね。

 

「そうだ…俺は、守りたいんだ……‼︎ ツインテールを……俺の憧れを……‼︎ あんな奴らに、汚されたくないんだ…‼︎」

 

 ゆっくりと、震える足に力を込めてそーじは立ち上がる。

 怖い気持ちはまだ去ってない……でも、それ以上に燃え滾る感情の炎が、そーじを戦士として奮い立たせている。

 

 あーあ、まったく……やっとえんじんに火がついたか。

 

「もう迷わねぇ‼︎ 俺は…………俺の全てを懸けて、あいつらと戦う‼︎」

「…そう、それでこそ私の英雄だ」

 

 拳を握りしめて、おおとかげと黒いもけもけを睨みつけるそーじに並んで、私ももう一度あいつらに目を向ける。

 

 振り向いてみると、おおとかげは律儀に私達を待っててくれてた。会話中に襲ってこないとは見上げた精神じゃないか。

 しかしなんだろ、あの微笑ましいものを見るような……子供達が友情を確かめ合う場面を見守っているかのような謎の視線は。やめろ、むちゃくちゃきもいからそれ。

 

「ゴースト…! 情けないけど俺、まだまだ新米ヒーローだからさ……力を貸してくれないか。一緒に戦って欲しいんだ」

 

 申し訳なさそうに私を見つめてくるそーじだけど、私は元よりそのつもりだったから別にいいんだよ?

 

 それにさ……私は逆に嬉しいんだ。

 あんたと同じ……って言うにはだいぶ身長差ができちゃったけど、二本足で立って並んで、あんたの力になれるってのが。

 ずっと守ってもらってばっかりだったから、嬉しくて仕方がないのさ。

 

「おーけーおーけー、望むところさ。ぶちかましてやろうよ」

「ああ…! あいつらをぶちのめすぞ!」

『あ、あの……暑苦しい友情シーンを邪魔して申し訳ないんですが……! そろそろ私、限界なんですが……!』

 

 なんか変な声が聞こえるけど気にしない! さっきから色々突っ込みたかったけどもう全部無視する!

 

 めきめきぼきぼき聞こえてくるやばい音をガン無視して、私とそーじはおおとかげ達に改めて相対する。

 ……あんた達にも、色々事情とか理由とかあるんだろうけど、それは私達が自由に、ありのままに生きていくのにすごく邪魔になる。

 だから……ここであんた達全員をぶっ潰す‼︎

 

「いくよ!」

「ああ!」

「「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお‼︎」」

『おっぱい潰れますううううううううううううううううううううううううううううう‼︎』

 

 めっちゃ気が抜ける悲鳴が聞こえてきたけど、無視だ無視!

 あのおっぱいめ……大事な場面をどうでもいい台詞で邪魔すんじゃねーっ‼︎ あとで思いっきり顔面と谷間引っ掻いてやらぁ‼︎

 

 ずっこけそうになった私とそーじだけど、なんとか耐えて勢い良く走る。

 そーじは自分のついんてーるを纏めるりぼんに触れて、そこから炎と共に飛び出してきたでかい剣を掴み取る。

 何あれかっこいい、私もああやって出そ。

 

「ぺちってしてやるぜ! ツラ貸しな‼︎」

「ぬぅ! 言っていることはわからんが凄まじき気迫! よかろう! 存分に貸してやろう‼︎」

 

 でっかい剣をぶんぶん振り回して、そーじが黒いもけもけに突っ込んでいく。

 雄叫びと一緒に刃を薙げば、もけもけが石ころみたいに軽々と吹っ飛ばされて、建物の壁に叩きつけられる。あいつらがぶつかった所は隕石が落ちた後みたいになって、その後光の粒になって消えていく。

 

 おお、ただ剣をぶん回しただけですごい威力……こんなん作ったの、どこの誰なんだろうな。

 

「モケー!」

「モケケケー!」

「あんた達の相手は、私だよ!!」

【ガンガンセイバー!】

 

 私も負けじと、どこからともなく分厚いごっつい剣を取り出して、刃をもけもけに思い切り叩き込む。

 黒い刀身に、銀色の刃がついたそれは見た目以上に重くて、ぶん殴られたもけもけの顔がぐしゃっと潰れて、その後ものすごい勢いでぶっ飛んでいく。

 

「どりゃあああああああああ‼︎」

「モケー⁉︎」「モケモケー!」「モケ―――‼︎」

 

 私とそーじが暴れ回って、もけもけ達はどんどんいなくなっていく。これが無双ってやつか! 最高の気分だね!

 

 いつの間にか、周りを取り囲んでくるもけもけを前に、私とそーじは背中合わせになっていた。

 ちらっと後ろを振り返ってみると、そーじも私の視線に気づいて、にやって不敵に笑ってみせた。……くそぅ、ほんとにかわいいな、男のくせに。

 

「やるな!」

「そりゃこっちのセリフだよ!」

 

 一応、昔にあいかと一緒に道場に通ってたとはいえ、よくそれだけ戦えるよね……まぁ私も似たようなもんだけど。

 やっぱり男の子か。ちっちゃい頃に特撮を見て、ひーろーと一緒に戦ってるつもりで遊んでた経験が生きてるのかな? これ実際に言ったら恥ずかしがるだろうけど。

 

 そしたら、それまで黙っていたおおとかげが、拳をぶるぶる震わせながら睨みつけてくる。部下をやられて流石に怒ったかな。

 

「うぬぅ……見事! 実に見事! 戦場を舞う二人の……4本のツインテール! 赤と橙による美しいコントラスト! これは……これは現世の光景なのか⁉︎」

「変な妄想垂れ流すな‼︎」

 

 違った、私達に見惚れてただけだった。

 だけど、私とそー時のこんびねーしょんを褒めるなんて、見る目があるじゃないかおおとかげよ。もっと褒め称えてくれたっていいんだぞ。

 

 伊達に十何年、こいつの家で飼い猫やってるわけじゃないんだ! 恐れ入ったか!

 

「改めて名乗ろう! 俺はアルティメギル先行部隊隊長リザドギルディ! さぁ、名乗られよ異世界の戦士よ‼︎」

「お、俺は……」

 

 おお、固まったそーじの考えが見える見える、手に取るようにわかる。

 

 ……俺って何だ、って考えてるでしょ。

 うん、何だろうね。ついんてーる好きをこじらせたあげく、好みのついんてーるを持った美少女な変身ひろいんになっちゃってるわけだからね。

 わかんないよね、もはや何が何だか。

 

『何だっていいからさっさと名乗っちゃいなさいよ! 何とかエースとか1号とか!』

『ぁが……かひゅっ……』

「戦隊とライダーがごっちゃになってんな……でも、おかげで決まった」

 

 ねぇ、さっきからあいかの方でやばい声聞こえてんだけど。

 だいじょうぶ? おっぱい生きてる? あいかに締められすぎて呼吸困難になったりしてない? ちゃんと加減してもらってる?

 

 ちょっとびくびくしてる私をよそに、だいぶ悩んだ顔をしてたそーじが、きりっと顔を切り替えておおとかげ―――改め、リザドギルディに向き直る。

 

「俺は……テイルレッドだ‼︎」

「……ほうほう、だったら私は、テイルゴーストと今後は名乗ろう」

 

 ツイン()()()だからテイルレッドね、いいんじゃない? 語呂も悪くなさそうだ。

 ついでだから、私も似た感じの名前にしといて、そーじの右腕的ぽじしょんに収まっておこう。うん、これで大分ちーむ感ができてきた。

 

「いくぜ! うおおおおお―――‼︎」

「え、あっ、ちょ……」

 

 そーじがなんか先走って、リザドギルディに向かって飛び出していく……けど、あれちょっと力入りすぎだな。

 リザドギルディに斬りかかるどころか、あらぬ方向にぶっ飛んでいっちゃった。

 

「おおおおお―――って跳び過ぎた⁉︎」

 

 飛んでから我に返ったみたいだけど、時すでに遅し。

 リザドギルディの頭の上を超えて、そーじは建物のがらす壁に思い切りぶつかっていっちゃった。

 

 あーあ、がらすに人の形の跡ついちまってら。

 

「いててて……スペックを全然扱いきれてないな…! だけど、もうだいぶ慣れ―――」

 

 ぱらぱらがらすの破片を落として、そーじが顔を浮かせてる。あれ、痛そうだけど何ともないのかな?

 あのおっぱい、本人の性格はともかく技術はすごいみたいだしな……思いっきりやられても大丈夫な機能とかつけてんだろうな、きっと。

 

 気を取り直して、そーじが敵を前に構え直そうとするけれど……振り向いた先で、鼻息を荒くしてるリザドギルディがいた。きもっ!

 

「ハァ…! ハァ……! やはりイイ…どうかこのぬいぐるみを受け取り、俺の肩にこてんともたれかかって……‼︎」

「ギャアアアアアアア純粋にキモい‼︎」

 

 悲鳴をあげて、建物の屋根へ駆け上がっていくそーじと、ぬいぐるみを抱えてそれを追っかけるリザドギルディ。

 えっと、今って戦闘中だよね。あのおおとかげ、何自分の趣味に走ってるの? なに目ぇ血走らせて幼女を追っかけてるの? ばかなの?

 

「……あっちは大変だなー、気色悪いけど助けてやるか―――ん?」

 

 加勢しようかと思って、自前の剣を振りかぶる私だったけど、そこにまたもけもけが集まって壁を作ってきた。

 ごきかお前らは、きりがないわ!

 

 ……まぁでも、的は多い方がぶっ飛ばしたときにすっきりしそうだし! 派手に行くぜ!

 

「あっちは本気になったそーじがいるし、大丈夫そうか……じゃあ、かかってこいよ雑魚ども! 私が全員相手になってやらぁ‼︎ だらっしゃあ‼︎」

 

 剣をぶん回して、もけもけ達をぶっ飛ばす私。

 そーじの方がどえらい悲鳴をあげてるのが聞こえてんだけど……こっちの人数が多すぎて構ってる暇がないんだよね。

 

 悪いけど頑張れ! 戦いながら応援だけしてるから!

 

「モケー!」

「モケケケケー!」

「あぁもう! 次から次へとうっとうしいな! ……だったら次はこれだ!」

 

 一番近くにいたもけもけをぶっ飛ばして距離を取ってから、私は懐に手を突っ込む。

 そしてとあるものを……水色の人間の眼球みたいな道具を取り出す。

 

 私はそれをーーー眼魂《あいこん》って名前だっておっちゃんが言ってた道具を、腰に巻いたべるとの表面を開けて中に突っ込んで、横のればーを引っ張ってから押し込む!

 

【カイガン・ニュートン! リンゴが落下! 引き寄せまっか!】

 

 べるとから変な歌が聞こえてくると、私が羽織っていたぱーかーが消えて、黒い水着みたいな格好になる。

 すると、腰のべるとの中から、さっきと違う形の―――両手の先にでかい球体がついた水色のぱーかーが現れて、私に覆い被さってくる。

 

 毎回思うんだけど、あの駄洒落っぽいらっぷみたいな歌なんなんだろうね?

 

「姿が変わった……⁉︎」

「変わったのは見た目だけじゃないよ」

 

 私の自慢の耳が、なんか驚いてる様子のおっぱいの声を捉える。ふふん、恐れ入ったか変態め。

 せっかくだから、私の……っていうかこの力のすごいところをさらにもう一つ見せてやろう。ありがたく思うがいい!

 

【ダイカイガン! ニュートン! オメガドライブ!】

 

 ればーをもう一回引いて押し込む。すると私の両手に二つの光が宿る。

 私は青っぽく光る右手を上げて、もけもけに向ける。そしたら、もけもけ達がふわっと浮き上がって、私の方にものすごい勢いで引き寄せられてくる。

 

 なんかめちゃくちゃ慌てた様子でもがく奴らに、私は赤っぽく光る右手を突き出す。

 

「どっせぇぇぇぇい‼︎」

「「「「「モケー‼︎」」」」」

 

 ばーん!って、私の右手に触れたもけもけ達がぼーるみたいに吹き飛んで、光の粒になって消える。

 

 やっぱ便利だなー、これ。

 まとめてぶっ潰すの気分が爽快で……いうなればゴースト無双って感じ?

 

「うぬぅ…! こちらにも素晴らしきツインテール、あちらにも素晴らしきツインテール……俺としたことが、翻弄されっぱなしとはな!」

「余所見とは余裕だな!」

「否! 切羽詰まっているとも! これほどまでに眩しい属性力を前にして、冷静でいられる戦者はおらぬ!」

 

 建物の上では、そーじととかげもどきがじりじり睨み合ってる……そーじ、やる気を取り戻せたみたいだな。

 

 っていうか、あのおおとかげめ……!

 部下が大量にやられてんのに、私とそーじに見とれてるってどう言う事だよ。ぶらっくな上司か、おい。

 

「どうあってもこれを受け取ってもらえぬのなら……無理矢理にでも抱いてもらうぞ!」

 

 そう言って、リザドギルディがどこからともなく、大量のぬいぐるみを持ち出してくる。いや、本当にどこから出したの…?

 

 ん?とかげもどきがぬいぐるみを放り出して……なんか全部がばちばち電気を放ってる⁉︎

 どんなおもちゃだ⁉︎ 怖過ぎて子供に持たせられないでしょあんなの‼︎

 

「いざ! 我が奥義を受けよ! 〈人形に抱かれて眠りし少女がお花畑で遊ぶ夢の中、ふとした時に溢れる微笑みの如きイナズマスパーク〉‼︎」

「長い上にキショいわ! オーラピラーーーー‼︎」

 

 放電してるぬいぐるみを自分の周りに浮かせて、気合を貯めてる様子のリザドギルディ。

 見た目も技名もだいぶ残念なそれに、そーじは左腕を天に掲げて、眩しい光を放つ。

 

 そしたら、天空に飛び出した光が戻ってきて、リザドギルディの全身を照らして閉じ込めてしまった。まるで、光の檻みたいに。

 

「こ、これは……拘束(バインド)か⁉︎」

完全解放(ブレイクレリーズ)‼︎ 喰らえ…! グランドブレイザーーーーーーーーーーー!!!」

 

 ぼっ!って、そーじの腰のろけっとみたいな部品が火を噴いて、ものすごい速さで加速し始める。

 灼熱に燃えるそーじの剣が宙を斬り裂いて、光の檻の中でもがくリザドギルディの胸を袈裟懸けに叩き斬る!

 

 体を真っ二つにされたリザドギルディは、ばちばちと傷口から電気を走らせて……なぜか、満足げにそーじに振り向いた。

 

「素晴らしき…! 素晴らしき光景だ…! 生命の火の如く猛るツインテールに撫でられ、散る……これぞ戦士の本懐……‼︎」

「…え? ちょ、ちょっと待て!」

「さらばだ、テイルレッド! 美しきツインテールの戦士よ‼︎ はははははーーー」

 

 …なんかよくわかんない妄言を吐いて、もう一回そーじの全身を眺めて、口を笑顔っぽくしてから爆発するリザドギルディ。

 うっわ、派手な散り様……あれ、どこがどうなって爆発とかしてるんだろ。

 

 跡形もなく消えたあいつに、そーじは剣を振り上げて、ものすごい嫌そうな顔で叫んだ。

 

「だから勝手な妄想垂れ流して散るなってーーーーーーーーーーーーー‼︎」

 

 もう聞こえてもないだろうに、そーじの声が虚しく響き渡る。

 まぁ、変態には変態なりの自由があって、理想があって、そーじがその辺どすとらいくになった……って事なんだろうな。

 

 ……ごめんよそーじ。

 私、標的じゃなくてよかったって思ってるわ。

 

「……んじゃ、こっちもそろそろ決めようか!」

【カイガン! オレ! レッツゴー・カクゴ・ゴ・ゴ・ゴ・ゴースト!】

 

 そーじの慟哭を聞かなかった事にして、私はもう一回眼魂を交換して、最初のおれんじのぱーかーを身に纏う。

 ついでにがんがんせいばーの刃の一部を外して、柄頭?にまっすぐにくっつける!

 

 これぞ、〝がんがんせいばー・薙刀もーど〟!

 私はそれの、鍔部分にある目の模様と、べるとの真ん中にある眼と合わせて、一筋の光を通させる。

 

【ダイカイガン! ガンガンミナー! ガンガンミナー!】

「命、燃やすにゃ‼︎ ……ヤベ、噛んだ」

 

 でも気にしない! 次の一撃でなかったことにしてやる!

 薙刀がなんか、めらめら燃えてるえねるぎーみたいなのを纏ってるのを持って、そこら中に溢れるもけもけに狙いを定める。

 

 さぁ……これで終わりだよ!

 

【オメガストリーム!】

「でやああああああああああああああああああああああああああああああ‼︎」

 

 雄叫びと一緒に、私は光を纏った薙刀を思い切り、その場でぐるんと回りながら振り回す。

 そうすると、薙刀から光の刃みたいなのが飛び出して、周りにいたもけもけ達を次々に切り裂いていく。

 

 真っ二つにされたもけもけ達は、断末魔の声もあげることなく、一匹残らず光の粒となって消え去った。

 後に残ったのは……振り切った薙刀を肩に担いだ、私だけだった。

 

「さて、と」

 

 ……敵はもう、誰もいないよね?

 また別の奴が〜、とかはないよね? 大丈夫だよね?

 

 誰のも来ないのを確かめてから、私は残されたあれ―――女の子達もついんてーるを奪った、でかい輪っかを睨みつけて。

 

 ずばっ!と。

 がんがんせいばーで真っ二つににぶった斬ってやった。

 

「ーーーま、ざっとこんなもんさね」

 

 輪っかが光の粒になって飛び散って行くのを見て、私はぐぐっと伸びをする。

 いやー、初戦闘にしてはなかなかうまいことやれたんじゃない? しかもこの爽快感、癖になっちまいそうだぜ。

 

 私が一息ついていると、リザドギルディを倒してきたそーじが、がちゃがちゃ鎧を鳴らしてこっちに駆け寄ってきた。

 

「おや、お疲れさん。初戦にしては追い詰められてたね、大丈夫?」

「ああ……君のお陰で助かった。ありがとう」

 

 んー、若干疲れてる感じだなー? ほんとに大丈夫?

 ……まぁ、あんなやばい変態を相手にしてきたんだし、仕方ないっちゃ仕方ないんだけど。

 

 そしたらそーじ、私の事をじっと見つめ始めた。

 やだ……そんな熱くて真剣な眼差し向けられたら、私、私、ときめいちゃ―――。

 

「君は、一体…」

「―――あの」

 

 ……ちょっといい雰囲気になりかけたところに、なんか邪魔する声が響いてきた。

 

 あ? 生徒会長? 何してくれてんのこんな時に。

 ああ、ついんてーる元に戻ってるし、よかったね。うん、よかったよかった……だから邪魔すんなよ。

 

「…!ツインテールが戻ってる……」

「危ないところを助けていただき、ありがとうございました。……素晴らしかったですわ、こんなに幼いのに、あんなにも勇ましく戦われて……」

「い、いやー、そうかなー?」

 

 おい、何照れてんだそーじ。

 今は私と話す時間だろーが。謎の変身ひろいんにぴんちを救われて、あなたは誰なのって感じで心を奪われるしーんだろうが。

 

 なんでいつも通りについんてーるに心奪われてんだよ、ふん!

 

「是非、お名前をお聞かせください!いつか改めてお礼をしたのです!」

「あ、いや、俺……私はそんな大層な事をしたわけでは!たまたまあなたを助けられただけで……」

「それでも……あなたは私達の恩人ですわ」

 

 …なんかかいちょーさんの目が熱っぽい。

 惚れた? まさか惚れたんじゃあるまいなこら。

 

 ……普通に、本物の英雄が現れたから憧れの視線を向けてるだけっぽいから、許してやるけどさ。

 ちくしょー、私の思ってた展開とちがーう!

 

「はぁ……じゃあね、テイルレッド」

【オヤスミー】

 

 私はそう言ってから、べるとから眼魂を抜く。そしたら、ぱーかーだけじゃなくて私の姿そのものが消える。

 

 もう役目終わったし、帰ろ帰ろ。

 

「⁉︎ お、おい!」

 

 そーじもかいちょーさんもびっくりした顔で辺りを見渡してるけど……残念ながら私、別にどこにも移動してないんだよね。

 

 あんた達もさっさと逃げたほうがいいよ。

 こんだけ大騒ぎになって、新聞記者とかてれびまんとかが来るかもだし、面倒ごとに巻き込まれるかもよ〜。

 

 ん? なんか向こうからものすごい勢いで車走ってきてるし……「お嬢様〜!」って聞こえるから、かいちょーさんの御付きの人達かな?

 

「うわ、やべ。俺も急いで戻らないと……! で、では私はこれで‼︎」

「あっ! お待ちになってください!」

 

 それを見てやっと気付いたのか、そーじが慌てて走り出す。

 それじゃ、私もそれにあやかりまして……と。

 

 かいちょーさんが呼び止めてるけど、そーじは止まらず、首だけ振り向いてかいちょーさんの方を見てる……はよ逃げなよ。

 

「また…! またお会い出来ますか⁉︎」

「え、ええ! あなたがツインテールを愛する限り‼︎」

 

 いやそれどんな捨て台詞?

 

 

 

 しゅばっ!…と跳躍して、変身ひろいんになったそーじはどこへともなく消えていった―――

 

 なんて終わりはなく、そーじは適当な物陰に隠れながら、あいかとおっぱいがいるところに戻る。

 あいかが出迎えてきたところで、そーじの変身が解けて、そのままへなへなってあいかの胸の中に倒れこんじゃった。

 

「つ、疲れたぁ……!」

「お疲れ、そーじ。ナイスファイトだったわよ」

 

 そーじの健闘を讃えるあいか……だけど、おい、密着しすぎじゃないのかね?

 むー、今回は譲るけど、次からは私がそのぽじしょんなんだからね。

 

「総二様、そんなアスファルトみたいな胸にもたれかかっては余計に体に負荷がかかります。私の自前のクッションにどうぞ」

「わー、本当に柔らかいわねー」

「あああああああああごく普通に握り潰されてるうううううううううううううううう⁉︎」

 

 流れるような動きで、あいかがおっぱいの無駄にでっかいおっぱいを握りしめる。おお、指が沈む沈む。

 あのおっぱい、散々痛い目にあってるくせにどうしてああやって自分から死にに行ってるのか……やっぱりえむ? えむなの?

 

 と、そんなあいか達の漫才を眺めてたら、そーじがはっとした顔で何かを探し始めた? どしたん?

 

「あれ⁉︎そらは⁉︎そらはどこに行ったんだ⁉︎」

「そういえば……さっきからどこにも」

 

 ここにいるじゃん!

 ……って、そうだった。姿を消したままなんだった。

 

 んー、どうしよっかな〜。

 こっちの姿のまま出る? でもそれだとなんかめっちゃややこしい事になりそうだし……でもいつかは話す事だし。

 

 …まぁ、後でもいっか。

 そーじも疲れてるだろうし、あんまり無理させてら可愛そうだもんね。

 

「なぁん?」

 

 猫の姿に戻って、一声鳴いた私はそーじ達の前に出る。

 そーじはすぐに振り向いて、私を抱き上げてくれた。やっぱりここが一番だわ……。

 

「お前…、どこに行ってたんだよ! 心配したぞ」

「にゃあ♪」

「……何にせよ、無事で何よりだわ」

 

 そーじの腕の中でごろごろしてると、あいかもほっとした顔で私の頭を撫でてくる。

 どこに行ってたも何も、ずっとそーじの近くに居たんだけどね、見えてないだけで。

 

 ……見えるものが全てじゃない、見えないものもあるんだよ……なんてね?

 

「とにかく、一旦ここを離れましょう。そーじを休ませないと……」

「そうですね……では後は私がしっぽりやっておきますので、あなたはもうここでお別れでいいですよ」

 

 またおっぱいの奴が余計な事を言って、あいかに空高くまでぶっ飛ばされる。

 学習能力ってもんがないのか、あいつには。

 

 

 …さて、あいつには色々聞き出さないといけない事があるし。

 それに……私の事も話さないとね。

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