我ら思う、故に我らあり 〜Twintail with GHOST CAT~ 作:春風駘蕩
「そーっとだぞ、そーっと……」
お店の裏口をそっと開けて、そーじを先頭に私達は家の中に入る。
みはる、帰って来てるよね。お店放ったらかしで出てきちゃったからな〜、
「おっじゃまっしま―――ふぐへっ⁉︎」
……何か男子の友達みたいな軽い感じで入ろうとしたおっぱいがあいかに潰された。ばかなの? ねぇばかなの?
この雌は頭がいいのは頭が悪いのか、見る度にわからなくなってくるよ。
「あら、総ちゃんてばどこ行ってたの? 愛華ちゃんにそらちゃんまで一緒になって」
「! た、ただいま母さん!」
「お、お邪魔してます!」
「なぁん」
あ、やっぱりみはる帰ってた。
おっぱいの声が無駄にでかかったから……っていうかそーじがごまかすの下手なせいで怪しまれるかと思ったけど、大丈夫っぽい。
ていうか、みはるが相手ならこのおっぱいも「友達」扱いでよかったんじゃ…?
「ちょっとぐらい騒がしいのはいいけど……聞かれたくなかったら、声の大きさには気をつけてね、愛華ちゃん?」
「っ⁉︎ そ、そういうんじゃないですから‼︎」
「あっはっはっは。若いっていいわね〜」
……みはるがあいかに何か話してるのを聞いて、何かもやっとした。なんでだろう。
まぁいいや、さっさとこのおっぱいを連れてかないとだし。
「……何とか誤魔化せたかな」
「どうかしら…? なんか変な勘違いされてた気がするけど…」
みはるはちょいちょい変な事言うからな……あいかも何でかそれで毎回真っ赤になるし。
…気を取り直して、私達はそーじの部屋に入って、おっぱいを座布団に座らせて、その前にそーじとあいかが並んで座る。
そんで私は、胡坐をかいたそーじの膝の上に丸くなった。とくとうせき~。
…なんかまたあいかから嫉妬の視線を感じる。そんなに座りたいのか、羨ましいのか、この卑しい雌め。
「そわそわ…そわそわ…」
そんで改めておっぱいと対面したわけだけど……なんかこの雌は、そーじの部屋を見渡して落ち着かなそうにしている。うん、何してんの、お前。
「何わざとらしくそわそわしてんのよ。変態のくせに今更しおらしくしても意味ないわよ」
「すみません、私男の方の部屋に上がり込むのなんて初めてで……」
「おい、聞いてないんだけどそんなどうでもいい事」
「どうしよう、胸の鼓動聞かれちゃう……きゃっ♡」
「今この場で
くねくね気持ち悪い動きをするおっぱいの前で、あいかがばきごき指を鳴らす。その手で何する気? 抉り出すの? 握りつぶすの?
でもおっぱいはでれでれした顔から戻らない……いつまでやってんだ、こっちは真面目に聞いてるんだよ。
「さて、こうしてやっと落ち着けた事だし……聞かせてもらおうか、色々と」
あいかに代わって、そーじがいつにない真剣さでおっぱいに聞いた。
そうするとおっぱいもにやにや顔を消して、背筋をまっすぐにして向き直る。そーじのいうことは聞くんだよな、この雌。
やれやれ、まぁとりあえずこれで話が進められるかな……こいつがこれ以上ふざけなければだけど。
「わかりました……まずは電気を消して」
よし、先にいっぺん黙らせよう。
お前はいちいちえっちぃ事を考えないと息もできないのか!?
「ねぇ、そーじ。なんか武器置いてない? ハンマーとかアックスとかさ」
「あるわけねぇしそんなもん俺の部屋に求めるなよ‼︎」
「にゃ」
「あ、これいいわね。グレード落ちるけど」
「お前もお前で何引っ張り出してきてんの⁉︎」
「何をナチュラルにこの獣は蛮族にバットなんて凶器を渡そうとしてるんですか⁉︎」
そーじが昔使ってたけど、最近は全然なばっとを持ってくる。金属のやつのほうがよかったけど、無いからこれで我慢しよう。
あいか、完全犯罪なら喜んで力貸すよ。裏山の人の来ない場所ならお散歩でよく知ってるし。
埋めるなら誰も近付かない所にしといた方が発見されずに済むよ。
「ちっがうっつってんでしょうが変態女! あんたの頭の中にはそういう思考しかないのか⁉︎」
「じょ、冗談です……緊張されているようでしたので肩の力を抜いてもらおうかと」
冗談に聞こえないんだけど、さっきからずっと。本気でそーじの体を狙ってるとしか思えないんだけど。
やらねーぞ。絶対うちのご主人様はやらねぇぞ、手ぇ出したら仕留めるぞ。
いかんいかん……あんまりこいつの奇行に目くじら立ててたら、闇堕ちしちまう。冷静に、冷静に。
「教えてくれ、トゥアールさん。会長達のツインテールを奪おうとしたあいつらと、俺が変身したあの姿について」
「え? 女の子の体について知りたいと? わかりました、今すぐ脱ぎますので」
私はおっぱいのおっぱいを思いっきり引っ掻いた。我慢とか無理だった。
ええ加減にせぇよ、このやろう。
「フシャァァァ‼︎」
「いい加減にしなさいよコラ…!」
「ちょ……いった⁉︎ 爪でひっかかれるのマジで地味に痛った⁉︎ すみません真面目に話しますので
しゃきーん、と私が研ぎ澄ませた爪を見せつけると、おっぱいは谷間を隠しながら後退った。でっかいから隠れてないけど。
次ふざけたらまじで研ぐぞ♡
そう言ってるつもりで爪をにょきにょきさせてると、やっとこさおっぱいが真面目な顔で口を開いた。ここまで長かったなぁ。
「んんっ…まず、奴らの名はエレメリアン。
<◉>
「リザドギルディが……倒されたというのですか⁉︎」
円卓を中央に備える一室……金属で覆われた薄暗い空間に、驚愕の声が響き渡る。
声を発したのは、人ではない何か。
白鳥を模した鎧を纏った、人のような、しかし生物の動作を示す金属的な肢体を有する白い怪物。
彼の声を聞くのも、彼に報告を行ったのも、人に似た形をしていながら明らかに人ではない、無数の怪物達。
それぞれで異なる獣の特徴を表す外観を持つ、異形の集団であった。
「まさか! この世界に我らに抵抗できるほどの技術があったと言うのか⁉︎」
「石器時代のごとくツインテールの乏しい環境……おそらく属性力という言葉すら知らぬだろうと高を括っていたが、うーむ」
猪の貌を持つ豪傑が呟けば、狸の貌を持つ細身の怪人が眼光を険しくさせて唸る。円卓につく怪物達全員が、齎された凶報に動揺し、戸惑い合う。
……口にしている話題が、いかれていると思ってはならない。
彼らは至極真面目に、真剣に、命懸けで、己らの存亡に関わる内容を語っているのだから。
ざわざわと騒がしくなる空間。
不意に異形達の中の一体……竜の姿を模った一際強烈な圧を放つ武人が片手を挙げ、白鳥の怪人に視線を向ける。
「―――して、リザドギルディを倒したという戦士は、どのような者だ?」
「はっ! 生き残ったアルティロイドが命からがら持ち帰った映像がございます! こちらです!」
びしっ、と背筋を伸ばした白鳥の怪人が、端末を操作し空中に画像を映し出す。
地球の技術力を遥かに超越したそれ、人智を超えた装置を容易く使いこなしながら、緊張の面持ちで件の敵対者の姿を映し出す。
未開の地だからと甘く見積もっていた敵が如何なる存在かーーーそれを確かめんと、怪人達は身を乗り出し、映し出された戦士に注目する。
「おお…!」
「これは……」
「見事…!」
姿を見せた、赤いツインテールの少女ーーーいや、幼女剣士。
怪人達の口から漏れ出たのは称賛の声……なのだが。
突如現れた凄腕の相手の実力に思わず呟いたというより、思っていた以上の可愛らしさに思わず声が出てしまった、というべき、緊張感に欠ける声だった。
ざわざわと先程とは異なる騒めきに包まれる空間の最奥で、竜の武人は鋭い眼光で幼女剣士を見据え、呟く。
「……恐るべき、そして眩しい属性力の輝きだ。これほどまでに強く美しく属性力を育て上げるとは、この者、只者ではあるまい……」
「あのツインテールのなびき……思わず目を惹かれてしまいます」
「あの幼さであの強さ、たなびくツインテールに相まって、まさに戦乙女の降臨……!」
「何とも言えぬ……凄まじき覚悟を感じる瞳ですな」
口々に称賛の言葉を吐く怪人達だが……残念ながら最初の厳かさというか、不気味さというか、潔い武士共の集まりという雰囲気は霧散している。
そこにいるのは最早、単に可愛い女の子を集団でじろじろと眺めて悦に浸る駄目な男達でしかなかった。
「そしてもう一人……」
白鳥の怪人が端末を操り、次なる画像と映像を映し出す。
次なる戦士は、パーカーを纏った猫耳の少女。幽鬼の如きゆらゆらとした動作で敵を翻弄し、薄ら寒い雰囲気を発する橙色のツインテールの持ち主。
当然、こちらにも怪人達はいそいそと注目し、それぞれ好き勝手に感想を述べ始める。
「おお、これはこれは……」
「うーむ…」
「……甲乙つけがたし」
「この者の属性力……ただのツインテール属性ではなさそうだな。亡霊のごとき戦いぶりといい、あの目の奥に秘められた闇の深さといい、気を抜けば冥府まで引き摺り落とされかねん」
色々と角度を変え、少女達のツインテールのなびき具合や顔、うなじやら腰つきやら、間違いなく先頭には関係のなさそうな箇所を観察し始める怪人達。
竜の武人だけが唯一真剣な面持ちで戦士達を見つめ……いや、やはり大体他の者と似たような視線で少女達を眺めていた。しっかり最後までツインテールだけを見る、という違いこそあったが。
「テイルレッドとテイルゴースト、この世界を守る二人の少女か……我が属性力を随分と昂らせてくれる」
微妙に引き締まらない空気の中、ぎちぎち、と竜の武人の拳が軋みをあげる。
可愛らしい少女達に見惚れているのは確かだが、それはそれこれはこれ。一人の武人として、数多の世界を渡りーーー侵してきた者として、自らの前に立ち塞がる戦者がいれば、心が、魂が奮えるらしい。
それは、彼の部下である他の怪人達にとっても同じ事のようだ。
「ドラグギルディ様! どうかこの者らとの次の戦いはこの私、フォクスギルディに! 我が〈
「否! このタートルギルディこそが相応しい! 〈
ほぼ同時に立ち上がった怪物達が、それぞれの得物を誇示しながら戦意を示す。我こそが、己こそがかの戦士に次に対峙するに、そして打ち勝つに相応しいと猛り、燃える。
十分な闘志を見せつける彼らに、竜の武人ーーードラグギルディはばさりと背中の外套を翻し、部下達を睥睨し吠える。
「いいだろう! ならば次に挑む我こそは者は、己が力を存分にみせて決めるがいい‼︎」
「「「「「ウオオオオオオオオオオオオオオ‼︎」」」」」
雄叫びが上がり、空間が、彼らを乗せた世界を渡る船が震える。
彼らこそ、人の心に宿りし輝き……
アルティメギルーーーこの世で最も恐ろしき、人の理解の範疇を超えた怪物達だ。
………………………………………………一応、そういう事になっている。
<◉>
「滅ぼされた⁉︎ トゥアールの故郷が⁉︎」
おっぱいの話を聞いて、そーじが驚きの声を上げて腰を浮かせる。お陰で私はそーじの膝から転げ落ちそうになった……耐えたけど。
あいかも似たような感じで、おっぱいを信じられないって顔で見つめてる。
まぁ、私もおんなじ気持ちだけどさ。
「少し前の事です。今回は退ける事ができましたが、後手に出続ければ、この世界もいずれは私の故郷のように……」
「ちょ、ちょ、ちょっと待ちなさいよ! 幾ら何でも世界の滅亡なんて大げさでしょ⁉︎ その…えっと……アル、アルなんとかって奴らにそんなことできるの⁉︎」
あいかの言いたい事もわかる。
最初から最後まで馬鹿みたいな事言ってたし、車とか色々壊れたけど結局誰も傷つけなかったし、変態だったし。
実際に戦ったそーじが危なかったっちゃ危なかったけど、世界の滅亡なんてものに結びつくほど恐ろしい敵じゃなかった。
だけど……おっぱいの表情に嘘はない。今度こそ本気で、事実を話してる。
「奴らの目的は
「えれめーら?」
「属性力というのは……生命体として一定以上の知性を有した存在から発生するエネルギーの一種です。私が元いた世界では、生活における様々な動力源として利用できるよう、多くの科学者達により研究がなされていました」
聞いてみると、本当に真面目な研究だったみたい。
偉そうな格好をした賢そうな人が、大真面目な顔でついんてーるとかどーるとか話してんの想像したら、めっちゃ複雑な気持ちになるけど。
「そんなのが本当にあんなすごい力を出せるものなの?」
「好きなものに対して振るう力は、通常よりも少しではありますが大きくなるものです。覚えはありませんか?」
「……ない、こともないけど」
あいかがいつもやってる事だもんね。最近は特に、主におっぱい関連で。
……寒気がするからこれ以上はやめておこう。
「そしてエレメリアンは、その属性力が何らかの形で意思を持ち、生命体として自己を形成させた存在……謎多き敵です」
ふーん……あいつら謎の生き物なんだ。
体の全部が硬いのにぐねぐね動いてるし、何より普通の攻撃が効かないみたいだし……あとものすごい変態ばっかりだし、そりゃ普通じゃないよね。
まぁ、
「それで……何でそいつらが襲ってきたわけ?」
「性質上、エレメリアンが活動する為には属性力が必要となるのですが……彼らは自身で属性力を発生させる事ができません。なので他の生命体から奪う他にないのです」
「そうか、それでさっきあいつ……リザドギルディが」
そーじがなんか思い出してる。さっきの戦いの事だな、多分。
―――この星の生きとし生ける属性力を全て手に入れるのだ‼︎
言ってた言ってた。超すごい世迷言をほざいてた。
戦った後だから言えるけど……本当にごめん、そーじ。
あれと比べたらそーじはまだ普通の人間の範疇な気がする。着ぐるみ着たそーじとか思ってまじでごめん。
……まぁとにかく、連中の目的はよぉ〜くわかった。
ある程度同情もでき……うん、やっぱ無理。あれの気持ちを理解するのはまじで無理。
「……あいつらが属性力を狙ったのは、自分達が生き延びる為か」
「奴らの侵略は恐ろしく静かでした。目立った破壊活動もなく、人を害するわけでもなく、目に見えないものを次々に奪われて……気づいた時には、全てが手遅れでした」
そうだっけ? 破壊活動してなかったっけ?
車吹っ飛んだりびる壊れたりして……あぁ、びる壊してたのはそーじだったっけ? よくよく考えてたら、確かに物が壊れてたのは全部余波のせいだったか。
うん、まぁ、人死には出てないか……代わりにそーじの心に深っかい傷を刻んでた気がするけど。それはのーかんなの?
「っていうかさー、要は属性力って生き物の生きる力の一部みたいなものでしょ? もっとこう……家族愛とか友愛とか、もっと強そうなのがあるんじゃないの?」
「そういったものは、ある一定の知的生命体が根本的に有しているものなので、さほど力を発揮する事はありません。あくまで個人が、自らがこれと定めた象徴に対して募らせる想い……それが属性力なんです」
おっぱいはその後「そういう属性力がないわけではありませんが」って付け加えた。あるんだ、そういうの。
線引きが難しいな。よくある夢とか希望とか、そういうのはえれめーら?じゃないってこと? あいかは嫉妬ぱわーで割と頻繁に人間の限界を超えてる気がするけど、それは違うの?
考えてもよくわかんないな……気にすんのやめよ。私、自分の力もよくわかってないし。
「そして、数ある属性力の中でも最強と称される力―――それがツインテール属性なのです」
「俺のこの想いは……決して無駄じゃなかったのか」
おっぱいに称賛されて、そーじがなんか涙ぐんでる。
……ついんてーる好きを理解されなかったのがそんなに苦しかったのかい御主人様。引かれて辛かったのはわかるけど。
「属性力を奪われるのって、そんなに大変な事なの? 好きのベクトルが別に移るだけじゃないの?」
「話はそう簡単ではありません! 一度奪われた属性力は24時間を超えるともう持ち主の所には戻らず、一度属性力を失った人間は半ば廃人のようになってしまうんですよ⁉︎」
「ヤバイじゃん⁉︎」
うへぇ、それは流石に嫌だな……そーじがついんてーるに反応しなくなるようなもんでしょ? 想像できないし、ただただ不気味な生きた屍になりそう。
ぞんびみたいになったそーじなんて見たくないんだけど。
「一見、愛華さんの言う通り目立った被害はないように思われますが……奴らが侵略した世界は悲惨極まりません。誰もが虚ろな心を携え、どこか覇気の無い灰色の世界に成り果てるのです」
……流石になぁ、こんな話聞かされて放ってはおけないよなぁ。
このおっぱい、思ってたより苦労してたんだなぁ。変態でろりこんで痴女だけど。
「私は完全に侵略される寸前で事態に気づき、もはや奴らの魔の手は止められないと悟りました。そして奴らが次に侵攻しようとしている世界……つまりこの地球を探し、せめてここだけは守ろうと決めたのです」
「トゥアールさん……」
「何も取り戻せない、私の虚しい復讐なんですよ……これは」
あいかもそーじも、もう何も言えなくなってた。
最初の印象と違いすぎるんだもん。ぎゃっぷ? が大きすぎてどんな顔すればいいかわかんないよ……最初は完全にそーじを食う気満々なだけにしか見えなかったのに。
「あんたの言いたい事は…………色々突っ込みたいところはあったけど、マジで納得したくないけど、大体わかった。で、とりあえず今一番聞きたい事があるんだけど」
「はい? 他に何かありましたか?」
「そーじが女の子になっちゃった事よ! なんであんな事になる必要があったわけ⁉︎」
あ、その事か。
……うん、ぶっちゃけ女の子になった理由っていうか、おっぱいの目的は割と明らかだと思うんだけど。
一応聞こうか。聞いておこうか、言い訳を。
「…聞いてしまうのですね。これは人に聞かせていい話ではないので、愛華さんには知って欲しくなかったのですが―――」
「早よ言え」
「にゃっ」
「〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜⁉︎」
ざくっ、とあいかに両脇を抱えられた私がおっぱいの顔面に爪を立てる。
すぱっとまっすぐに赤い線が三本走って、声もあげられなくなったおっぱいが床を転げ回る……遊んでないでさっさと言え。
案の定すぐに復活して起き上がったし……本当に頑丈だな、このおっぱい。
「テイルギアで変身すると、幼女になってしまうのは…………私の趣味ですよ‼︎ 悪いですか⁉︎」
「えええええ開き直ったよこの人⁉︎」
ほらやっぱりそんなしょーもない事だった〜〜〜〜〜‼︎
変身したそーじをみてにやにやしてた時点で予想できてたんだよそんなくっだらない理由!
すっごい科学技術の超絶無駄遣いじゃん‼︎ アホか‼︎
「まぁ他にも、幼女の姿でいれば敵を欺ける、注意を引きつけられるという点もありますが、概ね私が理想の姿を願って作り上げました!」
「胸を張るなボケェ‼︎」
「張り手が来た⁉︎」
「なんでその一言だけで終わらせてくれなかったんだ……!」
ほんとにね、真面目に話を続けられないのなんでだろうね。
その無駄に熱い情熱を注ぐ方向が明らかに間違ってるんだよなぁ、このおっぱいは……まぁ、だからこそえれめーらが芽生えたんだろうけど。
……これの延長線上にえれめりあんが生まれるってんだから、いい事なんだか悪い事なんだか。今の所害しか生んでないけど。
「……とりあえず俺がああなる事についてはわかりたくないけどわかった。だけど聞きたい事はもう一つある……全部話してくれ」
すっごい険しい顔で悩んでたそーじが、表情を切り替えておっぱいに向き直った……けど、もう一つ?
えーっと、他になんか聞いてない事とかあったっけ?
「ええ、わかっています……わたしはどちらかというと乱暴な方が好みですので、総二様にはぜひ遠慮なくわたしを組み敷いて、あられもない姿にした上で滾った欲望を叩きつけてんぷらっ⁉︎」
「誰がそんな話をしてんのよ⁉︎」
やっぱこのおっぱいはまぞだよね、自分からあいかに殴られに行ってるよね、そういう癖の持ち主で間違いないよね。実際そーじにそういう種類の交尾を求めてるわけだし。
毎回毎回、このくだりのせいで全然話進まないんだけど……いい加減飽きてきたんだけど。
「あたしが言ってるのはあのお化けみたいなやつよ‼︎ あいつらの敵ならあんたも知ってるんじゃないの⁉︎」
「そうだ! あれも、トゥアールの言ってたテイルギアなんじゃないのか?」
……あー、とうとうそれ聞いちゃうか〜。
それをこのおっぱいに聞くのは無意味だよ、ご主人様。
まじで知らないからね、こいつは。
「あいにくですが、私は彼女の事は何も知りません。あの戦いで初めて力を見せつけられ、総二様と同じく困惑させられている立場です」
「別の……他にテイルギアがあったりとかは?」
「あるにはあります、こちらです。ですが………ほら、総二様のものと色以外全く同じでしょう?」
そう言って、おっぱいがおっぱいの間から腕輪を……今そーじの腕にはまってるのと同じ形をしたものを取り出した。
おぉ、そーじのは赤いけど、これは青だ。
ていうか、ているぎあってもう一個あったんだ……何で?
「何よ、もう一個あったの?」
「はい、ですがこちらは使用する事はできません。使用する資格を持つ者がいないんです」
「……それを動かせるだけのツインテールの属性力の持ち主がいない、って事か?」
そーじが聞くけど、おっぱいは首を横に振って否定した。
じゃ、何で持ってんだ? 使えないのに持ってても仕方ないだろうに。
「相応のツインテール属性の持ち主の存在が確認できました。ですが、その者の人間性はとても味方と捉える事はできませんでした。あまりにも危険、あまりにも野蛮なその者にこの力が渡る危険を考えると……封印する以外に道はありませんでした」
「そんな……俺と同等近い属性力を持っていながら、そこまでどうしようもない悪人だったって事か」
「ふぅん、力はあっても性根が腐ってたわけか。そりゃ確かに残念ね」
「ええ、私もぶっちゃけマジ信じられませんでした。あそこまでおぞましい人間が存在していたなんて」
青い腕輪を間に挟んで、暗い顔になるそーじとおっぱい。
ているぎあを動かせるって事は、それだけそーじみたいについんてーるが好きで、命を懸けてるって事だよね? なのにそんな嫌な奴なのか。
ところでおっぱい、お前それさっきからこの場にいる誰かに向けて言ってない? 私の気の所為か?
「とにかく、私が持ち込んだテイルギアは現状この二つだけです。それに、彼女が使用していたデバイスから感じた属性力は、ツインテール属性ではありませんでした。ゼロではありませんが、大半はまた異なる属性です」
「うん、それは俺も感じた。俺とは違う……でも、強い力を感じた」
……そーじってば、いつの間にか妙な能力を身につけたな。いや、単についんてーるかついんてーるじゃないかを察知してるだけか。
「ツインテールが一番強いって、あんたさっき言ってたじゃない? それに続く属性力を使った道具なんじゃないの?」
「どの属性力であるかは、私も何もわかっていません。少なくとも動力源としているのは確かですが、私の知る技術力ではあんな物を作る事は不可能です。ていうか、デザインからそもそも違いましたし」
「ああ、うん……そういや変な歌とか聞こえてたしね」
……そろそろ用意するか、みんなの注目があの腕輪に集まってる事だし。名残惜しいけど、そろ〜っとそーじの膝からどいて。
んー、どう登場しようかな。
派手に行く? 静かに行って驚かす? ……いっそほらーていすとにやってみようかな?
「そもそも私は、あんな風に中途半端に年齢を重ねるようなものは作りません‼︎ つるぺたでろりろりなのが一番なんです女の子は‼︎」
「戯言を吐くな‼︎」
「地獄の断頭台⁉︎」
うお、あぶなっ。潰されるところだった……こんな狭い部屋でぷろれす技するなよ、あいかってばもー。
むかついたから、なるたけ脅かすやり方で登場してやろう。
「ちらっと聞こえたけど、ニュートン! とか言ってなかった? あいつの巻いてたベルト……っぽい何か」
「ニュートンって……あれだよな、万有引力の法則を発見したっていうアイザック・ニュートン。じゃあ、あれって地球で作られたものなのか?」
「現在のこの世界の技術力を超えている気がしますが……」
ふむふむ、いい感じに話題にあげてくれてるな?
ちょうどいい位置に移動できたし、そろそろやるか。登場のせりふは……あれがいいよな、やっぱり。
それじゃあ、いってみよー。
「じゃあ、一体あの子は何者だったんだ……?」
小さく、訝しみながら呟くそーじ。
その肩に……するりと、手を伸ばし巻きつける。
蛇みたいにしならせながら、ゆっくりゆっくり、そーじの首に絡ませる。
そーじが気付いた時にはもう、遅い。黒い闇の中から伸ばした手でがっちりつかまって、横顔に頬を擦り付ける……あぁ、冷たかった? ぶるって震えちゃって、かわいいね?
目の前であいかとおっぱいが目を見開いて、だんだん恐怖と驚愕ですごい顔になってくる。
「……え?」
何が起こってるのか、呆然としたまま、ぎぎぎ…って壊れた人形みたいにぎこちなく振り向いたそーじに。
私はにっこり笑って、こう語りかける。
「う、ら、め、し、や……♡」
「「「ぎゃああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ⁉︎」」」
どっきり大成功☆ いぇい!