我ら思う、故に我らあり 〜Twintail with GHOST CAT~   作:春風駘蕩

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れっつごー・ざ・ひーろー!

『総二様! 先程の放送は聞きましたか? アルティメギルが出現しました!』

「……あぁ、聞いてたよ。最後の最後のあれさえ聞こえなけりゃ、もっと熱い気持ちで向かえたんだけどな」

 

 すっごいがっくりした顔で、そーじが腕輪を通して聞こえてきたおっぱいに答えてる。

 

 ぶるまって、あれだよね?

 むか〜しのがっこーで使われてたたいそーふくの下のことだよね……女の子が着てたやつ。

 

 ……まともな属性の持ち主って、いないのかなぁ。いないよなぁ、はぁ。

 

「悩んでても仕方ない。いこ、そーじ」

「……っしゃあ! わかった!」

 

 ぱんっ!て自分のほっぺを叩いたそーじが気合を入れ直した。

 ほっといても誰も傷つけられやしないけど、なんか壊されたりはするだろうし、何よりそーじの命であるついんてーるが奪られるしね。

 

 おーし、第二らうんどやっちゃるぞー。

 

『ではこの際です、テイルギアの起動コードをお伝えしておきます』

「ん? 起動コード? そんなの前は使わなかったけど……」

『敵も改めて宣戦布告して来たわけですし、こちらも気を引き締めるつもりできっちり決めていきましょう! コードは───〝テイルオン〟です!!』

 

 なんかあのおっぱい、のりのりだな。何だろ、こないだからひしひしと妙なものを感じるんだよな。

 具体的には、みはると近しい何かが……やめよう、そーじが鬱になる。

 

 そーじも馬鹿正直におっぱいに言われた通りにしようとして…………ちょっと顔を赤らめて動きをぎこちなくさせた。恥ずいなら無理すんな。

 

「て…………テイルオン」

「はぁ……変身!」

 

 そーじだけに恥ずかしい思いさせるのもあれだから、私も思いっきり叫ぶ。

 

 まず人型になって、べるとを腰に出して、眼魂のすいっちを入れてべるとにそーてん! んでもってべるとのればーを思いっきり引っ張って押し込む!

 

開眼・オレ! レッツゴー・覚悟・ゴ・ゴ・ゴ・ゴースト!

 

 あっという間に私の体を水着っぽい服が覆って、上からおれんじ色のぱーかーが覆いかぶさってくる。

 頭にかかったふーどを取っ払って、押し込められてたついんてーるを外に出す。毎回思うんだけど、これどうやって入ってたんだろうな……?

 

 はい、変身完了! いっくぜー!

 

 ……あ、そうだ。この際だからあれも使っちゃうか。

 

「よし、トゥアール! 場所は……」

「ちょい待ち、そー……じゃない、れっど」

 

 走り出そうとしたそーじを止める。名前で呼びかけたけどちょっと我慢。

 昼間にあんだけ騒がれてた中で、この姿のそーじをそーじって呼ぶのはちょっと危なそうだしね……おっぱいが言ってたいまじんちゃふ?とかいうのがあっても、気をつけた方がよさそうだし。

 

 それはそれとして、怪人のところに行くならもっとひーろーらしい登場の仕方があると思うんだよね。

 

「どうせならさ、一緒に()()に乗っていかない?」

「え?」

「───かもん!〝ましん・ごーすとらいかー〟!!」

 

 呆けた顔になるそーじをよそに、私は虚空に向けて()()の名を呼ぶ。

 

 何もない空間がぼや〜っと波打って、そこからあるものが───角の生えた黒い顔みたいなのがついた、一台のばいくが飛び出してくる。

 これぞ、おっちゃんがくれた私の愛機、ましん・ごーすとらいかー!

 

 ……やっべ、使う機会ぜんなかったから埃かぶってるわ。

 

「うわっ、何だこれ!? …まさか、これに乗っていくつもりなのか?」

「せっかくおっちゃんにもらったし、使った方がいいかなーって。まぁぶっちゃけ、この姿の時なら走るか飛んだ方が早いかもだけどね」

「……流石にそれは、あのおじさんが不憫になってくるんだけど」

 

 あいかの顔が哀愁漂ってるけど、気にしない!

 さぁさぁ、とっとと怪人退治に行かないと! 世界のついんてーるを守るんでしょ!?

 

「はい、後ろに乗って! はやくはやく!」

「お、おう……」

 

 そーじの手を引いて、先に座席に座った私の後ろに跨がらせる。

 いやしかし、こうしてみると本当にちっちゃくなっちゃったなそーじってば……そういえば昔はこう、私を自転車の前かごに乗せてお出かけしたりしてたなぁ。

 本当は私の方がずっと年下なのに、お姉ちゃんになったみたいだ。

 

 ……うん、ごめんあいか。

 ちょっと調子に乗ってたのは悪かったから、そんなおっそろしい目で羨ましそうに見つめないで、怖いから。

 

「…………今更だけどお前これ、無免許運転じゃ」

「れっつごー!!」

「おわ───────────っ!?」

 

 そーじがなんか呟いてたけど、私は気にせずましんを走らせる。

 発進! いざ戦場へぇぇぇぇぇ!!!

 

 うおーっ! 風が気持ちいーっ!!

 走るよりはたしかに早いな! ばいくが好きな人の気持ちがわかるかもしれない。

 

「おまっ……ちょっ、飛ばしてるけど場所はわかってるのかよ!?」

「大丈夫大丈夫、私の勘を信じろ!」

「勘かよ!?」

 

 うそうそ、冗談だよ冗談。

 私の背中にしがみついてるそーじがちょっと緊張してるっぽいから、ほぐしてやろうと思ったんだよあっはっは。

 

「あいつらの匂いも気配も全部覚えてる! 現れたあの亀の気配が、こっちからびんびんに感じられるんだ!」

『間違いありません。そらさんの言う通り、タトルギルディはそのまままっすぐ向かった先の女子校にいます!』

「わ、わかった! ……ん? 女子校?」

『どうやら、国内でも有数のブルマが生き残っている学校のようですね』

「そういう諜報能力はもっと別の箇所で活かせよあいつらっ!!」

「今更だよ、れっど」

 

 ていうか、疑問を抱くことすらまじで無意味だよ………………あいつら種族的にそうなんだもん。まともな奴なんてそもそもいるわけがない。

 わかってた、わかってたよ……くそったれ。

 

「…嘆くのは後にして、飛ばすよ!!」

「あぁ、もうっ!!」

 

 はんどるを握って、ばいくの速度を上げる私の後ろで、そーじがばりばり頭をかきむしる音がする。

 大好きなついんてーるなんだから、髪は大事にしなきゃだめだよ、そーじ。

 

 そうこうしているうちに、怪人の気配が漂ってくる件のじょしこーの近くに辿り着いた。

 校庭の周りのふぇんすの向こうを除いてみれば……いたいた。でっかい亀男が体育中っぽい女の子達に迫ってるのが見えた。

 

「見えた、あいつだ!」

「───ふははははは!! 見事、見事だ! 滅びの道を歩むこの世界にて輝く一筋の光! まさに秘宝よ!! あの戦士達にも必ずやこの装いが似合うに違いない!!」

 

 うっわ、側から見るとまじで気持ち悪っ!

 着ぐるみ着たおじさんがいたいけな女の子に迫ってるようにしか見えないんだけどなにこれ。

 

 ていうか、こいつ、私達にぶるま着せる妄想してる?

 ……きっついなぁ、わかってたけど。

 

「我らが女神に相見える前に、その聖布を確と堪能させてもらうとしよう!!」

「飛ぶよ、そーじ! 舌噛まないように気をつけて!」

 

 ぐっ、と私のお腹に回したそーじの手に力がこもるのを感じながら、私はばいくのはんどるを捻ってさらに加速する。

 授業中だから閉じられてる校門を飛び越えて、そのまま校庭にいる亀男のすぐ近くまでばいくを走らせる。

 

「そうはさせないぞ、アルティメギル!」

「むぅ…! 来たな、テイルレッド! テイルゴースト!」

 

 ききっ、とばいくを停めて、座席に乗ったままそーじと一緒に亀男を睨む。

 おたのしみ?の邪魔した感じになったから怒るかと思ったけど、亀男はむしろ待ってたとばかりに振り向いて、でっかくて硬そうな体を見せつけてくる。

 

 それを見たそーじもやる気でばいくを降りて、剣を取り出そうとするけど……ちょーっと待っててほしいかな?

 

「よし、さっさと片付けるぞ───ってうおっ! なんで止めるんだよ!?」

「まーまーそう焦らずに」

 

 私の前に出ようとしたそーじの肩を引いて後ろに下がらせる。あ、足手纏いとかそういうんじゃないよ?

 

 ただ、ひーろーやるならもっと目立たせたいって思っちゃうのが人なわけで……猫だけど。

 

「どうせやるなら、もっとど派手にやろうよ……というわけで、さらにも一つかもん! 〝きゃぷてんごーすと〟!!」

 

 私はばいくに跨ったまま、空に向かって指をさして叫ぶ。

 

 すると、ごーすとらいかーが出てきた時みたいに何もない空間がぐにゃっと歪んで、そこから真っ黒で大きな塊がずるずると抜け出してくる。

 

 それは見た目は海賊船。

 だけど船首に顔みたいな割れ目が入ってて、そんで左右に緑色のとかげみたいな腕が生えてる。

 

 これがおっちゃんにもらったもう一つの乗り物……乗り物だよね? の〝きゃぷてんごーすと〟だ!!

 

「なっ……何だこいつはぁ!?」

「砲撃よーい、撃てぇっ!」

「ぐわああああ!?」

 

 きゃぷてんごーすとは空を進みながら、鼻先の大砲から砲弾をぶっ放す。どかんっ!てすっごい爆音が鳴って思わず耳を塞いじゃったけど、放たれた砲弾は見事に亀男に当たってでっかい体を吹っ飛ばした。

 

 うおー、すっげ。

 思ってたより威力すごくてびびった。

 

「ぐぬ…! おのれ小賢しい!」

「…………色々あるんだなぁ、お前のサポートアイテムって」

「今日初めて使ったんだけどね。もう一発、ふぁいやー!」

「は? ちょ、ちょっと待て連続はやめがばぁあああ!?」

 

 今度はあらかじめ耳を伏せてから、もう一発どかんと亀男を砲撃する。

 なんか悲鳴が聞こえたけどいいよね? 倒すべき的なんだから遠慮とか別にいいよね? 答えは聞かないけど!

 

 このままやっつけちゃおうかな。いやでもこんな形で勝ってもひーろーっぽくはないよなぁ……こないだみたいにきったはったした方がそれっぽいかも。

 よし、この際だし、あれのお披露目もしちゃおうか。

 

「そんじゃあさらにもひとつ、ど派手なのを見せてやろう!」

 

 私はそう言って、ばいくのはんどるをぐりっと捻って走らせる。ぶおんぶおんと音を響かせながら一度後ろに走らせてから反転して、すぐに加速させる。

 その勢いを利用して、ばいくと一緒にきゃぷてんごーすとの上に飛び乗らせる。

 

 すると、ましん・ごーすとらいかーときゃぷてんごーすとが変形して、一つに合体する!

 

 きゃぷてんごーすとの船体の中から大きな顔と後ろ足が飛び出して、でっかいとかげに……緑色のいぐあなに変身した!!

 ずしん、と地面に降り立って、でっかいとかげが敵の亀男を睨みつける。

 

「れっつごー・〝いぐあなごーすとらいかー〟!!!」

「ギィ───!!」

 

 完成したいぐあなごーすとらいかーの背中ではんどるを手綱みたいに引っ張って、雄叫びをあげる彼を操る。

 いぐあなごーすとらいかーはどしどしと見た目に似合わない素早い動きで走り出して、亀男に向かう。

 

 相手が驚きで動けないでいる間に、いぐあなの口がぱかっと開いて、亀男の頭をばくっとくわえてぶんぶんと振り回した。

 

「何でイグアナ!?」

「ぐああああああああああああ待て待て待て待て待ってくれ! これは流石に想定外すぎるぅおおおおおおおおおおおおおおお!!?」

 

 そーじがびっくりした声をあげる前で、亀男もくわえられて振り回されたまま悲鳴をあげてる。口を外そうとしてるみたいだけど、踏ん張れもしない状態じゃまぁ無理だね。

 

 ばたばた足だけがもがいてるのを見上げながら、私ははんどるを思いっきり引っ張った。

 

「ていやー!」

「ぐわああああああああああ!?」

 

 いぐあなごーすとらいかーは思いっきり顔を上げながら口を開けて、亀男を空高くにぶん投げる。

 亀男はぐるぐる回転しながら、青空に向かって吹っ飛んで……あ、重いからすぐに落ちてきた。

 

 ちょうど私たちのすぐ上に落ちてきそうだな……よぉし。

 

「いくよ、れっど! 一緒に決めよう!」

「えっ。お、おぅ……いいのかな、これで」

 

 ぽかーんとしたままのそーじに呼びかけて、私はいぐあなごーすとらいかーの背中の上に立って、べるとのればーを引っ張る。

 そーじはなんか渋ってる感じだったけど、すぐに気持ちを切り替えたのか、その場できっと表情を引き締めた。

 

 それを横目に、私は胸の前で指を三角形に組んで、気合を高める。そのうち全身からおれんじ色の光が漏れ出て、炎みたいに揺れる。

 集中を切らさないようにしながら、私はればーをもう一度べるとの中に押し込んだ。

 

大開眼! オレ! オメガドライブ!

完全解放(ブレイクレリーズ)!」

 

 私の全身の炎が、私の右足に集まっていく。

 そーじの方でも、足についた鎧ががしゃっと変形して炎が噴き出して、纏わせている。

 

 ふわっ、と私は宙に浮いて、そーじは腰についたろけっとみたいな機械からも激しい炎を噴き出させて、空中に向かって飛び上がる。

 そして二人で並んで空を飛んで、亀男の土手っ腹に同時に渾身の飛び蹴りを叩き込む!!

 

「ストライク・ブレイザ──────────────────!!!」

「ぐわああああああああああああああああああああああああああ!!!」

 

 私達の一撃を受けた亀男は、身体中にひび割れを刻まれながらさらに空高くへ吹き飛ぶ。

 ひび割れの中から眩しい光が漏れ出て、ばちばちって火花がいくつも飛び散ってて、そして───。

 

「もっと……もっとブルマを……ブルマァァァァァァァァァァァァァ!!!」

 

 どかーん、と爆発が起きて、亀男が跡形もなく消え去る……不謹慎かもしれないけど、なんか言いたくなったから言わせて。たーまやー。

 

 しばらくの間、爆発音の余韻が響き渡っていたけど、それが止むと、私の手元に一つ、青い宝石みたいなのが落ちてきた。

 これは、おっぱいが言ってたえれめーらおーぶとかいうやつだっけ。

 

「はい、そーじ」

「おう!」

 

 えれめーらおーぶをそーじに渡すと、そーじの左手の機械が開いておーぶが吸い込まれていく。

 

 よし、一件落着!

 二度目の戦いは、まーまー手際よく終わったんじゃないかな。あの鬱陶しいもけもけも連れてきてなかったみたいだし……いや、呼ばせる前に倒しちゃったからかな。

 大丈夫? 出るたいみんぐ逃しておろおろしてるあいつらとかいないよね? 別にいいよね?

 

「はぁ……なんとか無事片付いたな。これでこの先もなんとかやっていけそうだ」

「ん! じゃあ、帰ろっか」

 

 敵がいなくなった今、長居する理由はないしね。

 ……ぶっちゃけ昨日今日で色々ありすぎてもう疲れちゃった。帰って寝たい。

 

 なんともいえない疲労感を抱えて、私達が戻ろうとした時───。

 

 

「「「「「きゃあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!」」」」」

 

 

 あたりからものすごい悲鳴……え、歓声? が轟いて、思わずびくっと震える。耳も尻尾もぶわってなった。

 

 え、なに? なに? 誰!?

 あ、亀男に迫られてたがっこーの女の子達! すっごいきらきらした目で私とそーじに向かって走ってきてる!?

 

「ヤダ―ウソでしょ動画に出てた変身ヒロインじゃん本物~~~!?」

「近くで見るとマジカワイイ何この子!!」

「ねね、一緒に写メ撮ろ撮ってお願いカワイイ~~!!!」

「一生のお願いです!! お姉さまと呼ばせてください!!!」

「何言ってんのよ妹に決まってんでしょ!!」

「おねえちゃんって呼んで! 後生だからおねえちゃんって呼んで肩に首こてんってして後生だから!!」

「……は、え、ちょ、ちょっと待っ…うわぁぁぁ!?」

 

 大勢の女の子達に囲まれて、慌てふためくそーじ。

 あー、これはあれか。てれびに出てた謎のひーろー……ひろいんか、が目の前に現れててんしょんが爆上がりになっちゃった感じか。

 気持ち的には有名人に会った……いや、もう漫画とかあにめの人気きゃらが現実に目の前に現れた的な興奮に突き動かされてるんだろうな。

 

 なるほどなるほど……よし。

 

「ゴ、ゴースト~! 助け―――」

オヤスミー

 

 私はその場から、すーっと姿を消した。いや、比喩じゃなくて本当に周りから見えなくなった。……そーじをおいて。

 

「いや、一人で勝手に帰んな~~~~~~~~~~~~!!!」

 

 ふぁんさは任せたよ、ているれっど。

 ……だって怖かったんだもん。

 

<◉>

 

 ちゅんちゅん、店の外ですずめが鳴いている。

 今朝も快晴、換気で開けた窓から気持ちのいい風が吹いてくる。

 

 亀男の戦いから一晩跨いで、次の日の朝。

 大事件が発生した全世界だけど、今のところ現れた怪人はあの亀男一体だけ。ここまで次の奴が現れたとは聞いてないし、いつも通りの平和な時間が流れている。

 

 私もいつもと同じように窓辺でご~ろごろ。

 みはるがご飯を用意してくれるのをのんびり待つ、猫ならではのぐ~たららいふ。

 

 ああ……今日もきっと、いい日にな―――

 

 

 

「うぎゃああああああああああああああああああああああ!!!」

 

 

 

 ……………………うん、現実逃避はやめようか。

 

 ちらっと視線を横に向ければ、てれびの前でがっくり膝をついて項垂れてるそーじの姿が。

 画面に映ってるのは……昨日行ったじょしこーだな。

 そこにばっちり私とそーじが亀男と戦う様子がほーどーされてるわけなんだけど。

 

 

『わ~~~~~ん帰るからどいて~~~~~~!!!』

 

 

 なんということでしょう。

 勇ましく怪人と戦ってじょしこーに平和を取り戻した正義のひーろーが…………なんかヤバい顔をしたじょしこーせー達に囲まれて大泣きしているではありませんか。

 

 うっわ……私が逃げた後ってあんなことになってたのか。

 うら若きぶるまの乙女達が目をぎらっぎらに光らせて、何人かは涎を垂らして、ちっちゃいそーじを抱きしめたりほおずりしたりおっぱいの中に埋めたり……うわぁ、うわぁ。

 

「そーじ……アンタ幼女の姿をいい事にあんな事……」

「望んであんなマネするわけないだろ!! ツインテールの子もいなかったし!!」

「あっちにもおっぱい……こっちにもおっぱい……何なのよ、貧乳が一人もいないじゃない。ふざけんじゃないわよ!!」

 

 一緒に朝ごはん食べに来たあいかさん、気にするところはそこなのかな?

 肉食獣の顔をして幼女を取り囲む奴らだよ? 幼女にお姉さまとか呼ばせようとするような奴らだよ? 女にかうんとしていいの?

 

 ……この世界にそーじの味方っていないのかな。

 

【時分、あの幼女マジリスペクトっス】

 

 おい誰だあのぐらさんどれっどへあー。じょしこーにいたかあんなん。

 さくらか? これがさくらってやつか? おいがっつり嘘情報流してどうすんだよてれび局。

 

「大人気ねぇ~(テイルレッド)ちゃん♪」

「うるせぇよ!!! どうなってんだ!? 変身したら男にも女にもモテちまう!!!」

 

 みはる……楽しそーだねあんた、自分の事じゃないからって。

 一回あの変態集団に囲まれてみ? 泣くよ? あんたでも絶対泣くよ?

 

「総二様みてください! テイルレッドたんまとめブログにまとめWiki、ファンサイトや考察ページ! ネットでも大盛り上がりですよ!!」

「2回しか変身してないのに何なんだそのラインナップはああああああああああああああああ!!!」

 

 いかん、そーじの精神が荒れてきた。そろそろ気を逸らさせてやらないと精神がいかれそうだ。

 

 頭を抱えて項垂れるそーじの方にてちてち寄ってって、にくきゅーで髪の毛をぽふぽふ叩いてやる。

 おら、お腹貸してやるから存分に泣け。存分にもふるがいいぞ。

 

「…………気ぃ遣ってるつもりなんだろうけど、昨日俺を置き去りにして生贄にした事忘れたわけじゃないからな」

「あ、やっべ」

 

 うつぶせになったままじろりと見つめてくるそーじに思わず目を背けた。やっべー、完全に根に持っておられる。

 

 ごめんって。そーじには見えてなかっただろうけど、あの時私のしっぽぶわってめっちゃくちゃ逆立ってたんだよ? 本気でびびってたんだよ。

 わかったよ……今度から逃げる時はちゃんと一緒に引きずってってやるから。

 

【警察は今後も引き続き、この少女達に関する情報を調べていく方針で―――】

「なんでだよ!? ほっとけよ!? アルティメギルの方を調べろよ!?」

 

 そーじ、いらついてんなぁ……なんか別の話題を、話題に変えないと。

 

 えーっと、えーっと…………………………あ、そーだ。

 

「ねぇおっぱい。ぶっちゃけた話なんだけど、私とそーじっていつまで戦えばいいの? あいつら全滅するまで?」

「おっぱいって…あなた私のこといつもそんな風に呼んでたんですか」

 

 だっておめーの特徴ってそれじゃん。

 で? どーなの?

 

「そうよ、アルティメギルがどのくらいの規模かわからないけど、その全部をそーじとそらがやっつけなきゃいけないわけ?」

「アルティメギルの正確な戦力を把握し切れているわけではありませんが……おそらく百万はくだらない巨大勢力です。とはいえ、彼らが侵攻している世界はここ地球だけではありませんから、全体と比較すればそこまでの数にはならないはずです」

「百万って………ウソでしょ」

「他の世界…………まさか、同時にいくつもの世界を襲ってるってことか!?」

 

 どんだけいんだよ、あの変態集団……そーじの精神が死ぬ前に片がつけばいっかと思ってたけど、それじゃいつまで戦い続けなきゃなのか全然わかんないじゃん。

 

「彼らの生命線が属性力である以上、大幅に戦力が低下して他の世界の侵攻に影響が出るのは彼らとしても避けたい事態でしょう。私達がこのまま抵抗を続け、属性力の回収が不可能と判断されれば自然と撤退していくはずです」

 

 ふーん……地道にやってくしかないってことか。

 みはるのくれた朝ごはんをはぐはぐ食べながら……私はふと、昨日の亀男と、おととい出てきたとかげ男のことを思い出す。

 

 変身も戦いも初めてだったし、向こうが変態すぎてびびりまくって苦戦してたけど、そーじだけでじゅうぶん倒せた。

 一体一体ならなんとでもなる……でもああいうのが他にもいっぱいいるんならこの先も余裕で倒せるとは思えない。怪人一体ともけもけがいっぱい……じゃなくて、怪人がいっぱい、もけもけはもっといっぱいだったら、数の暴力でぼっこぼこにやられちゃうかもしれない。

 

 

 

 なのに、亀男は一人で来てた。

 …なんであいつらは、強いやつらをいっぺんに送ってこなかったんだろう?

 

<◉>

 

「ふわぁ……あ〜あ」

 

 おっきなあくびをしながら、よそのお家の屋根の上をてちてち歩く。

 やっぱり今日もいい天気、お散歩日和だ。

 

 昨日の夜はすごかった。

 おっぱいが夜通し作ってたひみつきちが完成してみんなで見に行ったんだけど……うん、すごかった。

 

 なんでかお店の冷蔵庫が入り口になってて、無駄に長いえれべーたーでどこまで行くのってくらいに深くまで降りた先には、昔そーじが観てたひーろー番組みたいなところができてた。

 みはるは勿論、そーじもだいこーふんしてたし、あいかもぶつぶつ文句ばっかり言ってたけどちらちら興味ある感じに見てたし。

 

 私とそーじの戦いをめいっぱいさぽーとできる道具がいっぱいあるみたいだった。

 

 ただ……なんか、途中からそーじの様子が変だったのが気になるんだよね。

 基地の壁をじっと見つめてたと思ったら、おっぱいに向かってぐるって振り向いて、かと思えば今度はあいかを凝視し出して……なんだったんだろ?

 

 あんち・あいか・なんたらとかぼそって呟いてたけど…………英語はよくわかんないんだよなぁ。

 

「…今日は平和だねぇ」

 

 あれから、何回かしゅつどーした。

 基地の道具で地球のどこにあいつらが現れても一瞬で駆けつけられるようになってるらしくて、私とそーじは文字通り世界中を駆け回った。

 

 生まれて初めての海外旅行がまさか異世界産謎てくのろじーでやることになるとは……あめりかやふらんすが1秒も経たずに目の前だったよ。

 

 ただ感動はしなかったな、一瞬すぎてなんの感慨も浮かばなかった。

 どこでもどあじゃ風情がないってぼやく……あの、あれ、西部劇の世界に生まれてたら天下とってためがねの子の気持ちがよくわかった。

 

 そんでもってあいつらと戦ったわけなんだけどさ……そりゃあもう、どいつもこいつも濃かったわ。

 

 いやまぁ、強かったんだよ。

 ふらみんご男の足技とかさ、へび男の拘束技とかさ、水を操って弾丸みたいに発射してくるわに男とかさ、すごい攻撃してきてたんだよ?

 

 たださぁ……なんでみんな揃いも揃って私とそーじになんか着せようとしてくんの?

 

 何? 《艶布(たいつ)》とか《首垂(ねくたい)》とか《白肌着(しゃつ)》とか、なんで全員目をばっきばきにして鼻息ふんふんさせてにじり寄ってくるのよ。

 

『これを着てくれ…! そして踏んでくれ…!!』

『厳しめの口調で叱責を……!!』

『濡れ透けェェエ……!!!』

 

 怖ぇーよ。そーじも途中で泣いてたよ。泣きながらぐらんどぶれいざーしてたよ、たまにすとらいくぶれいざーしてたよ、やけくそみたいに。

 

 なんでそんなんが好きなの? それ見て何が満たされんの?

 …………気にする方がおかしいのかな。なんも考えずにただ無心に怪人ぶっ飛ばしてた方がいいのかな。

 

 まぁそんなこんなでそーじと一緒に忙しい日々を過ごしてたわけなんだけど……今日の私は自由にお散歩中。

 

 変態を相手にして荒んだ心を癒すには、のんびりゆったり好きなことするのが一番だよ……へーじつのそーじ達にはがっこーがあるから難しいかもだけど。

 ここ最近はほぼ毎日しゅつどーしっぱなしだし、たまには息抜きした方がいいよね。

 

「は〜〜〜今日はなんもしたくな〜〜〜〜〜い。このまま何事もなくだらっと過ごせますように───」

 

 

 

 

 

「ふはははははは─────我こそは《暖着(セーター)》を愛し《暖着(セーター)》に愛されし戦士シープギルディ!! この世に遍く温もりを我が手中に収めてくれようぞォ!!!」

 

 

 

 

 

 ……ぐっばい、きゅーじつ。

 

 ずーんと石みたいに重くなった心を引きずって、寝そべってた屋根の上から声がした方を見やる。

 おーおー、悲鳴となんかが派手にぶっ壊れる音がしてらぁ、にゃははは。

 

 のっしのっしと大通りを歩いてるのは……なんかもこもこした怪人だ。でっかい渦巻きみたいな角も生えてるし、いかにも強そう…………ん?

 あれ、よく見たらあのもこもこ全部毛皮じゃない? 全体的にでかく見えるけど実はそんなでもないのかも?

 

「まったくもー、今日はのんびりできるかなーって思ったのに………そーじ来るよね?」

 

 別に私だけでも戦えるからいいんだけど………………その、えっと、ひとりであの変態を相手にするのは、ちょっと、あれかなって。

 

「まだかなー、そーじ。遅いなぁ……あのへんてこ機械で一瞬で来れるだろうに何やってんだろ? あいかがぶっ壊して来れないとか?」

 

 なんとか向こうの状況が確認できればなぁ………あのおっぱいになんかこう、けーたいとかすまほとか、連絡できるものでも作ってもらっときゃよかったなぁ。

 

 こうしてる間にもあのもこもこ男は街の人を追い回してるし……本当に行かなきゃ駄目ぇ?

 

「む〜…………ん?」

 

 出るべきか待つべきか、私がうんうん悩んでいた時だった。

 

 空をなんか……緑色の鳥が飛んでる。

 なにあれ、からす? とんび? にしては首が長いし……白鳥、は緑じゃないし。

 

 とか思ってたら、その緑の鳥は空でくるっと旋回した後、ものすごい勢いで急降下してきた。ね、狙いは私か!?

 

「にゃっ、にゃんだお前!? やんのかこら…………ん?」

 

 思わず身構えた私だったけど、緑の鳥は寸前ですぴーどを落として目の前で停止する。

 

 そんで……なんか、変形した。首が取れて、翼が折りたたまれて、なんか昔の電話みたいな形になってからごとって落ちてきた。

 え、何これ。

 

「ん〜? …あ、あぁ! もしかしてこれ、おっちゃんのぷれぜんとかな? またなんか送ってくれたんだ」

 

 多分そうだ。っていうか、それしかないわ。

 おっちゃんってばもしかして私のこと見張ってんのかな? こないだも眼魂集めてないことにちょっと怒ってたし……このぷれぜんとも「さっさと探しに行け!」って催促だったりすんのかな?

 

「まーいいや。とりあえずそーじ達に電話電話」

 

 えーっと、うちの番号はー…………受話器を外して下に置いて、だいやるをじーこじーこと。

 

 ぷるるるる、ぷるるるる……がちゃ。

 

【はい、アドレンシェンツァです】

「あ、みはるー? 私ー」

【え!? そらちゃん!? 電話なんてどこから!?】

 

 お、今日はみはる、お店にいた。たまにいなくなるから大丈夫かなって思ってたけどよかった〜。

 

「仙人のおっちゃんがくれたの。そーじ達いる? あるてぃめぎる出たのに全然来ないんだけど」

【そらちゃん、怪人の近くにいるの? 実はね、どうやら今回はアルティメギルが二箇所同時に現れたみたいで、総ちゃんはもう一箇所に出動してるのよ】

 

 うへ、今まで一体ずつだったくせに? どうりでいつまで待っても来ないわけだ。

 ん〜、私とそーじを分断してかたっぽずつ倒してく作戦かな? 向こうも多少は本気になったってことかな?

 

「そっちのはすぐに終わりそう? 私、そーじいないんなら戦いたくないんだけど」

「それがね……」

 

 

 

 

 

【うわああああああああああああああッ!!! うぐぁ……ァア!! やめ…やめろ!! やめろおおおおお!!! そんな慈愛に満ちた目で俺を見つめながら踊るんじゃねぇええええええええ!!!!!】

 

 

 

 

 

「何があったあああああああああああああああああああああああああああああああ!!?」

 

 びっくりした。毛皮が全部ぼわってなった。

 え、なに、このもんのすごい絶叫。そーじ? そーじのだよねこれ。

 

「みはる! みはる! ちょっとあいかかおっぱいに替わって!」

【はーい。愛香ちゃん、そらちゃんから電話よ】

【え、そらから? ……も、もしもし?】

 

 すぐにあいかの声が聞こえてきた。みはる、店の電話どこに置いてたんだろ。

 

「もしもーし、そっち今どーなってんの?」

【あんた電話なんてどーやって…………いや、そんなことより! 大変なのよそら! これまでとはレベルが段違いの変態が現れたのよ!! そいつの属性力のせいでそーじってば全然戦いになってないの!! もう一体アルティメギルが現れたっていうのに……そら! あんた今どこにいんのよ!?】

「そのもう一体がいる近くなんだよねぇ」

【マジで!? そんな偶然ある!?】

 

 あるんだよこれが、私が今一番信じられないっつーか、あって欲しくなかったんだけど。

 

「しょーじき私もひとりで変態と戦うのやだからそーじを待ってたんだけど…………はぁ、やっぱ私だけで行くっきゃないのかぁ」

【そりゃ嫌なのは私も同感だけど……そっちはそっちでなんとかやってよ!】

「簡単に言うなよぉ……あ〜〜〜〜もう! わかったよ!!」

 

 はぁ…やだなぁ、行きたくないなぁ。

 でも行かないと街のみんなが………ってか、ついんてーるが大変だしなぁ。

 

 そうなったらそーじが悲しむ。それはもっとやだなぁ。

 

「ふはははははははは───────!!!」

「はああああああああああぁ………………はいはいわかったわかった。今から行くってば」

 

 さっきからうるせぇな、あのもこもこ。待ってんの? 私のこと待ってんの?

 ちょっと待ってろやこら、準備とかあるんだから。

 

アーイ! バッチリミナー! バッチリミナー!

「へんしん〜」

開眼・オレ! レッツゴー・覚悟・ゴ・ゴ・ゴ・ゴースト!

 

 そんじゃまぁ嫌々だけど……行くかぁ。

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