我ら思う、故に我らあり 〜Twintail with GHOST CAT~ 作:春風駘蕩
「ぃゆけェェェェい!! アルティロイド達よォォォ!! ツゥインテェェルの似合う者達を捕らえるのだァ!! すォしてェ!! 優しき温もりにて身も心も包むゥ我が正義《
なんかすっごいしっぶい声の羊男の命令で、もけもけ達がもけもけ言いながら飛び出し、街の人達を捕まえていく。
探してもそんなにいないんじゃ……って思ったけど結構いるな!? ちっさい女の子以外に結構年上の子も思いのほかついんてーるにしてる。
そんで見つけて捕まえてきたついんてーるの子達に……もけもけはどっかから持ってきたもっこもこのせーたーを着せ始めた。
あの、それ、結構がちの冬用せーたーじゃない? 今、春だよ? もうだいぶあったかいよ? 今それ着たらあっついよ?
「ン願わくば強制されることなく、自らの意思で冷たき風に抗いて纏いし《
……せっかく決めた覚悟がどんどん冷え切ってくんだけど、どうしてくれんの?
あー、もー。
あー……………………………………………………はぁ、いくっきゃないかぁ。
「とうっ」
「ヌゥッ!?」
すたっ、と我が物顔で前進する羊男ともけもけ達の前にわざと大きな音を立てて降り立つ。すると羊男は途端に進むのをやめて、もけもけ達もその場で動きを止めた。
女の子達は〜……よし、まだ無事だな。あのでっかい輪っかはまだ通されてないっぽい。
奪われないにこしたことはないし、さくっと倒しちゃいますか。
「ゴーストたんだ! 本物だ!!」
「今日はなんかアンニュイだぞ!?」
「だがその表情も…………イイ!!」
そりゃまぁ嫌々戦いに来てるからね。
ってか、毎回毎回ぎゃらりーが多いなぁ…………こっちとしては危ないんだからさっさと逃げてほしいのになんでそうしてくれないのやら。
私とそーじが出てくるといつもこうだよ……なんならわざわざ私達見たさに出てくる奴らもいるし。
「ゥ現れたなテイルゴースト! ゥ我こそは《
「またこれ暑っ苦しいやつが………見た目といい押し付けてるものといい、季節をがん無視しすぎじゃない?」
「然りぃ!! 《
…………聞いといてなんだけど、ごめん。そこまで熱烈に話せとは言ってない。
いや、あんたそんなんでこの時期暑くないのって軽い気持ちで聞きたかっただけなんだけど。せーたーの気持ちの代弁とか誰も頼んでないんだけど。
「しかぁぁぁし!! 故にこそ人は惹かれるゥ!! フワッフワにしてむぉっこむぉこの衣に包まれし
……私は何にも言えなかった。
すっごい暑苦しさとしっぶいいい声で妄言をのたまう羊男に、それと周りでなんか共感してるっぽい人間の男達がうんうん頷いてるっていうわけわかんない状況にほとんど意識が飛んでいた。
「さぁ…………貴様も着るのだ、ゥ我が魂《
そーじ、助けて。全然話が通じない。
目を血走らせてにじり寄ってくる羊男が怖くて仕方ない。
なんなの? なんなのこいつのこの熱意、こいつのこの圧。
こいつの周りだけ地球温暖化が加速してない? 鼻息だけじゃなくて全身から湯気たってない? 空気揺らいでない?
今すぐ逃げたいのに、いつの間にか周りにもけもけ達が陣形組んでて出られそうにない……やめて、ほんと勘弁して。
帰らせて、私をお家に。
「すぁあ着るのだ《
……ひとりで出撃してるからかなぁ、きっついわぁ。
割とそーじの方が狙われる確率高かったからかもなぁ、私ひとりで
ああ、ご主人、あんたも今まさにこんな気持ちになってんのかい? 自分の欲望を全開にして圧迫してくるこの化け物に迫られて恐怖してるのかい?
怖いよね、こんなんにひとりで立ち向かうってめっちゃ辛いよね、逃げたいよね、泣きたいよね。私もだよ。
あれ、なんだろう、目から熱いものが……………………いや、これ溢れてくるのは目からじゃないな。
お腹の奥からふつふつと湧いてきてるわ。
「さぁ、ゥ我に身を委ねるの───」
【ガンガンセイバー!】
「おらぁあ!!!」
即座に手元に呼び出したぶっとい剣で、羊男の持っていたせーたーを真っ二つにぶった斬る。勢いあまって地面のあすふぁるとに刃が食い込んで割っちゃったけど、ぶっちゃけどーでもいい。
それより羊男が後ろに飛び退いたのが腹立つ、当たれよ。
「ぬぅあああああああ!!! ゥ我が魂をよくもォォォォォォォォォ!!!」
「うっさいわ!! 私はあんた専用のまねきんじゃないんだよ!! 好き勝手ふざけんのはあんたの頭の中だけにしとけっての!!」
変態から身を守ることの何が悪いんだ、逆ぎれすんなぼけ!!
がんがんせいばーをぶん回して威嚇すると、ぼろ布になったせーたーを一体のもけもけに預けた羊男がぎろっとこっちを睨んできた。
よーやく
「ぃやはり相容れぬか、ツゥインテールを守りし戦士よ!! ならばゥ我は我の職務を全うするのみ!!」
「御託はいいからかかってきな!」
「ならば情け容赦はせぬぞ!!! ぬぅおおおおおおおおお!!!」
どかっ、どかっと猛牛みたいにその場で地面を蹴り出した羊男が、次の瞬間ものすごい勢いで突っ込んでくる。
背中にぞくっと寒気が走って、慌てて体をのけぞらせる。そしたらさっきまで私の顔があったところを羊男の拳がとんでもない速さで通り抜けてった。
はっや!!
ぼっ! って音したよ!? ぼっ! って!!
「おおぉぉおおらぁぁぁああああ!!!」
「うにゃっ……とぉ!!」
どんどん拳を突き出してくる羊男。でっかい体からは想像できないくらいに速くて、見た目通りの重い一撃が何発も襲いかかってくる。
「よっ、はっ、ほっ!」
ただ、避けるのは簡単だった。
ほら、私って
あと単純に私猫だからどーたいしりょくいいし。
ただ周りの被害がすごいことになってた。ごっついぱんちを繰り出してくるたびに地面がばっきばきになっていくし……これ、私が直さなきゃ駄目とかないよね?
反撃の方法も今のところなさそうだし………どーしたもんかな、これ。
「むぉおおおおおおおおおおおお!!!」
「おーにさーんこーちら、てーのなーるほーうへー♪」
ん〜〜……適当に煽って体力切れでも狙ってみようかな? さっきのやりとりの感じだと短気っぽいし結構引っかかるかも。
そんで息が切れ始めたら隙を見て土手っ腹に強烈なのを食らわせれば───
……あ、あれ?
なんかこいつ、体からばちばち音が…………ってか、めちゃくちゃ激しい電流出てきてない!?
「ンンンンンンンン──────!!! 滾ってきたずォオオ!!! ぶるァあああああああああああああああああ!!!!!」
ばりばりばりばりっ!!!
いきなりくわっと目を見開いた羊男の体から閃光がほとばしって、街中のあちこちにばらまかれ出した。
「ふぎゃ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜っ!!? ちょっ、まっ、危にゃあああああああ!!?」
びっっっっっくりした!!
何こいつ!? もこもこぼでぃで暴れまくって電気起こしたの!?
こいつ……普通に強っ!?
言動とか正義とか信念とか変態なのに普通に強っ!?
「受け止めるがいい……ゥ我が
うわああなんかばちばちって音がもっと激しくなってきた!
もこもこぼでぃから飛び出た電流が辺りに伸びて棘みたいに突き刺さってく。電柱とか電灯がぼんって音立てて壊れてくしこいつまじで手強い!?
さっさと倒さないとまずい……だけど電撃が激しすぎて近づけない!
ってかこいつら! 人間は傷つけないとか言ってたけど余波で思いっきり巻き込みかけてんだろが!! いや、危ないのに近づくぎゃらりーも悪いけど!!
「! そうだ…………あのもこもこで電気を起こしてるなら、全部刈り取っちゃえばもう出せなくなるんじゃ!?」
でも電撃で近づけないし……思いついた、にゅーとんの力で武器だけ飛ばして切っちゃえばいい!
そうと決まったらさっそく───ってあれ? な、なんか電流の動きがおかし………………ってこっちに向かってきてる!?
なんで!? ……って! よく考えたら
ばりばりばりばりばりっ!!!
「ぎにゃああああああああああああああああああ!!?」
目、目から火花出た……絶対今、ぎゃぐまんがみたいに骨が浮き出る感じになってた……!
ぷしゅ〜って煙を上げる私。頭がくらくらしてまっすぐ立ってられなくて、挙句武器を落としてしまう。
が、がちの電流だぁ……こんなの食らったら普通死ぬぞ…………
「あ、あが……あががが」
「無駄な抵抗をするからだ……遠慮するな、ゥ我が
や、やばい……羊男が目を血走らせながら、電流をばちばちさせながら、せーたー持ってにじり寄ってくる。
ちょ、あの、それ以上近づかないで。目の前でばちばちしてて怖い。
「既製の《
「あああ……あんたのそれに包み込まれたら死ぬじゃん!!」
やだやだ絶対やだ!! こんなもこもこまっちょ(電撃付き)に抱きしめられるとか本気でやだ!!
で、でもどうしよう…!? 武器は使えないし、近づくこともできないし、対抗する方法が何も見つかんない……どうやって倒せばいいのこんなの!?
えーっと、えーっと……ってうわああ悩んでる間にまたばちばち言い出したぁ!!
「ぶるぁああああああああああああああ!!!」
「ふぎゃああっ!!?」
どかーんと落ちてきた雷撃を紙一重で真横に跳んで躱して、その先にあるお店に逃げ込んだ。
「ああっ! うちの店にゴーストたんが!!」
「お邪魔しますごめんなさいっ!!」
ぎゃらりーの中に混じってたお店の人っぽい人に謝って、がらすの扉をすり抜けて中に逃げ込む。ってかあんた達さっさと逃げてよ!?
逃げ込んだはいいけどここは……うわ、やっちゃった、電気屋さんだ。
てれびとかそーじきとか、ばちばちが天敵の道具しか置いてないじゃん。ここで暴れたら絶対あとで大変なことになるよ。
早く離れなきゃ……あーでも、なんか静電気対策ぐっずとか置いてないかな!? 何かないか、何かないか……家電しかないやちくしょー!
こうなったら、どっか別のとこに隠れなきゃ………………そう思って、立ち上がろうとした時。
───誰かに呼ばれた気がした。
「…………誰?」
聞きなれない、声がした。
声の主を探してみるけど、一向に見当たらない。お店の中にあるのは商品だけ。おーでぃおとからじかせはあるけど、音楽は流れてない。
ていうか今のは、間違いなく私に向けてかけられた人の声だ。
そういえば、確かこんな感じのこと……前にもあった、ような。
きょろきょろあたりを見渡して、やがてあるものに目が止まる。
電球……電球だ。お店で普通に売ってる何の変哲もない、箱に入ったままの新品のやつ。
おかしなところなんて何一つないけど、私にはわかった………………私を呼んでるのは、これだ。
じっと見つめられてる感覚がする。待ってくれてる気がする。
そこにいる〝何か〟に促されるままに、私は電球に向けて、手をかざした。
「隠れても無駄だテイルゴースト……大人しく出てこいぃ!! すぉしてぇ! ゥ我が《
電気屋さんの前で、羊男が仁王立ちして吠える。もこもこがひときわ強くばちばち言って、いつでも狙ってることを知らせてくる。
その周りをもけもけ達が囲んでて、もけもけ囃し立ててくる……もう勝ったつもりになってんのかな?
そんな羊男達の前に……私は無言で進み出る。
「くくく…ようやく出てきたか。覚悟を決めたようだな、さぁゥ我が
大きく腕を広げて待っていた羊男が、不意に驚きの声を上げる。
ほっほーう、気づいたか。
私は諦めたわけでも、玉砕覚悟で出てきたわけでもない……この状況を逆転させる(かもしれない)あいてむを手に勝負を挑みに来たのだ。
「そのガジェットは……報告にあったあの目玉か!?」
「もけー!?」
「もけ! もけー!」
ふっふっふ、警戒してる警戒してる。さっきまでの借り、まとめて返してやるから覚悟しなよ?
……………………だ、大丈夫だよね? めっちゃ自信満々で出てきたけど、本当に大丈夫だよね? 使ってみて全然だめでしたとかないよね?
───あんたの力、信じてもいいんだよね?
【アーイ! バッチリミナー! バッチリミナー!】
不安を抱えたまま、私はべるとの前を開いて中に入れてた私の眼魂を外す。
すると途端に、私が着ていた黒とおれんじのぱーかーがもやみたいに溶けて消えて……そんで私は、もう片方の手に持っていた
「ヌゥゥゥ!! させんぞぉ!! 纏うのは
「にゃわっと!!」
羊男が邪魔しにくるけど、向かってきた電撃付きのぱんちをかわして脇に入って、無防備な横っ腹を蹴り飛ばす!
羊男がよろけた隙に後ろに下がって、べるとのればーをがっちり掴む……それから引いて、思いっきり押し込む!!
【開眼・エジソン! エレキ・ヒラメキ・発明王!】
ぼわん! とべるとの目から飛び出た黄色い靄が、見る見るうちに形を成していく。
黄色いつやつやの生地に、頭から生えたあんてなと電球みたいな両手を持った
空中でぽーずを取ったそいつは、私に取り憑くみたいに覆い被さる……!
これぞ、ているごーすと・えじそん魂! ……ぶっちゃけえじそんって誰か知らないけど!!
よーし、なんか力が湧いてきた!! ……気がする。
「ふゥム……聞いていた通り奇妙な力だ。だが姿を変えたところで無意味!! ゥ我が魂の昂りを止められるものなどぅありはしない!!! ぶるぁあああああああああああああああああああ!!!!」
「えっ!? ちょ、ちょっと待ってこれ使い方がまだよくわかってなあ"っ──────────!!!」
ぎにゃああああああああああああああああまたびりびりきたあああああああああああああああああああ!!!
こんなん何度も食らったら頭ぱーになるだろせめてちょっと馴染むまで待てよこらぁぁぁぁぁ!!!
「ふぎゃああああああああああああぁぁぁ…………あ?」
ばちばちばりばりびりびりぃっ!!!
……って、そりゃーもうすっごい音を立てて私に襲いかかってくる電撃だけども。
なんか、あれ?
全然さっきみたいに痛くも苦しくもないっていうか、頭の中が真っ白になる感じもなくて…………
むしろ、すっげぇ頭冴えてきた。
「ほうほう……ほうほう、なるほどなるほど」
「ヴッ、ヴァカな!? ゥ我が奥義が全く効いて……いやそれどころか、力を増しているだとゥ!?」
羊男が慄いてる声がする。
その間に私が真横に手を伸ばすと……さっき落としちゃったがんがんせいばーがひとりでに動いて、くるくるばしっと私の掌に戻ってきた。
がんがんせいばーの刃の片っぽをしゃこっと抜いて、くるっとひっくり返して、もっかい合体させる。そんで持ち手のところをかくっと傾けて……がんがんせいばー・がんもーどが完成する。
それから、出来上がったそれの持ち手の付け根にある紋章をべるとに嵌った眼魂の前に重ねる。
【ダイカイガン! ガンガンミナー! ガンガンミナー!】
すちゃ、と私は銃口を羊男に向けて構える……すると、頭に生えたあんてなからばちばちとさっき溜め込んだ電撃が迸って、銃口に溜まっていく。
羊男の放った電撃よりも強く、濃く、でっかい光の塊が出来上がって───私は引き金を引いて、出来上がった雷撃の銃弾が一気にぶっ放した!!
「命、燃やすにゃ!! ……また噛んじゃった」
【オメガシュート!】
どぉんっ!!!!!
放たれた雷撃の銃弾が羊男に炸裂して、貫く。
かっ、とものすごい稲光が起こって、羊男の全身に亀裂が走って、激しい火花が飛び散った。
「ぐわああああああああああああああ!!! ゥ、ゥ我はまだ《
「「「「「モケェェェェェェェェェ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!!!」」」」」
必殺技を食らった羊男と、その余波を食らったもけもけ達がぴかっと光って、全員まとめて爆発する。
最後までやかましく消えてったやつらを見届けてから、私はがんがんせいばーをくるくるっと手元で回して、肩に担いだ。
「………せーたーのあったかさも嫌いじゃないけどね、やっぱり冬はご主人様の抱っこが一番だよ」
否定はしないよ、あんた達の正義ってやつは。
いやー、どうなることかと思ったけど片付いてよかったよかった。
さー、帰ろ帰ろ。向こうもそろそろ終わってるでしょ。
「ゴ……ゴ、ゴ、ゴーストたん…!? い、今言ったご主人様って、まさか、まさか……!!」
【オヤスミー】
ぎゃらりーの人達がなんかざわざわしてたけど、私は気にせず姿を消した。そーじ、もといれっどとは違ってふぁんさはしない主義だからね〜……本人もそのつもりはないけど。
さて、か〜えろ。
…………ここでぎゃらりーの話を聞かなかったことを、私は後で死ぬほど後悔する羽目になる。
「…………」
「…………」
念願のお家に帰ってきた私は、そのままお店のちかの秘密基地に向かった。
そーじの方も帰ってきていた。色々心配な声も聞こえてたけど、無事に終わったみたいだ。
……それはいいんだけど。
私とそーじ達はお互いに、驚きの表情で見つめ合っていた。
正確に言うと、私とあいかが目をまん丸にしながら見つめ合ってて、そーじもその隣で私を見つめてるって感じ。
私が驚かれてる理由はわかる……わかってるから反対に聞かせてほしい。
「「どうしたのよ
あいかは私が右手でこれ見よがしに持って帰ってきた眼魂を指差してきて、私もあいかが腕にはめてる青い腕輪を指差して叫んだ。
それ……そーじのやつと一緒じゃん! 色違いだけど!
「私は羊男と戦ってる時に、近くにあった電気屋さんの電球に取り憑いてんのを見つけてげっとしたの。すっごい威力だったよ」
「嘘でしょ、そんな偶然ある!? 眼魂……ってか、英雄ってそんな簡単に見つかるものなの!?」
「さぁ?らっきーだったしいいじゃん」
「呑気な……」
呆れられちゃった。でもしょーがないじゃん、眼魂集めるまでもなく願いは叶っちゃってんだから。
んー、でも今回みたいに戦いの役に立つなら探してみるのもいいかな〜……ん? どうしたのそーじ? なんか不思議そうな顔してるけど。
「なぁ、前に使ってたニュートン眼魂もそんな感じで見つけたのか? どこの何に宿ってたんだ?」
「お店に置いてたりんご」
「近所すぎんだろ!? 見つけるのは困難だって仙人のおっさん言ってなかったっけ!? ドラ○ンボールみたいな超貴重そうなアイテムなのに今の所一切過酷な経験しないまま手に入ってるじゃねーか!!」
……十五個集めたら実際どーなるんだろ、どらごんとか呼べんのかな。
別にいーんじゃない? お手軽に手に入るんならそれでさ。
……そんなことよりさ、色々聞いときたいことがいっぱいあるんだよね。
まず、あいかが大事そうに撫でてる腕輪。あれって、こないだおっぱいが言ってたもうひとつのているぎあだよね? 使える奴が危ないばんぞくすぎて託せなかったとか言ってた……それをなんであいかが持ってんのか。
あと、なんでおっぱいが頭を床にめり込ませながら倒れてんのか。
「…………ねぇそーじ。あれってどゆこと?」
「あ、ああ、俺がピンチのところに愛香が変身して駆けつけてくれてな………俺を模した人形を一切遠慮することなくぶっ壊してそのままフォックスギルディを仕留めたんだ」
「…なんかよくわかんないけどわかった」
電話でなんか『ふくをきせろー』とか『おどるなー』とか聞こえてたけど、まじで何があったのか……気になるけど怖くて聞けない。
あいかが全部ぶっ飛ばしたんだろうけど。
「で、なんでおっぱいはあっちで死にかけてんの?」
「それ以上は聞くな。お前もああなっちまう」
「わかった、だいたい全部把握した」
あいかさん……………あんたさてはほぼほぼ強制的にぶんどってったな?
あのおっぱいのことだから、そーじとえろいことするために適当な嘘ぶっこいておっぱじめる気だったんだろうな。そこはないすせーぶだよ…………だけどさ。
おーい、あいかさんやー。
おそろの腕輪つけられてにっこにこなのはわかったけど、これだけは答えておくれよ。
ひーろーってなんだっけ?
「何よこれええええええええええええええええ!!?」
翌日、てれびにゅーすを観ていたあいかが絶叫していた。
内容は昨日のそーじ達の戦いについて。あいか……ているぶるーが登場してそーじが苦戦した狐男との戦いを代わった時の映像が流れてる。
あっという間に倒して、わざわざかめらの方を向いて名乗っちゃって……のりのりなのはべつにいいよ。
たださぁ……ちーむ名が〝ついんているず〟ってそのまんまじゃない?
てかその〝ついん〟ってそーじとあいかのことじゃないよね? 私も入ってるよね? はぶってないよね?
……ま、まぁ? ついんてーるを守る戦士だし? ちーむ名がそれでもいいっちゃいいけど? 全然気にしてないけど?
……で、問題なのは世間の反応で。
『では、このテイルブルーと名乗る人物は必ずしもテイルレッドの味方とは限らないと?』
『ええ、アルティメギルの怪人を倒す際の行動を見る限り、非常に危険で冷酷な性格であることは間違いないでしょう。ご覧下さい、怪人にとどめを刺す彼女のこの凶暴な顔を!』
『この後の笑顔のアピールがまたますます疑わしいですね。テイルレッドにその危険性が及ばないか心配ですね……』
そりゃーもうひっでぇ内容だった。
ちゃんとれっどを助けてるんだけどなぁ……相手が変態だったから手加減とか情けとか一切なしにぶちかましただけ………………いや、これ、言い訳のしようもない事実だな。
味方から変身あいてむごーだつしてくような人だし。
そんで今回ぴんちだったそーじは怯えて泣く顔がどあっぷにされてて……映してやるなよそんなの。
『レッドたんはいつも通り可愛いですねぇでゅふふふ』
おい危ねぇから喋るななんか偉そうな肩書きつけたおっさん。そーじ、わかってるから泣くな。
あいかも相変わらず荒ぶってるし……え? ねっとも見たの? 嘘と悪意と虚構でいっぱいな魔窟だっていうあの?
『胸もないのに露出多い格好してるまぞ』って言われた? かわいそーに……
「まーまー、愛香さんもしっかり人気者ですよ。ほら見てくださいよ、どこもかしこもているブルーの話題でいっぱいで……」
「悪口ばっかじゃないのよ!!!」
おっぱいもわざわざぱそこん持ってきて見せてやるなよ。
…………うわぁ。
ねっとの画面覗いてみたら思った以上にぼろくそ言われてた、うわぁ。
てか、あいかこれ、けーじばんに自分で書き込んでんじゃん。気持ちはわかるけどひーろーが自分を褒め称えるのってどーなの?
あーほら、案の定『自演乙w』とか『本人さん』とかこめんと返ってきてるし。
……………………あれ?
なんか一回見てみただけだけど……これ、こめんと全部あいかのおっぱいについてばっかりじゃない? そこまで言う?
「……ちょっと待ちなさいよ」
「あっ」
ん? どしたのあいか、いきなりおっぱいのぱそこんをぶんどって……え? 何を調べてんの?
「……おのれかあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!」
「ヒィィィ秒でバレた!!?」
「くっだらないことに労力使ってんじゃないわよぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!」
……え、どしたのふたりとも?
ねぇそーじ、あれってどういう……え? おっぱいの自作自演? ぶるーの悪口は全部おっぱいが書いてた?
なんて無駄なことを……。
ごきごきと強烈なぷろれすわざをかけられてるおっぱいを見る……わざと怒られてない? やっぱおめーの方がまぞなんじゃないの?
「……味方増やすどころか、渡しちゃいけない人に危ない力渡ってんじゃん、あれ」
「そうだな、お前もそう思うよな…………ところでさ、そら」
こんなんでこの先ほんとに大丈夫なの?
思わずそーじと一緒に黄昏ていると、そーじがなんかすごい微妙な表情で声をかけてきた。え、何? まだなんかあんの?
「俺もさ、調べてみたんだよ、テイルレッドの記事とか……テイルゴーストのまとめサイトとか」
「えっ!? あの魔窟を!?」
「トゥアールの科学力で隠されてるとはいえ、さ。家族の個人情報とかが漏れてたら大変だろ? だから恐怖を押し殺して見てみたんだよ」
そーじ……そこまで私のことを、きゅん。
「……そしたらさ」
「にゃ?」
「……『主従百合』とか出てきたんだけど……お前、何か知ってるか?」
「何それ知らん…こわ……」
え、百合ってあの、女の子同士があれするあれ? 私が?
……なんでそんなことになってんの?
「お前がどっかでご主人様って言ってたのを聞いたらしくて、そんでそのご主人様は誰だどこのどいつがゴーストたんを穢しやがったんだ特定してぶっ殺してやるって話になって…………一緒に戦ってる俺が一番可能性高いってことになったらしい」
……いや、殺意高ぁ。
てか、あー、ああ〜、あれかぁ……言った言った。確かに言った。
え? まさかあん時のあれ? あの一言でそこまで騒ぎになっちゃってんの? 嘘でしょ?
「……どーしよ。そーじが殺される」
「いや、『レッドたんがゴーストたんのご主人様なら問題ない』とか『むしろ愛でてるところを見せてくれ』とか『主従百合尊い』とか『私も飼って』とか全面的に受け入れる体制らしい」
「ええぇ……?」
「しまいには『ゴーストは元はテイルレッドが飼っていた普通の猫だったけど戦いに巻き込まれて死んでそれでも主人であるレッドへの想いから幽霊になって蘇って戦う力を手に入れて
「ええええええええええぇぇぇ……」
なんで割と実話に近い想像が繰り広げられてんの……なんで「ご主人様」の一言だけでそこまでみんな妄想できんの。
思わず、頭を抱える。
そーじも暗い顔で項垂れながら、私の肩をぽんぽん叩いてくる。
「………………そーじ、私、今度からなんも喋らないでおくね」
「………………人間がこんなんでほんとゴメンな」
ねっと社会怖い。
コトリ、コトリ。
しんと静まり返った一つの空間に、小さく硬い音が続けざまに響く。
アルティメギル移動要塞、その作戦室。
連日、テイルレッド・ゴーストを如何に倒し属性力を奪うか、その作戦会議が行われ、多くのエレメリアンが意見を交わし、主張し、時に拳を交え、騒がしかったその部屋。
今そこにいるのは、隊長であるドラグギルディ1人だけ。
「……フォクスギルディに続き、シープギルディも斃れたか」
コトリ、コトリ。
散っていった部下達の名を一人一人呼びながら、ドラグギルディはそれらを並べていく。
美少女フィギュアだ。
幼い少女のキャラクターを生き生きと立体化させた精巧な人形。どれもこれも可愛らしいツインテールが躍動的に宙を踊り、弾けるような笑顔を浮かべている。
それらは決して同じものは存在しない。
あるものはぬいぐるみを抱き、あるものはブルマを履き、あるものはツインテールをリボンで結び、あるものは厚手のセーターをまとっている。
これは、墓標だ。
己が正義を胸に抱き、信念を貫き逝った勇士達に捧げる鎮魂の碑。
最期まで変わらず、誇り高く去った彼らへ送る、形ある賞賛の証。
それらに誓う。勝利を───アルティメギルの未来を。
「案ずるな、お前達の死は決して無駄にはしない───お前達の骸を踏みつけ、越えてでも、必ずや我らの大願を叶えてみせる」
誰もいない作戦室に、その城の全てを背負う竜の将の声が。
シープギルディ
《
自らの体毛で摩擦を起こし発生させた強烈な雷撃を操る。
もこもこの毛皮から本来の体格がわかりづらいが、アルティメギル屈指のパワーの持ち主であり、持ち前の石頭と突進能力、そして雷撃を合わせたタックル攻撃はどんな敵の防御をも打ち破る。
(イメージCV:若本規夫)