仮面ライダーアトリエ   作:青ずきん

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仮面ライダー……2話……巨大化……うっ頭が。


第2話 圧倒→巨大化のちテイクオフ

 

「ただいまー」

 

 通常の帰宅時間よりかなり遅れて、シャリアは自宅へと帰り着いた。靴を脱いで上がろうとするシャリアだったが、物凄い勢いで部屋から飛び出して抱きつく女性によってその行動は阻害されてしまった。

 

「おかえりぃ〜! んぎゅぅ〜!」

 

「うん、お母さん、わかった。わかったから離して?」

 

 シャリアに抱きついてきたのは、彼女の母親であった。かなり強めの抱擁にシャリアは苦しげな声を上げるが、母親の方はまるで気にしていない様子だ。

 

 シャリアには、エルフの母と人間の父がいる。その間に生まれたために、シャリアはハーフエルフとしてこの世に生を受けた。

 エルフとしての性質などは母から半分ほどしか受け継いでいないため、魔力量や耳などが中途半端な状態になってしまっている。今でこそ気にしていないが、その昔は自身の出生をよく気にしていたらしい。

 

 母からの深い愛情(ハグ)を受けるという様は日常的な光景ではあるが、正直なことを言えば若干鬱陶しいのでやめてほしいというのがシャリアの本音だ。しかし、シャリア自身、自分を深く愛してくれる母を前にそんなことを言える性格ではなく、うまく断れずに深すぎる抱擁を享受し続けている。

 うまく断れない理由には、やはりその抱擁を嬉しく思う自分がいるという事実も含まれているのかもしれない。

 

「……しょうがないなぁ。お風呂沸かしてるから入りなさいね。……あっ、お風呂といえば、シャリアちゃん最近お母さんと一緒にお風呂入ってくれなくなったよね。お母さん寂しい」

 

「あ、あはは……そう、かな。まあでも、私もおとなになってきてるし?」

 

「うー……そっかぁ。じゃあ仕方ないかなぁ……お風呂、のぼせないようにね」

 

「はーい。ありがとー」

 

 急かされるままに入浴と夕餉を済ませると、シャリアは自室に籠って課題に取り組み始めた。

 シャリアの自宅は二階建てになっており、二階に上がるための木製の階段のすぐ横にシャリアの部屋、その隣に母の寝室がある。以前までは母と同衾(どうきん)していたのだが、パラノーマル魔術学院の初等部四年に進級する際に自室にベッドを設けて一人で寝るようになった。母は若干寂しげだったが、同時にシャリアの成長を喜び承諾してくれた。

 

 十畳ほどの部屋で暫く勉強した後、シャリアは部屋の明かりを消して床に着く。

 余程疲れていたのか、この日のシャリアは驚くほど熟睡していた。

 

 

 

「おはよー」

 

「おい来たぞ! 急げ急げ!」

「早く早く!」

 

「?」

 

「シャリアちゃん、昨日学校に出た怪物と戦ってたって本当?」

「変身したんだろ? 殴り合ってたんだろ!?」

「シャリア、勇姿、凄い……!」

 

「えっ、何? えっ……えっ?」

 

 翌日、学校に辿り着いて教室のドアを開いたシャリアを待っていたのは、目を輝かせながら質問責めを繰り出す同じクラスの生徒達だった。

 校内では早くも噂になっており、初等部の枠を超えて学校中で話題を作っている。

 

「えーっと……本当、本当……だけどその、なんていうか、えっと……」

 

「「「うおおおおお!!!」」」

 

 シャリアが仮面ライダーに変身して戦った事実を認めると、たちまちのうちに錬金術科の教室は歓声に包まれた。改めて同級生に囲まれてしまい、シャリアは席に着くタイミングを完全に失ってしまっていた。

 

 

 

 

「シャリア・ヒアラルクさん。放課後、この階の空き教室まで来るように」

 

「えっ」

 

 丁度一時間目が終了した頃、教頭と思われる背の高い男が教室の扉を開いた。要件だけ手短に伝えると忙しなく教室を後にし、足早に教室を去っていく姿を見送る暇も与えられず、再びシャリアは同級生の囲いを受けることになった。

 休み時間になる度に質問を受け続け、真に解放されたのは昼休みの頃になるということは、この時のシャリアには想像がつかなかったようだ。

 

 

 

「早速ですが、シャリアさん。校内で話題となっている、先日出現した怪物。並びに、その怪物を貴女が撃破した……という話に、間違いはありませんね?」

 

「えっと……はい」

 

 陽光が差し込む静謐な空き教室にて、シャリアは面談を取り付けられていた。教頭の男の声は重苦しいものではなかったが、どこか追い詰めてくるような物言いであった。

 

「何かしらの機械を使用しているところを見たという生徒もいましたが、それも間違いありませんか?」

 

「……はい」

 

 ドライバーについて、仮面ライダーアトリエについて。根掘り葉掘り聞かれたが、シャリアはその質問の殆どに答えることができなかった。

 その一番の理由は、シャリアが記憶喪失の状態にあるからだ。

 

 ドライバーの所有者であったはずの父親は、シャリアの物心がつくかどうかという程で亡くなってしまっている。一体いつ、どのタイミングで自分は父親からアトリエドライバーを託されたのか。

 なぜライダーエキスの効能を理解していたのか。

 仮面ライダーアトリエとは、何なのか。

 

 

 その全てが、謎に包まれていた。

 

「……そうですか。まあそこは追々解明させていけばいいでしょう。最後に…………そのアトリエドライバーを学校で預からせてください」

 

「え……?」

 

「貴女が学校を襲った怪物を撃退したことは褒められるべきことですが、学校としては貴女という生徒を危険な目に合わせるわけにはいきません」

 

「……」

 

「お父さんの持ち物だから、もしかしたら色んな思い出があるのかもしれませんが…………再び怪物が現れて貴女がまた戦った時、貴女が怪我をしない保証はありません。そして、学校はその責任を負えません。シャリアさんのお母さんにも、申し訳がありません。だから、どうか────」

 

「でも、純血のエルフに向くドライバーじゃないですよ。私が使うのが一、ば…………ん?」

 

「……どういうことですか?」

 

「え、あれ……なんで私、ドライバーのこと……」

 

「……日も暮れてしまいますし、このことはまた今度話し合いましょう。その……ドライバー? も、シャリアさんが持っていてください。ただし、学校の許可なしに使うことはしないように」

 

「えっ? でも……」

 

「学校は責任が取れないんです。お願いですから、使わないでください」

 

 やや怒気を孕んだ声色が、シャリアの身体を少し震わせた。

 

 

 

 シャリアが昇降口まで足を運ぶと、そこにはいくらかの人だかりができていた。中には引き返す影もあるため、シャリアの目にはかなり不審に映っている。

 靴を履き替えて昇降口を突破すると、シャリアの目に一つの影が飛び込んできた。

 

 その姿には、先日現れた怪物のような怪しさがあった。

 肩や腰、前腕など、全身の至る所にミサイルが装填されており、暗色の体色もあって怪物───ミサイルマテリィはその全身で「危険」を表現している。

 

「えぇ……」

 

 ミサイルマテリィに困惑するシャリアを気にする様子はなく、シャリアを指差すと同時に二、三発ほどミサイルを放った。狙いはシャリアただひとりであり、シャリアの近くの地面に着弾するとすぐに爆発する。

 

「わわぁーーっ!?」

 

 辛うじて爆発に巻き込まれることは避けられたが、眼前で起こった爆発にシャリアはかなり恐怖を感じた。

 本能的にアトリエドライバーに手を伸ばすが、教頭との話がふと頭をよぎった。

 アトリエドライバーの使い方は、シャリア自身あまり言語化できていない。脳内のタンスの奥深くにしまわれた記憶がたまに出てくることがあるくらいで、使い方の全容を理解しているわけでもない。このドライバーを使えるのは恐らく自分だけだ。

 

 だが、教頭の話が全く理解できなかったわけでもない。生徒に何かあれば教師が責任を取らなければならないということは理解できる。責任以前に、その『何か』が起こらないでほしい、ということも。

 

 しかし、それが自分を止める理由にはならない。

 

「生徒は全員西昇降口へ! 早く───」

 

「これでも喰らえ!」

 

 駆け付けた数人の教師が生徒達を誘導し、ミサイルマテリィの対処にあたる。しかし、教師陣の攻撃がミサイルマテリィに効いている様子はない。追撃も含め涼しげに受け流すと、ミサイルマテリィは教師陣に向けてミサイルを五発放った。シャリアの時と違い、地面ではなく直接対象を狙っている。

 

「避けろっ!」

 

 教師達は軽い身のこなしでミサイルを避けてみせる。設備に多少の被害が出ているが、そんなことを気にしている状況ではない。

 緊迫した状況が続くなか、防戦一方の流れを変える人物が教師達の前に立った。

 

「……やっぱり気になっちゃうや。怒られるだろうなぁ」

 

「……! 何をしている! 早く逃げなさい!」

 

 教師の誘導には聞こえないフリをし、シャリアはアトリエドライバーを腰に巻いた。同時にブランクライダーエキスを取り出し、コルク栓を親指で弾き飛ばす。

 

【Let's play!】

 

「変身!」

 

【Inject!】

 

 アトリエドライバーの中央の金魚鉢に似た容器『エキスパートミキサー』に、ブランクライダーエキスが注がれる。内部の灰色の液体は回転数を漸増させながら渦巻いていき、シャリアの身体をゆっくりと包んでいく。

 

【サクセスミックス! Let's enjoy,ブッ、ブッ、ブランク!】

 

「ていやぁーっ!」

 

 仮面ライダーアトリエへと変身、駆け出しながら左腕で渦を薙ぎ、勢いのままにミサイルマテリィ目掛けてドロップキックを放つ。着地まで考慮していなかったのか、ミサイルマテリィに命中はしたもののそのまま地面に倒れ込んでしまった。

 

「あいたぁっ! いったぁい……でも効いてる! このまま行くぞ! おー!」

 

「……」

 

 軽くガッツポーズをし、アトリエは再度ミサイルマテリィと攻防を繰り広げる。

 アトリエはキック主体の戦闘をしており、ミサイルマテリィはそれを捌きつつ偶に四肢を狙って反撃をする。近距離のためかミサイルは一切放たれない。近接戦闘が正解だと悟り、流れるような連続キックでミサイルマテリィを追い詰めていく。

 

「うんうん! いい調子! 次でとどめだね!」

 

【Let's play!】

【Inject!】

 

【フィニッシュミックス! Let's GO!】

 

「せいやーっ!」

 

 力の漲る右足で上段蹴りを繰り出し、ミサイルマテリィは爆発した。

 が、その身体は未だ其処に残っていた。千鳥足になりながらもなんとかその場で立っていると、ミサイルマテリィは次第にその身体を巨大化させていく。やがて、ミサイルマテリィは5mを優に超える巨躯の怪物へと変貌した。

 

「……マジっすか」

 

 四足歩行となったミサイルマテリィはもはや獣のようであり、あまり理性を感じさせなかった。先程まではあまり使用してこなかったミサイルも惜しまず放つが、それは明確にアトリエを狙った攻撃であった。

 

「えぇぇっ!? ちょっ待って待って待って待って!」

 

 ミサイルの対応に慣れていなかったがために、アトリエは二発ほどミサイルを喰らってしまう。かなりのダメージを受けており、正面突破は困難かと思われた。

 しかしその時、アトリエは一つのライダーエキスに思い当たった。現状を打開できる可能性に賭け、アトリエはその小瓶に手を伸ばす。

 

「これ……で、いけるかな」

 

 アトリエが取り出したのは、内部で水色の液体が揺れるフライトライダーエキスだ。コルク栓を弾き飛ばしてから左側のリフトに装填、レバーを外側に引いてフライトライダーエキスを混ぜる。

 

【Let's play!】

【Inject!】

 

【サクセスミックス! Let's enjoy,フッ、フッ、フライト!】

 

「おおー! 背中になんか付いてる! なにこれなにこれ!?」

 

 その背に飛行機のような翼を携え、水色の装甲を纏う戦士・仮面ライダーアトリエ フライトMIXへと変身を遂げた。

 パイロットキャップやエンジンなど、飛行機を思わせる意匠が随所に盛り込まれており、アトリエを爽快な空の旅へと(いざな)う。

 

 再びアトリエを狙ったミサイルが発射される。が、アトリエは翼を使用して飛行、ミサイルマテリィ自身に命中するよう誘導してみせた。

 

「おおお! すごいすごい! これすっごく楽しい!」

 

 (はしゃ)ぎつつも放たれ続けるミサイルだけはしっかり避け、丸腰ながらもミサイルマテリィの巨躯に反撃する。

 一点に集中して反撃していたのが功を奏し、遂にミサイルマテリィは怯んで攻撃をやめた。その間隙を見逃すアトリエではなく、最後の一撃の準備を整え始める。

 

【Let's play!】

【Inject!】

 

【フィニッシュミックス! Let's GO!】

 

「いっくよー! はああっ!」

 

 右足を突き出し、飛行機雲を描きながらミサイルマテリィを貫く。

 言葉にならない絶叫を上げ、ミサイルマテリィは爆散した。爆発を背景にポーズを決め、アトリエは二つ目の白星をあげる。

 

 

 陰からその様子を眺めていた上位魔法専攻科の生徒────ダツタ・ホーマは、昨日と同じく怪訝そうな眼差しでアトリエを見据えていた。





2話でした(過去形) まさかあとがきから読む派はいないよね……?


唐突ですが、説明させてください。実は本作の世界観は私の前作『仮面ライダーエルフ』と繋がっています(時系列的には400年近く離れていますが)。
一応、『前作を知らなくても楽しめるけど、前作を知っていたらもっと楽しめる』をモットーにしているので、前作については知らなくても問題ない……ように書く努力をします……

前作も宜しくお願いしたいのですが、クオリティがほんとに酷いです(泣)
どうか引かないでください(切実)

それでは、また次回。
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