※本作の調合システムは『エスカ&ロジーのアトリエ』が大元になっています。
(作者のアトリエプレイ経験がエスロジしかないため)
「さて、何を調合しよう?」
自室の錬金釜に向かい、シャリアは思い悩んでいた。いつもと変わらない白黒のゴスロリと長髪を無意味に揺らし、懸命に思考を張り巡らせる。
「うーん……そういえば、バーストライダーエキスって爆発がメインなんだから、火属性の素材を入れまくったら爆発が強くなるのでは? ……よし、そうと決まったら調合しようそうしよう」
調合するものが決まると、シャリアは部屋の隅に置いてあるコンテナから火属性を持つ素材を持ち寄って再び錬金釜の前で勘案する。
バーストライダーエキスのレシピは
・ブランクライダーエキス×1
・(燃料)×2
となっている。調合日数は一日で済むため、良い物が出来なかったとしてもまたすぐに違う組み合わせを試すことが可能だ。
今回は、ひたすら火属性の属性値を上げて調合している。
素材の投入を済ませると、シャリアはいい塩梅で撹拌を始めた。当の本人は自覚していないが、錬金釜での調合はある程度のセンスを必要としている。そのため、感覚的ではなく論理的に物事を進める人物には難しく感じてしまうところがある。が、シャリア自身調合で苦労した経験はさほどない。それはつまり、シャリアがある種錬金術の才を有しているということである。
「素材すらも調合して整えて、より良い物を作り上げる……うーん、錬金術って素晴らしい! この調子でやって……あーっ! 使った素材まとめるの忘れてたー!」
シャリアは慌ててノートを取り出し、忙しなく今回の調合についてまとめていく。焦るシャリアを尻目に、錬金釜の中ではゴポゴポと音を立てながらライダーエキスが作られていった。
「あー、今日も疲れた。帰ろ帰ろー……ん?」
翌日、学校を終えて帰宅する途中だったシャリアの視界に、ふといつもとは違う光景が飛び込んできた。
基本的には閑静な街なのだが、今日はいつになく騒がしい。少し近付いてみると、そこでは数人が優しげな音楽に合わせて踊っていた。
時折音楽を止めては振り付けを確認し、再度踊っているところを見ると、何かの踊りの練習中らしい。
「あー……あれだ、なんか、何かに何かを捧げるみたいな…………」
「戦争で亡くなった多くの命に対して捧げる慰霊のための踊りだ。
「あ! えーと、ダツタ・なんとか!」
シャリアの独り言に自然と混じりつつ罵倒をしてきたのは、同じく帰宅途中のダツタ・ホーマだ。尖った目つきをシャリアに送っており、同時に若干萎縮させてもいる。
「……ダツタ・ホーマだ。それより、この踊りの話は聞いたことないのか?」
「うーん、あるにはあるけど……なんというかこう、うっすらとしか記憶にないんだよね。大まかなことは分かんなくもないけど……的な?」
「……はぁ。じゃあ一回だけ話してやるから、その変な耳かっぽじってよく聞け」
「『変な』は余計だよ!」
「うるせえ」
罵倒を重ねてから、ダツタはその踊りの概要について話しはじめた。
まず、この世界には大きく分けて四種類の生物がいる。
一つ目は動物。見た目などは地球上のそれとほぼ同じであり、また似たような生態系を築いているが、人間やエルフは食物連鎖から外れているため分けて考えられている。
二つ目は魔獣。動物のなかでも魔力などを宿して変異した種だ。基本的には魔獣同士で集まって暮らしているが、時折他の生物を襲うこともある。
三つ目はエルフ。この世界を実質的に牛耳っており、また統制している。この世界における最大勢力でもある。
四つ目は人間。かなり希少な存在で、エルフと比べ個体数が圧倒的に少ない。エルフが統治する世界では人権らしきものも基本なく、各地に点在する人間達が少数で集まって集落を形成、エルフから身を隠しながら暮らしている。
というのも、その昔に起こったエルフと人間の統治権を巡った戦争によってその数が激減している。それは年端もいかない子供すらも巻き込んだ大規模なものであり、多くの血が流れることとなった。人間達は持ちうる兵器を総動員してこの戦争に挑んだが、エルフ達が駆使する魔法に敵うことは二度となかった。
結果として、エルフ・人間共に多くの死者を出したこの戦争は負の歴史として現代まで語り継がれている。が、被害がより大きかったのは人間の方であり、敗北したのもまた人間だ。立場はエルフの方が上であり、エルフに見つかった人間が虐げられる事例も少なくない。次いで、エルフと人間のハーフも虐げられやすい。それでもシャリアが比較的平穏に日々を過ごせているのは、間違いなく仮面ライダーとしての実績によるものが大きいだろう。
「……とまあそんな訳で、戦争でなくなった子供達も含めて二度と戦争が起こらないようにと───────おい、聞いてるか?」
「うん! 今日は味噌煮込みハンバーグ!」
「殺すぞお前」
「そうやってすぐ殺すとか言わないの! 言葉遣いちゃんとしてないと、上品に見えないよ?」
「お前よりマシだよ」
「そんなことないよ! この悪口マン!」
「なんだよ悪口マンって! いい加減にしないと本当に殺すぞてめぇ!」
「ほらそういうとこ! 全然私の話聞いてな───────」
「あのー」
「「うわっっ!?」」
「……えっと、ふたりも一緒に練習する?」
「「……遠慮します」」
講師からの誘いをやんわりと断り、シャリアとダツタはそそくさとその場から去っていった。
「……おい、お前のせいで怒られたぞ。どうしてくれるんだ」
「そう言われても、元はと言えばそっちが悪口を────」
「……おい金髪馬鹿、怪物が出たぞ」
「私は『金髪馬鹿』って名前じゃないですー」
「うっせ、いいから前見ろ」
「…………わお」
人気の少ない街中を歩いていたふたりの視線の数十m先、頭頂部から紫色の液体を垂らしながらゆらゆらと怪物───────ポイズンマテリィが歩み寄ってきていた。毒物の影響か体表はひどく爛れており、身体に突き刺さっている鈴蘭も
「中々大変そー……ま、いつも通りやるだけだね」
懐からアトリエドライバーを取り出し、シャリアはいつものように腰に巻き付ける。ブランクライダーエキスのコルク栓を弾き飛ばしてからリフトに乗せ、その下にあるレバーを外側に引っ張る。
【サクセスミックス! Let's enjoy,ブッ、ブッ、ブランク!】
「せいやーっ!」
大きく飛び上がると、アトリエは両手を合わせて手刀にしてポイズンマテリィの頭に叩きつける。ポイズンマテリィが怯んだのを確認すると、アトリエはポカポカと殴りつけながら壁の方へと追いやり、中段蹴りでポイズンマテリィを壁に叩きつけて〆た。
しかし、当然ポイズンマテリィもこれでやられる程やわではない。口のような部分から紫色をしたゼリー状の弾をいくつか放ち、アトリエへの抵抗を始めた。
「おおああ危ない! なんかもう見るからにヤバそうなんですけど!」
「……クッソ、俺の方が、俺の方があんな馬鹿よりも戦えるのに……!」
拳を壁に打ち付け、悔しそうな声色でダツタは呟く。どこか苛立ちも感じられるその声は、誰にも届くことなく、聴かれることもなく静かに消えていった。
「ちょあああああー!」
手刀にした手を煩雑に振り回し、ポイズンマテリィに少しずつダメージを与えていく。反撃する隙を与えないよう連続して攻撃をしていたためにアトリエは無傷だったが、ポイズンマテリィは一瞬の隙を突いて攻勢に転じた。
「うわっ、ちょちょ、痛い痛い……わあっ!?」
流れるような連撃を受けて怯んだアトリエに、ポイズンマテリィは紫色の液体を噴射した。その正体はかなり毒性の強い液体で、アトリエの全身をどんどん蝕んでいく。
「あうう……うああ、これっ、すっごく苦しい……!」
「おい金髪馬鹿! 立て! 怪物が来ているぞ!」
「そんなっこと、言われても……うあっ!」
ポイズンマテリィは
反撃のために、その真っ赤なエキスに手を伸ばした。
「はあっ……これで……なんとか……できない、かな……」
【Let's play!】
【Inject!】
【サクセスミックス! Let's enjoy,ハッ、ハッ、ハイヒール!】
「はあっ……はあっ…………あれ? 治ってる! 流っ石私! 凄い! 完璧! 天才! ……うわあっ!?」
赤い渦を身に纏ってから吹き飛ばし、アトリエは新たな姿、ハイヒールMIXへと姿を変えた。赤いドレスのような意匠の装甲と脚部を覆うようなスカートが印象的な、女性らしい出立ちだ。
最大の特徴は『ハイヒール』となっている靴と、かなり強力な回復能力だ。戦闘向きな能力は一切ないため、素の戦闘力が要求される。
……また、同時にハイヒールという靴への慣れも必要としている。慣れていなければ、今のアトリエのように転んでしまうことになる。
「痛たた……でも、これでもう毒は怖くない! 行くぞーってちょっと待ってちょっと待って、この靴すんごい走りづらいんだけど!」
「おいふざけてる場合か! 前見ろ前!」
「私はふざけてないよ! ふざけてるのはこの靴で……うわあお!」
ポイズンマテリィの攻撃とダツタの罵声を一身に受けながらも、なんとかポイズンマテリィへ反撃しようとするアトリエ。しかし、やはりハイヒールという靴が激しい運動に向いていないためか、アトリエ自身も扱うことが出来ていない。
「んもー! こうなったらこっちだ!」
遂にハイヒールMIXの使いづらさにキレて、アトリエは調合したてのバーストライダーエキスを手に取った。火属性の素材を中心に調合した特別仕様のものだ。
【Let's play!】
【Inject!】
【サクセスミックス! Let's enjoy,バッ、バッ、バースト!】
「ここから私の反撃タイムだあ! いくぞー!」
「せいやーっ!」
勢い任せに駆け出し、アトリエなりの精一杯のストレートをポイズンマテリィに見舞う。が、しかし。
「…………はれ?」
「ボサッとすんな! 避けろ!」
「わー!?」
アトリエのストレートはまるで効いている様子がない。微動だにしないポイズンマテリィは一瞬困惑するも、すぐにアトリエに反撃の薙ぎ払いを入れた。
大きく後方に吹き飛ばされたアトリエは焦りながらも体勢を立て直し、再びポイズンマテリィへと向き直る。
「なんでか効いてない……なんでだろ、右手がダメなのかな……?」
「……とにかく、やるしかないや!」
改めて決意を固めると、アトリエは先ほどと同じようにポイズンマテリィに突撃していく。意味がないと知りながらもひたすらにパンチを繰り出し続けるが、当然ポイズンマテリィには一切ダメージは入っていない。
無意味かと思われた攻防に変化が訪れたのは、アトリエがキックを当てた時だった。
「とりゃーっ……うわああああっっ!?」
アトリエのキックが命中した瞬間、辺り数mの地面が抉れると同時にアトリエ・ポイズンマテリィ両者を大きく吹き飛ばす。巨大な爆発音は耳を劈きそうなほどに響き、またポイズンマテリィの身体に軽くヒビを入れていた。
突然の事態にアトリエもポイズンマテリィも、ダツタすらも理解できておらず沈黙の時間が続く。そこで、このまま何もしないわけにはいかないと、アトリエはもう一度ポイズンマテリィに向かい、飛び上がって右足を突き出した。
「はああああ!」
ダメージが大きく動けずにいたポイズンマテリィに避ける術はなく、そのままアトリエのキックを喰らって爆散した。少し離れた場所で観戦していたダツタの短髪をも靡かせる強烈な爆風は、暫くの間街に吹き続けていた。
「おおー……すごい」
ポイズンマテリィの件から数日後、シャリアは母と共に例の踊りを観に来ていた。合掌を捧げるようなポーズや戦火に苦しんでいるかのような踊りは、理屈でなく心を動かす何かを感じさせている。
「シャリアちゃんが生まれるもっと前にあったらしいんだけど…………やっぱり、命が失われるのって、悲しいことよね……」
「……お母さん」
「……ごめんね。暗い顔してちゃ駄目だよね。さっシャリアちゃん、続き観よう?」
「……うん」
「……なあ『カーラ』、今回の奴は少しやり過ぎなんじゃないか? シャリア、かなり苦しんでるように見えたが……」
「そう言われても、調整とかよく分かんないし」
「……マジかよ」
シャリア達が踊りを眺めている裏で、少年達は密かに集まり話し合っていた。黒髪の少年に咎められていたのは、金色の長髪を持つダウナー系の少女だ。今回送り込んだポイズンマテリィについて批判されている。
「……まあ、丁度いい機会かもしれない。考えていたことがあったから、近々それをやろうと思う」
「考えていたこと?」
「ああ……」
水色の髪の少女に軽く反応し、少年はその言葉を口にした。
「俺が直接、シャリアに会って組織の話をしようと思う」
とりあえず、現在まで登場しているライダーエキスのレシピを載せときます。括弧が付いているものは、括弧内のカテゴリに分類される素材ならなんでもOKという意味です。
ブランクライダーエキス 調合日数:1日 作成数:10
・(液体)×1
・(神秘の力)×2
バーストライダーエキス 調合日数:1日 作成数:2
・ブランクライダーエキス×1
・(燃料)×2
フライトライダーエキス 調合日数:1日 作成数:2
・ブランクライダーエキス×1
・(金属)×1
・(燃料)×1
シャウトライダーエキス 調合日数:1日 作成数:2
・ブランクライダーエキス×1
・(神秘の力)×2
ハイヒールライダーエキス 調合日数:1日 作成数:2
・ブランクライダーエキス×1
・なめし革×1
・(神秘の力)×2