お久しぶりでございます。ほんっとうにお久しぶりでございます。
長らくお待たせし申し訳ありません。ようやく戻って参りました。
あまりにも長く間が空いてしまったため、前回の内容などとうの昔に忘れ去ったという方がほとんどだと思われます。そんなわけで、前回のあらすじをオーズ風にやらせていただきます。
仮面ライダーアトリエ 前回のあらすじ!
一つ! 突如接触してきた普通魔法科所属の謎の少年、ラマン・マーチャンダイズ!
二つ! 全身にナイフが生えたマテリィ、ナイフマテリィが出現!
そして三つ! 謎の少年ラマンが、仮面ライダートリクシェントに変身!
……第7話、始まります。
ナイフマテリィ撃退の翌日。
シャリアの通うパラノーマル魔術学院は、新たに出現した仮面ライダー『仮面ライダートリクシェント』の話題で持ちきりだった。新たな仮面ライダーの登場と、未だ続くマテリィの襲撃。学校側も、日夜保護者たちへの対応に追われている。
これまで学校側の許可なくドライバーを使用していたシャリアだったが、これに関してはマテリィ撃退の功績もあり注意で済んでいた。そもそもドライバー自体シャリアの私物で、かつシャリアにしか扱えない、そして実際に学校を襲撃した怪人を撃退しているとなると、学校側も使用禁止にはしづらかったようだ。
しかしトリクシェントの出現で、児童生徒が率先して戦いに身を置く状況に疑念の声が増えた。
その生徒しか対処できないとはいえ、大人は静観するだけというのはどうなのか。
学校側は何も対策を取らないのか。
様々な声があるが、これらに対する学校側の対応は総じて『現状これ以上の解決策がない』となっている。もちろん教師陣も対応に当たったことが無くはないが、いずれも失敗に終わっている。完全撃破には、どうしても仮面ライダー達の力が必要なのだ。
「やらかしてくれたなラマン!」
「……ごめんなさい」
授業が終わり、帰宅してすぐのこと。
ラマン・マーチャンダイズは、父親からの叱責を受けていた。
理由はもちろん、『エンシェントドライバーレプリカ』を使用したことだ。
『エンシェントドライバー』というのは、歴史学者たる父らが調査の末に発掘したものだ。これを研究・解析し、可能な限り原物に近付けた模造品が『エンシェントドライバーレプリカ』。変身機能なども有しているが、最初にドライバーを使用した者しか装着できないなど、まだ不完全な状態だ。
ラマンの父親は自宅でもエンシェントドライバーレプリカの調整をしようと持ち帰っていたのだが、あろうことかラマンはそれを勝手に持ち出してしまったのだ。
「簡易化して誰でも使えるようにしたかったが、お前が勝手に持っていったからな。もうあれはお前を使用者として認めてしまった! お前以外誰も使えなくなったんだぞ!」
「……はい」
「……だが、家に持ち帰っていた以上俺の責任もあるし、お前だけが悪いとは思わない。お前もレプリカも無事だったのは幸いだ」
そう溢す父親だが、ラマンに向ける硬い表情に変化はない。レプリカを勝手に持ち出されたことよりも、変身資格を手に入れたせいで息子が怪物との戦闘に駆り出されてしまうのが何よりも不安だったからだ。それを、どうしても隠せないでいる。
「……ラマンが最初の使用者となった以上、没収しても怪物と戦える戦士がひとり減るだけだ。だから没収とかはしないけど……戦いに行って、傷だらけで帰ってくるような無茶はしてほしくない。そういう気持ちは、分かってほしい」
「……うん」
レプリカを持ち出した時にラマンの内にあった感情は、未知なる存在と出会った興奮と、その存在に対する好奇心だけだった。この道具は何だろう。面白そう。使ってみたい。そんな感情ばかりが溢れ、それ以外のことがまるで頭に入らなかった。親も、友人も、自分自身すらも、危険という言葉の外に置いたままだった。
父親の言葉を受け止め、ようやくラマンは自分の行いを省みた。一度の好奇心で、取り返しのつかないことをしてしまったこと。それはどうしようもなく変わらない事実だったが、それ以上にラマンの内側で更なる好奇心が育っていることは、ラマン本人すら未だ気付いていない。
錬金術科の初等部4年では、素材の属性や特徴について学んでいく。属性は火・水・風・土の4つ。素材ごとに持っている属性やカテゴリーが異なるため、調合の際は熟慮しなければならない。
「それじゃあ、青鉱石の属性を……シャリアさん」
「はい……えーっと、確か……水と土?」
「はい、正解です」
青鉱石というのは、浅めの洞窟を持つ鉱山でよく採掘される鉱石だ。鉱石の中では比較的数が多く、装飾品などによく利用されている。
廃坑などでも見つかるが、まともな処理をされないまま放置された危険物が数多くあるため、基本的には専門の業者以外は立ち入れないようになっている。それでも危険を冒して採掘を試みる若者は依然として後を絶たないが、そういう者達の中に無傷で生還できた例はない。
「同じ素材でも効力に差はありますが、効力が低いからといって全く使えないわけではありません。5年生や6年生になったらまた勉強しますが、特性や潜力というのも───おっと、時間か。それじゃあ、3時間目はここまで」
授業の終了を知らせるチャイムが鳴り響き、生徒たちに束の間の休息が与えられた。そのまま机に突っ伏して眠る生徒、近くの席の友人とお喋りを始める生徒など多種多様に時間を過ごしている中、シャリアの頭の中は新たに登場したトリクシェントに支配されていた。
自身の父親───実際には両親が作り上げたアトリエドライバー以外で仮面ライダーに変身した初めてのライダー。加えて変身者は、陽気ながらも謎の多い少年、ラマン・マーチャンダイズ。
ドライバーの正体や活動歴など、自身だけでは答えの出るはずのない疑問を膨らませ続ける。やがて脳がオーバーフローを起こしそうになったその時、1人の女子生徒がシャリアに近付いた。
「……ね、ねぇ」
「えっ!? あっ、あぁ、えっと……何、かな……?」
意表を突かれ身体を震わせたシャリアだが、すぐに向き直った。しかし、隠しきれない冷や汗は悠々とシャリアの頬を伝っている。
「その、そんなに大事な話でもないんだけどさ……最近、シャリアちゃんって変わったよね」
「変わった……といいますと?」
「
「転、入……」
女子生徒に言われ、シャリアは自身の記憶を探る。だが、他クラスに在籍していた憶えなどまるでない。恐らく自身が失った記憶であろうことはすぐに推察できたが、だとすれば自分は以前どこに在籍していたのか。母から錬金術を学び始めたのは、このパラノーマル魔術学院に入学するよりも前だったはず。自分が錬金術科以外の学科を選んでいる姿は全く想像できない。
「……ごめん、何か嫌なこと思い出させちゃった?」
深刻な表情に変わったシャリアを心配してか、女子生徒は不安げにシャリアの顔を覗き込む。それに対し、シャリアは慌てて笑顔を取り繕う。
「いやいや、そんなんじゃないよ! ただその、正直あんまり憶えてないかなーって、あはは……」
「そう……なんだ。ごめんね、変な話しちゃって。私、もう行くから」
「あ、うん……」
その時のことを、もっと詳しく教えてほしい。その言葉が出かかったものの、シャリアが口にすることは終ぞ叶わなかった。
(この感じ……前にもあったような)
「お、えっと、上位魔法専攻科のトップくんだっけ? 奇遇だね」
「黙れ金髪」
「そっちも金髪じゃん」
休み時間にトイレを訪れたダツタは、校内にて一躍時の人となったラマンに遭遇した。どちらも金髪翠眼であるが、服装と目つきに互いの差異が現れている。特にマジシャンを意識してかタキシードを着用していたラマンの方は、ダツタに比べ存在感に満ち溢れていた。
「そう言えば所属を聞いてなかったな。お前はどこの科だ?」
「普通魔法科。て言っても、俺の魔力は平均以下だけどね」
「……なるほど。よく分かった」
「『自分より下』って再確認できたかい?」
「……どういうことだ」
ダツタの目つきが変わる。猜疑心が、明確な敵意に変わった瞬間だ。
「目を見てれば分かるよ。君は怯えている。誰かより下になることを。そして、誰かより下に、一番じゃなくなった自分に価値がなくなることに」
「何が言いたい? 格好つけならあの金髪馬鹿の前でやれ」
ダツタは不快感を一切隠そうとしなかった。一触即発の空気が辺りを包む中、ダツタは不快感に耐えかねてラマンに背を向ける。
「トイレ、してかないの?」
「お前のせいでする気が失せた」
「ふーん……それじゃあ、最後にちょっとだけ、手品師の裏話に付き合ってくれよ」
「断る」
「……俺さあ、普通魔法科の中でも落ちこぼれなんだよ」
ドアノブに手をかけたところで、ダツタの動きが止まる。タイマーがセットされていたのか、同時に換気扇が動き出した。
「さっきも言ったけど、魔力が平均以下しかなくてめっちゃ苦労してるんだよ。授業で1、2時間やる気だしたらそれで終わりとか、そんなレベル」
「……話にならないな」
「だろ? だから、魔法の勉強にやる気出すの怠くなってきてさ。どうせ向いてないしって、投げやりになってた」
「……」
「そんな時に出会ったのが手品なんだよ。これが凄くてさ、魔法とか使わなくても魔法みたいなことが出来るんだよ。そっからスゲーハマったんだ。魔力が全然ない俺でも、魔法が使えるんだって思えるようになった」
「…………」
「……ま、何が言いたいかっていうと、自分の将来を変えるようなものに出会うのは大事ってことだ。……そういうのに、出会えるといいな」
「……才能のない奴が調子に乗るな」
結局、ダツタは用を足すことなくトイレを後にした。残されたラマンは、少し焦りながらも用を足してからトイレを去った。
もうほぼ日が沈んでしまった夕暮れ時、一体のマテリィが繁華街を闊歩していた。水色の薄い膜のようなものが黒一色の身体を包んでおり、今にも消え掛かっている夕日を反射して輝いている。
マテリィ―――ディペンデンスマテリィは、破壊行為の類を一切行っていなかった。ただただ目的地を目指し歩くのみで、マテリィの存在を知る者からは本当にマテリィの一種かと疑いの目を向けられるほどだ。
だが、それでもマテリィの端くれであることに変わりはない。いずれ悪行を働くであろうこの存在を、仮面ライダーが許すはずもない。
「おぉう……随分緊迫感のないマテリィだなぁ」
「ね。ま、どうせこの後なんかやらかすんだろうけど」
周辺の様子からマテリィの出現を察知したシャリアとラマンは、マテリィを探し出しその行く手を阻んだ。ディペンデンスマテリィの方もシャリアたちが目的だったようで、姿を認識した瞬間戦闘態勢に入った。だがそれもあまり覇気のあるものではなく、これまでのマテリィと比べ萎縮しているようにすら見える。
「それじゃ……こいつがやらかす前に退治しようか」
【Enter!】
「あ、ちょ、待って!」
【Let's play!】
変身の準備を始めたラマンに続き、シャリアもドライバーを取り出す。
「「変身!」」
【サクセスミックス! Let's enjoy,ブッ、ブッ、ブランク!】
【Ladies and gentlemen, welcome to the magic show!】
【ただいまより、『アノマロカリス』を公演いたします】
それぞれ仮面ライダーアトリエ ブランクMIX、仮面ライダートリクシェント アノマウェアに変身し、ディペンデンスマテリィと対峙する。ディペンデンスマテリィに纏わりつく薄い膜が、沈みかけの夕陽を反射して輝く。
「まずは私から!」
アトリエが飛び掛かり、ディペンデンスマテリィの顔面に蹴りを浴びせる。だが、ディペンデンスマテリィはそれを避けることもせず、そのまま顔面で受け止めた。蹴られたはずの顔面には傷一つなく、棒立ちするディペンデンスマテリィは『今のが攻撃か』とでも言いたげな様子だ。
「うそっ、効いてないんですけど!?」
「一旦離れて! 挟み撃ちにするよ!」
トリクシェントの言葉に従ってアトリエは身を引き、体勢を整える。同じくディペンデンスマテリィも体勢を整えてからアトリエへの反撃を開始するが、その動きはこれまでのマテリィとは比べ物にならないほど鈍かった。まるで鈍重な鎧を身に着けているかのような、そんな鈍さだ。
「「やあっ!」」
これ幸いとばかりに、アトリエとトリクシェントはディペンデンスマテリィを挟み左右から打撃を繰り出す。しかし、先ほどの攻撃同様効いている様子はない。
「グウゥ……」
ディペンデンスマテリィが最初に狙ったのはアトリエの方だ。抱き寄せるかのように腕を伸ばしてくるが、アトリエはそれを振り払って蹴りを浴びせつつ距離を取る。やはり、ディペンデンスマテリィにダメージは入っていない。
「おかしい……なんで攻撃が効かないの……!?」
「もしかすると……原因はこの膜かもね」
ディペンデンスマテリィを包み込む水色の薄い膜は、未だ夕陽を受けて輝いている。ディペンデンスマテリィの黒い柔肌によく映えて強く主張するものの、そこには確かな優しさがあった。
トリクシェントはこの膜こそが攻撃を阻んでいる要因だと考え、突破のため策を講じることにした。
「俺に任せて。考えがあるんだ」
トリクシェントはドライバーに挿入されていたカードを引き抜くと、代わりに新たなカードを取り出した。カードには、全体にハルキゲニアのイラストが描かれている。
【Enter!】
「さあ、新しいショーの幕開けだ」
【Show time!】
【Ladies and gentlemen, welcome to the magic show!】
【ただいまより、『ハルキゲニア』を公演いたします】
トリクシェントを囲うように出現した円形の赤いカーテンが開かれ、新たなるトリクシェントがその姿をのぞかせた。その名も仮面ライダートリクシェント ゲニアウェア。真っ黒なシルクハットと赤い複眼はそのままに、肩や背中にはいくつもの棘が生えている。銅のような金属光沢を放つ身体は、輝きの中に映るものを怪しく歪めている。
「さあ、ショーを始めよう」
トリクシェントはマジックステッキを出現させ、それを勢いよく振り上げた。その瞬間、トリクシェントの斜め後方に巨大なサソリモドキが薄紫の煙を纏いながらぼんやりと現れた。メートル法で表すなら、体高はおよそ5m。黒光りの身体は、ディペンデンスマテリィを覆う膜よりも怪しく輝いている。
サソリモドキは自身の尾節をディペンデンスマテリィに向けると、その先端から酸性の液体を勢いよく噴出した。
「ッ!?」
「おおお! すごい! なんか変な臭いするけどすごい!」
「臭いは我慢して。さあ、これでどうかな?」
やがて、ディペンデンスマテリィを包み込む膜は完全に溶けてなくなった。柔肌を晒されたディペンデンスマテリィはその場にしゃがみ込み、自身を抱きながら小刻みに震える。
「……」
「……」
「……なんだろう、倒すのが可哀想になってきた……」
「……俺も。でも、倒さないわけにはいかないし……」
【Show time!】
「……後で供養くらいはしようかな」
【The last magic trick, start!】
再度ドライバーのレバーを操作し、トリクシェントは周囲を薄紫色の煙で包んだ。更にアノマロカリス、オパビニア、ハルキゲニア、ウィワクシアなどの生物の幻覚が現れ、ディペンデンスマテリィを取り囲む。
「グルッ、グ……!」
幻覚はディペンデンスマテリィに一斉攻撃、同時に自爆した。後に残ったのは、ディペンデンスマテリィだった欠片だけだ。
「うーん、なんか可哀想だったなぁ……来世では幸せになりますよーに」
欠片に向かって手を合わせるアトリエ。陽は沈んでしまったために欠片は反射光による輝きを失っているが、アトリエたちにはそれがどこか煌びやかに映っていた。
改めましてお久しぶりです。久しぶりな割には戦闘描写が薄く、重ね重ね申し訳なく思います。次回はダツタくん(上位魔法専攻科所属、よくシャリアをバカにしてくる金髪翠眼男子)メインの回なので、またしても戦闘描写が薄くなります。
第8話はなるべく2月中に投稿できるようにしたいと思います。もしよろしければ、次回もよろしくお願いします。それでは……。