転生した世界で鬼の末裔が生きていくもん   作:あまてら

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オトノナルホウヘ

 

 

 

 

 絶対そうだ。アイツ、鬼舞辻無惨に違いない。って思ってたら、ものすごーく気になるところで追体験夢終わった。

 

「……んがっ!」

 

 早朝、めちゃふかふかな高級オフトゥンでわたしは目覚めた。

 此処はうん、お館様の御屋敷だ。昨晩はお館様の奥様である、あまね様が晩御飯を用意してくれたんだよね。和も洋もあって、筑前煮みたいなの美味しかったなぁ。それにデザートに氷菓子、アイスクリーム出て来て凄い感動した。牛乳、砂糖、卵黄の素朴味なのにどこか懐かしみある甘くて冷たいの。お店でもお高いのに家庭で出せるって流石お館様だわ。

 あ、レシピ教えてもらえば良かったけど、あまね様を目の前に緊張しちゃって聞きそびれてた。

 それとさ、まさかヒメミコさまと鬼舞辻が会ってたなんてさぁ、驚きなんだが。お館様に伝えた方が良いかな? でも続き見てからにした方が良い気がする。

 

「おはようございます八重野さま」

 

 部屋の外から声をかけられて飛び起きる。一気に頭冴えました。

 

「は、はい!」

「朝食の用意が出来ておりますが──」

「わ、支度します!」

 

 オフトゥンに名残り惜しくさよならをしたわたしは、そよ婆宅で学んだ早着替えで隊服を身に包み、敷かれてたオフトゥンを折りたたんで廊下を出る。で、教えてもらった洗面所で顔を洗って身支度整えて、急いで朝ご飯のある部屋へ入った。

 

「ごちそうさまでした」

 

 あー朝食の卵焼きもう一個食べとけば良かったなぁ。腹を八分目に食べ終えれば、お館様の五人のお子さんの内のお一人、"かなた"ちゃんがわたしの羽織りを持って来てくれた。

 

「どうぞ」

「ありがとうございます」

 

 わたしはそれを受け取って羽織る。数時間ぶり、羽織りちゃん。

 

「昨晩はお世話になりました。お館様とあまね様にもよろしくお伝え下さい」

「はい。お伝えしておきます」

 

 かなたちゃんとくいなちゃんに見送られ、呼ばれた隠の人に目隠しをされたわたしは、お館様の御屋敷を後にした。

 

「百合の君、何処へお連れしましょう?」

 

 わたしを背負う隠の人が御屋敷を出て直ぐに聞いてくれたんで、それならと思ってわたしはリクエストしてみる。

 

「あの、炎柱の療養先、わかります?」

「療養先ですか? ええ。わかりますよ」

「ならお願いがあるんですが」

 

 炎柱がいる療養先に自分を送ってほしいと頼むと、隠の人は快く受けてくれた。

 

「着きました。此方です」

 

 リレー形式で到着後、目隠しを外されてわたしが目にしたのは、新たな別のお屋敷だった。

 

「このお屋敷は……」

「蟲柱である胡蝶しのぶ様の御私邸で、【蝶屋敷】とも呼ばれてます。此方に炎柱様が療養されているとの事です」

 

 蝶屋敷ですと。わぁ、聖地巡礼の気分再びです。カメラ無いから心のフィルターに焼きつけました。

 蟲柱の私邸兼、負傷した隊士の治療所となってる場所で、どうやら此処に炎柱がいるみたい。

 

「では私はこれで。牡丹の君、それでは!」

「ありがとうございました!」

 

 去る隠の人に手を振る。しかしまあ、会う隠の人皆んなが『〜の君』って呼ぶんだけど、どこまで浸透してんだろ。

 

「あの、どちら様ですか?」

 

 声に振り向いたら、隊服着た髪型ツインテの女の子がいた。確かこの女の子は。

 突然来たわたしへの警戒心を取り払いつつも、きりっとした表情の女の子。髪飾りの蝶々可愛い。

 

「あぁ、ごめんなさい。わたしは八重野ナツといいます。此方に炎柱が療養されていると聞いて訪ねて来ました。今回の任務で一緒だったので、炎柱の今のご様子を知りたいんですが」

「隊士の方でしたか。私は神崎アオイと申します。すみませんが、炎柱様はただいま面会謝絶中です」

「お館様からお聞きしたんですが、まだ意識戻られて無いんですか?」

「はい。なのでまた日を改めていただいて」

「そうですか……」

 

 突然だもん。仕方ないよねって、蝶屋敷から去ろうとした時だった。

 

「うおおおおおああああ! よくもよくも炭治郎おおおおおお!!」

 

 知った殺気。わたしはアオイちゃんの背に隠れた。両手に包丁持った鋼鐵塚さんだ。

 

「どこだああああーーー!!」

「あ! 勝手に!」

 

 鋼鐵塚さんは許可も取らずに蝶屋敷の敷地内へ入って行った。

 

「……何やってるんです?」

 

 背に隠れたわたしを不審がってアオイちゃんが言う。

 

「ごめんね、へへへ。そ、それじゃあ出直して来ます。では!」

 

 鋼鐵塚さんが中に入って行ったのならわたしは帰ろう。わたしはアオイちゃんにさよならをして蝶屋敷からダッシュで去った。多分、鋼鐵塚さんが中へ入って行ったのなら、竈門くんたちもこの中で療養してるに違いない。

 煉獄さんは気になるけど、また今度にしよう。

 それから数日。任務、任務、任務。単体はほぼ無く、二人でとか三人でとか。隊士の心のアシスト担当ばかり。

 

「芍薬の君、見てますか? 必ずやりますよ!」

「はいしっかり前見てー」

「こっちも見て下さい! 私こそやりますから!」

「はい見ましたー」

 

 わたしの出番無く皆んながやる気に満ちてる。わたしは楽なんだけど、これで良いのかなあ。ま、隊士の死亡率低下してるしWINか。

 強そうな鬼には当たらない。というか、当たってほしくないよね。無限列車編での猗窩座しか知らないけど、あんな強そうなの連チャンはキツイよ。兎に角忙しくてあんまり休む暇ないから、そよ婆にも一言文みたいなのしか送れてない。

 返事は大抵『まとめて送れ』だったり、『鍛錬しろ』だったり。

 そうそう、血の能力だけどさ、お館様との一件から能力を使うにも少し慎重なったと自分でも思うわ。(鬼以外で人には使う機会が無い)

 

 そんなこんなで早くも四ヶ月経った。忙しい毎日だった本当に。

 炎柱だけど、あれから暇なくて蝶屋敷にも行く機会ないから様子なんて知り得ないし、そもそもが一般隊士のわたしが炎柱に見舞いに行くなんて大それた事出来ないし。でも頭の隅で気にはなってたから、時々会った隠に聞いたりしたよ。

 意識はあの日から三日後に戻ったんだって。砕けた肋骨のせいでひと月は寝たきり。潰れてた筈だった目は、わたしの血のお陰だったのか原形をとどめるまでに回復してたみたいだけど、視力も以前より落ちてしまったらしい。

 時間が経過し過ぎてしまったから、今更わたしがもう一度炎柱に血を上げても遅いよね。てか拒否されるかも……。

 

「──で、『芍薬の君』、『牡丹の君』、『百合の君』ってのはお前か?」

 

 任務の合間の癒しである甘味処でひとり餡蜜食べてたら、音も無くわたしの座ってる席の前に現れた。

 あの音柱が。

 

「っひ!」

 

 吃驚して椅子から落ちそうになったわ。あまりの派手さに。

 

「それ、早く食い終われ。話がある」

「え!」

「早く、な」

「え、あ、はい」

 

 まだ食べてる最中でしょーが。というツッコミを入れたいのを我慢しつつ、突然の柱登場に動揺を隠せないわたしは、餡蜜を無理矢理口へかきこんでお茶で流し込み、先に店を出た音柱を追った。

 

「おっせーよ」

「いやこれでも秒で出ました!」

 

 甘味処の裏の壁に背をもたれさせて立っている。輝石をあしらった額当て。二の腕には金色の腕輪。赤と緑に交互に塗られた爪と、左目に近代的なパンク風の化粧。筋骨隆々。そしてめちゃくちゃに長身。リアルで見たら更にデカく感じるわー。

 

「俺を知ってるよな?」

「音柱、ですよね?」

「正解」

「一般隊士のわたしに何かご用ですか?」

 

 柱が何故わたしのところへと疑問を投げた瞬間だった。音柱がわたしを壁に押し当て、壁ドンしてきたのだ。前世──、少女漫画とか恋愛ドラマとかで見てた乙女憧れのアレよ、アレ。

 

 トゥンク……。

 

 とはならなかった。前世でも、今世でも初めての壁ドンなのに。

 

「うぐっ!」

 

 音柱が強引にわたしの顎を手で鷲掴み、自分の顔を近づけて来た。うん、凄い良い顔面に圧倒したわ。

 

「なんとかの君って言われてっからどんな女かと思ってたんだが。確かにツラはめちゃくちゃに良い」

「むぐぅっ! んな、なんなんれすぅか?」

「お前に任務だ。ついて来い」

 

 顎を放されてやっと壁ドンからも解放。

 

「に、任務?」

「良いから黙ってついて来やがれ!」

 

 急過ぎて頭ついていけてない。そしていつの間にか音柱先に走って行った。速っ。柱速っ。

 

「え、え、まって下さい!」

 

 ついて行くどころか見失うわ。あーもう米粒くらいにしか見えない先にいるわ。

 

「任務って、何の?」

「っだああ! おっせええええよ!!」

「っヒイイ!?」

 

 米粒だった音柱が瞬時でわたしのもとへ戻って来た。吃驚し過ぎて心臓止まりかけたね。

 

「日が暮れるぞ!」

「うぇ!」

 

 音柱はまるで米俵を担ぐみたいにひょいってわたしを担ぎ上げた。

 

「捕まってろ!」

「えええっ」

 

 意味わかんないまま音柱に担がれたわたしは、そのまま何処かへ連れて行かれるのでした。

 はやーい。わたし、風になってる!

 

「あ、あのー、一体どこへ?」

「あ?」

「一体、どこへー?」

「まだ他に必要な奴拾ってから教えてやるよ」

「はあ、」

 

 わたしは米俵。軽く現実逃避してたら次は音柱が訊いてきた。

 

「お前、煉獄とどこまでいってるんだ?」

「……え。はあ?」

 現実ただいま。音柱が意味のわからない事を質問してきました。

 

「あの、すみません。意味がわからないのですが」

「デキてんだろ? ったく煉獄の奴も隅に置けねぇよなぁ。せめて俺には言えっての!」

「だからあの! おっしゃってる意味がわかんないんですけど?」

「は? デキてんじゃねぇの? お前ら?」

「は、はああ?」

 

 音柱は急ブレーキしたみたいに立ち止まって『ちげぇのか?』って言ってる。

 

「何でそう思われたのかわかりませんが、わたしは炎柱と何の関係もありませんよ。任務がたまたま一緒になっただけの、柱と一般隊士ってだけです」

「命危うしって時に接吻するか? 流石"百合の君"はヤル事が派手でいらっしゃる」

「せっ……!」

 

 接吻って言われて凄く恥ずかしくなった。つーか呼称をめっちゃ小馬鹿にしてんな、この人。

 

「あれは! 人命救助です! キ、接吻じゃありません。」

「っは。 何が人命救助だ。血を飲ませる為に口移しなんて、よっぽどの間柄でもなきゃ普通はやんねーだろが」

 

 走りを再開させて音柱は鼻で笑う。

 

「だからあれは本当に切羽詰まってて。ていうかそのまま口へ流し入れたら詰まって吐き出しちゃうかと思って! それに人命救助なんだから炎柱じゃなくてもやりますよ……!」

 

 ってあれ? 音柱って何でそこまで詳しく知ってんだろかって思った。

 

「お館様から聞いたんですか?」

「聞いたっつーか、隣の部屋にいたぜ? 俺ら」

「え!? 俺ら? いつ?」

「お前がお館様に呼ばれた日、俺たち柱全員も呼び出されたんだよ」

 

 あの日柱たちは急遽集められ、炎柱不在の御前会議が行われたらしい。上弦によって負傷した炎柱が療養中の間、管轄地域の割り当ての事や上弦の猗窩座についての事。そして、炎柱を救ったわたしの事について。

 

「お前の話はにわかには信じ難ぇ。てめぇの血で人を治せるってな。だが現に煉獄は生きてる。報告じゃ腹に大穴空いたってのに。だからお館様に頼んで隣の部屋で聴かせてもらってたんだよ。お前との会話を」

「じゃああの時の……」

 

 謎のガタ音って、柱の誰かが出した音だったの? わたしは脳内顔面蒼白というか、お館様との会話や炎柱を救った行動の全て。終わった後の独り言。それらを柱全員に知られてしまったという、なんとも言えない恥ずかしさで泣きそうになった。

 

「是非とも"芍薬の君"には『自分の行動で証明』して頂きたいと思いましてね。いやあ、急ぎの任務で女の隊士を探してたから丁度良かったぜ」

「は、はあ……」

「っで、お前は煉獄とも別に何でもねぇんだよな?」

「はい。何でも、ないです」

「だったら良い。関係ねぇならお前を遠慮なく使える」

 

 何が含みありそうなんだが。わたしはそれ以上何も返さなかった。

 

「着いたぞ」

「きゃん!」

 

 やっと着いたと思ったら、雑に地面へボトって落とされた。額から打ったしマジ痛い。

 

「痛いんですが。もっとちゃんと降ろして下さい」

「直ぐ治んだろ。我慢しろ」

「いや夜限定なんで!」

 

 仮にも、いやわたし超絶美少女よ? 少しは優しく扱ってくれてもって言おうとしたけどやめた。更に雑に扱われそう。そよ婆みあるわ。

 で、誰かを探してる様子の音柱についてって気づいた。此処、蝶屋敷だ。

 

「誰か探してるんですか?」

「まあな」

 

 初敷地内。わぁ、やっと入れたーって思ってたら、アオイちゃんが走ってやって来た。

 

「どうなさいましたか?」

 

 アオイちゃんは音柱を認識してて、そしてわたしへと目を移す。

 

「あなたは……」

「お久しぶりです。八重野です」

 

 笑って返したら、隣に立つ音柱が『よし』って言った。何がよしなのかと思ってたら、今度はアオイちゃんを米俵みたいに担ぎ上げた。

 

「きゃあ!」

 

 そりゃあアオイちゃんも驚きます。

 

「な、何するんですか! 降ろして下さい!」

「音柱、任務で他に必要な奴って、彼女の事だったんですか?」

「空いてる女の隊士が必要でな」

「に、任務!?」

 

 アオイちゃんは任務って聞いて顔を青くさせる。そういえばアオイちゃんて確か……。って思い出そうとしたら、音柱は次の獲物を探すみたいに動き出した。

 

「お、降ろしてっ!」

「あの音柱、アオイちゃん嫌がってます」

「るっせーな。邪魔すんな」

 

 必死に逃れようと暴れるアオイちゃん。止めようとしたけど、音柱は聞き入れようとしない。

 

「は、はなして下さいー!」

「やめてくださいー!」

「誰かー!」

 

 アオイちゃんの声を聴いてか、おかっぱ頭、おさげ、三つ編みのそれぞれ蝶飾りをつけた女の子三人が現れた。

 

「何だお前達は?」

 

 音柱は三つ編みの子を見ると『よし』ってまた言って、反対の手で掴んで担いだ。

 

「え! 音柱、その子もですか?」

「これでいっかな。おい行くぞ八重野」

 

 追いかける残りの女の子たちを無視し、アオイちゃんと三つ編みの子を担いで音柱は蝶屋敷から出ようとした。

 

「ま、待って……はなっはなっ」

「誰かー!」

 

 え、大丈夫なんこれ。って思ってたら、鴉が空へ飛んでって、奥からもう一人現れた。蝶飾りにサイドテールの可愛い女の子。あ、この子はか、か、カナ……。

 

「あっ! カナヲさまーー!」

 

 おかっぱの子が名前呼んで思い出した。そうそう、カナヲちゃんだ。

 

「うるせぇな。黙っとけ」

「助けてカナヲ!」

 

 カナヲちゃんは固まってた。きっとどうしたら良いかわかんなかっただろう。

 だけど、カナヲちゃんは動いた。音柱に連れて行かれそうな二人を掴んで、必死に止めようとしてた。

 おー、カナヲちゃんってコインの子だよね。主人公に心動かされちゃった子よね。

 

「地味に引っ張るんじゃねーよ。お前、さっき指令きてただろうが」

 

 カナヲちゃんがそれに答えないでまだ止めようとしてるので、音柱が苛ついて怒鳴り始める。『何とか言えよ!! 地味な奴だな!』って。

 もー、どう見たって音柱人攫いの図よ。

 

「と、突撃ーーーー!!」

 

 おかっぱの子とおさげの子たち参戦で音柱にしがみつく。わぁ、頑張れ二人とも。

 

「女の子に何してるんだ! 手を放せ!!」

 

 そこへ現れたのは主人公、竈門くんだ。四ヶ月ぶりである。今のこの図見て目が点になってた。

 

「人攫いです〜っ助けて下さい!」

「この馬鹿ガキ……」

「あ」

 

 竈門くんが高くジャンプした。確かめっちゃ痛いらしい頭突きを音柱にしようとしてる。でも、音柱は目にも留まらぬ速さでおかっぱとおさげの子、カナヲちゃんをも振り解いて消えた。

 ううん、屋門の上の瓦屋根の上にいた。

 

「愚か者。俺は"元忍"の宇髄天元様だぞ。その界隈ではド派手に名を馳せた男。テメェの鼻くそみてぇな頭突きを喰らうと思うか」

 

 幻覚だけど、音柱のバックに『ドヤァァン』て文字見えたわ。

 

「アオイさんたちを放せ! この人攫いめ!」

「そーよそーよ!」

「人攫い! ヘンタイ!」

「よっ! 人攫い!」

「ヘンタイ! ヘンタイ!」

「放せヘンタイ!」

「よっ! ヘンタイ!」

「二人を放してー!」

 

 さりげわたしも竈門くんの背後で合いの手入れながら参加してみる。

 

「オイコラテメェら! 誰に口利いてんだコラ! 俺は上官! 柱だぞ!!」

 

 音柱怒ってるな。わたしのはバレてないみたいでよかった。

 竈門くんは口を『むん』ってさせて、『お前を柱だって俺は認めない!』って強気に反抗してた。言うねぇ、竈門くん。

 

「お前が認めないからなんだ! この下っ端が脳味噌腐ってんだろオイ!」

 

 竈門くんと音柱がわーわー言うとりますが、わたしはそのやり取りを交互に見つつ、今日食べた甘味処の餡蜜を思い出してレシピ聞きそびれたから次は聞けたら良いなぁ、とかって考えてた。きっと竈門くんはわたしに気づいてないし、良いかなって。こういう時は空気に徹しよ。うん。

 音柱は今回の人攫……じゃなくて任務で女性隊士が必要だったからってやっと説明して、蟲柱の"継子"じゃなければ許可とる必要ないとも言ってますが、絶対後から蟲柱に怒られそうな気がするんですがね。

 

「なほちゃんは隊員じゃないです! 隊服着てませんから!」

 

 おかっぱの子が泣いて訴える。したら音柱『じゃ、いらね』って放り捨てた。酷っ。

 

「人には人の事情があるんだから! 無神経に色々突き回さないでいただきたい! アオイさんを返せ!」

 

 竈門くんが訴えると、音柱は苛立ちよりも呆れるように竈門くんを見下ろして言った。

 

「ぬるいねぇ。こんなザマで地味にグダグダとしているから、鬼殺隊は弱くなっていくんだろうなぁ」

 

 竈門くんはぐぬぬしたけど、キッと音柱に挑戦的な目を向ける。

 

「アオイさんの代わりに俺たちが行く!」

 

 どっから駆けつけて来たのかわかんないけど、音柱を挟むように嘴平くんと我妻くんも現れた。

 任務帰りかな? 二人共、竈門くんと同じくアオイちゃんの代わりを願い出た。

 一瞬、ビリッとした空気になったけど、音柱はあっさりとこれを受けてアオイちゃんを解放した。

 

「ただしお前ら、絶対俺に逆らうなよ? 勿論お前もだぞ八重野!」

「ええ!」

 

 わたしが声を上げると、竈門くんたちがやっとわたしに気づいてくれた。

 

「八重野さん!」

「ややや、や、八重野さん! きゃー! 八重野さんいたああ!」

「百合女じゃねーか! おいおっせーぞ!」

「お久しぶり、だね」

 

 久しぶりだねーって皆んなで笑ってたら、『行くぞコラ』ってわたしたちの首根っこ引っ張って音柱が蝶屋敷から出る。ぐえー。

 

「炭治郎さん、皆さん、お気をつけて!」

 

 アオイちゃんやカナヲちゃん、三人娘に心配そうに見送られ、わたしたちは出発しようとした。

 

「まさか八重野さんと同じ任務だなんてグフフっ! ワクワクしちゃいますね! いやぁ、今日もお綺麗ですね!」

「オイ百合女、教えろ!」

「四ヶ月ぶりですか? お元気そうで何よりです!」

 

 三人がそれぞれにわたしに話しかける。どれから答えようかな。

 

「テメェら集中しろ集中!」

 

 わちゃってたら音柱に怒られた。

 

「あ? オイおっさん、ならどこ行くのか教えろ!」

 

 嘴平くんが音柱をおっさん呼びした。強。殴られるよ? って心配してたら、前を歩く音柱が立ち止まってこう答える。

 

「日本一、色と欲に塗れたド派手な場所──」

 

 わたしはごくりと唾を飲み込んで続きを待った。

 

「鬼の住む、"遊郭"だよ」

 

 

 

 

 

 

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