転生した世界で鬼の末裔が生きていくもん   作:あまてら

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神託

 

 

 

 

 任務先が遊郭って言われて、わたしたちは四人ともぽかん顔だった。

 あ、正しくは三、いや二人だけかも。我妻くんはどういう場所がわかってたっぽいし、わたしは、何となくわかる。前世で知ってるからかな。ドラマとか漫画でも題材であったりしたし、めちゃくちゃ詳しいわけじゃないけどね。

 

「いいか? 俺は神だ! そしてお前らは塵だ!」

 

 で、音柱のこの発言。イタイヨーコワイヨー。

 

「先ず最初はそれをしっかりと頭に叩き込み、更にねじ込め! 俺が犬になれと言ったら犬になり、猿になれと言ったら猿になれ! 猫背で揉み手をしながら俺の機嫌を常に伺い、全身全霊でへつらうのだ!」

 

 念押しに『俺は神だ』って言い終えたこの場はし〜んである。決めポーズまでしちゃったよこの人。

 わたしはいたたまれない気持ちになったし、横にいる我妻くんもめっちゃ引いて見てた。うんうん。

 

「すみません!」

 

 竈門くんが手をあげる。どした。

 

「具体的には何を司る神ですか?」

 

 竈門くんは天然さんなのかな?

 良い質問だ。お前は見込みがある。って音柱がアンサーを出そうとしてます。

 

「派手を司る神、祭りの神だ!」

 

 本気で答えてそうなのがもう恐怖だ。

 嘴平くんが『俺は山の王だ』ってこの流れで発言した時、また空気変な感じになってさ、音柱それになんて返すんだろって思ってたら、

 

「何言ってんだお前……。気持ち悪い奴だな」

 

 ってめっちゃ引き気味で嘴平くんに言ってて頭抱えちゃったよわたし。

 音柱って、わたしとは違う次元で生きてる絶対。

 

「あの、そろそろ行きませんか?」

 

 何とかしたい、この場の阿保な空気感。蝶屋敷出てまだ数歩よ。アオイちゃんやカナヲちゃんに三人娘がまだそこで見送りする為に立っているよ。

 わたしが手をあげて言うと音柱が、『お前空気読めねーのな。出発前の余興だろ楽しめ』って呆れられた。

 

 は? 

 

 めっちゃぶん殴りたくなったけど、チキンだからとびきりスマイルで返した。

 

「さて、花街までの道のりの途中に藤の家あるから、そこで準備すっぞー」

 

 音柱はスッと流れを切り替えると『ついて来い』っつーて、一人先にドロンするみたいに走って行っちゃった。

 

「はえええ!」

「これが祭りの神の力……!」

「いや、あの人は柱の宇髄天元さんだよ」

「ま、待って下さい音柱ーー!」

 

 走りながらの嘴平くんと竈門くんの天然というか阿保さに付き合っていたら日が暮れるかもしれない。

 わたしはツッコミもせずに必死に走りました。ツラいです。日頃の行いというか、鍛練不足であります。

 

「オイ百合女! お前! 説明はどーした!」

 

 嘴平くんが忘れてんじゃねーぞって、わたしの隣に来て言う。ああ、そうだ。てかこういう情報っていうのは隊士全員に共有されるんじゃないのね。どうでもいいのは広まるのに。

 

「あれはね、実はさ」

 

 わたしは嘴平くんに自分が稀血であり、夜だけ自身や他人の傷を治せる事を教えてあげた。人命救助だよってね。

 

「どんな怪我もですか?」

 

 話を聞いていた竈門くんが目をキラキラさせてる。尊敬の眼差しだ。嬉しい。あああ、悪い癖が……。

 

「首折れてもいけるよ。後病気とかも。風邪なら一滴で即効かな」

「わあ! すっごいです!! 八重野さん!」

「えへへっ」

「マジか! じゃあ今すぐ首折って見せてくれ!」

 

 嘴平くんは『見てみたい!』って無茶な頼みしてきたけど、今は夜じゃないし急には無理だよって謝った。うん。

 

「ややや、八重野さん! 炎柱を救ったああ、ああの、く、くく口での事についてな、な、んですがぁ! 八重野さんはァ! 炎柱とそういうご関係なんですかァ!?」

「それは……」

 

 我妻くんも気にはなってたみたいで、でも稀血云々よりも炎柱との関係に興奮気味な様子だったから、そこはちゃんと炎柱の為にも否定しておいた。

 で、話をチート血へ戻しちゃう。

 

「後ねー、わたしの血で鬼倒せちゃうんだー」

「ほ、ほ、本当ですか八重野さん! 凄い! 凄いなぁ!」

「そ、そうかなぁ?」

「はい! 凄いです八重野さん!」

「えへへ〜〜。それほどでも〜」

 

 悪い癖発動。某幼稚園児笑いしてしまいました。竈門くんって煽てるの上手いなぁ。

 

「あ、ねえ竈門くん」

 

 そうだ。竈門くんたちに聞きたい事があったんだった。 蝶屋敷にいたなら、現在進行形の炎柱の様子を耳にしてるんじゃないかって思った。

 

「煉獄さんですか?」

「うん。任務続きで全然炎柱のお見舞いにもいけなくてさ、隠の人から教えてもらって少しはきいてるんだけどね」

「俺たちあれから──」

 

 訊けば暫くは面会謝絶の炎柱とは会えなかったんだって。それでアオイちゃん経由で知ったのが、わたしが隠から聞いた状況プラス、炎柱の弟くんが一人で何度も様子を見に訪れていたんだけど、意識を失ってるひと月の間、父親は一度も来なかったらしい。

 訳アリかな。理由は竈門くんも訊けてないって。そりゃあまあ、訊いて良いのか悩むよね。

 

「ひと月過ぎでやっと煉獄さんには会えたんです」

 

 寝たきり状態かもしれないと思っていたら、炎柱はベッドから出て早くも鍛練を始めていたそうだ。一番気になっていた左目の事だけど、やっぱり少し視力が落ちてるみたいで時々見えなくなる時もあるらしい。

 "柱と"しては完全に機能しないのでは。と引退説も囁かれている中でハンデを物ともせずに、炎柱は現在進行形で鍛錬の日々を送りながら完全復活を目指しているのだそうだ。

 

「煉獄さんは本当に凄い。俺たちに常に笑顔で、痛みなんか屁でもなさそうで。あの時の俺なんて身体中痛くて動くのも嫌でやっとだったのに。……まだまだだなぁ」

 

 炎柱の鍛錬していた姿を思い出しているのか、竈門くんは自分と比較して弱音を吐いた。

 

「竈門くん。自分にもっと自信を持っても良いと思う。まだ少ししか君の事知らないけど、上弦の鬼を前にして震えてるだけだったわたしにはさ、竈門くんが物凄く頼もしかったんだから」

 

 危うく、少年漫画の主人公なんだからこれから先絶対強くなるポテンシャルあるよって言いそうになった。危ない危ない。

 

「た、頼もしいっ! でしたか俺は!」

 

 竈門くんは顔を茹でタコみたいにした。

 

「わたしが言っても何の励みにもならないだろうけど、君は妹さんの為にも人一倍頑張ってるんだもん。これからの人だよ。自分上げていこう?」

「は、は、はい! 俺、自信持ちます!」

「うん!」

 

 わたしが笑って返すと、竈門くんは更に顔を赤くさせて前を走って行く。したら嘴平くんと我妻くんがわたしを間にして『ずるいずるい』言い出した。

 

「惣一郎だけなんかずりぃぞ!!」

「そうですよおお八重野さん! 炭治郎だけじゃなく俺にも元気出る言葉下さいい!」

「し、仕方ないなぁ」

 

 なんてわちゃわちゃしたやり取りを二人としつつ、なんやかんやでやっと藤の花の家紋の家(藤の家)に着いた頃。夕日が落ちて辺りがすっかり真っ暗に。音柱は既に中へ入ってて、わたしたちが部屋に通されるや否や『遅え!』って怒鳴られました。お喋りしながら走ってた事は内緒です。

 

「……で、お前らの任務だが、遊郭に潜入したら先ず俺の嫁を探せ。俺も鬼の情報探るから」

 

 藤の家の人が出してくれたお菓子を食べながら聞いてたら、音柱がとんでもない事言うもんだから喉に詰まりかけた。

 

「はあ? ふざけないでいただきたい! 自分の個人的な嫁探しに部下を使うとは!」

 

 我妻くんが『異議あり!』つーて怒っちゃった。うんうん。同意。

 それに反論したのは音柱。『勘違いすんな!』ってさ。

 

「馬鹿かテメェ! 俺の嫁が遊郭に潜入して鬼の情報収集に励んでんだよ! 定期連絡途絶えたから俺も行くんだっての! そしてもう一度言う! 馬ァ鹿!」

 

 花街は鬼が潜む絶好の場所であると思ってた音柱は、客として潜入した時に尻尾を掴めずにいたらしい。で、客よりも内側って事で、優秀なくのいち忍者のお嫁さん三人を遊郭へ潜入させてたんだって。

 なるほどねって納得はしたけど、それを始めに言ってよって思いました。我妻くんは『妄想でしょ?』ってまだ納得いってなくてボヤくんだけど、音柱がイラっとして、鴉経由で奥さんから届いた手紙の束を我妻くんに投げつけた。

 

「随分と多いですね。かなり長い期間潜入されてるんですか?」

 

 竈門くんが手紙の束を拾い上げ、中の手紙に目を通しながら問う。

 

「三人いるからな、嫁」

 

 さらりと答える音柱にわたしたちは唖然とした。三人ってマジかエグいわー。

 

「三人!? よ、よ、嫁が三、テメっ……テメェ! 何で嫁が三人もいんだよ! ざっけんな──────おごウェっっ」

「何か文句あるか?」

 

 ぎゃーついた我妻くんは、キレた音柱に腹パンされて気を失った。南無。

 

「すみません、あの。手紙で、『来る時は極力目立たぬように』と何度も念押ししてあるんですが。具体的には俺たちはどうすれば良いんでしょうか?」

 

 竈門くんが恐る恐る、手紙に書かれていた内容を確認しながら音柱に質問した。

 

「そりゃあまあ、変装よ。不本意だが地味にな」

 

 そしてわたしたちに課せられたのは、音柱が事前に絞った怪しい三つの店にそれぞれ変装して潜入し、奥さんを捜して情報を得る事。

 "ときと屋"の【須磨】、"荻本屋"の【まきを】、"京極屋"の【雛鶴】。この三人が音柱の奥様ですって。

 隣に座ってる嘴平くんが、『もう死んでるんじゃね?』って失言してからの音柱が腹パン決めて嘴平くん失神までの流れが一通り終わり、音柱が頼んでいた物が藤の家の人によって運ばれて来た。

 

「これは竈門、こっちは嘴平、それは我妻な」

 

 変装道具やら衣装やら。音柱がそれぞれに選んで物を渡す。

 

「お前はこれ」

 

 わたしも渡される。どこぞの貧しい村娘Dの役なのか、着古した紅色の木綿の着物だ。

 

「わかるか? 変装だぞ変装。服着てそれつかって髪型変えたり、化粧して女に化けろ」

「は、はあ」

 

 男の子三人が化粧道具を前にして固まってる。使う事なんて一生にも無いよね。

 

「ではわたしも着替えてきます」

 

 よいしょと立ち上がって二つ隣の部屋に移動したわたしは、村娘Dになる為に着替えをしようと隊服を脱いだ。集落ではこういう格好だったなぁって懐かしさくる。

 あ、着る前にサラシちょっと緩めよう。

 この時代の下着事情って微妙よね。この前宿の女将さんに聞いた乳バンドとかっていうの買おうかな。和装洋装どっちもイケるみたいだし。

 

「よし!」

 

 って着替え終えて皆んなが居る部屋に戻ろうとした時、部屋の出入り口に音柱いて腰が抜けた。

 

「おと、おと、音柱! い、いつ入って来たんですか!?」

「元忍者舐めんな」

「舐めんな言われましてもっ。ていうか、わ、わたしが着替えてるの見てたんですか?」

「別に見たところで減りもしねぇだろ」

「減ります減ります。セクハ……、覗きなんて失礼です!」

「あーはいはい。鬼の末裔とかってぬかす女の裸に興味ありました。悪かったな」

 

 これで良いかって言う音柱。いやいやもう開き直りの全く悪びれてなくて引くわー。ド派手に変態なのかよこの柱。こっそり入って来てんのに堂々と居るの意味わからん過ぎ。わたしの下着姿無断で見た罪で目玉を穿り出してやりたい気持ちになる。

 

「ところでお前、歳は幾つだ?」

「……18ですが」

 

 唐突に本題入って思考ついていけない。

 

「竈門たちガキ三人は下働きで客取らねぇ見習いで暫く過ごせんだろうが、お前は適齢だし顔もすこぶる美形。芸事色々仕込まれながら直ぐに客取らされる事になるかもしれねーからな。それを伝えておいてやろうと思って」

「ええ!!」

 

 竈門くんたちの前で言うのはアレだから、わたしに配慮したんだぞっと音柱言うけどさあ、気遣いどころが違うっていうか、遊郭に潜入ってあまり深く考えてはなかった自分も馬鹿だけどもさあ、そんなガチめ任務だったの? てっきり数日下働きしながら過ごせるのかと思ってたんだが。

 

「え、嫌です」

「嫌です、じゃねーよ!」

「だってお客取らされるなんて任務聞いてません!」

「かも、しれねーって言っただろが」

「遊郭がどんなところかってわたしだって多少はわかりますよ。鬼殺隊に入らなきゃわたしみたいな孤児の行く先の一つが……だったんですから。なのに、なのに……」

「例え客取ってもお前なら────」

「あーあー聴こえないー!」

 

 確実に下系の事言ったと思うから耳を塞ぎました。

 

「俺が始めに言った事忘れてないよな? 俺が神だって言った事」

 

 まさか冒頭で言ってた『俺が犬になれと言ったら犬になり、猿になれと言ったら猿になれ』のくだりの事言ってるのかな。

 

「遊女になれと言ったら遊女になれって言うんですか?」

「わかってんじゃねーか」

 

 余興って言ってたのどこのどいつだよってブチ切れそうになったけど、わーわー言って腹パンされたくないから下唇噛んで堪えた。

 

「ま、これやっから安心しろ」

 

 可愛らしい巾着袋渡される。中には小さく折り畳まれた紙が幾つか入ってた。

 

「何ですか、これ?」

「眠り薬。俺の嫁三人にも渡してる。だから遊女任務やらせてんだ。もしもの時はこれを飲ませて難逃れろ」

 

 難逃れろって……。そりゃあお嫁さんくのいちだっけか。薬仕込むのもバレないで出来るでしょうよ。わたしなんか素人よ。

 

「ワァ……ァ……」

 

 バッドエンド過って泣いてしまった。柱に逆らえないのツラぁ。

 

「地味に泣くな!」

「だって……ワァ……」

 

 手拭い無いから袖で涙拭いてめそめそと竈門くんたちの居る部屋へと戻る。わたしの目が死んでるのを少し吃驚してたな。

 

「じゃ、変装さっさと済ませろ。俺も着替えてくる」

 

 そう言って音柱は部屋から出て行った。

 

「八重野さん、何かあったんですか?」

 

 わたしの様子にいち早く気づいた竈門くんが心配してくれた。

 

「ううん、何でもないよ。さ、準備しようか?」

 

 わたしは平気なフリして笑みを返し、鏡の前に正座する。

 

「オイ、化粧なんてどうやるんだこれ?」

 

 男の子たちは化粧道具を持ちながらどう化粧して良いかわかってないみたい。うん、わたしも使った事ないからわからないや。

 

「わたしが今からやってみるからさ、皆んなも真似してくれて良いよ」

 

 って言うと、三人は素直に頷く。良い子たちねー。

 

「じゃあ、先ずはこれをこうして、こうしましょう!」

「はーい!」

 

 こうなったらやってやろうじゃないのよ。わたしなりの変装でね!

 怒りに任せて真っ白な白粉を顔面に塗りたくりながらわたしは、某死ノートの『計画通り』みたいな顔をした。

 

 

 

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