転生した世界で鬼の末裔が生きていくもん   作:あまてら

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吉原を後にして

 

 

 

 

 

 やられた勢いもあってかな。前のめりでサイコロみたいにゴロゴロ何回か転げまくって、最後は壊れた家屋にぶつかって地面へうつ伏せに倒れた。

 

「ぐほ……っ!」

 

 再びの血吐き。さっきより大量だ。内臓まで切れて多分ちょろっと出てる気がする。痛みはガラス破片の時のが強かった。てか殺す気か。

 

「や、八重野さん!!」

 

 竈門くんたちから2メートルの距離。ごめんね、役立たずで。

 

「馬鹿ヤロオオ! 死んじまうだろおおがよおおお!!」

「だってムカついたんだもん! これでも加減したのよ! それに見てよその女! アタシたちより遅いけどそういう傷も治ってきるからぁ!」

 

 蟷螂鬼が怒ると、女鬼は必死に弁解した。あ、これ女鬼も蟷螂鬼もわたしへ注目してるじゃん。竈門くんチャーンスよ。

 うつ伏せ状態のまま治るのを待つしかないわたしは、他力本願だ。

 

「オイ!」

 

 裂けた傷が塞がり、後は内臓の細かな傷の癒待ち中、見計らった竈門くんが声を上げた。

 

「ああ?」

 

 余裕ぶっこいていた蟷螂鬼が、わたしから竈門くんへ顔を向けたその瞬間。竈門くんの強烈な頭突きを食らってしまい、くらりと立ち眩みながら地面へ倒れた。

 

「お兄ちゃん何してるの! 早く立って!!」

 

 何があったの。まだ治りかけで立てないわたしは上半身だけを起こして見る。微かな香りが風を伝って鼻に届いた。

 蟷螂鬼の太腿にクナイが刺さってて、それによって動けなくなってるみたい。鬼に効く毒でも塗ってたのかな。

 蹴られたせいでぼろぼろになってる竈門くんが刀身を振り上げる。蟷螂鬼の頚を押さえつけながら斬るつもりなんだ。

 

「おおおおおああああああああぁ!!」

 

 よし。竈門くん。斬って。

 

「お兄ちゃん嘘でしょ! そんな奴に頚斬られないでよ!!」

 

 焦った女鬼が竈門くんを狙うとほぼ同時、どっかの崩れた家屋から速い何かが女鬼向けて翔んだ。あれは我妻くんだ。凄い速い。油断した女鬼の頚に刀な刃を当てながらの高速移動、雷の呼吸だ。同時斬り。いけそう。

 

「くぬうおああああああああ!!」

 

 蟷螂鬼が歯を食いしばって唸る。あと少しだったのに、毒から回復したのか、血鬼術を出して竈門くんの刀を押し戻した。

 

「このガキがああああああ!」

 

 立ち上がった蟷螂鬼の血鬼術を、諦めたりしない竈門くんが刀でぶつけて避けたりするんだけど、蟷螂鬼の勝る力の攻撃に押されて逆に頚を狙われた。

 

「危ない竈門くん!」

 

 当たる寸前、速いものがわたしの横を過ぎて竈門くんの前に立った。

 

「『譜面』が完成した。勝ちに行くぞ!」

 

 完全復活、音柱。毒も消え、わたしの血の実験成功して、腕がくっついてる。

 音柱は蟷螂鬼と対峙。目にも止まらぬ速さで攻撃し合った。

 

「八重野さん!」

 

 竈門くんがわたしを立たせてくれる。この場にいたらわたし絶対音柱の邪魔になるし離れなきゃ。

 

「ありがとう」

「俺も参戦してきます! 入る隙あるかわからないけど!」

 

 竈門くんも走った。わたしはもう胴体完治して歩けるから、巻き込まれないような安全な場所を探しながら二つの戦いの様子を見た。

 

「音柱、凄」

 

 蟷螂鬼の血鬼術を物ともしない音柱は技を繰り出して押しに押す。上弦の鬼の蟷螂鬼が圧倒されてるように見える。

 我妻くんの方は女鬼の頚を斬る寸前だったけど、長くは持たないかもしれないギリギリだ。

 この戦いは、二体の鬼の頚を同時に斬らなきゃいけない。

 わたしは息を呑む。

 

「宇髄さん!」

 

 竈門くんが叫んだ。音柱の腹に血鎌が深く刺さったからだ。蟷螂鬼はそれでもやっぱり強い。一方の我妻くんも女鬼の帯が伸びて阻止されようとしてた。

 そしたら血に染まった嘴平くんが現れて、我妻くんを狙う帯を斬り刻んで参戦。二人で一緒に女鬼の頚に刀の刃を当てた。

 

「あ!!」

 

 腹に刺さったままの血鎌の毒が少し回ってきたのか、多少フラついた音柱の顔面左側を、蟷螂鬼のもう片方の血鎌が抉った。

 

「音柱!」

 

 怯まない音柱は、ヌンチャクみたいな二刀の大きな刀を振り回して蟷螂鬼の頸を斬ろうとする。

 

「いい加減死ねよクソがああ!」

「ぐうっ!」

 

 蟷螂鬼は瞬時に避けると音柱の腹に刺さる血鎌を強引に引き抜き、下から更に刺し上げようした。

 

「うわあああーー!!」

 

 横から竈門くんが参戦。負傷した音柱を庇い、代わりに自分の顎下で血鎌の先端を受けた。

 

「竈門!! 踏ん張れええええあああ!」

 

 音柱は力を振り絞り、もう片方の血鎌を持つ手を斬り落すと、二刀の刀身を蟷螂鬼の腹に交差するように刺し押した。

 

「ぐぅがああああアアアアアアアアアアーーーー!!」

 

 竈門くんが赫くなった。顎に血鎌が刺さってるのに。苦しい筈なのに。決して諦めない熱い心を持ち、蟷螂鬼の頚へ刀を振り下ろして押し斬ろうと咆える。

 竈門くんだけじゃない。音柱や我妻くん、嘴平くんもだ。

 皆んな、頑張って──。

 

「いっけええ皆んなああ!!」

 

 ついわたしも声を上げる。

 

「お兄ちゃん! 何とかしてぇお兄ちゃん!!」

 

 女鬼の限界に蟷螂鬼は応えられなかった。

 

「うおおおおああああああああああああああああ!!」

 

 刹那、二つの首が同時に宙を舞った。

 

「竈門くん! 音柱!」

 

 二人のもとへわたしは駆け走った。二人とも毒にやられて瀕死状態で地面に伏せてたし、特に酷いのは竈門くん。ちゃんと呼吸が出来てないから息も出来てないし危ない。

 

「今血を──」

 

 わたしの血を竈門に飲ませようしたその時、何かに感づいた音柱が言った。

 

「逃げろ」

 

 斬られる前に放ったのかわかんないけど、首から下しかない蟷螂鬼の体から出た血鎌が大爆発した。逃げる時間なんて無いに等しい。

 周囲一帯を巻き込んだ爆発は遊郭の建物だけじゃなく、わたしや竈門くん、音柱をも吹き飛ばしてった。

 

 

「……う」

 

 暫くして、わたしは散乱した瓦礫の上で目を覚ました。肋骨とか手足折れてたけど、少し待ってからポキポキって鳴らしながらわたしは立ち上がる。

 マジこの血の能力無かったらわたしもうとっくに死んでるわ。

 

「竈門くん! 我妻くん、嘴平くん! 音柱!」

 

 焼け野原みたいになった吉原遊郭を歩きながら皆んなを探す。未だ誰とも会わない。多分、吉原にいた人たちはあの騒ぎで既に逃げてる筈だから大丈夫だとして、竈門くんたち生きてるよね。ヤダよわたし一人だけ生存て。

 で、少しばかり歩いてたら近くで女の人たちの泣き声がした。

 近づいてわかった。死にかけの音柱と奥さん三人。この人たちが雛鶴さんに、まきをさんに、須磨さんか。良かったみっけ。

 こんな状況なのに一番に思ったのは、音柱の嫁三人とも美人でナイスバディで流石音柱の嫁だなあってなったのと、わたしの着替え見てたの全然屁でもなさそうだったのは、こんなボディたちが常日頃そばにあって目が肥えてるからだろうなあって、なんか凄く納得してしまっていたわ。

 

「あ、あなたは……」

 

 左目の下に泣き黒子がある奥さんの一人がわたしに気づいた。

 

「わ、わたしは鬼殺隊隊士の八重野です。今回の任務で音柱と遊郭へ来ました」

 

 我に返り、慌てて頭を下げて挨拶。したら死にかけの音柱が口を開いた。

 

「おう、八重野か。……やっぱお前、何ともねえんだな」

 

 鋭くえぐられた顔も痛々しく、毒が回りに回って皮膚が爛れまくってて相当に苦しい筈だ。

 

「腕、ありがとな。吃驚したぜ。まさか切れたのが元に戻るなんてよ。凄えなマジで」

「いえ。実験成功して良かったです」

「実験……?」

「はい」

 

 第一号ありがとうございましたってお礼したら、音柱がジト目で言った。

 

「で、血飲ませるのか?」

「はい。治りますので飲んで下さい」

 

 わたしがその辺に落ちてる器の破片で掌切ろうとしたら、奥さん方が慌てて止めようとした。

 

「な、何してるの!」

「こいつは特殊だから気にすんな」

 

 奥さんたちに『大丈夫だ』って言ったけど、わたしの血を知らない三人は訝しげだった。

 

「……八重野、俺は今瀕死だが口移しか? 確か人命救助だから誰にでもやるって言ってたよなあ?」

 

 掌切る寸前、音柱が半笑いで揶揄う。こんな時にそれ言うかなあ。その死にそうなのにニヤケ顔腹立つわあ。

 

「ちよ、ちょっとおお! 天元様何ですかその口移しってのわああ!」

「聞き捨てならないことですが!」

「わたしたちという者がおりながらあ! もしかして新たに妻を娶るつもりなんですかあああ! たがらこんな美少女隊士が任務にいるんですかあああ」

「天元様そうなんですか!?」

 

 長い黒髪の人と前髪部分が金髪でポニーテールの人が音柱に詰め寄る。わたしはそれを引き攣りスマイルで返した。

 

「大変。きっと音柱は鬼の毒気にやられて意識が朦朧としてるんですよ。奥様方、すみません手をお借りいたします。お一人は音柱の口を大きく開けていただきまして、お二人は身体を押さえてて下さい」

 

 わたしが強引に話を切り替えてお願いすると、半信半疑ながら泣き黒子の奥さんが音柱の口を開き、あとの二人が音柱に抱きつくように押さえる。

 

「おがえがおえはひにふぁふぇはろ。ひっはあははひふひほ」

 

 音柱が何か言ってるけど無視です。

 

「生きたいですよね?」

 

 開かれた口の中へ、切った手から流れ落ちる血を多量に流し落とす。その時、右目に激痛来た。また、だ──。

 でも直ぐに治ったけどね。

 

「うぐあぁ。本当に大丈夫なんですかこれええ!」

 

 そう思われるのも仕方ない。

 

「んぐぅっ!」

 

 流し入れられた血を飲み込んで数秒。音柱は奥さん方を振り払って心臓を押さえ込む。

 

「天元様あ!」

「ちょちょちょあなたねええ! 天元様が苦しんでるけどおお!」

 

 長い黒髪奥さんにポカポカ胸殴られてたら、泣き黒子の奥さんが『やめなさい』って止めに入る。

 

「お前ら、いい加減静かにしろ。俺は大丈夫だ」

 

 音柱がなだめ、息を吐いて顔を上げれば、奥さん方が三人ともに泣きながら抱きついた。

 

「わあああん! 天元様のお顔が、傷が治ってきてるうう!!」

「ひぐっ! 天元様ああ!」

「良かった!」

 

 あんなに爛れてた皮膚は通常を取り戻し、抉れた顔の傷は徐々に消え失せ、出血は止まって腹の傷も癒えていった。

 

「ありがとうございます八重野さん!」

「ポカポカしてごめんなさいいい! うぇあああ」

「ありがとう!」

 

 奥さん方がこんなに泣いて喜ぶ姿見てたら、音柱生きてて本当に良かった。って心から安心したわ。ちょい変なところもあるけど、憎めない人なんだな音柱って。

 

「ありがとうな、八重野」

「いえ。これくらいしか役に立たないのでわたし」

 

 すっかり完治した様子の音柱。上弦の鬼を倒し終え、わたしはそろそろ竈門くんたちも気になっているので、一度解散という事でお疲れ様の挨拶をした。

 

「任務お疲れ様でした。わたしはこれで失礼します。奥様方もお気をつけて」

「八重野!」

「はい?」

「いや、何でもねえよ」

 

 何か言いたげな音柱だったけどもそれよりも気になる三人は何処へ。

 

「あ! 八重野さんだあああ」

 

 音柱がいた方とは反対側に三人が輪になって泣いてた。我妻くんがわたしを見つけて手を振ってる。座り込んでるのは酷い怪我で動けないからだ。

 

「皆んな生きてたんだね!」

「わああ、八重野さん良かった無事で!」

「百合女姿見えねーから死んだかと思ってたぜ!」

 

 見れば竈門くんと嘴平くんに毒の様子が無い。

 

「毒はどうしたの?」

「毒は禰豆子の血鬼術が作用して……」

 

 言いかけて竈門くんは思い出した。

 

「あ! 八重野さんにちゃんと紹介してなかった。妹の禰豆子です。訳あって鬼ですが禰豆子が人を襲ったり決してしないので保証します」

「うん。竈門くんて隊士の中でも有名になってるからさ、妹さんの事は話に聞いてたよ」

 

 だからかあ。竈門くんはそれで腑に落ちたんだって。わたしが禰豆子ちゃんを知ってるていで会話したり、箱に戻そうとした時に何の疑問も持たれなかった事を不思議に思っていたらしいよ。

 鬼滅世界を前世で少し知ってたのもあるけど、実際鬼殺隊隊士の中で竈門くんの話題は出てたからね。

 ま、わたしは会話に参加してたってより、皆んなが話してたのを耳にしてただけっていうね。

 

「むー」

 

 竈門くんの背後から小さい女の子が出て来た。あ、これが起きてる禰豆子ちゃんかあ。ん、竹の代わりに太めの縄噛んでる! 可愛い!

 わたしは禰豆子ちゃんの目線に合わせるようにしゃがんだ。

 

「初めまして禰豆子ちゃん。八重野ナツです。よろしくね」

「むーむー!」

 

 やった。禰豆子ちゃん笑顔だ。わたしゃてっきり警戒されるとばかり思ってたわあ。

 嬉しいなあって思いつつ、禰豆子ちゃんが起きてるなら今わたしの血出さない方が良いかなって、出しかけた掌引っ込める。

 

「おーい! 無事かああ!」

 

 誰かがやって来た。隠が四人走って来る。

 

「皆んな隠が来た──」

 

 急に静かになったなあって思ってたら、禰豆子ちゃん以外の三人が皆んなが気を失ってたんだが。

 

「わあああ!」

 

 禰豆子ちゃんいる手前、血を出せないからわたし大慌てです。

 到着した隠の一人は三人と顔見知りらしく、必死に名前を呼んでた。

 

「隠の皆さん至急三人をお願いします!」

「うわああ! 芍薬の君! はいい!!」

 

 わたしを見て吃驚してたけど、緊迫だから急いで竈門くんたちを背負って走って行った。

 

「禰豆子ちゃんもお願いします!」

 

 禰豆子ちゃんの箱は隠の一人が箱を背負ってたんでお願いをする。

 

「牡丹の君、少しお待ち頂ければ別の者が来ますから!」

「わかりました!」

 

 皆んなが運ばれて行ってから少し、別の隠の人がやって来た。

 

「お待たせしました百合の君! お怪我は?」

「特に無いです」

「それは良かった!」

 

 いつも任務の後に来る隠の皆さんには怪我の有無を聞かれるんだけど、無いんだよねえわたし。だから終わった後は宿か藤の家に行く流れだったのに、今回は違った。

 

「では百合の君、蝶屋敷へお連れします!」

「え? 怪我もしてないのに蝶屋敷ですか?」

「はい! 蟲柱様がお待ちしております!」

 

 蟲柱だって? 何用なんだろうか。そういえば柱たちは、わたしとお館様との会話聴いちゃってるんだったなあ。はあ。

 

「そうですか。場所わかってるので一人で行きますね」

「いえ! 私がお連れしますので、ささ、どうぞ背に!」

「あっ」

 

 断ろうとしたのに、隠の人は素早くしゃがんで背負う構えをしてしまった。断り難いなぁ。まあ、わたしは楽だしいっかー。って思って、遠慮なく背負われる事にいたしました。

 背負われながら蝶屋敷までの道中、わたしは蟷螂鬼から知らされた話をあらためて頭の中で整理しつつ、 お館様にもまたきっと呼ばれるだろうから、血チートで鬼を倒せるのは間違いであった事、自分が鬼舞辻無惨に殺されようとしてる事、その鬼舞辻がヒメミコさまに接触し、食べようとした夢の事を報告しなきゃなって考えていた。

 

 

 

 

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