転生した世界で鬼の末裔が生きていくもん   作:あまてら

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育手

 

 

 

 

 

 目が覚めたら見知らぬ天井来た。取り敢えず体だけはめちゃくちゃ元気になったんで、上半身だけを起こしてみる。

 よくある木造民家。誰かの家かな。六畳くらいの広さのこの部屋で敷かれた布団に、わたしは寝かされてた。出入り出来る襖は締め切られてたけど、縁側の障子戸は開け放たれてて、木の塀で仕切られたそこまで広くもない庭が見える。外は明るいし、太陽の傾きからして昼過ぎかも。

 庭に目を向けていると、暑い季節の筈なのに心地良く涼しい風が外から入って来た。

 で、この風によって思考は気を失う前の事について。

 もしかしたらあの出来事は最初から全部夢だったのかな。あんな化け物も存在してなくて、鬼の末裔っていう設定なんかも、実はあの集落はそもそも無いとか。

 なんだか全てがそう思えてきたけど、ある物が目に入った瞬間、わたしは絶望した。

 父の、ナツの父親の手拭い。あの時そう、化け物が消えた後で拾った。洗ってくれたのだろう、枕元に綺麗に折り畳んで置かれてた。

 え、じゃあ現実だったのかあれは。夢だけど夢じゃなかったみたいな。

 え、え、え、嘘だ。嘘だ嘘だ。

 信じたくなかったけど、手拭いは間違いなく父の物。母が縫った。証に、小さな百合の花の刺繍がある。それを見つけたら、全身が一気に冷えた。

 この部屋で目覚める前に見た、黒い詰襟の人達。"隠"の背中文字と、"滅"。あれは確か──。

 

「やっと目覚めたのかい」

 

 閉められてた襖が開いて、某有名スタジオ作品の某婆キャラの声みたいなお婆さんが現れた。

 

「……誰? 此処はどこ?」

 

 数秒間を開けて問う

 

「顔洗って着替えな」

 

 お婆さんは冷たそうな態度でそう言って部屋から出て行ってしまった。

 わたしは今この状況を把握したかったんだけど、取り敢えずは顔を洗うしかなさそうだったので素直に従う事にした。

 そわそわしつつ部屋から顔を出して覗いて見れば、この家の大体の広さがわかった。狭くもなく広くもなく、一人で暮らすには充分だろう。

 

「あの、どこで洗えば?」

 

 お婆さんの姿は見えない。でも別の部屋から『家の裏にある井戸で洗えば良い』と声だけがした。

 井戸、か。キョロキョロと辺りを見て勝手口から外へ出たわたしは、裏に回って直ぐに井戸を発見した。

 あった、あった。確かこうやって──。井戸の使い方だけど、実は自分で汲み上げた事が無い。やろうとした事は一応ある。今まで両親や兄や姉に『ナツはやらなくて良い』って言われて、見てるだけで一度もやってない。ザ、過保護。

 

「ん? アレが無い?」

 

 アレとは滑車である。集落では滑車があったからまだ水汲みやり易かったと思うんだ。

 無いんだが。

 やってくれる人がいるでもないので、仕方ないかぁ、ってなる。

 

「……ぐうっ、おっっも!」

 

 縄で結んだ桶を井戸の中に落として水入れたけど、重くて引き上げる事が出来ん。草。腕力ZERO。

 

「ふぐぐぐっ……」

 

 ムーリー。どうしようかと思われたその時、

 

「何やってんだい。日が暮れちまうよ!」

 

 お婆さん登場。わたしの様子に眉間にめっちゃ皺寄せてる。

 

「こんな軽いもんも持てねぇとはね」

 

 お婆さんは溜息混じりに井戸を覗くと、ひょいってな感じで軽く水の入った桶を引き上げた。マジお年寄りなのに力すっげーよ。

 

「さっさと洗って着替える!」

「は、はい」

 

 もたついてたら怒られる系かなって理解したわたしは、井戸の真横に置かれてた別の桶に少しずつ水を入れて、急いで顔を洗った。

 

「着替えはそこ。布団は畳んで押し入れに」

「はい!」

 

 洗って中に戻ったら着替えが置かれてて、わたしは即座に寝ていた部屋で急いで着替えをし、自分が寝かされてた布団を畳んで押し入れに仕舞い込んだ。

 

「着替え終わりました」

「そこへ座れ」

 

 台所の真横にある囲炉裏の部屋で座るお婆さんが、わたしに囲炉裏を挟んで前へ座るよう言った。

 

「アタシは、木柳そよ。お前の名は?」

「あ、えと、わたしは、八重野ナツです。あの、此処は一体──」

「質問は後! 説明してやるから先ずは聞きな!」

 

 ひええ恐い。そよ婆(心の中で勝手に呼ぶ)の声の迫力半端ない。わたしは知りた過ぎる事を今はぐっと飲み込んだ。

 

「お前は二日前に此処へ連れて来られた。ある方の頼みでね。じゃなきゃ受けたりはしない。八重野ナツ、一人残されたお前が此処で生きていく道は一つ」

 

 あ、『一人残された』って、今ので確定なのかな。家族が化け物に喰われて死んじゃったっての。

 

「剣士となるべく厳しい修行を耐え抜き鬼殺隊士を目指すんだ」

 

 は──?

 わたしの聞き間違いでなければ、今そよ婆は"きさつたい"って言った。

 

「き、きさつ、たい?」

「そうさ、鬼殺隊だよ」

 

 "きさつたい"、確か"きさつたい"って……。まさかそんな。わたしは忘れていた小さな事を"鬼殺隊"で何となく思い出した。

 ああ、鬼殺隊、鬼殺隊ってなんかもうゲシュタルト崩壊してきたんだが。

 目が点のわたしが何も知らないと思ってそよ婆が軽く説明してくれたけど、やっぱりあの、【鬼滅の刃】の鬼殺隊の事だった。

 片隅にも思わなかった。わたしが転生したこの世界は、本当に鬼滅の世界なのか。誰か嘘だと、全部何もかも嘘だって言ってほしい。

 しかも何、此処で生きてく道が一つとか、『剣士となるべく厳しい修行を耐え抜き鬼殺隊士を目指すんだ』ってさあ。

 

 わたしが?

 

 無理無理無理無理無理無理ィイ。

 何で何で何で。何で鬼滅の刃の世界なの。わたし前世で悪い事したんでしょうか。平々凡々と生きてきてこれからって時に死んじゃって、で、今世では治癒能力付きヤッターってなってたところに家族や集落のみんな化け物に食べられちゃって、悲しんでる間も無く挙句に鬼殺隊士目指せって流れどうよこれ。

 

「アタシは"育手"。お前を剣士に育てる師匠みたいなもんさ」

 

 あーハイハイ、育手ね。来たわコレ。もうコレ完全に鬼滅の刃だわ。

 

「育手は大勢いて、やり方もそれぞれ。お前はアタシのやり方で鍛えてやる」

「あのー、質問良いですか?」

 

 わたしは顔を引き攣らせながら挙手する。

 

「まあ良いだろ。何だ?」

「道が一つって、それ以外の選択肢は無いんでしょうか?」

「此処に連れて来られて他があると? 無いね。アタシの家に来たんならお前は剣士になるしかない。どうしても出て行きたきゃ行きな。身寄りも無い孤児のお前の行き着く先はロクなもんじゃないさ。運良けりゃあ誰かが助けてくれるかもなんて甘い考えは捨てな。騙されて女郎に売られるか、ガキが一人で夜にでも彷徨いてりゃあ鬼に喰われちまうのがオチだろうよ」

 

 ひええっ、なんという冷たいお言葉。

 確かにわたしにはもう誰も頼れる人がいないのだろう。だから事実として受け止めなきゃいけないんだな。

 鬼滅の世界ヤダ、剣士なりたくない。って本気で嫌だけど、このそよ婆の家から逃げ出して生きて行けるかってそりゃ無理だ。集落の戻り道もわかんないし、戻ったところでみんないないし。てか女郎って例のアレよね、あー無理無理。わたし頭脳明晰でもないしー、治癒能力持ちだけど世間に知られたら人体実験とかで玩具にされるか殺される未来しかないしー。それか基本甘やかされてたから何も出来ない役立たずのわたしは、この時代ならその内に道端でのたれ死んでENDだわー。

 

「け、剣士になれなければ?」

「なるしかない。道は一つだって言った筈だよ」

 

 完全なるYES or YES。死にたくないのに死に近い鬼狩りになれと。今世では未練残さないように生きようって思ってたのに。叶わないまま、また死んじゃうのかわたし。

 ──ヤダ、死にたくない。

 一般的に思うやつ。だってだって、今世のわたし治癒能力授けられてるんだよ。死んじゃうのもったいない。

 でもほらほら、よくあるネット小説のさ、転生ものの主人公みたいじゃん。ならさ、面倒だし恐いけど、何とかなると信じて修練しよ?

 厳しい修練もさ、気付いたら終わってるよ。ページめくったら何年後──とかって。

 

「どうすんだい?」

 

 そよ婆がわたしを見据えて問う。

 

「い、一生懸命頑張ります! よろしくお願いします」

 

 わたしは床に手をつき、深々と頭を垂れてお願いした。

 剣士への道が本心かって訊かれたらわかんない。でもまだ何にも楽しい事してないんで生きてたいんだよ。家族や集落のみんなを喰べたのはきっと鬼だろう。憎き存在なんだけど、まだみんなが死んだって実感わかない。目の前じゃなかったからか。九郎じっちゃんとシノばっちゃんのは脚からしか見えなかったし、正直あの時は本人達のかと思ってたけど、冷静に考えるとよくわからなくなる。

 もし目の前だったなら……。

 きっと目の前だったなら、もっと怒りに任せて本気で『打倒鬼』ってなってたのかな。

 

「フン、女だから、子供だからと楽にやれるなんて甘い考えは捨てるんだね。やると決めたら最後までやり通すんだ。わかったかい?」

「はい……」

「声が小さい!」

「っはい!!」

 

 ひぃー、前途多難。

 コワイヨーってガクブルってたら空気読めないわたしの腹の虫がぐうって鳴った。

 

「あのご飯て、出ますか?」

「飯が食えるかの心配かい? フン、今のお前なら1日そこら食わなくったって死にやしないさ」

 

 いやいや、二日ぐらいわたし寝てたし目覚めたばかりよ。食べなきゃシヌヨ。涙目で訴えてもそよ婆には一切通用しない。だけどあまりにも腹の虫が鳴るものだからそよ婆は段々と苛立ってきたらしく、『五月蝿いったらありゃしないね!』って半ギレで竹皮に包んだおにぎり二つをわたしに放ってきた。

 何だ。ちゃんと用意してるじゃんって見るや否や嬉々としてパクついたわたしを、そよ婆は氷の様な冷たい視線を向けて言った。

 

「我慢がなってないねぇ。何やったらそんなにぶくぶくと肥えるんだい?」

 

 肥える。ハハハ。はい、そうです。ぽっちゃり体型ですわたし。言い訳すると、当たり前に甘やかされ、食べ物はいつもみんなから貰い、何も働かず食っちゃ寝ばっかしてた結果です。でも元々は細かったんすよ。

 ペロリと完食すれば、『もう元気だろ』ってわたしの体力を確認する為に、そよ婆の家があるこの私有地の山を上から家まで10往復も走らされた。そんなに高い山でもないし家は真ん中ぐらいだからとかって楽勝みたいに言われたけど、んなわけない。死んだ。全身ぼろぼろ。

 

「体力無さ過ぎ。鍛える必要あるね」

 

 ヨロヨロどたりと地面に伏せたわたしにそよ婆は言う。それを聞いて直ぐ、わたしは気絶した。

 もう駄目。無理。

 朝、わたしは全回復で目を覚ました。

 で、育手のそよ婆の家で目覚めて一週間経ちました。

 何してたかって?

 一週間ずっと、朝から晩まで山を走り込みよ。走り込みってもほぼ上からは転げ落ちてるが正解かも。わたしの記憶の片隅にあるので確か……、鬼滅の主人公も山で鍛えてた筈。仕掛けがこっちには無いってのが有り難えです。

 登って転げ落ちて骨折って身体ズタボロで、だけど夜になったら全回復。そよ婆はそんなわたしを不思議に感じながらも、ただのタフな子だとしか思ってなさそう。だから結構無茶させる。マジや、め、て。

 自分の特殊な能力の事を伝えるべきかどうか悩む。でもまだ言わないでおこう。そよ婆が信用に値するか否かって頭良さげな考えよりも、それを知って更に無茶させられそうって嫌なものが勝った。

 

「呼吸がなってない」

 

 ぜえぜえと息を吐くわたしに、そよ婆が眉間に皺寄せながら言う。そうそう、鬼殺隊士にはやっぱ呼吸法よねー。そよ婆も言ってた鬼殺隊士になる為の必須技能として習得しなきゃいけない特殊な呼吸法ってやつ。

 因みにそよ婆は水の呼吸の使い手だ。三日目の昼に突然気怠そうに刀、日輪刀出して技を見せてくれた。鬼滅知ってる皆様お馴染みの『水の呼吸 壱ノ型 水面斬り』である。そよ婆は結構お婆さんなのにそん時だけはピシリと背筋伸ばしてなんか別人に見えたし、技を生で見れてちょっと感動しました。うん、水のエフェクトが凄い(語彙力)。

 

「凄い!」

 

 純粋に余興観てる感じで拍手したら、そよ婆はキッとわたしを睨んで『お前を楽しませる為にやったんじゃないよ!』って怒鳴られたっけ。ひぐぅ。

 てかそよ婆て何歳なんだろ。わたしの予想では鬼滅主人公の育手の人よりも上な気がする。

 翌朝、わたしは山の走り込みから解放されて次のステップに移った。薪割りと台所だ。同時進行で、先ずは薪割りが出来るようになる事から。木を切るところからだと思ってたら、それは『まだ早い』って事前に薪は用意されてた。

 薪割りなんて当たり前にしてこなかったから、わたしの柔な腕は全く使い物にならず、斧を高く振り上げる力も下す力もふにゃふにゃ。直ぐに腕が棒のようになって掌は血豆だらけになった。夜になれば治るんだけど、それまでは痛い。

 

「もう無理ぃ〜」

 

 痛さのあまり地べたに座り込むわたしはおいおいと泣いて訴える。

 

「じゃあ飯抜きだ」

 

 飯抜き。わたしの涙は引っ込んだ。

 え、無理。ご飯抜きはやだ。

 別に自分は大食らいってんじゃないけど、山走り込み一週間の四日目に駄々捏ねて拒否したら、そよ婆に二日ご飯抜きにされてマジで死ぬかと思ったエピソードがある。一種のトラウマみたいになってしまったわたしは、『ご飯抜き』という魔法の言葉で頭がしゃきりとしてしまう。

 そよ婆の作るご飯は天下一品だ。

 ぶっちゃけ母親が作るご飯を超えた美味さがあった。

 

「うりゃああああ!」

 

 斧を持つ手に力を込めたら掌の血豆が潰れた。

 

「力を付けるんだね。次!」

 

 薪割りは全く出来ずにヘロヘロな状態のまま、場所は台所へと移る。

 

「今日はアタシの動きを黙ってじっと見てるんだ」

 

 ご存知料理も出来ません。わたしは素直にそよ婆が料理する姿を観察した。

 

「お前はこれからの修練で全集中の呼吸のやり方も学ぶんだよ。わかったね?」

「は、はい!」

「ヒュゥゥゥゥ」

 

 ──お。今そよ婆から『ヒュゥゥゥゥ』って聴こえた。主人公もしてたやつ。

 で、そよ婆は無駄な動き一つもなく料理し始めた。前世での家電使いじゃなく、かまど調理だ。洗った米は水と一緒にお釜に入れてかまどにセット。薪を使って火をつける。マジ無駄無い。

 お釜の火は弱火。そよ婆は米の様子を耳で確認しつつ次へ行動に移す。あらかじめ用意されていた年季を感じさせるまな板で大根をこれまた愛用されてるであろう包丁で器用に切ってった。

 で、あっという間に完成した。小さな庭でなってたネギの味噌汁、人参と胡瓜の自家製漬物に大根の煮物。そしてふっくらツヤツヤのお米。

 シンプルなのにめちゃくちゃ美味い。わたしはもう、そよ婆の作る飯の虜である。

 

 ああ〜、至高!

 

 ご馳走様でした。食事に満足し、このまま風呂入って寝たい気分だったけど、食べた後の片付けをやるように言われて直ぐには叶わなかった。

 で、お椀や器の洗いを適当にしてたらめちゃくちゃ怒られてその日は終わりました。

 

 で、で、で! それからひと月、半年。

 なんと薪割りは出来るようになった。これもそよ婆のスパルタのお陰だろう。毎日『斧振り千回』という腕筋マッスル化待ったなしを繰り返し、現在では欠伸しながらでも薪割り楽勝になった。

 同時にやり始めた料理は──。

 

「不味い! 一体何見てこんな不味いの作れんだい!」

 

 ──とまあ、酷評。うん、不満ありません。マジで不味い。最初なんて米の研ぎ方からかまどに火をつけるなんて見ててもわかんないから適当にやると『真面目にやる気あるのかい!』ってげんこつ飛んで来たし、火の加減難し過ぎて何回も米が無駄になってその度に飯抜きにされて病んだ。

 飯抜きは流石にキツイんで何とか自分なりにそれっぽい事してみせるんだけど、『不味い』の答え以外なんもない。

 

「言っただろ。お前は呼吸がなってない」

「はい……」

「今日はもういい! また山走ってきな!」

「ふええ……!」

 

 また走り込みでぴえー。呼吸ってもさーわかんねーですのよ。

 ていうか少しだけ、ほんの少しだけ、『何でわたしこんな事しなきゃいけないの』って気持ちが出て来た。何で必死になってまで剣士になろうとしなきゃいけないんだろ。なりたくないのに、って。

 ならなきゃ野垂れ死にEND真っしぐらだろうけどさぁ、心の底から『なってやる』ってのが今のわたしには無い。そよ婆曰くの修練に完全に身が入ってないのは、その僅かな気持ちのせいもあるんだろうな。

 

「っだあああああーー!」

 

 獣道みたいなとこの草で足滑らせておむすびころりんちょして左腕折りました。

 

「痛いよおお」

 

 ひんひんしながらそよ婆の家まで歩き、『今日は無理です』って土下座覚悟で家の中に入ろうとしたら、そよ婆の部屋から何か喋ってる声が聞こえて来た。

 誰かと話してるのかなって思って忍び足で入る。

 

「……様。アタシには無理です」

 

 どうやら一人。わたしはそよ婆の独り言を聴く為に耳を澄ませた。

 

「アタシは貴方様のように出来ない。何もかも失ったあの子供にどうやって接して良いのか。どうやって慰めてやったら、どうやって褒めてやったら良いのか……」

 

 ん、これは──。もしや実はそよ婆って、本当は優しい婆さん設定きたんじゃないかこれは。

 キタキタ。あるある。超厳しめ鬼キャラが実は裏では優しい人だったってヤツー。で、で、わたしが盗み聞きしてんの気づいたそよ婆がツンデレみたいな反応してこの先は優しい修練期待。

 わたしは某幼児キャラの笑い方みたいに『えへえへえへ〜』ってなった。

 んもぅー、やだなぁ。そよ婆ったら不器用なんだからぁ〜。

 

「きっと貴方様みたいに教えられない。だからアタシはアタシなりにやります。あの子供が泣こうが喚こうが死にかけようが血反吐を吐こうが、厳しい修練に耐えられるようにビシバシとね!」

 

 わたしは盛大にずっこけた。

 

「何やってんだい。まだ帰って来るには早過ぎだろ」

 

 ずっこけた音に反応してそよ婆が部屋から出て来た。

 

「あ、あのー、腕が負傷しましてえ……」

「あ? 聴こえないねぇ。もう一度走って来な!」

「ヒエェ……!」

 

 撤回。そよ婆は例外だった。

 

 

 

 

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