転生した世界で鬼の末裔が生きていくもん   作:あまてら

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再会は温泉で

 

 

 

 

 

 

 時々思うんだよね。炎柱生き残ったこの世界線ってさ、結末はどうなっちゃうんだろうって。

 

「芍薬の君、里に到着しましたよ」

 

 隠の女の人が言った。

 目隠しを外されて見たら何か圧倒された。山々に囲まれた秘境というべきかな。でも里っていっても建築物はどれも高層。ドンって効果音聞こえてきそう。まるで有名な温泉街みたい。

 

「先ずはこの里の長にお会いになって下さい」

「わかりました」

 

 里の長の家を教えてくれた隠の人にお礼をして別れ、わたしは長の家を目指した。

 何か温泉街に旅行しに来たみたいな感覚なるわー。お土産屋さんみたいなのあったら蟲柱や蝶屋敷の皆んなにお土産買ってかえりたいなぁ。なんて考えながら歩いてると、里の人たちから妙に注目浴びてる気がした。

 てか皆んなひょっとこ面なの吃驚なんだけど。

 

 あぁ、ね。

 

 毎度お馴染みになりました。超絶美のわたしに向けられる眼差しですね。

 やれやれってな感じで人々の眼差しを華麗にやり過ごし、迷う事なく長の家に到着。

 

「失礼致します」

 

 長の待つ部屋に通されて中に入れば、真ん中に御老人。でーんと座ってた。いや、長ちっさ。ちょこっときゃわサイズ。左右にはお付きの人もいる。そして皆んなひょっとこ面。

 

「お初にお目にかかります。八重野ナツです」

 

 深く頭を下げて挨拶。ひょっとこ面のおかげかせいか、あんまり緊張しないなあ。助かるー。

 

「おお、おお、ワシがこの里の一番偉い長やってる鉄地河原鉄珍や。よろぴーく」

「よろしくお願い致します」

「ささっ、顔上げてやあ」

「はい!」

 

 長に言われるままに顔を上げると、お付きの人たちがわたしをあらためて見るなり『うお眩しっ』ってなった。

 

「ほお。小耳には挟んでおったけど、まるで吉祥天。ワシ今まで生きてきてこんな美人なお嬢ちゃん見た事ないなあ」

「そ、そんな。あ、ありがとうございます」

 

 おほ。謙遜忘れて『それほどでも〜』ってニヤケそうになるのを抑える。褒められると調子乗りますあぶね。ふへへ。わたしの美は里にまで浸透してたみたい。

 

「そない美人なら流石の蛍も浮き立つやろう」

 

 蛍。誰の名前なんだろって訊いたら、『鋼鐵塚蛍』ってあの鋼鐵塚さんの名前なんだってさ。意外。可愛い名前ね。長が名付け親なんだって。てか鋼鐵塚さんが浮き立つって全く想像つかないんだが。

 

「んで今回は蛍の件で里へ来たんか?」

「その事もありますが──」

 

 わたしは長にこの里へ来た目的を伝えた。って言っても、炎柱に用があってというくらいしかない。鋼鐵塚さんの事はまだ刀が届かないって話と、後から来る炭治郎くんと一緒に鋼鐵塚さんを訪ねようとしてるってのを一応知らせておいた。

 

「そうかあ。炎柱の杏寿郎くんは来とるよ。なあ?」

「はい。煉獄殿は二日前からこの里に」

 

 長の右側にいるお付きが言う。炎柱は療養もかねて刀を研ぎに来てるんですって。

 

「なんやワシはてっきりお嬢ちゃんは蛍の事で里に来たんやとばかり。担当外してくれって言われるかと思っとったわ」

 

 少しだけギクってした。だってマジで担当替えてもらおうかなって考えていたからね。

 

「まあ、蛍は今まで担当してきた剣士に嫌われて外されてきとるからなあ。今更驚きもせんし替えたいから言うてこっちはなーんも文句は無い」

 

 長は言う、『蛍なら仕方ない』って。この感じからして鋼鐵塚さんは相当の人数から担当外されてるんだな。

 はあ。『担当替えて下さい』って言おうとしてたけど、いざ里に来て伝えるの勇気いるわ。でもこの流れなら言えそうな気がする。

 

「ただなあ、今回二人も担当出来てあの子は喜んでるんや。それに蛍だけやない、勿論ワシもや。せやからお嬢ちゃんがもし替えてほしい言うたりしたら、きっと心の底から哀しむやろなあ」

 

 二人って、多分わたしと炭治郎くんよね。っていうか『哀しむやろなあ(チラチラ)』みたいなの何。お面越しからでも何か伝わったわ。そして何か余計に『替えて』って言い難くなったんだが。

 したら急に長が『あ!』って大きな声出した。

 

「あぁ〜そうやそうや。あんなあ、今蛍行方不明やったわ」

「え!?」

「ワシらも捜してる最中でなあ、見つけ次第取り押さえるから、杏寿郎くんの用を済ませたり温泉にでも浸かったりしてゆっくりこの里で待っててや」

「え、あ、は、はい……」

 

 まさかの鋼鐵塚さん行方不明に軽く動揺しちゃいそう。でも長は特に焦ってない様子。大丈夫なの? それと、ゆっくり待っててって言われてもさぁ、見つかんなかったらどうすんのよ刀。

 

「八重野殿、宜しければ里の者に滞在中のお部屋を案内致しますよ」

「あ、ありがとうございます!」

 

 お付きの人にお礼して、長にも『少しの間、里でお世話になります』ってまた頭下げてわたしは長の家を出た。取り敢えず待ってるしかないか。

 

「では! 先ずお部屋をご案内致します!」

 

 家の外で待ってた案内人を任された男の人もひょっとこ面。わたしが現れるなり何か緊張した感じでどこかぎこちない。その人に滞在中の宿を案内してもらい、なんと浴衣まで用意してくれててね。シンプルだけど桔梗の花柄で可愛い。

 

「すみません。百合の花柄ではなくて……」

 

 わたしの着てる羽織りの百合の花を見て、『次はご用意するようにします』気を使ってくれた。わざわざすみません。

 そしてそして! 山てか森林に囲まれたこの里名物。待ってました温泉です。

 

「この坂の上に温泉が御座います」

 

 少し小高い先にあるという温泉への道は段差になってて登りやすいし、【温泉】って木の立て札があってわかりやすかった。

 

「ではごゆっくり」

「ありがとうございました」

 

 この後食事の用意をすると言う案内人と別れ、わたしは浮かれ気分で坂の上を登った。

 

「わあ……」

 

 微かな硫黄の香りがする。木々が並ぶ小道を進んだら見えてきました広々とした露天風呂。湯煙とゴツゴツ岩が良い味出してます。前世でも行った事はあったけど、まさか今世でも入れるなんて思わなかったなあ。

 脱衣所は無いけどまあ良いや。貸し切りみたいに誰もいないし。

 脱いだ隊服やら下着やらを丁寧に折り畳んでゴツ岩の上に置いて、置かれてた桶で身体を流す。丁度良い湯加減じゃないの。

 さて温泉の中へ入りましょうかねってした時、何かの視線を感じた。

 

 え。誰かいる?

 

 まだ昼過ぎなのにホラー止めてよって身震いしつつ急いで温泉に浸かる。

 あゝああ〜〜。マジ良い湯じゃないのお! 万病に効きそう。

 秒で気のせいだって切り替わるくらい気持ち良い湯。駄目だけど誰もいないから泳ぎたくなる。

 こんな広いお風呂今世で初めて。大きく大の字背伸びして湯に浸る。

 がさり。ふと草を踏む様な足音。露天風呂入りに誰か来たのかなって思って岩陰から何となく覗いてわたしは仰天した。

 

 嘘────。炎柱じゃん。

 

 は、何で。頭の中が大混乱。炎柱が隊服を脱ごうとしてわたしは音を立てないように息を潜めた。

 いやいや待って聞いてない。この温泉ってそもそも混浴なの? だとしたらさっき言ってほしかったんだが。

 

「そこに誰かいるのか?」

 

 炎柱の声にマジ吃驚して声出そうになったわ。久しぶりの煉獄さん。左目は一見すればわかんなかったけど、ちょい瞼に傷っぽいのが見えた気がする。

 ひえ。あまりの事に黙ってたらさあ、訝しんだ炎柱が近づいて来たじゃないの。

 着替えも手拭いも炎柱側にあるし出られない。わたしは顎くらいまで湯に浸かって背を向け身構える。

 

「す、すみません! こ、混浴だなんて知らなくて入ってます!」

「え!?」

 

 数秒だけ微妙な間が流れる。そりゃあ炎柱だって女が温泉にいたら驚きもするよね。

 

「こ、此方こそ申し訳ない! まさか女性が入っているとは思わなかった! 俺は出るから! キミはゆっくり浸かると良い!」

「いえ! あ、あの! わたしは先に入ってましたし、もう出ますので! どうぞ! ゆっくりして下さい! なので! 横を通りますので! 背を向けていてくれると助かります!」

 

 炎柱のクソデカ声の更に上を行く声でわたしは言った。

 恥ずかしいけど仕方ない。炎柱追い出して自分がゆっくり温泉とか、そよ婆聞いたらボコリ確定です。

 岩陰からチラリと覗けば、炎柱は真面目に背を向けてくれてた。ああ、温泉だから当たり前に炎柱も裸になってるし、肩甲骨辺りぐらいまでの肌を見てしまった。ごめんなさい。わたしは目をギュッと閉じ、勇気を振り絞って炎柱の真横を通る。

 

「後から来たのは俺の方なのに、すまない!」

「お気に! なさらずに!」

 

 さっさと上がってさっさと着替えて一刻も早くこの場から離れたい。それでもって後でちゃんとしてから炎柱訪ねよ。わたしは温泉から出ようと右脚を先に出し、重心をその右脚にかけて前へと勢いをつけた。

 くらっ。温泉のお湯が熱くてのぼせ上ったのか、温泉成分で多少岩場がヌルってしてたせいかはわからない。

 

「えっ……」

 

 右脚で立ち上がって直ぐだ。目眩と足がつるってすべったのが同時に来て、わたしの身体は重力に逆らう事なく温泉へと引き戻された。

 わあ。落ちる時めちゃくちゃゆっくりに感じる。頭は冷静だ。何という恥ずかしさ。マジ穴があったら入りたい。

 温泉の中へ仰向けで、頭から斜め45度どぼん落ち。底のごつった岩に頭ゴインって当たって衝撃で鼻から口から温泉全力で吸っちゃったわ。

 

 あ、やば。死ぬ。昼間だから死ぬじゃんこれ。やだあああ。

 

 ガボついたけど無理。情けない姿を炎柱に晒してしまったのを嘆く間も無く、わたしはそのまま意識を遠退かせてしまうのでした。

 

 

 バタバタ。ドタドタ────。

 床を走る音。乱暴に、慌てる様な感じの複数の足音が耳に入って来てわたしは気づいた。

 

『早う! 早うヒメミコをお救いしろ!』

 

 お爺さんの声でわかった。これは久々の追体験夢。しかも続きだ。

 ヒメミコさまは床に仰向け状態。鬼舞辻無惨に首筋を喰いちぎられ、血を大量に吸われてしまったからだ。でもヒメミコさまは回復したからゆっくりと上半身を起こした。

 騒々しい音の先には、数名の刀や槍を持った用心棒みたいな人たち。お爺さんがこの場所の警護も兼ねて金で雇ったのかな。

 

『報酬は倍じゃ!』

 

 ヒメミコの前に立つのは鬼舞辻。ヒメミコさまの血で濡れた口元を懐紙で乱暴に拭き取り、用心棒とお爺さんを睨んでる。

 

『逃げて────』

 

 ヒメミコさまが察知したけど遅かった。部屋の半分が血に染まり、お爺さんを含む用心棒たちは一瞬で細切れになってしまった。

 

『きゃあああああああ!!』

 

 戦慄な場面。お婆さんは顔面に血飛沫を浴びて腰を抜かしてる。そりゃあそうなるよ。わたしは吐きそうだもん。

 

『どけ。ヒメミコ』

 

 ヒメミコさまはお婆さんを庇うように立った。

 

『退かぬ。この婆は放っておけ』

『ああああ……!!』

 

 お婆さんはヒメミコさまに目もくれず、半狂乱みたいになって床を這いつくばり、隣の部屋に置かれてあった金目の物にしがみついて泣き出した。『これは私の物じゃ! 誰にも、誰にも渡したくないいい!』って。

 

『見よ。その醜い年寄りの姿を。そなたを売った金にしがみつく愚かな姿を』

 

 鬼舞辻はお婆さん見て嘲笑う。感じ悪。確かに金亡者婆さんだけどもさあ。

 

『わたくしと会わなければ、二人共こうはならなかった。哀れ人の弱さを笑うな』

 

 したら鬼舞辻が急に真顔になって、腹いせにお婆さんを長い爪で切り裂いて殺害した。どうして、酷い。

 

『何と酷い事を……』

 

 お爺さんだった肉塊、宝を抱き締めたまま殺されたお婆さんに目を向けてヒメミコさまは静かに言った。

 

『用があったのはわたくしだけであろう。何故他の人を殺めた?』

『確かに用はお前にだけ。後の屑は知らぬ。邪魔をする目障りな物を退けたに過ぎん』

『哀れな』

『その愚かな口を閉じていろ!」

 

 平手打ちで爪がシャってヒメミコさまの頬に当たって切れた。痛い。でも直ぐ傷は癒える。

 

『何だ、その目は』

 

 ヒメミコさまが鬼舞辻を睨むでもなく深く見つめると、鬼舞辻は片手でヒメミコさまの首を掴んで来た。

 

『そんな目で私を見るな!』

 

 絞める力が強まる。苦しい。だけどさぁヒメミコさまは平気だった。

 

『そ、んな目とは、どんな目じゃ? 誰も彼もがお前を見る目か?』

『黙れというに!』

 

 更に強まる手の力。首がミシミシ言うてます。

 

『哀れ。お、前は、あ、哀れじゃ……』

 

 ヒメミコさまは涙を一つ落とし、両手で困惑する鬼舞辻の両頬を包んだ。

 そこで追体験夢終了。

 

 どうなんのこの後の続きは?

 って目を開けたらどっかの部屋の天井で、わたしは敷かれた布団に寝かされた状態だった。

 

「は?」

 

 がばりと上半身を起こす。

 あれ、この部屋は滞在用に案内された部屋だっけ。外暗い。陽が落ちてる。ふと自分が着てる浴衣に目が行った。用意してくれた桔梗柄だ。

 

「え、何で浴衣?」

 

 何秒か間を開けてわたしは汚い悲鳴を上げた。

 

「ぎいゃあああーー!」

 

 そうだ。わたしは温泉で炎柱の前でクソダサ失態犯したんだったわ。しかも裸体で。

 

 ああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!

 

 わたしは頭を抱えて赤面した。な、な、何という事でしょう。一体誰がこの部屋にわたしを運んで来たの。そして誰が浴衣着せてくれたの。

 まさか、まさかまさかまさか。炎柱……じゃないよね多分違うよねー。

 ってぶつぶつ呟いてたら、廊下をバタバタ走って来る音がしてスパーンって障子戸が全開に開かれた。

 ふわり。桜餅みたいな髪色のおさげ、目の下両頬の黒子。その姿を捉えた瞬間、彼女がわたしに突進するかの如く泣きながら抱き締めて来た。

 

「うわあああん!!」

「ふむう!?」

 

 どなたか女の子のおっきなおっぱいに挟まれた事ある人いますか?

 うん、幸せ。

 天国行きそう(ガチめのやつ)。

 死ぬ死ぬ! 抱き締める力が人間離れ過ぎて逃れられなかったから必死に腕ぱんぱんしたらやっと離してく助かった。

 

「っぶはあああ!!」

「きゃあ! ごめんなさい! 嬉しくてつい!」

 

 頬を赤く染めて恥じている彼女。わたしはそんな彼女を見て思い出していた。

 

「み、蜜璃、さん?」

「私、私、うわあああん!」

 

 またわたしに抱き付いた。今度はおっぱいで顔を挟まれず、力も抑え気味だったけどね。

 

 わたしの同期、そして現在恋柱。甘露寺蜜璃ちゃんです。

 

 

 

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