転生した世界で鬼の末裔が生きていくもん   作:あまてら

24 / 28
奇奇怪怪

 

 

 

 

 

 朝は炭治郎くんと朝食を食べ、その後は別々に分かれて過ごす事にした。

 昨晩言ってたように炭治郎くんは鍛練を。わたしも鍛練……の前に部屋でそよ婆に手紙書いてます。

 

「えーと、今わたしは、刀鍛冶の里に来ています……」

 

 報告っていうかほぼ日記状態。鍛練サボってない(一応)事も書かないとね。

 

「この里のご飯が美味しいんで、作り方教えてもらおうと思います。追伸、でもやっぱりお師匠様の作るご飯が美味しいです、っと」

 

 書き終えて封をし、弁天ちゃんを呼ぶ。

 

「弁天ちゃん、お師匠様にお願いね」

「モオウ! マタ書イタノォ? 仕方ナイワネエェ!」

 

 弁天ちゃんありがとう。そよ婆に手紙を届けてくれる弁天ちゃんに手を振り、一つ息を吐いて気持ちを切り替える。

 さて、鍛練……と言っても刀は無いから借りようかなって考えるけど、今日はまだいいや。それじゃあ何するんだよって話だけど、この里はそよ婆の居る山と似た感じだから、周辺で同じような走り込みでもして鈍った体力どうにかしよかな。

 って事で、わたしは久しぶりの走り込みを始めました。走り込みってもただ整備された平坦な道を走るんじゃないし、獣道に近く、無造作に生えてる木々を避けつつ駆け上がったり下ったり。走りにくいったらない。

 あー、この感じ懐かしい。しんどさはあるけど、慣れたから足の裏に豆は出来やしないし、サボったからってご飯抜きはないという心の余裕ってのがあった。

 

「三週目!」

 

 上って下りてまだまだ三周目。『弐ノ型 水車』の回転のキレを良くする為に、下りながら一回転するのを追加してみました。うん、吐きそう。

 それを繰り返して十五週目。流石に疲れたんでその場にあった木にもたれて座り込む。

 疲れた。お昼食べてなかった。お腹空いた。飛ばし過ぎたかも。今日はもうこれで良いかも。なんて自分判断で今日を終わろうとした時だ。

 

「……は?」

 

 誰かに見られてる気配。今になって気づき、わたしは辺りを警戒した。

 誰なの。現れるでもない何者かの視線は、わたしが気づいてから全くしなくなった。不気味だ。

 

「え、コワッ」

 

 野生の動物でもなさそうだし、鬼? なわけないよね。里周辺に鬼が現れるなんて甘々警備過ぎる。里には常駐警護してる隊士もいるのにさ。てか鬼だったらわたしの前に現れない筈がない。

 

「気のせい?」

 

 誰か潜んでる気配も無いし気のせいだって事にして、本日の鍛練は終了。

 んで次の日。その日は走り込みをやめて、里の人たちに聞いてまわって半日薪割りをしてた。

 わたしがやりますって言ったら『貴女は駄目です!』って凄い断られたけど、『薪割り得意なんで』って無理にお願いしてなんとかやらせてもらった感じかな。でさ、その薪割ってる時も謎な誰かの視線を感じたわ。何なんだろマジで。

 そうそう、その日の夜に玄弥くんと宿の廊下でばったり出会したんだけど、挨拶してもやっぱ無視されました。

 里に来て五日目の朝は久しぶりに昼前まで寝てしまいまして、寝ぼけ眼で一人昼食。そういえば炭治郎くん見てない。鍛練中かなって思いながら今日は鋼鐵塚さんを捜す口実で鍛練休んで、里の中をぶらりしよって決めた。

 蜜璃ちゃんの案内で何人かの刀鍛冶の様子を見学したけど、まだまだ他にもいるみたいだったから邪魔しない程度にこっそり見学させていただきました。声かけたら皆んなソワソワしだすからね。

 この日は謎の視線は感じなかったな。

 六日、七日。この二日間は、見学させてもらった刀鍛冶の"鉄尾さん"って人が、ご厚意で『鍛練用にどうぞ』って刀を貸してくれたので、それを使って走り込みしながらの苦手な水の呼吸の技を自分で復習。

 あーだったっけこうだったっけって、そよ婆から教わってた時の事を思い出しながらやるんだけど、自信わきません。

 この時も微かな視線感じてたけど、集中したくて無視したよ。

 

「す、すみません。お借りしてた刀、鍛練中に刃が……」

 

 七日目の夕方に刃こぼれに気づいて慌てて鉄尾さんに謝りに行ったら、鉄尾さんは怒るどころか逆に申し訳なさそうに『謝らないで下さい。私の鍛錬不足なんですから』って、鋼鐵塚さんとは真逆の反応で吃驚した。

 感動。これよこれ。わたしの刀鍛冶にはきっと、鉄尾さんのような方が正解なのでは? 新しい刀鍛冶紹介流れを待たずもう自ら動くべきよ。

 

「鉄尾さん、あの!」

 

 もし良かったらわたしの担当にってお願いしようとしたその瞬間、物凄い悪寒が走った。

 何このとてつもない殺気。『お前を殺す』って去り際に言われたみたいに背筋凍った。コワ。マジでコワ。

 

「どうか、しましたか?」

 

 わたしが言葉途中で黙っちゃったもんだから鉄尾さんが不思議がってた。

 

「い、いえ。何も無いです、お気になさらずに。ハハ……」

 

 この見られてる気配無い時を狙おう。そう思って八日目。

 やっぱり見られてる気配あって、鉄尾さんに声をかけるのにも殺気して代わりの刀借りれなかった。だから一日走り込みで終わった。

 

「あー、明日どうしよう」

 

 九日目。自分に甘えて何もしない日にした。で、誰も居ない温泉で独り言。謎視線は温泉入ってる間無いから本当に良かった。雨が降ったから宿で美味しい炊き込みご飯の作り方教えてもらった。以上。

 十日目の朝。いつもより早く起きて朝日浴びた。炭治郎くんとは全然会ってない。宿にも戻って来てないみたいだし、ちゃんとご飯食べてるのか心配になる。

 昼前に、どっかで見たことある気がする隊服着た長髪美少年とすれ違う。小柄で中性的だ。挨拶したら淡々としたのは返ってきたけど、こっちをじっと見つめてきてそのまま空へ目線を向けて去ってった。後で宿の人に聞いたら、なんと霞柱だった。ちゃんと挨拶してて良かったああ。

 そういえば、霞柱の肩にべったりと寄り添ってた鴉がわたしに向けて終始威嚇っぽい態度だったのが気になった。後で弁天ちゃんに聞いてみたら、『アノ鴉ノ話ハシナイデ!』で怒られちゃった。仲悪いのかな? 

 

「はあ、また鉄尾さんに言えなかったわ……」

 

 とぼとぼとわたしは歩く。本日もまた、鉄尾さんにお願いしようとして殺気を感じ、逃げるように鉄尾さんから離れた。したらパッて謎の視線消える。何なのマジで。

 生きてる人の視線なのだろうか。本気でお祓いを考えてみようかな。

 昼過ぎていつもの走り込みしてる場所とは反対側を歩いてると、なんか一瞬、化け物みたいな筋骨隆々とした鋼鐵塚さんが何処かへ行く姿が木々の間から見えた気がした。

 え、鋼鐵塚さん?

 そっちに気を取られかけたその時、近くで話し声がして見に行く。

 

「炭治郎くん!」

 

 隊服がボロボロになった炭治郎くんを発見した。何日ぶりだろうか。てか後知らない二人がいる。一人は子供。もう一人は男性。二人ともに里特有のひょっとこ面付けてた。

 

「ナツさん!」

 

 炭治郎くんがわたしに気づくと、二人もわたしへと顔を向ける。

 

「この数日間全く姿見ないから心配してたんだけど、こっち側で修行してたんだね」

「はい!」

 

 わたしは反対側でしてたよーなんて炭治郎くんに話してたら、子供が炭治郎くんの真横にピタリとくっ付いて言った。

 

「た、たたたた炭治郎さん! だ、誰ですかこの方は?」

「え? ああ、この人は八重野ナツさん」

 

 炭治郎くんが紹介してくれようとしたから、挨拶しようと思ってわたしはその子の目線に合わせてしゃがんでみた。

 

「ナツです。よろしくね」

「お、お俺はここ、こ小鉄とい、言います……! よろ、しくです」

 

 恥ずかしがり屋さんなのか、小鉄くんは炭治郎くんの背に完全に隠れちゃったわ。

 ぐふ。かわいい。何だか前世での弟の一人を思い起こされた気分。

 

「八重野さんですって? あなたは確か、鋼鐵塚さんが担当しているもう一人の方ですね!」

 

 小鉄くんから若干興奮気味のひょっとこ仮面の男性に向き直れば、その人は恒例行事みたいな『うお眩しい』ってな感じになった。

 

「こ、これは失礼しました。私は鉄穴森と申します」

 

 鉄穴森という人は、その物腰から落ちつきのある穏やかそうな人のようだ。ひょっとこ面だけど。

 

「いやあ、耳にはしていましたがこれほどまでお美しい方だとは思いませんでした!」

「そ、そんな。大したことないです……」

 

 最早美しさ褒められんのテンプレ台詞みたいになってきたし、それでも『でしょでしょー?』ってなるのを喉元までグッと堪えて謙遜した。

 

「鋼鐵塚さんもね、何も言ってはくれませんが、あなたを担当出来て大喜びなんですよ」

「え、ああ、そう、なんですか?」

「ええ。そりゃあもう。私にはわかりますよー。あの人を見てたらね──」

 

 鉄穴森さんは多くを語る。全然耳に入ってこないけど。仲良いのかな? でもそう言うけどさー、喜んでるのならあんなに恐いレベルで怒らないでほしいんだが。てか鋼鐵塚さんで思い出す。そういえば此処に来るちょい前に見たような。

 

「あ、ねえ炭治郎くん、さっき鋼鐵塚さんらしきバケ……見たんだけど」

「あ! いました! つい今しがた。ナツさんの刀の事も訊いてみたのですが、何も言ってくれないまま行ってしまいました」

 

 すみません。鋼鐵塚さんを留める事が出来なくて。炭治郎くんはとても申し訳なさそうな顔して謝ってきた。

 聞けばこっち側で修行してた炭治郎くんは、小鉄くんのご先祖様が作ったらしい絡繰人形(視界の隅にチラついてた頭ぶっ壊れの)を使って訓練してたんだって。で、最終的に炭治郎くんがエイヤーってやっちゃって、その壊れた人形の身体から三百年以上昔の錆だらけの刀が出てきたと。そしたら偶然なのか現れた鋼鐵塚さんがその刀を奪い取ってっちゃったんだってさ。

 これ主人公の伝説の宝刀みたいなの来たんじゃね? で、鋼鐵塚さんが磨くイベント始まったってワケか。

 鋼鐵塚さんを引き留めれなかったと深く反省する炭治郎くんに、わたしの刀まで気にしてくれた事のお礼を言う。モブのわたしの刀なんて鋼鐵塚さんじゃなくても良いんだからさ。主人公優先は絶対なのよ。

 

「さあさあ炭治郎くん、疲れたでしょう? 一旦温泉でも入って癒されてきたら?」

 

 わたしは和かに笑う。鉄穴森さんが言うには刀の研磨は三日三晩かかるって話だし、ずっと修行しててズタボロの炭治郎くんちょっと臭うし、とりあえずこの場は置いといて一度一休みする事をおすすめしてみた。休む事も大事だよーって。サボり気味のわたしが言うと悪魔の囁きみたいだけど。

 素直な炭治郎くんは『そうですね! そうします!』って受け入れてくれて、小鉄くんに絡繰人形壊した事の謝罪して、小鉄くんに何故か許可もらってたわ。

 

 その晩わたしは、宿からとある場所へと一人向かっていた。それは鉄尾さんのいる鍛冶場だ。真昼間に殺気で駄目なら夜に行ってみよう作戦。そういえば夜に伺った事は無かった。

 鋼鐵塚さんが炭治郎くんの刀磨いてるならさ、わたしの刀は勿論のこと後回しにされるよね。

 伝説の宝刀イベきたんだから良い機会だと思うわ絶対。二人担当出来てウェイ! だったのかもしれないけどさ、これからは主人公優先よ間違いなく。鋼鐵塚さんには炭治郎くん一本に集中してもらって、わたしには鉄尾さんでしょこれもう。

 鉄尾さんにオーケーもらったら長に即伝えに行こう。

 そうだよそうしよ。っつーてひとり里の夜道を歩く。鼻歌混じりでね。

 

「こんばんはー、鉄尾さん」

 

 鉄尾さんの鍛冶場に来てみたけど静かだった。しかも本人の姿が無い。

 もしかしてもう自宅に帰ってしまったのかも。残念。

 朝になったらまた来ようって元来た道を戻ろうとしたら、里の中心部が何やら騒がしい。宿方面だろうか。

 どうしたんだろ。ちょい胸騒ぎみたいなの感じ取る。まさかな。

 

「え!?」

 

 向かってる途中、里の全体から悲鳴やら何やら聴こえてくる。これ絶対何かよくないこと起こってるんじゃね?

 

「ひいいいい!!!」

 

 誰かが何から逃げる様な悲鳴がして、わたしは立ち止まる。

 何から? 例えるなら人間よりバカデカい金魚。壺みたいのを頭に付けて人の腕や足生えてる。

 何なのあの化け物。え、まさか妖怪……じゃない。鬼?

 

「だ、誰かああああ!!」

 

 逃げてた人は必死になって木に登ってく。金魚の化け物は追いかけて木に登ろうと手を伸ばしてた。

 どうしよう、このままじゃあの化け金魚に。

 これでも鬼殺隊の端くれ。身体が癖みたいに反応して化け物の前に来ちゃった。

 

 ああーー!!! しまったああ。

 わたし今、刀無いよおおおお!!!

 

 馬鹿だ。今更遅いけど。だから化け金魚がわたしへと切り替える。

 鋭い爪の化け金魚が襲いかかってきて、慌てて避けた。

 

「ヒイッ! ワァ! ウェエ!」

 

 避けた時に出るわたしの奇声だ。

 

「ちょっ、奇跡的に、避けれて、る!!!!」

 

 防ぐ物が生えてる木々しかない現状。小枝投げつけたところで意味は無い。

 マジ誰か刀持った人通りすがらないかな? 常駐隊士とかさあ!

 避けるのに必死なわたしが心の中で願ってたその時だった。

 スパーって、マジスパーって綺麗に化け金魚が真っ二つに裂けたのよ。刀で。

 わたしの目の前で化け金魚が崩れて消えてく。助かったわー。

 一体誰だろ。常駐隊士かなって思ったら、頬にすす汚れみたいなのを付けた霞柱──その人だった。

 

 

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。