転生した世界で鬼の末裔が生きていくもん   作:あまてら

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キミが笑えば

 

 

 

 

 刀鍛冶の里から戻って参りました蝶屋敷。数日振りのアオイちゃんと三人娘ちゃん達に出迎えられたわたしは、一旦身を整えてから、母屋にいる蟲柱に報告も兼ねて会いに行った。

 

「……というわけです」

 

 里での上弦二体による襲撃話はもう耳に入ってるだろうし、蟲柱に報告するのは炎柱からの了承得た事と、襲撃時に鉄穴森さんと小鉄くんに血を飲ませて回復させたのと、朝になる時間ギリで霞柱に血を少々飲ませた事を伝える。

 

「そうですか。わかりました。煉獄さんには鴉を飛ばします。日程が合次第、此処へ来ていただきましょう。病室にいる甘露寺さんと無一郎くんのお二人についてですが……」

 

 流れ的には重症だし血の治療をしてあげたいところ。でも、今回それは『やらない』と言われた。あまね様を介してお館様から通達が来たんだって。何故かはまだわからないらしい。

 報告し終えた頃、炭治郎くんと箱の中で眠ってる禰豆子ちゃんが遅れて蝶屋敷に戻って来た。怪我が酷い炭治郎くんは療養室で治療待ち。また夜になったらわたしの出番だと思ったけど、蜜璃ちゃんや霞柱と同じく、お達しで炭治郎くんも飲まないで通常の治療でやるみたい。

 でもまあ蟲柱曰く、『あなたの血の効力は実証済みですから、任務で重症度が高い他の隊士達に限り、血を使用した治療をやっていきましょう』だってさ。

 そうそう、玄弥くんもいつの間にか蝶屋敷に来ててね、炭治郎くんのベッドの隣のベッドにいたから吃驚しちゃった。平気そうに見えてたけど、玄弥くんも傷負ってたよ。我慢してたのかな? 

 『大丈夫?』って聞いたら、顔まで布団被って何にも応えてくれなかったなー。蜜璃ちゃんじゃないけど、泣いちゃうよ?

 翌日。眠りから覚めた禰豆子ちゃんは、蝶屋敷のお庭で元気に三人娘と戯れてた。

 

「おはよう禰豆子ちゃん」

「お、お、おはよう」

 

 ぎこちないけど、禰豆子ちゃんから言葉が返ってくる。朝日を浴びる禰豆子ちゃんを見るのは、なんだかとっても不思議な気分だ。やー可愛い。

 

「ぬ? おおおお?」

 

 任務から治療する為に戻った伊之助くんが、日中に外へ出てる禰豆子ちゃんに吃驚してたな。うんうん、わかる。驚きだよね。ま、人間に戻ったのかなって思ったけど、目や歯、爪は鬼の特徴のままだから人間に戻ったってのじゃなさそう。太陽を克服した謎、蟲柱がそれについては今調べてるらしいよ。蟲柱でも限界があって大変みたいだけど。

 その日の夕暮れ、炎柱が蝶屋敷へやって来た。

 本来ならわたしが炎柱宅へ行った方が良いんだけどね、経過は蟲柱に診てもらわないといけないからさ、わざわざ此処へ来てもらったんです。

 

「炎柱! 今日はご足労頂き、ありがとうございます!」

 

 炎柱の訪問に少し緊張しつつ深々と挨拶。数日振りだ。

 

「そんなに畏まる必要は無い!」

 

 そうは言ってくれるけど、なんたって柱なのだから畏まっちゃうわ。

 

「刀鍛冶の里での一件を耳にしたのだが、キミも無事で良かった!」

「お気遣いありがとうございます。あ、あの、診察室へどうぞ」

 

 蝶屋敷の入り口で立ち話して炎柱を立たせるワケにはいかない。直ぐに診察室へと来てもらう。

 中で待っていた蟲柱に今の状態を診てもらい(その間廊下で待機)、それらが終わるとわたしは中へ入る。窓の外はもう暗かった。

 

「では煉獄さん、八重野さんの血を飲んでいただきます」

「うむ」

「八重野さんお願いします」

「はい!」

 

 わたしはあらかじめ用意してたメスを手に取り、清潔にした左手の掌を切る。傷が塞がっちゃう前にギュッて拳を握り締め、湯呑みに流し入れた。量は湯呑み半分くらい。炎柱の場合、日数が経ってるからどれくらい飲んでもらったら良いかわからない。

 

「どうぞ」

 

 切った手を布で軽く押さえ、血を拭ってから湯呑みを炎柱に渡す。炎柱の視線がわたしの左手から血の入った湯呑みへと移った。

 炎柱がそれを口にし、飲み干していく姿を見つめながらわたしは、『どうか炎柱の左手目がちゃんと治りますように』って心の中で強く願った。

 

「っ──」

 

 全て飲み終え、蟲柱から渡されたガーゼで口元を拭いていた炎柱が心臓の辺りを軽く押さえた。

 

「大丈夫ですか?」

「ああ。血を飲んだ瞬間、心臓が焦げてしまうのではないかと思うくらい、燃える様に熱くなる」

「血を飲まれた方全員がそう言っていますね。何か他にわかる範囲で変化を感じますか?」

「そうだな、心做しか、傷を負ってから感じていた左目の重みを感じない」

「なら今から視力の検査をしてみましょう」

 

 で、視力検査。物っ凄い緊張した。数十分が長く感じた。結果は──。

 

「私の見立てでは、煉獄さんの視力は血を飲む前と比べて上がっています」

「じゃ、じゃあ炎柱の視力は?」

「ええ。回復したのではないかと」

 

 良かったああああああ。蟲柱からの診断結果に炎柱の表情にも安堵が見える。わたしは脳内でサンバった。

 

「煉獄さん、念の為、明日の朝もう一度検査を受けて頂いても?」

「勿論。断る理由は無い!」

 

 今は夜だから、朝にも調べてみて確実な結果を出したいのだそうだ。

 先走って大喜びしそうになる自分をグッと堪える。

 

「八重野」

 

 まだ診察室で用を済ませると言う蟲柱を残して廊下へ出たわたしと炎柱。少し歩いた廊下の突き当たりで炎柱がわたしを呼んだ。

 

「手の傷は大丈夫か?」

「え? はい。もう平気ですよ」

 

 左手を広げて見せたわたしが笑顔で答えたら、炎柱は凄く申し訳ないって表情を浮かべた。刀鍛冶の里でもこんな顔してたんだよね。

 小躍りするくらいに喜ぶかと思ったけどな。だってわたしの血を飲んで回復した皆んな、嬉しくて笑顔だったりするもの。

 

「あの、わたし嬉しいんです、物凄く。刀鍛冶の里でご無理を言って来て頂いたのに、時間経ってるし、わたしの集落での皆んなとは違うから治せなかったらどうしようとかって考えちゃったりもしたし、まだ検査があるので喜びは明日に控えようって思ったんですけど、無理です。めちゃくちゃ嬉しいんです。だから炎柱、スマイルです」

「すまい、るとは何だ?」

「笑顔です。喜んで下さい。炎柱が笑顔だと、手を切る痛みなんか屁でもなくなっちゃいます」

 

 わたしが両手の人差し指で自分の口角を上げて見せると、炎柱の表情からは複雑ながらも少しだけ笑みが溢れてた。

 何か押し付けがましいよな、すまねえです炎柱ってなる。

 炎柱は優しい人だ。回復させる為にわたし自ら傷付けて血を流すんだもの。いくら治るからって言ったところで炎柱的には直ぐに受け入れ難いよね。

 無限列車編での煉獄さんしかよく知らないけど、自分よりも他者を優先する責任感が強い人だから、特に、なんだろうと思う。

 

「わたしの血の治療を受けてくれて本当にありがとうございました」

「それは俺の方こそだ! 八重野、本当に心から感謝する!」

 

 炎柱が笑顔になる。良かった。だからわたしも笑顔で返した。

 

「あ、でも蟲柱が朝にもう一度検査しますから、その時にめちゃくちゃ喜んで下さい。絶対『完全完治』です! 自信出て来た、じゃない。あります! 間違いないです!」

「そうか! キミがそう言うのならそうなのだろう! よし! 結果が出れば全力で喜ぼう!!」

「はい!」

 

 調子乗りがヒートアップ。だけど弾け過ぎる前に『二人して大声で何やってるんですか?』って蟲柱が現れて残念解散した。その日は炎柱も蝶屋敷で一泊。蟲柱のご厚意で母屋の屋敷の一室を用意しようとしたけど、炎柱は遠慮して空いてる病室のベッドで寝たみたい。

 

 翌朝。アオイちゃん達と一緒に用意した朝食を食べた炎柱が、突然『わっしょいわっしょい』って声上げてマジ皆んなで吃驚心臓止まりかけた。原因がわたしが作ったさつまいものお味噌汁だったんだけど、『うまい!』って言ってたからそれは安堵した。んもー朝からビビるやつ。

 朝食後にもう一度検査した炎柱の視力は完全完治。やったね!

 炎柱は有言実行。全力で喜んでくれてわたしも本当に嬉しかった。

 

「ナツさんって本当に凄いなあ!」

「いやあそれほどでもおお」

 

 病室にいる炭治郎くんに朝食を持って行きがてらのお見舞いである。(今は重症隊士いないから)炭治郎くんは、刀鍛冶の里から戻って来た日から三日後の昨日目覚めた。今は炎柱の視力が回復した話をしてたところ。

 炭治郎くんてばさあ、煽てるの上手いよね。

 

「ところで、甘露寺さんと時透くんの御容態はどうなんですか?」

「二人はねー」

 

 蜜璃ちゃんと霞柱は二日間眠り続けてね、大丈夫かなって心配になった三日目の朝、二人ともほぼ回復しちゃった。(ちょい血を飲んでる霞柱は毒が抜けてたからもっと早かった。)通常よりも早くて皆んな驚愕したよ。

 

「今日は柱合会議が開かれるからって、柱の皆さんお館様の御屋敷へ行ったみたい」

「へええー。もう動けるんですか? 凄い回復力の早さですね」

「炭治郎くんも早いよ。もう普通の朝食食べれてるんだもん」

 

 血の治療が今回出来なかったんだけど、それでも炭治郎くんの回復も蜜璃ちゃんや霞柱と変わらないくらい早い。

 今日の柱合会議で血の治療止めた理由わかるのかな?

 

「おーい炭治郎、元気してるかあ? ってあれ────」

 

 誰かがやって来たって思ったら、隠の人だ。確か"後藤"って名前の。炭治郎くん達と仲良いんだっけかな。前にも病室に来てた気がする。

 

「あ! 後藤さん!」

 

 炭治郎くんが相手に手を振る。後藤さんで正解だった。後藤さんは炭治郎くんからわたしへと目を向けると、何故かしゃきりと直立した。

 

「こ、これは芍薬の君! 本日はお日柄も良く!」

「おはようございます」

 

 隠の人達は皆んな"〜の君"ってわたしの事を呼ぶようになったんだけど、この後藤さんも例に漏れずってやつだ。

 

「前からずっと気になってたんですけど、何でナツさんのことをそう呼ぶんですか?」

「あぁ? それはそのだな! 芍薬の君は──」

 

 わたしも浸透した理由がちょい気になる。だってこの隠の後藤さんとは、任務で会ったの吉原の時が初めてだったしな。

 

「──芍薬の君は芍薬の君だから芍薬の君だっってんだろおがあぁ! そんな事訊いてくるんじゃねええ!」

「いったああい!」

 

 微妙な間を置いてから後藤さんは恥ずかしそうに炭治郎くんの頭をしばいてた。こらこら病人よ。

 後藤さんが炭治郎くんのお見舞いしてる最中、わたしはお台所でお茶の用意をしてた。そしたらお庭の方から善逸くんの奇声がした。任務から戻って来たみたい。

 奇声の理由はわかる。きっと禰豆子ちゃんだ。陽の光を浴びて片言でも話せるようになった禰豆子ちゃんの経緯を知らないからきっと歓喜で叫んでるんだろうね。伊之助くんが戻って来てからずっと言葉を覚えさせてたから、何か嬉しい言葉でも話してるのかな。

 

「ナツさんナツさん!」

 

 やかんのお湯が沸き始めて丁度。お庭で禰豆子ちゃんと遊んでたきよちゃんが、慌ててお台所へとやって来た。

 

「どうしたのきよちゃん?」

「よろよろの鋼鐵塚さんがやって来ました!」

「え!」

 

 鋼鐵塚さんの名前聞いて体が身構える。

 わあ刀持って来たのかな? 鋼鐵塚さんの分のお茶も用意しなきゃ。てかよろよろの鋼鐵塚さんって何?

 三人分のお茶とみたらし団子を持って病室へと恐る恐る歩く。怒られたらやだなぁって思いながら。ほら、なんか病室から鋼鐵塚さんが唸る様な声聴こえてきたわー。

 

「お話中失礼致します」

 

 邪魔しないように病室に入りながら言う。か細い声で。空気であろうとした。

 流れ的には炭治郎くんに伝説の宝刀を鋼鐵塚さんが渡したところらしい。

 

「粗茶ですが」

 

 さりげなくお茶を置き、みたらし団子も同じくそうした。

 鋼鐵塚さんは炭治郎くんに向かって傷で自身の不調をアピる。確かに息が荒い。椅子にも座って震えてるし、よろよろ把握。

 

「あざす」

 

 後藤さんが茶を頂いてる。さて、この場から去ろう。

 

「ぅおおい八重野!!」

「ヒャい!」

 

 病室から出る一歩というところで、鋼鐵塚さんに呼び止められてしまって奇声出た。

 

「お前……、次は、わかってるんだろうな?」

「(約束は出来ませんが)はいっ!」

 

 ハアハア威圧感でわたしの刀渡してくる鋼鐵塚さんから両手でそれを受け取る。

 

「あの、鋼鐵塚さん。いつもいつもありがとうございますっ。これからもその、わたしと刀をどうぞよろしくお願いします!」

 

 脇汗かきながら頭を下げてお礼を伝える。日頃の感謝を込めて言ったつもりだ。わたしのようなモブの刀まで研いてくれているしね。里では帰り際に会えなかったし。色々思う事は言わない。面倒だ(恐い)からね。

 数秒の間があった。『煩い黙れぶち殺すぞ』って返ってくるかもって身構えてたら、『い、言われなくてもやってやる。俺の刀だからな』って返ってきたから拍子抜けした。

 

「あの、よろしかったらこのみたらし団子もどうぞ! では失礼致しました!」

 

 わたしは逃げる様に炭治郎くんと後藤さん、後、寝てるかもしれない玄弥くんを置いて病室を出た。

 

 その後、病室ではちょっとした騒ぎがあった。伊之助くんが窓を突き破って入ったからだ。

 伊之助くんは何やら情報を掴んだらしい。だからってダイナミック入室するなんて。絶対後で蟲柱に怒られると思うよ。

 

 

「おいお前らア!! 合同強化訓練が始まるぞ!!」

 

 

 

 

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