転生した世界で鬼の末裔が生きていくもん   作:あまてら

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突破

 

 

 

 おそろしや最終選別七日間が終わり、朝日と共に藤の花がわたしを包む。

 あれは一体何で死んだのでしょうか。水の呼吸まだ出す前なんですけどねぇ。目の前で鬼が弾けちゃったのを思い起こしつつ、元のスタート地点へ戻れば既に二人が待ってた。

 

「お帰りなさいませ」

「おめでとうございます」

 

 ん? 仕切り役の二人出てきたんだけど。まだわたし入れて三人なんだが。

 

「あ、あのっ!」

 

 すんげーピンクと毛先緑の髪のおさげの女の子が手を挙げた。着てる物はお互い薄汚れてますが、 めっちゃピンク髪に目行きます。てかどっかで見覚えがある気がする。

 

「私たち……三人だけですか?」

「はい。無事に戻られたのは御三人さまだけです」

 

 マジすか。たったの三人だけなの。ひえー。

 唖然としつつ仕切り役に目を向ける。これからの説明だ。隊服の支給、サイズ測り、階級刻み。この階級刻みは藤花彫りっていう特殊な技術らしく、『階級示せ』って言葉と筋肉の膨張によって、普段は書かれてない掌に現在の自分の階級を示す事が出来るんだって。因みに十段階の上から甲、乙、丙、丁、戊、己、庚、辛、壬、癸。選別突破組のわたし達は癸からスタート。

 

「先ずは皆さまの鎹鴉をおつけさせていただきます」

 

 出た鴉ちゃん。仕切り役の一人が両手を叩いて合図したらどっからか鴉が三羽カァカァって飛んで来て、わたし達の肩にそれぞれ乗りました。うひぃ鴉こんな間近で初めて見たわ。鎹鴉ちゃんは挨拶代わりの顔見せって感じで、直ぐにどっか飛んでった。連絡用らしいから、用があったらわたしのもとに飛んで来るんだってさ。

 

「そして今から皆さまには、玉鋼を選んでいただきます」

 

 ああ、刀の材料か。仕切り役の黒髪の子の後ろに置かれた簡易なテーブルの上に、一見ただの歪な石の塊がいくつか並べられてる。大きさは拳くらいよりちょい大きいのや小さな蜜柑サイズだ。

 

「鬼を滅殺し、己の身を守る刀の鋼は御自身で選ぶのです」

 

 選ぶかぁ。どれにしよ。

 

「俺はこれを!」

 

 わたしとピンク髪の子が悩んでる横で、早くも真ん中の男の子が鋼を掴む。

 

「わ、私はこれにします!」

 

 ピンク髪の子は顔を赤らめて緊張気味に右上の一番どデカい鋼を手にした。後はわたしだけ。

 こういう大事なのって適当じゃ駄目よな。慎重に並べられた鋼と睨めっこ。どれにしよかな。──ん。

 

「これでお願いします」

 

 わたしが掴んだのは一番小さな鋼。なんとなくうん、なんとなく目に留まったから。んで、刀が出来上がるまでは十日から十五日かかるんだって。

 そして階級刻みやサイズ測り終わり、最終選別は完全に終了で解散。この後の自分達は隊服や刀を待ち、鎹鴉の連絡で任務に出る事になるんだと。

 あっという間に終わっちゃったなぁ。

 それぞれに帰る方向が違うんで軽く会釈してから突破者の二人とさよならしようとした時、ピンク髪の女の子に呼び止められた。

 

「あの! 私たち三人だけだし、突破出来た同期だから、もし良かったら仲良くなりませんか?」

 

 勇気振り絞ったのかな? もじもじしながら顔を赤らめて言うピンク髪の子に思わず唖然としてたら、もう一人の男の子は『次にお前らに生きて会う保証も無いのに無意味だ』っつーてイキリっぽくさっさっと先に去って行ってしまった。

 

「……無意味、かぁ」

 

 ピンク髪の子は残念そうに呟いてしょんぼり顔。確かに今後会うかもわからないし、もしかしたらこれで最後かもしれないしってのはあるから、名前教え合ったところでっていう考えは多少理解出来なくもない。けど、それもなんか寂しい気はする。

 

「あ、あ、あの、八重野ナツっていいます。よろしくお願いします」

 

 少しだけ緊張した。今世ではこういうの初めてだからね。ピンク髪の子は一瞬きょとん顔になったけど、秒で満面の笑みに変化してわたしの両手を自分の両手で掴んで縦にぶんぶん振ってきた。

 

「ワ、私の名前は甘露寺蜜璃です! こちらこそよろしくお願いしますー!」

「か、んろじ、みつり……さん」

 

 邪魔で長い前髪の少しの隙間から、"かんろじみつり"を見つめたわたしは思い出した。桜餅みたいな髪色、おさげ、目の下両頬の黒子。名前が甘露寺蜜璃。遂に出たァ鬼滅キャラ。

 あ、待って。わたしあの甘露寺さんと同期なの? ヤバ。近いうちに鬼殺隊頂点である柱の一人、恋柱になるあの甘露寺蜜璃?

 有名人を目の前にしてキョドッちゃいそうだし、自分の口元がニヤけてないか心配になった。

 

「さん……だなんてなんだか味気ないし、年齢も近いだろうし、私のことは蜜璃って呼んでくださ──違う、呼んで? そうよ、そう。折角の同期なのだから言葉遣いも仲良くしましょ!」

「ええっ」

 

 甘露寺蜜璃さんは頬を染めて言う。どうやらわたしとフレンドリーに接してくれてるみたいだ。でもわたしは緊張というか若干の人見知りというか、久しぶりのそよ婆以外の人との関わりに少しだけ戸惑っちゃいました。

 

「ナッちゃんて16歳なの? 私と一つ違いね!」

「なら蜜璃さんはお姉さんですね」

 

 急に『ナッちゃん』呼びでドキってした。だってそう呼ばれたのお姉ちゃん以来だったから。

 

「うふふっ! ナッちゃんに『お姉ちゃん』て呼ばれたら嬉しいけど、我慢我慢!」

 

 めっちゃ可愛いやん。ほわーんってした。

 

「これからお互い色々辛いこともいっぱいあるだろうけど、精一杯隊士として戦っていきましょう!」

 

 甘露寺さん──、蜜璃ちゃんは『任務で会えたらよろしくね』ってわたしに凄い手を振って帰る方向へ行ってしまった。

 いつかは任務で会ったりするんだろうか。また会うなんてそうそう無いよね。わたしは、突破同期のもう一人が去り際に言った言葉を思い出してた。実際最終選別始まった時と終わった後の人数考えると、多くはこれが最後だったりもするだろうしな。

 

「……いやいや、わたし死なないし?」

 

 思わず口に出しちゃう。これが最後かもってなったらさ、柱になる蜜璃ちゃんは生きるとして、わたしが死んじゃうことになっちゃうし。今は考えないよにしよ。

 さ、帰りましょ。

 身体は疲れてないけど心はクタクタよ。あー、最終選別突破しちゃったなぁ。自分でもびっくりだわ。絶対そよ婆びっくりしちゃうね。いや感動で泣いちゃうかも。

 わたしはそんな妄想しながらそよ婆宅へと足を速めた。朝を迎えて体力MAXだからもう平気。七日間花の蜜とか朝露しか舐めてないから死ぬ程お腹空いてきたけど、帰ったらそよ婆のご飯あるって思ったら気にしちゃいられない。

 

「お風呂も入りたいいいい!」

 

 常中DASH。きっと鍛錬してる時より集中出来たし速く走れたんじゃないかな。行きより早かったもん。着くの。

 でもさ、夜じゃないから体力は削れるワケで。そして回復しないワケで。なので着いた時にはヘロヘロなワケで。

 

「た、ただいまも、戻りました……っ」

 そよ婆宅玄関の引き戸を開けたわたしは、倒れ込むようにして中へ入った。

 

「おや、お前がまさか最終選別から生きて戻るとは驚きだねぇ」

 

 土間に倒れたままのわたしを見下ろすそよ婆。いつもと同じ厳しめフェイス。『お帰り』っつーて笑顔でお出迎えとか、嬉し泣き顔なんて無かったんですわ。

「言ったじゃないですか、絶対生き残って戻るって」

 

 生き残れたのは奇跡──否、運が良いだけ。でも戻れました。

 

「それにまだ、教えてもらって無いんで教えてもらって良いですか?」

「早々に何だい?」

「わたしを隊士にって。"あの方"です。最終選別行くのが決まったら教えてくれるって言いましたよね? 教えてくれるの忘れてましたよね? お師匠さまぁ? ねえ? ねええ?」

「あーうるさいよ!」

 

 わたし実は密かに忘れてて、つい今さっき思い出しちゃいました。てへっ。そよ婆は秒の沈黙の後『いずれわかると言いたいところだけど仕方ないねぇ』って軽く溜め息。

 

「先に風呂でも入って身綺麗にしな」

「絶対教えてくださいヨォ」

「さっさと入りな!」

 

 ヨロ……。脚が棒である。わたしはよろけそうな脚で立ち上がってなんとか風呂場まで歩いた。風呂はそよ婆が既に沸かしてくれてて直ぐに入れそうだ。

 嗚呼ぁ、ありがてえ風呂!

 さっぱり風呂から出て身綺麗になったわたしの鼻を掠める良い匂い。ご飯だあああ。話よりも先にそよ婆のご飯へダイブ。空腹には逆らえません。

 で、食事が終わりーので片付けは後で自分でやれと言われーのでお話へ。遂に"あの方"がわかりました。

 

「お館様さ」

 

 名は産屋敷耀哉。鬼殺隊の最高責任者。産屋敷の一族の97代目当主であるその人は、鬼殺隊の皆から『お館様』って呼ばれてる。

 あーお館様ね。忘れてませんよ、うんうん。

 

「お前を知ったお館様がアタシのもとへ寄越した」

「何でですか?」

「知らないよ。向いてもないお前をわざわざ隊士にさせようとするなんて、何かお考えがあっての事だろうよ。いずれお館様に会う機会がある筈さ。お前が真に鬼殺隊隊士になれたその時に」

 

 理由はよくわからなかったけど、そよ婆が言うならいつか会って訊いてみよっと。

 って、"真に"ってとこなんか引っかかるんですけど?

 ちょい期待した『お帰り』の一言も無いわたしの最終選別突破帰宅はあっさりと流れて終わりました。これマジあっさり過ぎるわ。

 

「ナツ、起きるんだよ!」

「んがっふぇ?」

 

 翌朝。爆睡中に叩き起こされた。最終選別突破出来たからもう良いかなって気を抜いてたら朝から襲撃よ。

 

「終わったらと思ったら大間違い! 最終選別で生き残れた今までとこれからじゃ大違いさ! 柱でも鍛錬は怠っちゃいけない。向いてないお前なんか特に人一倍やらなきゃね!」

 

 で始まりました。水汲み薪割り走り込み技出し。勿論常中しながらーの。うわん。

 

「まだ時間はある! 裁縫覚えて集中高めな!」

「ウェエエ!」

 

 こんなんで辛いとかって言っちゃいけないと思いつつ言っちゃう。辛いです。

 

「見窄らしいから髪切りな!」

「はいいい!」

 

 まるでボサボサの貞子みたいになったわたし。切れって言われても上手く切れません。

 

「余計見窄らしく見える! アタシがやってやるからじっとしろ!」

「お願いしますうう」

 

 あらあら。そよ婆ったら器用。和バサミでまるでカリスマ美容師の如く切ってくれちゃいました。毛量減って凄い軽い。

 

「どうなりました? どうなってますわたし?」

 

 鏡なんてもう何年も見てなかったから、自分の髪型知る為にも鏡で見たくなった。

 

「待ってな」

 

 そう言って自分の部屋の押し入れから、そよ婆が可愛らしいちりめん生地の麻の葉柄の手鏡持って来たではないの。意外。

 

「壊すんじゃないよ」

「はい!」

 

 ──ん? 鏡で自分の顔見てなった。前髪はぱっつんにはならずに左横に流した感じだし、腰まであった長さの髪は胸の辺りまで。これは全く文句無し。でもね。

 

「ヒイイイイ!!」

「急になんだい!」

「あばばお師匠様! 大変です!」

 

 嘘だろオイって大パニック。だってわたしの顔、どう見たってヒメミコさまと同じだったからだ。

 

「すんげえぇ美少女が映ってます!!」

 

 信じられなくてナルシストばりに鏡見ちゃいます。唯一違うのは瞳だけ。後は見た目が一緒。そうです、わたしこの年月でダイエットに成功致しました。だから鏡に映るわたしマジマジすんげー超絶美少女です。オドロキーノです。

 

「鏡に映るわたしってかなりの美少女ですよね? これわたしだけがそう見えてる魔法ですか?」

 

 あまりにも信じられなくてそよ婆に詰め寄って訊いたらゲンコツ一発落ちて来た。

 

「何言ってんだか知らないけど、おかしなもんでも食ってきたんじゃないだろうね? 水でも被って頭冷やしてきな!」

 

 アレ? もしかして美少女に見えちゃった悲しいヤツなんわたし? ってそよ婆の反応から急激に冷静を取り戻したわたしは、確める為に再度鏡を見ようとした。

 

「鏡は終わり!」

 

 取り上げられてしまいました。

 まあきっと久しぶりに鏡を見たせいで自分の事をヒメミコさま似の美少女だと思い込む魔法にかかったのかもしれない。

 と思う事にして、このマジックミラーミステリーは幕を閉じたのでした。

 

「すみませーん」

 

 数日後。誰も訪れないそよ婆宅に誰かが訪ねて来た。鬼殺隊事後処理部隊の『隠』に所属し、隊服の製作や修復を担当する縫製係の一人らしい。名前は前田まさおと名乗った。最終選別突破後にサイズを測った隊服が出来たから持って来てくれたみたい。わざわざ。なんかどっかで見覚えがあるメガネキャラだなぁ。

 前田さんはわたしを見るなり『うお眩しっ!』っつーてギラギラした目で出来た隊服を渡そうとして来た。

 

「待ちな」

 

 わたしが受け取ろうとしたら、横からそよ婆が隊服を取り上げる。

 

「前田、作り直せ」

「ええっ! 何をおっしゃいますおそよさん! 作り直す必要なんてどこにもありませんよ? とても素晴らしい出来なので是非とも八重野さんに着て頂きたいんですが」

「お前の裁縫の技術は認めてやるが、この気味の悪い出来は大嫌いでね」

「そんな気味悪いだなんて────」

 

 前田さんが言いかけて秒、そよ婆が火のついてる囲炉裏へ投げ入れた。

 

「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!」

 

 自分の作品を燃やされ断末魔をあげる前田さん。隊服がぁってわたしも一瞬思ったけど、よく見たら隊服の布面積少なっ。で思い出したわ。確かこの人は女性隊員の隊服を変態的に独断アレンジしちゃうヤバい人。確か通称ゲスメガネ。

 蜜璃ちゃんも被害に遭ってるよねー。

 

「とっとと帰って新しいちゃんとしたのを持って来な」

 

 そよ婆が蹴り飛ばすとゲスメガネは転げながら『失礼いだじまじだあああ』って泣きながら去って行った。そよ婆がいてある意味助かったかも。後日ちゃんとした隊服は届きまして、胸元は開かれない、露出の無い一般的なのでした。

 そして最終選別を突破した日から十五日経ったある日の事です。

 

「ナツ来たよ」

 

 裁縫の最中に外からチリンチリンて風鈴の音がして少し胸がドキッとした。遂にわたしの刀が出来たらしい。そよ婆に言われて慌てて外へ出たら、見た事ある姿の人が家の前にやって来た。

 被ってる笠にいくつもの風鈴。背中に背負ってんのは絶対わたしの刀だ。恐いとワクワクの波が両方押し寄せて来た感じ。その人は笠を深く被ってたから、特徴的なひょっとこ面は見えない。

 

「俺は鋼鐵塚。八重野ナツの刀を打った者だ」

 

 笠に風鈴の時点で何となくわかっちゃったけど、鬼滅主人公と同じ刀鍛冶きたー。気難しくて癇癪持ち、刀折ったらコロス言う人キター。したら若干恐いなぁが強まって緊張感増したんだが。

 

「わたっ、わたしが八重野ナツです! 中へどうぞ!」

「これが"日輪刀"。俺が打った刀だ」

 

 テンプレの如く鋼鐵塚さんは玄関前で座り、背負ってた風呂敷広げて刀が入ってるであろう箱の蓋を開け始めた。

 

「ああ、あの〜」

「日輪刀の原料である砂鉄と鉱石は────」

「中へ〜」

「陽光山は一年中陽が射して────」

「お茶をですね〜」

「曇らないし────」

 

 やばー。話全然聞いてくれないやぁ。わたしも腰を落として何とか入ってもらおうとジェスチャーまでしてみたけど、鋼鐵塚さんは刀の方を見ながらずっと一人喋ってます。

 

「中へ入んな!」

 

 痺れを切らしたそよ婆が怒鳴る。わたしはそよ婆の声に驚いて、土間で仁王立ちしてるそよ婆へと顔を向けた。

 

「外で広げたら汚れるだろ!」

 

 はは。流石にこれで中へ入るでしょ。ってそよ婆から鋼鐵塚さんへと向き直したら、目の前にひょっとこ面が顔上げててガチめにビビって『ヒィっ』って声出た。

 

「あ、あのっ中へどうぞ」

 

 ひょっとこ見て悲鳴は失礼かなって反省の意味込めて咄嗟にスマイル贈ってみる。なんか怒り出したらどしよかなって緊張したんだけど、鋼鐵塚さんは急に無言でわたしをじっと見つめてた。何で?

 

「ナツ!」

「うぇ! はい!」

「茶を出してやりな!」

「はいい!」

 

 助け舟みたいな指示を素直に受けたわたしは、鋼鐵塚さんの前から立ち上がって急いで台所へと走った。わたしが中へ入って数秒後、鋼鐵塚さんも風呂敷と刀の箱を持ってやっと中へと入って来たっぽい。

 人にお茶出し緊張するなぁ。

 

 さあ、もう直ぐ刀とご対面出来そうです。

 

 

 

 

 

 

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