端折りますが言います。結果、鬼狩りとしての一発目は鬼倒せました。
正確にはまたバッシャーって弾けました。最終選別みたいな早さじゃなくて、結構頑張って鬼からの攻撃避けたり水の呼吸したりしましたけども、初めての事で手足が震えまして、上手く相手に当たらずにぶん投げられて家屋にぶち当たって建物崩壊。足折れて痛さのあまりギャン泣きしてたらガリ鬼(勝手に命名)が涎たらしながら来て絶体絶命しました。
それがもう恐ろしくて、折れた足は直ぐに治ったのに腰抜けちゃって立ち上がれませんで、何とか抵抗するも右腕掴まれて鬼に齧られて、『ガチオワッタ』ってなったところ弾けました鬼が。
もう意味がわかりません。ガリ鬼以外の鬼の姿は無くて、暫く呆けていたら隠の人達が三人くらいやって来て、多分来たのはわたしの怪我の有無確認とか、亡くなった隊士の遺体の回収だと思う。
倒壊した家の前で立ち尽くしてた新人のわたしに『お疲れ様』って先輩っぽく言おうとしてたらしい隠の一人は、わたしを見るなり少々吃驚してた様子。
「お、お疲れ様……です」
ってなんか言葉を丁寧に扱ってきたんだが。変に思いながらわたしは軽く会釈して廃村を後に。鎹鴉ちゃんの案内で空いてる宿にて一泊しました。アドレナリンどぱぁのせいで全く眠れずに朝を向かえ、眠気きたところで次の任務の知らせが入り直ぐに出発。
二発目はとある村近くにある廃寺を寝ぐらにした、お坊さん姿を模した目デカ鬼。わたしと二人の鬼狩り先輩で戦闘開始。
一人は同じ水の呼吸使いで、もう一人は風の呼吸使い。二人とも強くて正直この任務先輩に任せられるしわたしラッキーかと思ってたら、目デカ鬼が更に強くて二人の両手足を錫杖みたいな棒で叩き折って戦意喪失にさせた。
わたしも叩かれて足折れたんだけど、回復するから立って態勢直して水の呼吸の技をぶつける。なるべく負傷した二人から離れてデカ目誘導してまた技出そうとしたら、先手で両腕叩かれて折れちゃったから涙出た。
痛いよ! 回復するけど痛いんだよ!
「稀血ィ、稀血イイ!」
デカ目がわたしに迫る。腕が回復するより早くに右足を掴まれて足首を噛みちぎられた。
「っひ! 痛ぁ!!」
激痛ってもんじゃない。左足でデカ目を蹴るも失敗。回復した腕を伸ばして落ちた刀を手に掴み、刀を振ったけど当たらない。
「ウググッ!」
すると、わたしの右足を掴んだままデカ目は苦しんで弾けた。
また、だ。弾け勝利でわたしは鬼を倒した。
取り敢えず茫然とするのを止めて負傷した二人の無事を確認する為に近寄ったら、二人は気絶してた。片方はまだ大丈夫として、もう片方の息はあるけど絶え絶え。よく見たら腹部から大量出血。鬼の爪っぽいので抉られてました。
どうしよう。
隠の人達が来るまでこのまま放置出来ないやって思ったわたしは、久しぶりに自分の血で何とかしようって考えた。集落でやってた気持ちと今は違うし、もしかしたら集落の皆んなも特殊でたまたま効いただけなのかもって頭の中過ぎったけど、──やるしかない。
見られたらヤバいなってドキドキした。気絶しててくれてある意味助かる。わたしは空を見上げ、まだ夜だって確認してから、そこら辺にあった割れた茶碗の破片を使って自分の掌を傷付ける。
プチ痛い。
で、気絶した先輩の僅かに開いた口へ、傷口から溢れ出た血を流し入れた。
先輩がそれをごくりと飲んだのを確認したわたしは、急いで抉られてる腹の傷を見た。
ジワリジワリ。出血が止まっていく。わたし自身の回復よりも遅いけど、傷口が徐々に塞がれていってる様に見える。
集落の皆んな以外にも効くんだ。
なんかホッとした。荒い息は段々と落ち着いてるみたいだから、これで大丈夫そう。
したらやっと隠到着した。後はお任せ。わたしは鎹鴉ちゃんの案内で次の任務へ向かいました。
ていうか連続過ぎ。休憩させてほしい。
三発目は通り魔する鬼退治。一発目二発目よりかはマシだった。
わたしは此処である事を試してみた。敢えて自分の血を鬼に舐めさせるというやり方だ。
仮説……というか、稀血だと食い付いて来る鬼達が皆、わたしの血を口にしてから弾け死んでるという確かなものを確認しておきたかったから。
で、やっぱり思ってた通りになった。鬼はわたしを喰らおうと来る。瞬時に刀の刃で掌を引き、出血させてからその血を鬼の顔面狙ってかける。鬼はそれを舐める。ちょい呻く。で、弾け割れる。
やっぱり。わたしは口元を緩ませた。
なぁーんだ。わたし実はチートじゃん。最強じゃん?
この血有れば無敵じゃないの。呼吸よりも日輪刀で首斬るよりも凌駕してる説あるって思ってマジ調子乗った。夜限定だけど。
この世界での新たな人生、なんか開けた気がした。
それからは随分と気持ちが楽になったっていうか、鬼との遭遇でいちいちビビらなくなった。
「弁天ちゃん、お師匠様からの手紙まだ?」
弁天ってのはわたしの鎹鴉ちゃんの名前。ちょっとツンデレ気味な雌。曰く鴉界の美女らしいよ。
「ハァア? 昨日モ聞イタジャナイ! マダ二日シカ経ッテナインダカラ待ッテナサイヨオォ!」
実は、鬼狩りとして旅立ってからそよ婆と手紙のやり取りしてます。わたしが一方的に送ってる率高いけど、一発目の感想やら鬼の怖さやら、宿の食事感想やらを。因みに血で鬼を倒せる事はそよ婆にも言ってない。
でも、鬼との戦いにちょっと慣れてきた感あるとかって書いて送ったら、
【調子に乗るんじゃない】
って太字で返ってそれはビビりました。
慌てて『乗ってませんからご安心くださいお師匠様』って送ってからの返事来ないかなぁしてるんだけど……。
そよ婆からの返事待ちつつ任務に勤しみつつ、もう何発目か数えるの面倒だなったある日の任務での事だ。
山に巣食うビックフットならぬ巨鬼が周辺の村々を襲っているという知らせを受けたわたしは、到着してから巨鬼が潜んでそうな洞穴とか廃墟とかを警戒しながら探してた。
「キミも増援の一人らしいね」
どっからか突然人現れてマジびっくりした。どうやらわたしの他に十人くらいの隊士が来てるみたい。増援って事は結構キツイ相手なのかも。
「いたぞ!」
見つけたらしい一人が声を上げた。多分先輩隊士。この場を仕切ってくれてる。いくら慣れてきた感あるとはいえ、この隊士の人数に巨鬼情報、こんなの初めてだから緊張はしてきた。
「気をつけろ!」
洞穴から出て来た巨鬼はそりゃあもうビックフットよ。一体何人喰ってきたんだろうか。マジでデカすぎんだろ。しかも両腕がもう鉄アレイ。これ絶対柱用でしょって思った。だって最初に来てた筈の隊士の姿無いし、わたし達増援みたいだし、出て来てからものの五分で半分死んで、残り五人になったもん。
「うわあああ! 皆んなやれ!!」
先輩が斬りかかる。続けとばかりにわたし除けて四人が其々呼吸を使って応戦するも吹っ飛ばされた。痛い。
わたしも吹っ飛ばされた衝撃で肋骨何本か折られて気絶しかけてるんだけど、徐々に回復してってなんとか足ガクガクで立ち上がる。周りの隊士達はというと誰も起きない。さっきので身体が逆に折れ曲がって死んでたり、追加鉄アレイパンチで顔面粉砕されてたりでかなりの悲惨グロテスク。気付けばわたしだけ残されました。
「ヴォオオーー!」
鬼は喋るタイプじゃないから吠えるのみ。鉄アレイみたいな腕をぶんぶん振り回して向かって来るじゃないの。
「ヴォア!」
振り下ろされた腕を避けて刀を振るう。背中を斬ったけど無意味。反動で転げ回りながら態勢整えて呼吸。今は集中しなきゃだ。
「水の呼吸 壱ノ型 水面斬り!」
シンプルな基本技。でも避けられた。わたしの技じゃ避けられるばかり。
ならチートよ。
わたしは巨鬼から距離を取る。で、いつものという感じで刃を左手に当て、引いて切った手を巨鬼に見せる。まるで闘牛士の気分だ。
「ウボオオォーー!」
巨鬼はわたし目掛けて突進して来た。
いつもなら此処からがわたしのターンでエンドする筈だった。
でも今回は違った。巨鬼はわたしが血を投げ付ける寸前に背後に回り込む様にしてカーブして来たのだ。だから血はムダ放出。
嘘でしょ。あんな図体で素早いなんて反則。
チートで倒せるって調子乗ってたわたしは、背後に回られた巨鬼に腕で吹っ飛ばされてしまいました。
『だから調子乗るなって言っただろ』
飛ばされながらそよ婆の幻聴が聴こえた気がしたな。
で、メキャボキって音した。大木にぶち当たって逆くの字みたいに身体折れ曲がったんだと思う。
あ、やべってなる。
下半身の感覚無いや。自分で見るの怖い。
「っんグ……ゥふぅッ!」
地面に落ちて口からゴパァって血が吹き出た。
回復はよ! 早く!
口から血止まりません。回復してるっぽい気もするけどしてるんだろうかマジで。バキバキってしてから曲がった下半身を元に戻そうと動かしてみる。あ、なんか感覚戻って来たかも。血も止まったみたいだし、凄いな自分。
あー、痛みキタワ。でもまだ起き上がりも出来ない。逆くの字からは解放されたけど、完全回復には時間かかりそう。
「ヴォアア」
そうこうしてる間に巨鬼がわたしの前に来ちゃった。
ここでふと考える。時間無いのに。今さっき身体あんなになって回復してる自分キモスだけどさ、鬼に頭ちぎり取られちゃったり潰された場合どうなっちゃうんだろわたし。
まあチート血食す巨鬼が弾け割れ死すんのは確定だから滅するで良いとして、何よりもそれよりもわたし死ぬ? え、死ぬ? あれ? この前自分チート持ち最強ってなったよね?
一体どうなるかわからな過ぎてガチで恐ろしくなった。
「ゔッ、し、死にたくな、ぃい」
震える手で日輪刀手探りするけど見当たらない。下半身はまだ回復終わってない。
あ、頭掴まれた。首メキッていった。
調子乗ってすみませんでした。お師匠様。
今度こそ終わる。嫌だ、嫌だよ。
ぎゃー首もげるってなったその時だ。
「炎の呼吸 弐ノ型 昇り炎天!」
わたしの首もぎ取るのに夢中だった巨鬼が後ろから背中をズバッと斬られ、なんか炎のエフェクトが昇って見えた。
「────え?」
瞬間、誰が来たのかわかった。
「グッウボオオォ!!」
斬られた巨鬼がわたしの頭を解放し、その人へと向かって行く。
特徴ある炎の羽織り、赤い刀身に焔色の髪と瞳をしたあの人は……。うん、絶対あの人に間違いないよ。
「ぅギャ……ッ」
日輪刀で巨鬼の首が天高く飛んだ。そして残された大きな巨体は地面に倒れて崩れ消えてく。
静かに息を整え、刀身を鞘に戻した彼の名は────、煉獄杏寿郎。羽織りを着てるって事はつまり、炎柱。此処は管轄地域だったのね。
まさかのあの煉獄さんを生で見られるなんて感激だわ。身体が完全に回復し終えたわたしは、地面に横たわっていた状態からゆっくりと立ち上がる。
「っしょ……。いててて」
もげられそうだった首をポキポキ鳴らして微調整。背伸びしてよし、大丈夫。で、自分の日輪刀が少し離れた場所に落ちてたんで拾いに行ったら、その近くに先程巨鬼にやられて死んでしまった隊士達の遺体が散乱してた。
生煉獄さん見れてテンション上がったけど、悲惨な遺体を目の当たりにして一気に現実に引き戻されてしまった。本当にさっきまで仕切ってくれてた先輩隊士も、身体をありえない方向に折り曲げて絶命してるのだ。
人ってなんて脆いんだろう。
あらためて思う。鬼に対する人の脆さを。自分なんて直ぐに回復しちゃうからあまり気になんてしてこなかったしね。皆んな知らない人だけど、ショックは大きかった。
わたしも危うく死ぬところだったから、下手したらわたしがこうなってたかも。
「無事か? キミの他に生存者の有り無は?」
隊士達の遺体の前で立ち尽くしていたわたしは、背後から声をかけられて振り向いた。
煉獄さんだ。目力が凄い。
「は、はい。わたしは無事です。ですが皆んな……」
煉獄さんと会話だって思ったら緊張してきた。だって柱だし、柱には敬意を込めて丁寧でいなきゃいけないってそよ婆から教えられたっけ。
「そうか……。俺がもう少し早く来ていたならこんな事には。皆を死なせたくなかった」
遅かったと悔いている煉獄さんに、初対面のわたしが他に何か言葉を返すなんて馴れ馴れ如くてヤダよね。そう思ってわたしは煉獄さんから一歩下がり、
「お先に失礼致します。……あの、先程はありがとうございました。炎柱のお陰でわたし、こうやって話す事が出来ます。では」
それを伝えるのが精一杯。緊張しちゃうもん。わたしは深く頭を下げると、急いで次の任務地へと走った。
これがあの煉獄杏寿郎さんとの初めての出会いでした。