後方師匠面の転生者に『功夫が足りん!!』と言われ続けた噛ませ犬がバグった話   作:後方師匠ズラ

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 反響が凄くて私はかなりびびっております、誠にありがとうございます。


 思いの外ノーヴァへのコメントが多かったので彼女のバックグラウンドを差し込んどきます。


功夫之伍

 

 

 ––––ノーヴァと言う少女は『魔法』と言う力の被害者とも言えた。

 

 この世界の魔法と言う力は魔素と呼ばれる素粒子を利用し、物理的な現象を特殊なアプローチで引き起こす力であり、この力を行使する為に必要な物は魂の力と定義されている。

 

 現実の世界にも魂の重さが21gであると言う話が存在する。この数字の真偽や正誤は兎も角として、この世界に於いてはこの数字は現実の物であり、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 そして魂を構成している物質はエーテル体と呼ばれており、エーテル体は魔素同士が四つ結合する事でその形を作り上げている。

 

 また、魂と精神力は密接な関係を持っている事が確認され、魔法と言う技術を使用する為にはこの四つ結合しているエーテル体から精神力によって切り離された一部の魔素と、周囲の魔素を結合させる事が必要であり、物理現象へ魔素を仲介したエーテル体の繋がりを持つ事で、精神力による思考の反映を行い、現実の現象として引き起こす事が可能である。

 

 前置きが長くなったが、要約すれば万能ではあるが全能では無い力。それがこの世界の魔法であり、物理的な要素を完全に無視する事は出来ない。

 

 ––––だからこそ、ノーヴァと言う少女は被害者と言えるのだ。

 

 

 彼女の母親はとある港町に住む宿場の従業員であった。

 

 その町は歴史が古い訳ではなく、偶々船乗りが漁をしている際、海流に流された事がきっかけで新大陸を発見し、海路を模索した結果、橋頭堡として作られた場所である。

 

 その為、町と言うよりは拠点や輸出入を管理する場所と言う意味合いが強く、それでいて金銭が大きく動く稼ぎ場となっていた。

 

 目の回る様な忙しい生活の最中、ノーヴァの母は新大陸を調査する先遣隊の美丈夫と恋仲となり、子供を身籠る事となる。

 

 ––––此処までは幸せなラブロマンスである。しかし、問題はこれから。

 

 

 恋人と体を重ねてしばらくが経った後、彼女は不注意によって怪我を負ってしまい、先遣隊に付き従っていた医師によって()()()()()()()()

 

 突然だが、現実の世界では妊娠中の女性は薬品を使用する場合、注意が必要な事はご存じだろうか?

 

 それは薬品の成分が血中を辿り、胎盤を通じて胎児へと影響を与える為に麻薬性の成分などを使用する事が厳禁とされている。

 

 さて。ではこの世界に於ける魔法と言う力は、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()?

 

 答えは当然NO。この時医師はしっかりと妊娠の有無を聞いており、彼女も自覚症状が無かった為に妊娠中ではないと思い込んでいたのだが、既に彼女のお腹には()()()()()()()()()()

 

 魔素と言う力の性質上、魔法は胎児に対して悪影響を与えるとされており、良くて先天的な障害、最悪死産もあり得る物である。

 

 受精卵の状態で魔法を浴びたノーヴァは死産こそ免れる事が出来たものの、それによって人間とも魔獣とも呼べない身体で産まれる事となってしまった。

 

 肉体を構成する要素として、魂だけでなく細胞単位で魔素を取り込んでおり、その恩恵として人智を遥かに越えた異常とも呼べる身体能力を有する怪物。

 

 それがノーヴァと言う少女であり––––––後世の研究で判明する魔素による先天的障害の一例『餓鬼』である。

 

 彼女のような存在は研究が進んだ後の世代には魔素被害者或いはその影響を受けた人類として、『魔人』と呼ばれる一種の障害者として認識されており、専用の魔法薬(ポーション)による体質改善も可能なのだが、()()()()()()()

 

 彼女の様に一見して障害のない人間のような魔人は症例が少なく、周囲も両親も彼女が離乳期に入るまでその事に気が付かなかったのである。

 

 そもそも先天的障害を持つ者は口減らしの対象となりその幼い命を散らせるのが開拓時代の常識。しかし、ノーヴァは()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 ノーヴァは物心ついた頃から常に飢餓感に苛まれており、摂食が可能な物は本人の意思とは関係なしに口へと入れていた。

 

 この原因は彼女の肉体に存在する。

 

 ノーヴァは外見こそ人間となんら変わりのない姿をしているが、これは母親が人間であり、その胎内で順当に細胞が構築されたが故に人間の姿で産まれたからである。

 

 しかし、細胞単位で注目すれば最早人外の領域に達しており、その体と身体能力を維持する為に()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 彼女の肉体は凄まじく、年齢が一桁でありながら横殴りの拳一つで熊型の魔獣を肉塊に変えるだけの膂力と、反応すら許さない瞬発力を持ち、無機物以外は100%消化吸収が可能で排泄すら不用な消化器官を有しているが、最悪な事に遺伝的要因で脂肪等が非常に付き難い体質となっており、胸元こそ母親並みにはなったが、カロリーの消費をカバー出来る身体にはならなかった。

 

 望まぬ力の代償に大量の食料を必要とする人の姿をした怪物。更にタチの悪い事に、彼女の脳も異常な性能を持っており、全分野に対してサヴァン症候群の如くに思考を深める事が出来る。

 

 –––––ただし、本人にすらその深慮は制御不能であり、思考を深める事で頭痛と発熱が必ず発生すると言う欠点を持つが。

 

 この為、彼女は人語を理解していても、間を置いた途切れ途切れの話し方しか出来ない。普通に会話すれば脳が構築した会話のフローチャートを止めどなく、一方的に相手にぶつけることになる上にその大半が会話を先読みし過ぎた結果理解不能な内容しか口にする事が出来ず、そもそも会話が不能。

 

 思考そのものが頭痛と発熱を誘発し、それが過ぎれば脳細胞が死滅する危険性が存在する為に彼女は思考が実質不可能となり、人形の生活を送りながら飢餓感に耐えていた。正に障害。この時代では病や呪いとも言えるだろう。

 

 

 それが変わったのは町長が彼女の存在に気が付き、周囲の魔獣を狩らせる事を提案したからである。

 

 彼女の母親は(怪物)を恐怖しながらも親の情によって手放せなくなっており、それが理由で夫と離婚していた為、食費の負担を解消する為にその提案に乗ってしまった。

 

 その日を境にノーヴァは命令された通りに町の周辺の魔獣を狩り始める。

 

 町長によって人間を間違って襲わない様に最低限の常識を鞭打ち等の畜生へ行うような調教によって覚えさせられ、朝も昼も夜も無く魔獣と戦う毎日。

 

 モラルも、マナーも、その体と頭脳の欠点が原因で身に付かない。最初はその身を案じていた母親も、返り血だらけで鏖殺した魔獣の素材を引きずり、睡眠のためだけに帰ってくるノーヴァへの恐怖が次第に愛情に勝る様になって行き、話しかけてくる事が少なくなり、段々と居ない者扱いへと変わっていった。

 

 それでも彼女は何も言わなかった。辛いと感じたら連鎖的に思考が回転し、熱を帯びて頭痛を帯びる。だから、考え無い。

 

 寂しいと感じたら孤独を連想し、さまざまな恐怖を思い描き額が熱くなる、痛みで何も考えられなくなる。だから、辛くも寂しくも無い。

 

 だが、畜生の様に扱われ、戦いの道具として使われる毎日に何も考えていないはずの彼女の瞳からは涙が流れていた。何故流れているのかも考える事ができない。

 

 

 そんな毎日を過ごし、調教で覚えさせられた周囲の魔獣の金になる部位を残して他の血肉を食っていた彼女だが、物事には終わりが来る。

 

 –––––町の周辺から、魔獣が消えた。

 

 原因が分からない。考えようとすると熱が出る。頭痛がする。だから分からない。分からないから母親に聞きに行こうとした。産んでくれた母親が彼女は好きだったから、行こうとしたのだ。

 

 逆らうつもりも、襲うつもりも、そもそも危害を加えるつもりも、何一つなかった。母親の前ではお腹が減っても我慢した。空腹でお腹が痛くても頑張って我慢していた。ノーヴァは自分が異常だと自覚しながらも、()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 朝ご飯も、昼ご飯も現地調達出来なかった彼女は飢餓感と空腹による苦痛を堪えながら、母親にどうしたらいいのか聞きに行く為におぼつかない足取りで家まで帰り、玄関を開ける。

 

 目に入って来た光景は首を吊った自分の母親の姿であった。

 

 遺書らしき物にはノーヴァを娘として見る事が辛くなったと言う内容と、今まで彼女を育てるにあたっての苦労が恨み言のように並んでいた。しかし、ノーヴァはそれを深く考える事が出来ない。

 

 代わりに、彼女は動かなくなった母親を『とても美味しそうだ』と、そう感じてしまう。

 

 内側から沸き立つ恐怖に全身に鳥肌が立ち、その感情を塗りつぶす様に頭痛と発熱を堪えながら思考を回し、泣きながら町中に駆け出して行く。

 

 医者を呼ぼうとした。しかし、彼女の体を知る町長はその姿を見て人間を食いに来たと誤認してしまった。

 

 何故なら町周辺の魔獣は数年掛りとは言え彼女が一人で()()()()()()()()()()()。その狩りの様子や範囲が広い為に弱い魔獣は逃げてしまい、強き魔獣も淘汰されている。第三者から見れば食料に飢えた怪物が襲いに来た様にしか見えなかったのである。

 

 

 自警団や市民からの投石や攻撃に反撃する事なく逃げ出したノーヴァ。しかし、彼女はどうすれば良いのか分からずにふらふらと魔獣狩りをしながら各地を放浪した。

 

 そのルーチン以外の事を知らず、それ以外の生き方が分からないが故の魔獣狩り。食料では無い荷物を運搬するキャラバンの護衛として、知識としては知っている硬貨と言う物を集めながら生きていたが、そんな最中に優しかった頃の母親の夢をみる。

 

 

 『ノーヴァ。貴女は他の子とは違うけれど、私の大切な子供よ? 今はまだかもしれないけど、きっと貴女を理解してくれるおともだちが出来るわ。だから、心配しないで?』

 

 

 町にいた頃に遠巻きに他の子供達が遊んでいる姿を見ていた時にお母さんが言ってくれた言葉、涙を流しながら目を覚ましたノーヴァはキャラバン達の目的地である『アルケー皇国』へ入国する。

 

 ––––お母さんが言ってた。私と、ともだちになってくれる人、本当に居るのかな?

 

 

 こうして彼女は護衛を全うすると同時に屋台等で今までの稼ぎを切り崩しながら城下町を見て回るのだった。




 と言う訳でノーヴァのキャラ背景です。

 モラルやら常識やら以前に通貨を支払う事や必要最低限、犯罪を犯さない程度の知識しか身に付いていない為に奢られたら際限なく食います。なんなら人間と言うより獣です。

 しかし、感情が無いわけでは無いので話や指示自体は聞いてくれます、それが深く理解可能かどうかはさておき。

 尚、彼女の強さは才能や技術を上から潰す身体能力になります。まぁ初見殺し系なので冷静に対処すれば勝てない事が無い類いのパワー系。

 『原作』プレイヤーには、その背景からノーヴァ(特大地雷娘)などと呼ばれたり呼ばれなかったりしている模様。
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