篝火 始まりの街アクセル   作:焼酎ご飯

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久々なので食い違いなどありましたらごめんなさいね


13話

「聴取お疲れ様でした。こちら今回の報酬となります」

 

 

一撃熊から逃れてからしばらく後

骨片を使用して帰ってきた貴方とめぐみんはギルドにて事の顛末を報告していた。

 

 

・めぐみんの爆裂魔法により亜人の群れは討伐できたが、逃れた初心者殺しは更に大型の獣によって食い殺されていたということ。

・大型モンスターは脅威が高いと判断し撤退したこと。

・転移アイテムを使用した為当日中の報告になったこと。

 

 

これらの報告はただ単に口頭で行われたという訳ではなく、

別室にてギルド職員の立ち合いのもと真偽を看破するという魔道具を使用した形で執り行われた。

危険度の高いモンスターの情報が故ということらしいが、真偽を看破するとは中々恐ろしいアイテムがあるものだ。

 

 

試しに貴方は"自分は敬虔な白教信徒である"と嘯いたところ、その魔道具は見事に作動した。

 

「白教って何ですか?」とめぐみんから質問が飛んだが、致命的に相性が悪い連中とだけ答えておいた。

巡礼者の人間性もさることながら、侵入してくる闇霊も碌な奴がいないのだ。(当社比)

 

 

こうして貴方の証言には信憑性が保証され、今回の依頼は達成されたという扱いになった次第だ。

 

 

 

「…あれ?額が事前提示の額より少し多いですね」

「そちらの増額はギルドへの一撃熊の脅威報告と、追加モンスターの討伐分になります」

「追加モンスター?」

「ギルドにて把握していた敵情報はゴブリンと初心者殺しのみだったのですが、群れはコボルトの混成であったこととその討伐に対する追加報酬となります」

「あぁなるほど。情報に無かった分も報酬に追加されていて安心しました」

 

 

 

どうやらめぐみんがまとめて吹き飛ばしたモンスターはしっかり報酬に加算されていたようだ。

 

早速報酬をめぐみんと分けたところ、

今回は報酬の減額もなくかなり実入りの良いものとなった。

 

 

「おぉ…!見てくださいこのエリス紙幣!なんと厚みがありますよ!!」

 

 

めぐみんは紙幣の束を指ではじくと、その香りを存分に味わっている。

 

 

 

「んはぁ~…めっちゃいい香りがします」

 

 

 

それほどいい香りがするのだろうかと思い、貴方もめぐみんを真似て嗅いでみるが特別匂いはしない。

 

端から見れば二人の冒険者が受付前で札束の匂いを嗅いでいるというかなり貧乏くさい姿なのだが、

初めて高額依頼を達成した冒険者にありがちな行動でもあった。

 

 

 

「ちゅうちゅうたこかいなっと…さて、この後どうしますか?私はまだ爆裂魔法は撃てそうにないので役に立てませんが、手伝えるクエストがあれば手伝いますが」

 

 

今日はもうクエストを受けるつもりはない。

不死特有の弾丸ツアーを敢行してもいいのだが、愚者状態のめぐみんを連れて生還する自信はない。

それに陽も高いこの時間では旨味もあまりないのだ。

これまでいくつかクエストを受けてきてわかったことだが、近場で割の良いクエストは早い段階で売り切れてしまうものだ。

 

貴方はそれよりもウィズへの依頼料を納めに行こうと考えていた次第だ。

報酬の使い切りは最早不死の性である。

 

 

 

「そういえば貴方の目標はソウル化の依頼料確保でしたね。せっかくですし私も同行していいですか?」

 

 

 

もちろん構わない。

めぐみんが魔力切れで無理をしていないのであれば一緒に行こうと伝える。

 

貴方はこれまでに稼いだ報酬を全て引き出すと適当なズタ袋に全て放り込み、

めぐみんと共にギルドを後にする。

 

 

~~~

 

 

 

「にしても凄い袋のふくらみですね。絵面が強盗にしか見えないのがかなり最悪です」

 

 

そんなひどい風体なのだろうか。

貨幣の量によってその質量が変化するというのは、キャッシュレス経済出身の貴方にとっては馴染みが薄く、強盗と言われてもあまりピンとこない。

そもそもあの巡礼の地では強盗どころかこちらの命を狙ってくる輩ばかりであった。

 

実際貴方も神の居城を家探ししたり、興味本位で神の寝首を掻いたりとやりたい放題だったので、

その手の輩よりもひどい賊だったのかもしれない。

只の巡礼者、そういう風には生きられん時代か。

 

せっかくなので貴方はめぐみんに冒険者になった動機や目標を尋ねてみた。

回答如何によっては貴方のフリースタイル巡礼を見直さなければいけないかもしれない。

 

 

 

「動機と目標ですか?冒険者として何をしたいかというのであればそれはもう爆裂です。爆裂魔法を放ってお金がもらえる…尚且つより爆裂魔法を強化できる…爆裂魔法を愛し愛された私には冒険者は正に天職と言えます!」

 

 

 

つまりは爆裂魔法を撃てればなんでもいいということか。

スタンスによってはパーティ解散の可能性もあったのだが、その心配は無さそうだ。

 

貴方は貴方で魔術や解呪の探求といった目的があるにはあるのだが、急ぐ話でもない。

何なら貴方の目的はめぐみんのアークウィザードという肩書があればよりスムーズに進むことだろう。

場合によっては貴方がめぐみんに捨てられないように縋り付くことになるかもしれない。

 

 

 

「いきなり上目遣いになってどうしたんですか?ヘルムで目は見えませんが気持ち悪いですよ。そんなことより貴方も冒険者になった理由も教えてくださいよ」

 

 

 

貴方が冒険者になった理由。

切っ掛けはなんだっただろうかと記憶を辿ってみると珍しくすぐに思い出した。

この世界に飛ばされた直後の貴方は、不審者として逮捕されるのを防ぐ為に仕方なく身分を明るくするために冒険者になったのだ。

決してめぐみんのような求道の為に冒険者になった訳ではないので何とも間抜けな理由である。

 

 

 

「はぁ~なるほど、確かにその全身鎧で身元不明は捕まりますね。異世界転移していきなりそんな目に合うなんて相当焦ったんじゃないですか?」

?」

 

 

 

実はそれほど焦ることもなかった。

転移してすぐさま亡者に襲い掛かられないだけ随分とマシというものだ。

仮に衛兵に捕まっていたとしても、期限のない監禁に慣れた貴方にとってはどうってことは無い。

 

 

 

「監禁に慣れてるって何をしたんですか…え?公爵の書庫に不法侵入?どんな理由かと思ったら普通に悪い事してますねあなた」

 

 

 

言われてみれば悪いことをした気もする。

くっせぇ蛇に唆されたとはいえ、断りもせずに神々の居城を暴きまわったあの頃は過去最高に亡者だった。

 

 

 

「まぁどこぞの貴族のことなんてどうでもいいです。貴方が冒険者になった理由はわかりました。転移先がアクセルでよかったですね…ほかの場所だったらひと悶着あったかもしれません」

 

 

 

アクセルでよかったというのは"駆け出しの街"と呼ばれているところだろう。

しばらく街で過ごしていればわかることだが、この街には駆け出し冒険者が多く集まっているようだ。

暖かくなってからはギルドに行くたびに新顔の若者を見かけることから間違いはないだろう。実際めぐみんもそんな若者の一人である。

このように新人冒険者で賑わっているアクセルでなければ、確かにもっと不審に思われていたかもしれない。

 

貴方はふと冒険者について疑問を覚える。

 

 

 

「んん?何故冒険者がこれほど多いのか、ですか?」

 

 

 

貴方は頷く。

この世界は多少モンスターの危険はあるが平和そのものと言える。

現に貴方も二桁程度しか死亡しておらず、その死亡した原因である冬将軍も積極的に人を襲うことも無いという。

クエストで討伐したモンスターは害意があるモノもいたが、街を襲撃してくるようなことは無い。

そんな環境を考えるとこの冒険者の数は過剰じゃないだろうか。

 

 

 

「そう感じるのはアクセルが大陸内で魔王城から一番遠い街だからだと思いますよ。魔王城に近いほどモンスターの危険度は上昇するという話です。まぁそのあたりは私も実感が薄いのですが…オホン!まぁつまりは力のある冒険者はベルゼルグ各地で求められています。ですが駆け出しがそんな危険度の高い場所に行っても大した活躍は期待できません。そんな冒険者が力をつけるには危険度の低い土地から徐々にランクを上げていく必要があるので、モンスターの危険度の低いここアクセルは冒険者が集まりやすい街の一つとして賑わっているということです」

 

 

流石アークウィザード 随分と博識である。

感心してめぐみんの方へ目を向けると、彼女はいつの間にか取り出していたガイドパンフレットを読み上げていただけのようだ。

 

なるほどアクセルに集まった冒険者はいずれ各地に巣立っていくようだ。

同程度の冒険者が一堂に会するココであれば貴方とめぐみんのように新たにパーティーを結成したり、競い合いながら力を伸ばしたりと色々と都合も良いのだろう。

 

しかしながらそうすると更なる疑問も浮かんでくる。

 

ギルドにいた手練れと思しき冒険者や、めぐみんのようなアークウィザード、

凄腕アークウィザード兼珍品売りのウィズ

駆け出しの街というにはちぐはぐな実力を持った人物が何人も思い浮かぶ。

彼らは何故アクセルに居座っているのだろうか。

 

そんな違和感を抱かせる人物の一人であるウィズ、彼女の店がようやく見えてきた。

 

 

 

「あれが目的の店ですか?大魔導士がいるという割には結構地味な店ですね」

 

 

 

そうなのだ。

確かな実力があるはずのウィズが切り盛りしているにも関わらず今日も賑わっている気配が全くない。

置いてある品々も駆け出しが買うにしては随分尖った性能をしていたり、あまりに高額だったりと駆け出しの街にしては少々気が触れているラインナップなのだ。

 

きっとそれにも理由があるのだろう。

だが隠された秘密を暴こうとすれば大抵碌な目に合わない。

貴方の有する膨大な経験則がそう告げており、あなた自身も必要が無ければ暴こうとは思わない。

 

愚行を冒してフィリアノール的なことになるのはもう懲り懲りである。

 

幸いドアノブが卵のように崩れ去ることは無く、貴方とめぐみんは店内へと入る。

 

 

 

「ほー結構品揃え良さそうですね。見覚えがあるモノがあるような…無いような」

 

 

 

めぐみんは店内に入るや否や何やら訝し気に店内を見渡している。

"見覚えがある"というのは聞き逃せない発言だ。

こんな珍品ぞろいの店を他に知っているというのであれば是非とも教えてほしいところである。

 

 

「いえ、他の店で見かけたという訳ではなく実家の方でーーーちょ、ちょっと見てください!店の奥から何やらすごい魔力反応が!!」

 

 

脈絡なく焦った声を出すめぐみん

彼女が指さす方向に目を向けると、確かに店の奥から眩い光が溢れている。

そして何やらソウルの気配…それもデーモンのような喰らう者の気配を色濃く感じる。

 

もしやウィズは何かに襲われているのではないだろうか。

その考えに至った貴方はズダ袋を放り出して、店の奥へと駆ける。

 

 

「ギャー!札束に溺れるぅー!」

 

 

めぐみんの悲鳴が聞こえるがそれどころではない。

ソウル化に纏わる最も太い伝手がピンチなのだ。

貴方の安い命を犠牲にしてでも助けなければいけない。

決してグウィネヴィア級であることは関係していない。

 

眩い光が漏れる扉を力任せに押し開けた先はとんでもないことになっていた。

 

 

 

なんと光り輝くウィズが部屋の中央で浮遊しているのだ。

 

 

 

なんとも珍妙な光景だがとてつもなくまずい状況と思われる。

ウィズの周囲は彼女を中心として球形状に切り抜かれたようになっていることから、もともと座っていた姿勢から周囲の物体が消失してしまっているようだ。

 

その範囲は未だにゆっくりと広がり続けており、削り取られた物質は魔力ともソウルともとれる光に変換され渦巻きながらウィズへと吸収されていく。

 

ひどく恐ろしい光景だ。

これまで数多の神やデーモンと対峙してきた貴方だったが、周囲の物質への"浸食"であれば見たことがあったものの、これほど急速な"吸収"については見聞きしたことが無かった。

 

自分が齎した技術が起こした惨状であると瞬時に理解した貴方は、

己の内に意識を巡らせて大量のアイテムを出現させる。

 

 

 

~~~

 

 

 

魔法騎士の放り出したズタ袋からあふれ出した札束に押しつぶされて、満更でもないめぐみんだったが、

緊急事態を思い出すが否やはじかれたように起き上がり彼の後を追う。

 

 

 

「急に走りださないでくださいよ!ーーーうわぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 

 

 

現場に追いついためぐみんが目にしたものは、とてもこの世のものとは思えないものだった。

 

 

 

 

小部屋の中央で発光しながら周囲の何もかもを崩壊させていく店主と思しき女性と、

まるで産卵でもしているかのように、白っぽい球体状の何かをボロボロと生み出している騎士の姿であった。

 

その余りに奇妙な光景をとっさに爆破しなかったのは正に奇跡と呼ぶ他なかった。




【ロイドの護符】
主神ロイドの騎士が不死人を狩るときの道具
効果範囲内でエストによる回復をできなくする

かつて不死人狩りの英雄であったロイドの騎士の遺産
主神ロイドの信仰は廃れて久しく、その狩りの業だけが受け継がれている

不死の巡礼者の多くはこの護符を持ち歩いた
だかその用途は本来のものとは異なることが多い
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