目の前のソレを見た時…俺の中に浮かんで来た感情を一言で表すなら…『郷愁』と言った所か。
「!…驚いたな…世の中には自分にそっくりな人が三人は居るって、聞いた事は有るけど…」
「…そうだな…確かに良く似ている…」
まぁ、アチラは学生服を着ているし…顔も俺より少し幼く見えなくも無い……と言うか…コイツはどう見ても過去の俺その物だ…
「案外…生き別れの兄弟とかだったり…?」
「さぁ…聞いた事無いな。まぁそうだとしたら…多分、俺が兄貴なんだろうけど。」
あの頃の俺との大きな違いは何かと言えば…消え切っていなかった『七夜志貴』だった頃の記憶も俺は参照出来る事か…まぁどちらも俺とは別人と言って差し支え無いが。
「……犯罪者の兄貴はちょっと困るな…さっき調べて知ったけど、ココって刑務所なんだろ?」
「そうだな…ココは刑務所で、俺は受刑者の一人だ……ところで一つ、聞いて良いか?」
「えっと、何かな?」
「…受刑者の俺が刑務所に居るのは当然だな。で、お前は何でこんな所に居る?何かやったのか?」
「!…ま、まさか!その…信じて貰えないだろうけど…気が付いたらココに居たんだ…」
「へぇ…」
気が付いたら、ね…
「…取り敢えず、その…出口とか教えて貰えると助かるんだけど…」
「…教えても構わないが、お前の侵入目的が分からないと出して貰えないぞ…まぁそもそも侵入して来てる時点で、本当は駄目なんだけどな。」
「いや、本当に理由が分からなくて…」
「…まぁ俺が今、出口に案内したところで別の問題が発生するけどな。」
「え?」
「ここはな、島なんだよ。」
「島?……いや、マジ?」
奴の顔色が悪くなる……演技じゃ、無さそうだな…
「マジだ。お前もここの連中を見て来ただろう…仮に生存者が居なかったら、お前はどうやってもこの島から出られないぞ?」
「いや、ちょっと待ってくれ!アンタ外の様子を見てないのか!?ココはもうすぐ焼け落ちるぞ!?」
「知ってるよ。だからケリを着けに来たのさ…」
ポケットに入れていたソレを取り出し、駆ける…!
「っ!何のつもりだ!?」
「自分が何者か分かってないらしいな…お前は多分、人じゃない。」
奴の首元を狙って斬りつけたナイフを向こうが取り出した物で受け止められる…『七ッ夜』
「人じゃないだって?俺は「ここに来る前…お前は何をしていた?」それは…」
思い出せないか…そうだろうな…
「お前は多分…"タタリ"によってこの場に具現化された存在だ。」
「タタリ?」
「死徒二十七祖…第十三位、ワラキアの夜の通称だ…お前はソイツによってこの場に存在させられている……多分な。」
恐らく…俺の記憶の中に有る『遠野志貴』を再現しているのだろう…中々厄介な事をしてくれる…
「俺が人間じゃ、ない…」
「お前を殺せばワラキアの夜はこの場に現れるかも知れない…とにかく、俺にお前を逃がす理由は無い。」
「……分かった、やってくれ。」
「…何だと?」
「やってくれ、それで話は済むんだろ?俺も…自分の居場所に帰れるかも知れない…」
握っていた手を開き、『七ッ夜』を床に落とす…本当に抵抗する気が無いらしいな…このまま殺しても良いがどうにもモヤモヤする…本当にコイツを殺しても良いのか?
「…それで良いのか?」
「ん?」
「要するにお前は…"タタリ"によって呼び出された…俺を止める為だけに。」
わざわざピンポイントで過去の俺を呼び出しているんだ…確実に俺への牽制が目的だろう…
「利用されるだけ利用されて…無抵抗で俺に殺される…それで納得出来るのか?」
「…変な奴だな、俺を殺そうとした癖に…いざ俺が抵抗を止めたら俺を諭す……何がしたいんだ?」
「そもそも俺が嘘を吐いてるとは思わないのか?」
「う~ん…どうも嘘を吐いてるって気はしないんだよな…と言うかアンタが掛けてるその眼鏡、魔眼殺しじゃないか?」
「…そうだな。それで?」
「…アンタはそっくりさんじゃなくて多分未来の俺なんじゃないかって思ったんだ…そしたら…異物は俺の方って事になる…」
「だが、過去の存在で有ろうとお前は『遠野志貴』だ…死徒じゃないし、元々俺が狩るべき相手じゃない。」
「標的はその『ワラキアの夜』だけか。」
「そうだ……そこで一つ提案だ、俺と手を組まないか?」
「何だって?」
「俺と手を組まないか、と聞いた。」
「…いや、聞こえてはいたよ…要は手を貸せって事で良いのか?」
「そうだ…無理にとは言わない、奴を殺せばお前は確実に消滅するだろうしな…」
「…分かった、アンタに手を貸すよ。」
「……良いのか?」
「主語が抜けてる…何がだ?」
「ワラキアを殺したら…お前は消えるんだぞ?」
「いや…だから異物は間違い無く俺だろうし…そもそも俺がこの場で殺されてもワラキアが死んでも…俺が消える事実は変わらないだろう?消えたら帰れるかも知れないし…まぁ別に…多少帰るのが遅くなっても俺は構わないよ。」
そうだった…『遠野志貴』はこう言う奴だったな…
「まぁ手を貸してくれるんなら心強い。」
「つっても役に立つかは分からないけどな…アンタも魔眼持ちだろうし、未来の俺なんだから今の俺より強いだろうし「そうとは限らないさ」…え?」
俺は『七夜』としての身体能力を持て余しているからな…
「…行くぞ、ここが燃え尽きる前にケリを着ける…逃がしたら、次はいつ現れるか分からないらしいからな。」
「分かった、何処を探す?」