囚われの殺人貴   作:三和

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「表出した吸血衝動を必死に抑え込もうとするアルクェイドに自分の血を吸え、と言った志貴だが当人はそれを拒む…半ば狂い掛けている彼女から言われたのは自分を今この場で殺すか、自分の前から消えて欲しいの二択だ。」

 

「……」

 

何か思う所が有ったのか、奴は黙っている…まぁ反応を気にしてても仕方が無いか…今は話を続けるとしよう。

 

「志貴はアルクェイドの前から姿を消す事を選んだ…ただ、それは彼女を我が身可愛さに見限ったのでは無く…彼女を助ける方法を探す為だ。」

 

「助けるも何も…吸血鬼、それもこの世に生を受けた時からそう言う生き方を定められた真祖の吸血衝動を抑える方法など先ず存在すまい…遠回りにも程が有るな。」

 

そうだな、今の俺からしても…無駄に苦しませるくらいならそれこそ自分の存在を懸けてでも殺すべきだっただろうと思う……一度出来たんだ、二度目は出来無いと言う事は無い。寧ろ彼女も最初に殺される前よりは確実に劣化していたらしいしな…

 

ただまぁ…

 

「それが出来無かったんだよ…奴にはな。」

 

「ふむ、俺には理解出来無い理屈だな…仮にも愛していたと言うなら…それこそさっさと殺してやるべきじゃないのか?長く苦しませると言う業も含んでの愛だと言うなら…話もまた違うが。」

 

……興味が無いどころか、ついさっきまでただ聞くのも本気で嫌そうな顔をしていたのに良く喋るものだ。

 

しかも俺と違って客観的に見ているのでは無く、何処と無く奴自身の心境を語っている様な気がする……まぁ良い。

 

「とにかく、『遠野志貴』は彼女を助ける為に数年振りに外の世界に出た…俺もそこら辺の記憶があまり残ってないので分からんが…ほぼ完全にこちらからは切り離された所に居たらしい…」

 

「へぇ…それで?」

 

奴はまたニヤニヤしている…まぁ、既にオチが見えてるからだろう。

 

「…奴は吸血衝動を止める方法の情報を得ようとして必死だった為に、外に出た時に漸く気付く…そんな方法仮に有るとしてもその情報を持ってそうなのは精々今まで狩り、散々追い返して来た死徒や代行者位だと言う事にな…」

 

「今まで敵対して来た相手に、自分が困ってるからって助けてくれと縋るのは虫の良過ぎる話だな…しかも『遠野志貴』が助けようとしてるのはそいつらが狙う真祖の姫だ…仮に情報を持っていたとしても教える理由は無いな。」

 

その通り…『遠野志貴』には嘗ての敵に縋り付く以外の方法は無いが、向こうはまともに取り合ってくれる訳が無い…何よりも…

 

「一番の問題として…『遠野志貴』はその身体能力と『直死の魔眼』以外の異能は無い…そして…奴には元々死徒や聖堂教会の連中に自分から接触するツテなど無い。だから…」

 

「だから?」

 

「…自分を囮にすれば、いつかは向こうから接触して来るかと考え…各地を放浪する様になった。」

 

俺がそう告げると奴は声を上げて笑い始めた…ああ、俺も正直同感だ…奴の嘆きを"知って"はいても…コレは完全に笑い話だと言う他無い。

 

「アッハッハッハッハッ…!じゃあ何か!?ソイツは時間が無いのにも関わらず、無駄に世界各地を回ったと言うのか!?」

 

「そうだ…道中本人の目論見通り死徒にも代行者にも遭遇出来たが、結果は惨敗…『遠野志貴』は死ぬ事こそ無かったものの結局少しでも使える情報を喋ってくれた者は居なかった…そして更に数年が経ち、失意のまま…『遠野志貴』は彼女の元へ帰って来る…」

 

「…で、真祖の姫はどうなってた?」

 

「…戻った先で見たのは彼女を囲む多数の死徒と代行者…そして、笑いながら暴れている彼女だった。」

 

「『遠野志貴』は死徒と代行者の亡骸を掻き分け…生き残って彼女と対峙する死徒と代行者を片っ端から殺しながら彼女の元まで辿り着き…もう『遠野志貴』の事も分からない程に狂気に駆られている彼女を泣きながら解体した……初めて解体した時と違い…彼女は、もう蘇らなかった。」

 

「それで絶望して自殺…か?」

 

「ああ。…結局失敗したがな…ただ、次に目覚めた時は何故か何処かの村の民家でな…その時は既に奴では無く"俺"になっていた…」

 

「漸く、ここからはアンタの話か。」

 

「ああ…だが、別に『遠野志貴』程面白い話じゃないぞ?それでも聞きたいか?」

 

「ああ、是非聞きたいね…産まれ立てで真っ更だった筈のアンタが…どうやって今の様になったかを、ね…」

 

「物好きだな、まぁ話すと言ったし…お前が聞きたいなら別に良いが。」

 

今の所、コイツは消える気配は無い…どうやら『遠野志貴』は未だにタタリを仕留められていない様だ…このままだと結局俺は、コイツと決着を着けないといけなくなるかもな…

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