囚われの殺人貴   作:三和

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「すまない、助かったよ。」

 

「いえ、気にしないでください。」

 

あの一件の後、俺は刑務官の一人に連れられてやって来た所長室で俺は所長と話をしていた。

 

 

 

「…少々やり過ぎたかと心配していたのですが…相手は大丈夫でしたか?」

 

「…軽い脳震盪と、骨折程度だ…心配しなくても君の責任は問わない、そもそも、元々はこちらの落ち度だからな…」

 

最初に一人やって来た後、その後も数人やって来たが最後の一人がよりにもよって、警棒を持って襲って来た時は何の冗談かと思った…嘗ての記憶を自分の物と思えないとはいえ、人外と数多く戦った経験と、俺の身体に染み付いた人外と相対する為の体術のお陰で何とかなったものの…あまり加減が出来無かった…

 

「…警棒を奪われた奴には「いえ、俺は別に怒ってませんし、そういう事もあるでしょう…あまりキツく言わないでくれると」……いや、そういう訳にもいかない。そいつにはそれなりの罰は与えなければならない。」

 

「そうですか…」

 

ここの受刑者でしかない俺にはそれ以上何も言えないな…

 

「取り敢えず奴は大丈夫なんですね?」

 

「ああ…改めてすまなかった…もう戻ってくれて良いぞ。」

 

「はい。」

 

 

 

「おう!志貴!どうだったよ!」

 

房に戻れば先程の爺さんが声をかけてくる(実は同房の人間の一人)

 

……そこで遠巻きに見てる連中はもう少し何とかして欲しいんだけどな…正直今日は疲れたからあまり絡んで欲しくない…出にくくはなったとはいえ、貧血は無くなった訳じゃないし、体力にもあまり自信ある方じゃないから、あそこまで動くとそれなりに疲れる…

 

「…退屈だったのは分かってますが、疲れてるんで…出来れば明日にして貰えると…幸い、明日は休みですし…」

 

俺は自分のスペースに行くと読みかけの本を取り出し、開く…出来る事なら横になりたいが、さすがに就寝時間前に床に就く事は許されてない…本格的に寝込まなくてはならない程体調は崩してないからな…

 

「何だよ、つれねぇなぁ…」

 

「何なら将棋でもやりますか?静かにしてくれるなら付き合いますよ?」

 

「そうだな…うし!やるか!」

 

……だからそのテンションをどうにかして欲しいんだが…まあ、良いか。本当にこの人は何なんだろうな…何と言うか憎めない爺さんだ…

 

将棋をやっている内に就寝時間を示す音楽が聞こえて来たので片付けを始める…さて、と。

 

「521番!遠野!」

 

「はい?」

 

外から刑務官に声をかけられ返事をする。

 

「お前に面会だ。」

 

「は?就寝前ですよね?」

 

「……そうだ。」

 

ふと思う…こんな時間に来れる奴なんて一人しかいない気が…

 

「断る、って訳には行きませんよね…?」

 

無言で頷く刑務官に溜め息を吐きたくなったが、堪え、刑務官が開けたドアから俺は房の外に出た。


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