「…ハハハ……何だよ、それ?ふざけんなよ!茅場晶彦ォ!」
僕は周囲のプレイヤーが困惑と恐怖で騒ぎ続けるなかあの男へ憎悪をぶちまけていた…
……この僕、須郷伸之には大嫌いな奴がいる。それが大学の先達に中る茅場晶彦という男だ。
量子物理学者兼天才ゲームデサイナーの肩書きで知られる。
僕は奴を憎んだ。その理由が天才だと思っていた自分に高過ぎる壁を見せつけ、僕が一番欲しかった人まで奪って行った。しかも本人は彼女の好意に全く靡かない所も僕を苛立たせた。
ささくれだつ心をなんとか抑え込んでいた僕に奴が直接会いに来たときは本当に驚き困惑した…
そもそも僕が勝手に一方的に奴を嫌っているだけで接点なんて無かった。
……奴の用は今までに無い画期的なゲームを作りたいから自分が見込んだ人物に声をかけており僕にも手を貸して欲しいとの事だった。
僕の心は文字通り煮え繰り返った…
今こいつは何て言った……?目の前のこいつに勝つために今も努力を続ける僕に…ゲームを作りたいから協力しろだと!?
ふざけるのも大概にしろ!?……と、怒鳴り付けてやりたかったが抑えた。
……先輩であるこいつを怒鳴ったり手を出したりすれば今まで僕が築いてきた物が全て失われてしまう。……それに、聞けばこいつは元々人の気持ちが分からない奴らしく、多少高圧的だったり誰もがこうやって間違いなく自分に協力してくれる……いや…協力すべきだ、と自分中心に世界が回って当たり前と言わんばかりの態度も仕方の無いことなのだ…
……その癖、こいつの信奉者が過激なせいで下手にこいつを敵に回すとろくなことが無いのは判断できた…
渋々僕はその手をとり表面上笑顔を浮かべながら全面協力を申し出た。
そして地獄が始まった…
……まずこの茅場晶彦という男、聞いてた以上の人嫌いでコミュ障だった…
……例えば一度嫌いだと思った相手はこの計画の出資者であっても頭を下げるのを嫌がり僕に押し付ける。
……生活は雑の一言に尽き、研究室は足の踏み場もなく書類が見つからなくなるや僕に片付けさせる。
……ゲームの宣伝をしなきゃいけないのにメディア露出を嫌がり肩書きだけプロジェクトの副リーダーになっている僕を代わりにテレビ出演や雑誌取材に出させる…
……そもそも開発はせっかくのプロジェクトメンバーの手をほとんど借りずお前が自分でやってんだから説明しろって言われたって分かるわけ無いだろ!?バカか!?
……アイデアに詰まった時と腹が減った時だけ声をかけてくる……
などなど…とことん僕をバカにしているとしか思えなかった。
一応報酬はもらっていたが明らかに労基に照らし合わせれば割に合わない額だった…
……ある日ついに耐えきれなくなり辞めてやると意気込んで、最近自宅から出てこなくなった茅場晶彦の元に向かい、そこで見たのは…茅場晶彦と僕の愛した女性が眠るように死んでいる姿だった…
……警察の捜査で茅場晶彦はゲームハードに中る試作品のナーブギアを改造し脳にマイクロウェーブを流し自殺したという結論が出され彼女が後を追って死んだのもあり二重にショックを受けた僕に渡されたのが僕に宛てた茅場晶彦の遺書だった…
……そこに書かれていたのはまだテスト段階だが、それでも9割程完成させたゲーム僕に託すということ…それから僕の才能が妬ましかったというあの男からの文字通りの敗北宣言だった…そして、追記として今までの全ての償いに自分の財産と…これから先発売するゲームの権利を譲るという一文が書かれていた…
……何なんだよ、それ。意味わかんねぇよ……
結局僕は分野の違う内容にめげずに何とかゲームを完成させ、稀代の物理学者茅場晶彦の遺作としてソードアート・オンラインを世に出してから燃え尽き、自堕落な生活を送っていたが…そんな僕を見かねて訪ねてきた同じ開発プロジェクトのメンバーに諭され…とりあえずあいつの作ったゲームの世界を見てみようと思い立った。
……そして、運命の日…ソードアート・オンラインにログインした僕は茅場晶彦の残した時限プログラムによりGM権限を剥奪され…その直後に茅場晶彦を名乗る者からのデスゲーム宣言……その後散々奴を罵倒した僕は……
「ハハハ……何だよ何だよ……そこに居たんだな、あんた……!」
言いたいことを言い切り、スッキリした僕は今度は宿敵と決着をつけられる事に歓喜していた…